今日の午後は県南の開業医様で硝子体手術を5件施行しました。
当院と同じ27ゲージ、コンステレーションシステムでの手術ができ大変スムーズに終えられました。そのまま今年最初の忘年会を楽しく過ごさせて頂きました。
さて、ちょっと酔っ払いで誤字脱字が心配ですが、今日は翼状片手術に関する注意点を書いてみます。
翼状片? 手術適応と遠方の患者様
現在の術式や手術動画は、以前にブログやYOU TUBEで紹介しています。幸い当院での治療ケースが350例を超えますが、再発が1例もなく順調な経過が続いています。(細かなものなど全く合併症がないわけではありません。)
10代20代の患者さん、再発例や巨大な翼状片など、遠方からのご紹介も増え続けていますが、様々な事情で手術をお断りするケースも少なくありません。
遠方からの受診後にお断りするのは申し訳なく、代表的な2つのケースに関して記載しておこうと思います。
?見た目のみ理由に手術はしません
極小さな翼状片でも白目の赤みが嫌だと手術を希望される方がいますが、翼状片手術は決して見た目のためではなく、将来の視力低下のリスクを避けるための手術です。
翼状片が大きくなると、多くの場合で直乱視という縦方向の乱視を生じます。止血の仕方や切開の方法にもよるのですが、手術をすることで、この直乱視を打ち消して倒乱視(横方向の乱視)を生じることが多々あります。やり方にもよるのですが、手術自体、ある程度の乱視を生じることは間違いありません。
今、翼状片があるからといって、乱視が全くないような視力1.2という目は、手術によって視力低下を招いてしまいますので、今すぐには手術をするべきではありません。
今、倒乱視で裸眼視力が悪い人は、翼状片術後にはさらなる低下が予想されますので、やはり手術適応は慎重でなくてはいけません。大きくなりすぎて不正乱視を生じているケースでは仕方なく手術をして、手術後の落ち着いた時点で白内障手術による乱視矯正を見据える場合もあります。
これは先日担当したケースですが、他院様で初回手術を施行し術後再発で4年前に右眼の手術をされています。左が手術前、右が手術後でキレイに治っています。(3年前にカメラを新調したので写真の色合いが異なります。)
実はこのとき、下の写真のように左眼にも翼状片を認めています。
右眼が再発して大変な思いをしていると、左眼も早めに治療したい。という気持ちは分かるのですが、4年前の時点では軽度の倒乱視で視力が良好でした。
1年に1回の検診を行い、4年後に翼状片が大きくなったために直乱視化したので手術を予定しました。
左が4年前よりやや大きくなった手術前、右が術後2週です。翼状片が消失したのみでなく、乱視をコントロールして裸眼で1.0の視力を得ることができた症例です。
翼状片手術は、良かれ悪かれ乱視に影響します。(遠視・近視にもある程度影響があります。)手術適応には乱視を考慮する必要があります。
?紹介・連携が必要です
遠方の患者様で紹介状がない場合、多くの患者様が「術後も通えるから大丈夫です。」と仰るのですが、手術には不確定な要因も多々含まれます。術後にはステロイドという目薬をしっかりと使う必要がありますが、薬の副作用で眼圧が上がると、数日後・1週間後などに再検査が必要なケースというのは出てくるのです。来月の仕事のシフトは移動ができても、来週は無理・受診できない。という患者様が少なくありません。
やはりご近所の先生方の力を借りた方が、安全な術後経過が期待できます。遠方からの受診の患者様は、かかりつけの先生からの紹介状を持参頂き、術後は一緒に診療していけるように準備をするのが好ましいのだと思います。
また、そもそも翼状片手術の多くは簡単であり、ほとんどの症例では再発もなく良好な経過をたどります。翼状片手術自体は研修医の先生でも担当するもので、私は翼状片手術が専門ですという先生はいません。(誰でもできる手術なので)。
再発リスクの高い症例(若年性、再発例、巨大翼状片、耳側翼状片、他の疾患が元になっている)では、当院での手術にメリットがあるかもしれませんが、一般的で小さめの翼状片はご近所の開業医様でも全く問題なく手術が可能と思います。かかりつけの担当の先生が「当院では難しい」と話す場合は別として、「うちで手術をしましょう」と仰る場合は、転院を考える必要がありません。