翼状片? 手術適応と遠方の患者様

今日の午後は県南の開業医様で硝子体手術を5件施行しました。
当院と同じ27ゲージ、コンステレーションシステムでの手術ができ大変スムーズに終えられました。そのまま今年最初の忘年会を楽しく過ごさせて頂きました。

さて、ちょっと酔っ払いで誤字脱字が心配ですが、今日は翼状片手術に関する注意点を書いてみます。
翼状片? 手術適応と遠方の患者様
現在の術式や手術動画は、以前にブログYOU TUBEで紹介しています。幸い当院での治療ケースが350例を超えますが、再発が1例もなく順調な経過が続いています。(細かなものなど全く合併症がないわけではありません。)
10代20代の患者さん、再発例や巨大な翼状片など、遠方からのご紹介も増え続けていますが、様々な事情で手術をお断りするケースも少なくありません。
遠方からの受診後にお断りするのは申し訳なく、代表的な2つのケースに関して記載しておこうと思います。

?見た目のみ理由に手術はしません

極小さな翼状片でも白目の赤みが嫌だと手術を希望される方がいますが、翼状片手術は決して見た目のためではなく、将来の視力低下のリスクを避けるための手術です。
翼状片が大きくなると、多くの場合で直乱視という縦方向の乱視を生じます。止血の仕方や切開の方法にもよるのですが、手術をすることで、この直乱視を打ち消して倒乱視(横方向の乱視)を生じることが多々あります。やり方にもよるのですが、手術自体、ある程度の乱視を生じることは間違いありません。
今、翼状片があるからといって、乱視が全くないような視力1.2という目は、手術によって視力低下を招いてしまいますので、今すぐには手術をするべきではありません。
今、倒乱視で裸眼視力が悪い人は、翼状片術後にはさらなる低下が予想されますので、やはり手術適応は慎重でなくてはいけません。大きくなりすぎて不正乱視を生じているケースでは仕方なく手術をして、手術後の落ち着いた時点で白内障手術による乱視矯正を見据える場合もあります。

これは先日担当したケースですが、他院様で初回手術を施行し術後再発で4年前に右眼の手術をされています。左が手術前、右が手術後でキレイに治っています。(3年前にカメラを新調したので写真の色合いが異なります。)
実はこのとき、下の写真のように左眼にも翼状片を認めています。

右眼が再発して大変な思いをしていると、左眼も早めに治療したい。という気持ちは分かるのですが、4年前の時点では軽度の倒乱視で視力が良好でした。
1年に1回の検診を行い、4年後に翼状片が大きくなったために直乱視化したので手術を予定しました。

左が4年前よりやや大きくなった手術前、右が術後2週です。翼状片が消失したのみでなく、乱視をコントロールして裸眼で1.0の視力を得ることができた症例です。
翼状片手術は、良かれ悪かれ乱視に影響します。(遠視・近視にもある程度影響があります。)手術適応には乱視を考慮する必要があります。


?紹介・連携が必要です

遠方の患者様で紹介状がない場合、多くの患者様が「術後も通えるから大丈夫です。」と仰るのですが、手術には不確定な要因も多々含まれます。術後にはステロイドという目薬をしっかりと使う必要がありますが、薬の副作用で眼圧が上がると、数日後・1週間後などに再検査が必要なケースというのは出てくるのです。来月の仕事のシフトは移動ができても、来週は無理・受診できない。という患者様が少なくありません。
やはりご近所の先生方の力を借りた方が、安全な術後経過が期待できます。遠方からの受診の患者様は、かかりつけの先生からの紹介状を持参頂き、術後は一緒に診療していけるように準備をするのが好ましいのだと思います。

また、そもそも翼状片手術の多くは簡単であり、ほとんどの症例では再発もなく良好な経過をたどります。翼状片手術自体は研修医の先生でも担当するもので、私は翼状片手術が専門ですという先生はいません。(誰でもできる手術なので)。
再発リスクの高い症例(若年性、再発例、巨大翼状片、耳側翼状片、他の疾患が元になっている)では、当院での手術にメリットがあるかもしれませんが、一般的で小さめの翼状片はご近所の開業医様でも全く問題なく手術が可能と思います。かかりつけの担当の先生が「当院では難しい」と話す場合は別として、「うちで手術をしましょう」と仰る場合は、転院を考える必要がありません。

翼状片? 翼状片手術動画

今週は県北の病院の先生が手術見学に、県南からも外来見学に来てくれた先生がいたりと、いろいろと情報交換ができて楽しかったです。
ただ、山王台病院アネックス新館ができてから、少し緩和していた満床問題ですが、今週は網膜剥離の緊急手術3名のうち、2名が満床で入院できず外来手術に・・・。経過良好ですが眼内に空気が入っている間は視力がないので、通院が大変そうです。すみません。

来週、近隣の臨床懇話会で、簡単な講演の依頼がありました。
発表スライドから、一部流用して、ブログのネタに。
翼状片? 翼状片手術動画

まず、翼状片については、以前のブログを参照下さい。
⇒クリック(下の方から順にご覧ください。)

翼状片の手術の術式には、細かく分けるといろいろな方法があるのですが、
大きく有茎弁移植(ゆうけいべんいしょく)と、遊離弁移植(ゆうりべんいしょく)に分かれます。
・有茎弁移植は、翼状片を切除した後の結膜の欠損部を、傷の周囲の結膜を引っ張って縫いつけて閉じる方法です。昔からある方法ですが、術後の再発がやや多く、術後の目頭に赤みやふくらみ、皺が出来やすいことが難点です。
・遊離弁移植は、欠損部と全く関係のない部位の、完全にキレイな結膜を持ってきて貼りつける術式です。一般的に再発が少なく、術後の見栄えが良いと考えられていますが、手術手技や面積が増え、手術時間も長くなりがちなため、医師側にとっては少し面倒な術式です。

当院ではH22年の開院以降、翼状片に対して全例で縫合をしない結膜遊離弁移植を採用し、既に200例以上の治療を担当させて頂いております。
翼状片手術で最も多い合併症は、術後の翼状片再発で、教科書にもよりますが、数%?多いものでは10%近くで再発するとされています。
もちろん、今後の経過を見守る必要はありますが、開院から現時まで、当院で開院後の200数十例での再発率はなんと0%となっています。(再発例は1名もいません。)

翼状片手術に関しては県外の患者様の手術も多く、眼科の先生の手術見学も多々ありますが、2ヶ月程度前に治療をした患者様に動画公開の許可を頂いたので、UPしてみたいと思います。

翼状片手術動画 ←クリック
(結膜遊離弁移植)

上のビデオの患者様の経過写真です。
術前
術後翌日
術後1ヶ月後
術後はだいたい1ヶ月くらいたつと、赤みが引いていきます。
最後の写真はまだちょっと出血がありますが、次回の来院ではキレイになっている予定です。

ちなみにこれは、有茎弁移植を受けた方の術後写真です。

(他院様ではなく、申し訳ないのですが私が5年以上前に他院で手術をした経過です。医学の進歩を感じます・・・・。)

*1.有茎弁移植が劣っているとか、完全に悪というではありません。有茎弁は周囲の結膜をやや無理やり引っ張って縫いつけるので、皺や凹凸が残りやすく、周囲組織に残存した翼状片の細胞が、黒目(角膜)の近くに存在しやすくなるために、再発が多くなるリスクがあるだけです。とっても上手な先生が行えば問題なくキレイに仕上がります。

*2.今回のビデオの術式は、使用する薬剤などで保険診療で認められにくいものも含まれています(当院では余剰費用は医院で負担しています)。
海外では、同様の手術に加えて羊膜移植を行い、数千例、再発がなかったとする先生がいるようです。よい医療はどんどん保険適応になるといいのですが。それにしても、翼状片数千例って、世界にはスケールが大きな話があるものです。

結膜の悪性腫瘍

今週は千葉県の開業医様が手術見学に来てくれました。
恥ずかしながら財布を忘れてしまい、夕食をご馳走になったのですが、
僕の知らない色々な話が聞けて良かったです。
主に白内障手術や、眼内レンズ交換の手術をみて頂いたのですが、
当院にいらっしゃる先生方は翼状片手術に興味を持って頂くことが多いようです。(→翼状片手術の詳細ブログ

翼状片の話題から、少し話しをすすめてブログを書いてみます。
結膜の悪性腫瘍
結膜(白目の粘膜)に何かができて受診される場合、そのほとんどが良性です。
当院では、瞼裂斑などの見た目の問題での手術は引き受けていないので、手術を行う大多数が翼状片になります。
←翼状片のサンプル

ただし、同じようなできものがあっても、自己判断で翼状片と決めつけてはいけません。

昨年当院で手術をした、高齢の女性の患者様です。
以前から翼状片で通院歴があったようですが、残念ながら翼状片ではありませんでした。扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)という悪性腫瘍でした。
命に係わる可能性があり、抗癌剤の希釈点眼薬で小さくさせた後に手術で切除をしています。現在も定期的に抗癌剤の点眼薬を使用していますが、幸い再発もなく安定しています。
術後経過


これは悪性リンパ腫といって、白血病の一種です。一部を切除し、顕微鏡で観察をして確定診断になります。治療は血液内科に紹介となりましたが、抗癌剤や、場合によっては放射線による治療が必要になります。早期発見で助かりましたが、やはり発見が遅れれば命に係わる病気です。

目にちょっとできものができても、あまり気にしない人もいるかもしれませんが、眼科でもたまには悪性(癌)が見つかることもあるのです。あまり自己診断をせずに、できものができた時は一度は専門家の診断を受けてくださいね。

眼科医って、あまり命にはかかわらないはずですが、なぜだか当院は悪性腫瘍の患者様がしばしば来院されます。今年に入ってだけで、脳腫瘍が3名も見つかったり・・・。

翼状片手術? いつ手術をするか?

今日は以下の手術を行いました。
・加齢性下眼瞼内反症(眼輪筋縫縮術)1件
・白内障手術 9件
・網膜硝子体手術 4件(茎離断3件、切除1件)
(黄斑前膜2件、静脈閉塞に伴う黄斑浮腫1件、他院様術後の硝子体混濁+乱視補正1件)
13時から手術の予定が、僕が13時半からと勘違いをしてしまい、外来手術の方たちは30分余分にお待ちになって頂くことに・・・。本当にすみませんでした。手術は皆さん無事にいき、17時には終えられました。
久しぶりに早めの帰宅で、子供と面白い遊びをすることができましたが、どんな遊びかは、後日、週末のブログなどで書いてみますね。

翼状片手術? 手術の時期
前回、大きくなりすぎた翼状片は手術が大変。というブログを書きました。
翼状片手術?翼状片手術?

前回のブログだけをみると、早く取ってしまった方がいいのか?という事になりますが、実際はそうではありません。外来では翼状片をお持ちの方は数え切れないほどいますが、手術を勧めるのはごく一部の患者様です。
翼状片をお持ちでも長期間にわたって悪化しない・大きくならない場合もあり、そういう場合は手術をする必要性は薄れます。
また、手術は100%安全で、全くリスクがないというわけではありません。
手術の合併症のリスクと、手術をしないことで予想される不利益を天秤にかけて、よく考える必要があります。

手術の時期? 症状で決める
一般的に、翼状片が大きくなるごとに、以下の症状が出現します。
?充血、ゴロゴロ、メヤニが出やすい
?乱視が強くなり、視力が下がる
?瞳孔(黒目の中心部)にまで育つと、ほとんど見えなくなる
 眼球の動きが悪くなり、物が2つに見える(復視)

手術は上記の症状を軽減、予防するために行うのですが、
まず、どの程度の状態を治療の目標とするか?で、手術の時期は変わります。
例えば、上記の症状???で考えると、
A:充血やゴロゴロが嫌な人⇒?の段階で手術
B:乱視が強くなっていくのが嫌な人⇒???で手術
C:乱視くらいは気にしない⇒?で手術
D:失明さえしなければいいと思う人⇒?以降で希望があれば手術
といった具合です。
通常の患者様で、D:失明さえしなければいい。という人は見かけません。

Aの人は、どんなに小さくても、手術のリスクの説明などを聞いて、ご自身が納得すれば、手術となるでしょう。

実際の診療で一番多いのは、BとCで悩む人です。
翼状片が大きくなってくると、角膜(黒目)がゆがんで、乱視が強くなっていきます。軽度の歪みであれば、手術で軽減することができますが、ある程度以上のゆがみによって、不正乱視という状態となってしまうと、手術で翼状片を切除しても、不正乱視が残ってしまいます。
不正乱視というのは、角膜が凸凹になってしまう状態で、角膜トポグラファーという機械などで測定しますが、メガネのみでは完全な矯正は出来ずに、コンタクトレンズや屈折矯正手術が必要になるやっかいな乱視です。

これは、翼状片で不正乱視が発生してしまった患者様の角膜トポグラファーです。通常の凹凸のないキレイな角膜は、黄色や黄緑一色で均一になりますが、不正乱視の症例では、様々な色で凸凹が表現されます。
この不正乱視が残ってしまうと、将来、白内障手術を受ける時に乱視矯正も可能なトーリックレンズの使用が難しくなったり、多くの場合で裸眼で1.0などの良好な視力を望むことは難しくなります。
最終的に裸眼で良好な視力を獲得したい。と思う人は、角膜トポグラファーなどで不正乱視が出てきた場合には、手術を考えなくてはいけません。B

そうではなくて、眼鏡やその他の治療を使ってでも、それなりに見えればいいや。という人は角膜の中心部(瞳孔)付近に近づくまでは、手術を急ぐ必要はありません。⇒C

手術の時期? 経過で決める
翼状片の悪化するスピードは人それぞれで、人によっては数ヶ月で大きくなる場合もありますし、人によっては何十年も変化しない場合もあります。

例えば、胃癌や肺癌、どんな癌でもそうですが、どうせ取ることが決まっているなら、大きくなって、どうしようもなくなってから手術をするよりも、
早い時期、病気が小さい時に取っておいた方が、手術も小さくて済みますし、痛みも少なく楽ですよね?
翼状片も同じです。
大きくなっていくのが明らかであれば、早めに取っておいた方が、実際には手術も安全で簡単です。

定期検査を受けることで、進行のスピードを確認し、将来不都合が起こる可能性が高いと思えば、手術をして、リスクの芽を摘んでおくことが望まれます。
逆に、例えば、70歳で小さな翼状片を発見して、75歳の時点で極わずかにしか大きくなっていない。なんていう場合には、手術は必要ないと思います。

みるみる大きくなる翼状片というのは少なく、多くは数ヶ月とか、年単位で進むものがほとんどです。当院では、初診時に翼状片がある場合には、まず半年後程度の再検査で悪化のスピードを確認します。(小さいものでは、予約を取らない場合も多々あります。)半年後に大きな変わりがなければ、以降は1年に1回程度の定期検査で十分かと思います。
(患者様自身の肉眼で、明らかに大きくなっている場合には、予約の前でも受診するようにお願いします。)


以前は、上のように、黒目と白目の境と、黒目の中心(瞳孔)に線を引いて、半分とか、3等分とかにした線を引いて、大きくなった・ならない。を検討していましたが、
現在は茶目(虹彩)の細かい模様まで、キレイな前眼部写真をとても簡単に撮影することができるようになったので、大きくなったかどうかは簡単に分かるようになりました。上述の角膜トポグラファーなども、病気の進行を調べるにはいい検査です。


一昨日、手術をした患者様です。2等分した半分を超えていますね。

ちなみに手術翌日の昨日の写真です。


これは来週手術予定の患者様。半分をちょっと超えたくらい。


これは再来週の患者様。大きすぎです・・・。瞳孔、レッドゾーンにかかってきています。

石岡近隣は、なぜだか大きい人ばかりです。
ちょこちょこっと、簡単に取れちゃう手術に憧れます。

翼状片手術? 術後の見た目

今日の午後は以下の手術を行いました。見学の先生も一名いらしました。
・眼瞼腫瘍切除 1件
・翼状片切除 1件(遊離弁移植)
・眼瞼下垂症 2件(CO2レーザー・ミュラー筋タッキング)
・白内障手術 6件
・眼内レンズ2次移植(毛様溝縫着術) 1件
・網膜硝子体手術 2件(切除1件、茎離断1件)
今日は、いろいろな手術があって楽しかったです。
無事に終わって何よりです。

翼状片手術? 術後の見た目
翼状片手術の最も重要な手術目的は、視機能を維持することです。
ただし、特に女性の患者様などでは、術後の見た目を気にされるかたも多数いらっしゃいます。出来る限りキレイにしたいと思ってやっていますが、実は、頑張ってもどうにもならないものもあります。

一昨日手術を行って、ブログに術式を乗せた患者様の写真です。左が手術前、右が手術翌日です。白目が赤いのは、手術中の出血のあとで、徐々にキレイになっていきます。問題は、黒目(角膜)の濁りが残っていることです。時間とともに、もう少しはキレイになりますが、完全に消えることはありません。
この結果をみると、翼状片を取り切れなかったのでは?と思う方もいらっしゃるかも知れませんが、そうではありません。実は、翼状片が長い間、黒目(角膜)にべったりとくっついていると、角膜自体が濁ってしまうのです。

イメージ図ですが、赤が翼状片、青が角膜の濁りです。翼状片をキレイに切除しても、角膜自体の濁りは取ることができません。
また、このような角膜の濁りは、表面が凸凹した状態となり、不正乱視という、メガネで視力を矯正出来ない乱視を残してしまう原因となります。

なので、もし手術をする場合は、角膜自体が濁る前に手術をした方がいいのですが、手術は100%安全というわけではありませんので、判断を迷う場合もあります。いつ手術をするべきか、手術をしなくても大丈夫なのかは、担当の医師とよく相談しましょう。当院の考え方は、後日、別のブログで書いてみたいと思います。

参考に、当院(山王台)で今年行った翼状片の術前後の写真をupしてみます。
(たぶん、これで全部かと。手術リストをパラパラ見ての結果なので、漏れがあったらすみません。私のがない。UPして!などがあれば教えてください。)
当院では、ほとんどの場合で、術翌日、術後1週、術後1ヶ月に来院頂いています。翌日や1週後の写真で、白目が赤く見えるのは、出血が残っているためで、徐々にキレイになります。(問題がないと、写真を撮らないことも多いので、術直後の写真のみになってしまう方がいます。小美玉でfollow中のかたも手元に写真がありません。)
手術後、数か月とか半年とか立つと、傷跡はさらに分かりにくくなります。

術後1週
術後1週







角膜が白いですね・・・。
今年一番の濁り残存。
この方の反対の目を本日手術しました。
今日手術をした左目は軽症で、濁りは残らないと思います。

術後1週
術後1週
これも濁りが・・・。




術翌日
術後1週

キレイになると、僕はとっても嬉しいのですが、濁りが残ると少し凹みます。
濁りが残るかどうかは手術前から分かるので、キレイになりそうな症例だけ手術をしたいところ。
ところが、濁りが残りそうな症例はもともと重症例で、手術を引き受けないと、将来見えなくなってしまうリスクの高い方です。それって、手術しないわけにはいかないですよね・・・。

ブログを参照頂いた方へ。
ご家族の黒目の内側に、白い出来物が出来ていたら、早めに眼科を受診するようにお伝えくださいね。

翼状片手術? 遊離弁移植

今日のお昼は以下の手術を行いました。
・眼瞼下垂症手術 1件(皮膚切除+挙筋タッキング)
・翼状片手術 1件(遊離弁移植)
・白内障手術 7件
無事におわりました。

翼状片手術
翼状片は、白目の方から黒目(角膜)の方へ、腫瘍性の病変がのびてきて、角膜を覆ってしまう病気です。(⇒翼状片)多くは黒目の内側、目頭側にできます。
現在の医学では、治療法は手術しかなく、手術で出来物を切除します。
手術をするかしないかは、出来物の大きさや、増悪傾向(大きくなっているかどうか)で判断します。担当医の先生とよく相談しましょう。

今日の患者様は、70代の女性で、かなり大きな翼状片です。瞳孔(黒目の中心部)に病変がかかってしまいます。(本当はもっともっと早くに手術をしてほしいのですが・・・。)

手術では、まず仰向けに寝て、麻酔の目薬をして消毒を行います。
僕たちは患者様の頭側に座るので、手術の写真は上下左右が反対になります。
(当院は手術中の眩しさを減らすために、照明を最小限で行っています。写真が暗くなってしまいますがご了承ください。)


まず、翼状片の本体に、麻酔の注射をして、プックリと膨らませます。
(麻酔には出血を抑制する作用のある成分が混ざっています。)


次に、もう一か所、黒目の上側(写真では下側)に麻酔をします。ここは、あとで移植をするための、キレイな粘膜をもらう場所です。


翼状片を覆う正常な粘膜(結膜)の一部を切開します。

イメージだとこんな感じ。赤が翼状片の病変、黄色が正常な結膜です。


次に、黒目(角膜)を覆っている病変(翼状片頭部)を、ピンセットで引っ張って剥ぎ取ります。少し残った組織も、ナイフを使って削ぎ落とします。


奥の方へと続く病変(翼状片体部)を、引っ張り出すようにできるだけ切除をします。


病変の多くが除去され、キレイになりました。
ピンク矢印の先は内直筋という眼球を動かす筋肉です。実は、病変(翼状片体部)はもっと奥の方まで続いているのですが、あまり頑張って、出来物をとろうとしすると、誤って内直筋を傷つけてしまう可能性があります。翼状片は全ての組織を取り除くことは不可能で、安全に取れる部分だけ切除をします。


奥の方に残った病気が、また大きくなって黒目の方に伸びてくると、再発となります。年齢や性別、病気の大きさなどから、再発率が高そうな場合には、マイトマイシンと呼ばれる再発予防剤(抗癌薬)をしみこませたスポンジ(水色矢印)を、1分?3分程度、接触させます。

病変を除去した部分は、粘膜がなくなり、白目(強膜)が剥き出しの状態となってしまいます。強膜が剥き出しだと、バイキンによる感染が起こりやすくなったり、強膜を覆うために、翼状片が再発しやすくなったりするので、剥き出しになった白目(強膜)を、キレイな粘膜で覆う必要があります。(結膜弁移植

結膜弁移植には、
・周りの粘膜を引き寄せて縫い縮める方法(有茎弁移植)や、
・離れた粘膜を持ってきて貼りつけたり、縫いつける方法(遊離弁移植
があります。
当院では、術後の見た目のキレイさや、再発率の低下を目標として、主に遊離弁での手術を行っています。


黒目の上側の粘膜は、まぶたに覆われているために、何歳になってもキレイな粘膜が残っています。また、上方の結膜は、切除後に粘膜が再生するまでの時間も、まぶたに覆われており、バイキンによる感染が起こりにくいという利点があります。
緑矢印の部分の結膜をハサミで切開しています。


切除した結膜(遊離弁)です。これを写真右側の翼状片切除部(白いところ)に移植します。


剥き出しになっていた病変部に、糊で貼り付けをして、手術終了です。

だいたい局所麻酔で10分?15分程度。
今回の患者様は、少し大き目で15分かかりました。再発例では出血が多く、もっと長くなることもあります。
通常は日帰り手術で行う手術ですが、今回は、反対目の手術(白内障)も同時に行ったため入院となりました。
手術の費用は3割負担で15000円程度、1割だと5000円程度です。

翼状片をお持ちの方へ。
できれば、あんまり大きくなる前に手術をさせてくださいね。

結果報告だけ。

結膜炎のことを書く予定でしたが、
今日は、他院の眼科の先生とちょっと約束があり、先日の結果報告だけ。

退行性(老人性)眼瞼内反症(さかさまつげ)
年齢によって、下まぶたの皮膚や筋肉、靭帯が緩んでしまうことが原因でなる病気です。下まぶたの余分な皮膚や筋肉を切除して、縫い縮める手術を行います。
僕は眼輪筋縫縮という術式を好んで行うのですが、とっても完治率がよい方式で良いのですが、皮膚を切除する分、少し内出血が多かったり、抜糸が必要だったりするのが難点です。一昨日は最近雑誌で読んだ新しい術式を行ってみました。

左が手術前の逆さまつ毛ですが、右が本日です。
逆さまつ毛が治っています!下まぶたの皮下出血も少ないし、1週間後にはほとんどキレイになりそうな予感。Goodです[:グッド:]ペンレステープのおかげて、痛みも少なかったようだし、嬉しいです。
(白目が赤いのは、他の手術を同時に行ったためです。逆さまつ毛はついでの手術です。)

次は、とっても大きかった翼状片です。

左が手術前。瞳孔といって、茶目の中心の黒目にまでかかっています。
右が術後2日目の本日です。かなりキレイに取れています。白目が赤いのはだんだんとキレイになります。こちらの目はまだ白内障が残っているので、数ヵ月後に再手術です。同時に反対目の白内障手術をしていますが、術前0.02が、現在0.8まで改善しています。

翼状片は遅くとも、瞳孔(黒目の中心)にかかる前に手術をしてほしいです。癌でもなんでもそうですが、あまりに大きくなってから取るのは、大変です。あまりに大きくなった翼状片は、キレイに手術ができても不正乱視という目の歪みが残ってしまいます。そうすると、将来の白内障手術で、乱視用レンズが使えなかったりするなど、基本的に裸眼で運転免許証をとることがなどが難しくなります。
「もうちょっと、早く病院に来て下さいね。」
なんて言っていたら、今日また、新しい翼状片の女性が、

大きい・・・・・[:冷や汗:]

石岡市は重症の人が多いです。
白内障も0.1未満の人が毎週毎週いらっしゃいます・・・。

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 鉾田市)

翼状片

先日、翼状片の画像をupしましたが、今日も術後の方が3名いらっしゃったので載せてみます。

71歳女性 Hさん

手術後、まだ一週間なので出血したあとの赤みが強いです。

80歳男性 Nさん

5月18日手術 2回目の診察です。かなりキレイになっています。

76歳男性 Iさん

同じく5月18日手術 2回目の診察です。もともと血液がサラサラになるお薬を飲んでいたので、手術時の出血も多く、赤みがまだ少し残っています。
次回は1ヶ月後の診察ですが、おそらくキレイになっているかと。

今日も外来が混んでいたのですが、動眼神経麻痺という病気で、急にまぶたが下がったり、目が動かなくなったりする患者様がいらっしゃいました。糖尿病や、脳梗塞、脳動脈瘤などが原因となりますが、緊急で脳の検査をしなくてはならず、少しドタバタしました。

夜は県内でご開業されている眼科の先生と食事にいきます。
他大学の先生で、僕とは違った手術手技など、いつもいろいろ教えてもらえるので楽しみです。

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 鉾田市 茨城町)

疲れました・・・。

今日は、
・白内障手術 6件
・眼瞼腫瘍切除 1件(悪性の疑い)
・翼状片切除術 1件(他院での手術後再発)
・網膜硝子体手術 4件
 内訳・裂孔原性網膜剥離
   ・網膜中心静脈分枝閉塞症に伴う黄斑浮腫
   ・糖尿病網膜症
   ・シリコンオイル抜去(以前の手術の後療法)
みなさん、特に問題なく終わりましたが、ちょっと疲れました・・・[:しょんぼり:]

これから、今日の外来の書類を片付けないと・・・。
今日は午前の外来が64名と多かったです。
パパは遅くなるので、子供たちには寝ていてもらおう。

とはいっても、自分ではじめた事のなので、たまには病気のことを書こう[:見る:]
自分に厳しく、人にやさしく[:グッド:]

翼状片(よくじょうへん)
翼状変は、白目の部分の粘膜(結膜)の組織が、腫瘍性に増大し、黒目(角膜)との境を越えて、黒目のうえに侵入してきてしまう病気です。
小さいものは、放っておいてもかまいませんが、大きくなると視力障害の原因になったり、こすれて痛みなどの原因となるため、大きくなっていく傾向が明らかな場合には治療することが望まれます。
治療法は手術のみで、手術によって切除します。

目薬と注射による局所麻酔で、当院ではほとんどの症例が15分位の手術です。手術は黒目の上のできものを削りとって、出来物は白目の奥の方までつながっているので、出来る限り除去します。
除去した部分は白目(強膜)が露出してしまうので、正常な結膜を周囲から集めたり、別の部分から取ってくるなどして、正常な結膜で強膜を覆えば終了です。
手術は、切ったり縫ったりというもので、白内障の手術に比べるとやや痛みがあり、どうしても血が出ます。眼科では白内障手術を代表に、ほとんど出血しない手術が多いので、出血の多い手術はちょっと嫌いな先生が多いのではないかと思います。
手術の一番の合併症は、翼状変の再発になります。悪い組織が十分に除去できなかったり、正常な粘膜できちんと覆えなかった場合に起こるため、手術は早ければいいとうい部類のものではなく、丁寧に行う事が重要です。

実は、僕も翼状片の手術はあまり好きではなかったのですが、最近はちょっと視点を変えて、「いかにキレイにするか[:花:]」に、こだわるようにしてから、ちょっと楽しめるようになってきました。(美容外科??)
治すのは当たり前、術後のキズが出来るだけ残らないように。という目標で、翼状片の除去のみならず、赤身の強い粘膜の血管を丁寧に除去したり、いろいろ工夫しています。
基本的には遊離弁という、病気と関係のない場所の粘膜を使用して手術をしています。まだ、開院一年なので少ないのは当たりまえですが、一応再発例はゼロです。

本日いらした、63歳女性です。K.t.さん

1月に両眼の翼状片、4月に両眼の白内障手術をしています。かなりキレイになったと。視力も裸眼で運転できます。

昨日いらした64歳男性です。K.I.さん

4月に両眼の翼状片手術です。約2ヶ月ですが、かなりキレイかなと。

本日いらした64歳女性です。A.H.さん


先週6月1日に左目の翼状片手術を行いました。まだ一週間しか経ってないわりにはキレイかなと。今後さらにキレイになっていきます。

特に女性は、赤いのが嫌とかで手術をされる方がおおいので、できるだけご期待に添えるように頑張っていきたいと思います。

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 鉾田市 茨城町)

翼状片

今日は、6名の患者様で以下の手術を行いました。
・白内障手術 8件
・翼状片切除術 1件

お昼に手術を行い、夕方から外来を再開するのですが、翼状片が結構大きく、思ったより時間がかかって、全部で2時間程度かかってしまい、外来に遅刻するかと思いましたが、ギリギリセーフでした。

翼状片(よくじょうへん)
翼状片とは、白目(強膜)の表面を覆っている、結膜と呼ばれる組織が過剰に増殖し、黒目(角膜)に進入してきてしまう病気です。
明確な原因は不明ですが、加齢に伴って50歳以降の中高齢者に多くみられ、また、紫外線や喫煙がリスクの一因となることが分かっています。その他に、外傷などが原因となることもあります。

症状としては、初期からおこるものとして順に以下のようなことがあります。
?充血、ゴロゴロ、メヤニが出やすい
?乱視が強くなり、視力が下がる
?瞳孔(黒目の中心部)にまでかかると、ほとんど見えなくなる

小さいものは自覚症状がなければ放っておいてもいいですが、大きくなったり、視力に影響するものは、早めに治療をする事が望ましいようです。
(大きいものをとるより、小さいうちにとった方が、手術が楽です。)

治療法は手術で切除します。
手術自体は簡単で多くの場合が15分程度なのですが、大きい症例や再発例などでは大変な手術になる場合もあります。
手術でもっとも困るのは、再発してしまうことです。再発した場合は再手術で切除しますが、再発のたびに癒着がひどくなるなどします。
男性・喫煙者・若い患者様・大きな病変などが再発しやすい因子となります。
現在は手術の方法も各種開発が進んでいますので、担当の医師とよく相談されるのがよいでしょう。

本日の患者様は、63歳男性で、喫煙あり、やや大きめの翼状片で、内部の癒着が強く眼球運動障害(目の動きが悪い)がある患者様で、手術がやや大変でした。翼状片切除に加え、再発防止薬のマイトマイシン併用、切除後の再建は遊離結膜弁移植(生体糊使用)という術式で、20分程度かかりました。
最終的にはかなりキレイになっており、ご満足いただけると思います。
今日の手術前の写真です。

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 鉾田市)