アイパッチ

日本ガンバレ!
オリンピックのせいで、更新が鈍っています。なんて言い訳?
サッカーを見たいのですが、明日のことを考えると・・・。時差が憎い。

今日のお昼は、
翼状片 2件、眼瞼下垂症 2件、白内障手術 3件
無事に終わっています。

アイパッチ
アイ(eye:目)と、パッチ(patch:つぎあて/絆創膏)
アイパッチは、目にはる絆創膏のようなものです。

以前のブログで書いたのですが、
遠視や乱視などの屈折異常や、斜視が原因となって、視力の左右差や弱視が出現した場合に、
よく見えるほうの健康な目を遮へいし、よく見えないほうの弱視の目を強制的に使用させることで視力の発達をうながす治療法です。
多くは1日1時間とか2時間とか、 病状によってですが、短いと30分、長いと半日近くも。良いほうの目にアイパッチを貼って、弱視の目だけで生活をすることになります。

こんなシールを貼るのですが、お子さんにとっても、お母さんにとっても少なからずストレスがかかります。

嫌がるお子さんも沢山見てきたので、「申し訳ないのですが、お子さんの将来のために。」「どうしても必要だから頑張ってね。」と、僕の説明も、なんとなく申し訳ない。という雰囲気が出てしまうのですが、

先週の金曜日?木曜日かな?に受診してくれたお子さんから、とっても嬉しいプレゼントが[:プレゼント:]

毎日、アイパッチに絵を書いて頑張ってくれているのですが、それをファイルにいれて、ノートにしたものを見せてくれました。これはほんの一部で、他にもお母さんが書いてくれたページなども沢山!!
診察室でも「楽しいよ!」と、家族で頑張ってくれるようで本当にうれしく思いました[:ハート:]


ちなみに、これは以前に記載した、当院のORTが自主的に作ってくれたアイパッチカレンダーです。外来でカレンダーとシールを渡してくれているようですが、ちゃんと治療で来ていることが確認できて助かります。


今、病院に置いてあったものだけ写真に撮ってみたのですが、幼児用・小児用で大きさが違うものや、眼鏡に付ける布製のアイパッチ、他にも、白だけじゃなく、肌色のパッチ、粘着力が強めのもの(すぐ取ってしまう子)、弱めのもの(肌が弱い子・痛がる子)。
様々なアイパッチが販売されています。
(当院では、アイパッチは販売しておりません。近隣の薬局店様などでのご購入になります。最近はインターネットでも購入可能です。)

どうにか工夫をして、
アイパッチが、ツライ治療ではなく、少しでも楽しんで治療をしてもらえるといいな。と思います。

斜視(しゃし)

今日は比較的涼しくて、すごしやすい日でしたね[:曇り:]

斜視(しゃし)
健常な人間は両方の目を使って、物を見ることが可能です。
融像(ゆうぞう)といって、頭のなかで左右の映像を一つにまとめることで、片目で見る場合よりも、より立体的に見るなどの機能を持っています。
めだまの外側には、目を動かすための筋肉が付いているのですが、上についている筋肉が収縮すると、眼球が上を向きます。一つの眼球には「上・下・右・左・斜め・斜め」の6つ方向に動かすための筋肉がついています。
両目で見た方が、良く見えますので、人間はこの6つの筋肉、両眼で12の筋肉を巧みにコントロールして、上下左右、どの方向をみても、両目の視線が同じ向きになるようになっています。

この筋肉に何らかの異常があって、左右のバランスが取れなくなると、左右の目の向きが同じ方向でいられなくなります。このような場合を斜視といいます。(偏見的な言い方としては、昔はロンドン・パリ、ロンパリなどと言われる人もいました。)

12個も筋肉があるので、一口に斜視と言っても、様々です。
例えば、一番多いのは外斜視(がいしゃし)と言って、目線が左右外側に向いてるものです。テレビの芸能人などでも、よくみかけるタイプです。
内側に向いてしまうものは内斜視(ないしゃし)、上下にずれる上下斜視などというものもありますし、上を見たときや下を見たときで斜視の形が変わるもの等もあります。(V型斜視)


上から外斜視、内斜視、外斜視+上下斜視の症例です。

斜視、筋肉のバランスが取れなくなる原因としては、
?生まれつき(先天性):もともと外を向く筋肉の方が強いなど。
?加齢:筋力が弱まる
?脳梗塞や、脳動脈瘤(筋肉への信号が届かなくなる)
?甲状腺機能の異常(筋肉や周囲が腫れる)
?外傷:(筋肉の断裂、眼窩底骨折;筋肉が骨折部に挟まる)
?強い屈折異常(特に遠視での調節性内斜視、強度近視では固定内斜視)
?重症筋無力症など、筋肉の働きが悪くなる病気
他にも、様々な原因があります。

斜視の症状としては、
物が2重に見える。(複視:ふくし)
・物が見にくい(複視または、片目での視力になるため)
・疲れやすい
・見栄えが悪い
などがあります。

大人になってから、外傷や脳梗塞などが原因で斜視がでると、物が2重に見えて、非常にツライ症状となるのですが、子供のころから斜視があったり、長い年月斜視があったりすると、脳でコントロールして、一方の目の映像を遮断するようになります。(視線が外れている方は、目を開けているのに、全く見えていない状態になります。)

根本的な治療法は手術になります。
他には、プリズムメガネといって、特殊なメガネをかけることで、症状を和らげる方法などもあります。(脳梗塞や筋無力症、甲状腺などが原因の場合は、そちらの治療が優先されます。)

手術では、目を動かす筋肉を一度切り離して、少し離れた場所に縫いつけたりして、筋力を増大させたり、減弱させたりします。

7月13日に外斜視の手術をした男性が本日いらっしゃいました。

画面の右側が黒目(角膜)です。中央にあるやや白くてつやっぽい組織が、内直筋といって、眼球を内側に引っ張る筋肉です。筋肉の下に金属製の棒を入れるような形で、筋肉を分離・露出しています。


筋肉が眼球にくっついている部位付近で、一度切り離してしまいます。


糸を使って、筋肉を元の場所より、少しずらした場所に縫いつけています。


術後1週間での本日の写真です。まっすぐな視線になっています。
写真で左側の目を手術しており、まだ少し赤いですが、徐々にキレイに戻ります。手術後初めて診たのですが、とても上手くいっており安心しました。

注射による麻酔(局所麻酔)で行い、一つの筋肉を移動するのに、だいたい10?15分くらいかかります。今回は右目の内側の筋肉と、外側の筋肉を一緒に移動し、30分弱かかりました。
眼科の手術の中では、少し出血が多かったり、痛みがそれなりにあったりする手術になりますが、術後は喜んで頂けることが多い手術です。

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 鉾田市)

学校健診 弱視

今日の午前の外来はちょうど50名で、もう終わってしまいました。
午後からは手術が9件で以下の予定です。
・白内障手術 6件(上方切開2,耳側2,斜方2,乱視レンズ2)
・緑内障手術(トラベクレクトミー)1件
・翼状片手術 2件

条例などで、春になると学校健診で視力検査が行われます。
当院は、手術目的の方が多く、やや高齢の患者様が多い病院なのですが、今週は子供さんに沢山受診して頂いています。月曜日は80名の外来のうち、10名以上がお子様の視力検査でした。

屈折性弱視(くっせつせいじゃくし)
弱視とは視力が上手に発達しなかったために、大人になって、眼鏡をかけても視力が出ない状態を言います。先天性の白内障や網膜の病気など、重篤な病気が原因のことも稀にはありますが、斜視や、屈折性弱視と呼ばれるものが大多数の原因を占めています。

近視や遠視、乱視などを屈折異常と呼びます。大人になって屈折異常があっても、眼鏡やコンタクトレンズを使用することで、ほとんどの方は問題ない視力が得られます。そのような方は、小さい頃には屈折異常がなかったか、あっても軽いものであったと推測できます。

実は、生まれたばかりの赤ちゃんは、明るいか暗いかぐらいしか分かりません。その後、きちんと物が見える状態を保つことで、0.01から1.0以上に向かって視力がどんどん伸びていきます。4?5歳くらいになるとほとんどの子が1.0以上の視力を獲得します。
このように視力が発達するためには、網膜に鮮明な映像をあわせることが必要です。
多くのお子さんは、屈折異常がない、またはあっても軽度なものなので、何もしなくても視力が勝手に発達しますが、子供の時から、強い遠視や乱視などの屈折異常がある場合には、ぼやけた映像したしか目の奥に届かないため、網膜や視神経、その後の脳神経なども、ぼやけた映像を理解・処理できる程度までにしか発達しません。このような場合を屈折性弱視と呼びます。

視力が伸びる・発達するのは6?7歳程度までと言われており、その時点で眼鏡をかけても1.0が見えない場合は、一生涯眼鏡をかけても1.0見えないということになります。つまり弱視です。

もし、強い屈折異常がみつかれば、子供のころに網膜にピントを合わせるような眼鏡をかけることで弱視を回避、視力を育てることができます。
重度の弱視は3歳児検診で引っかかることが多く、その場合、6?7歳までの3?4年という長い治療期間が確保できます。軽度や中程度の弱視は入学前検診で引っかかることが多いですが、やはり1?2年の治療期間が持てるため、この2つの検診で引っかかった場合、現在の医学ではほとんどの屈折性弱視を治療することが可能になっています。

実はこの1週間以内で、学校健診で視力低下を指摘され初診となったうち、7?9歳のお子様3名が屈折性弱視でした。もちろん治療は行ってはみますが、すでに視力が発達する限界の時期(臨界期)を超えているのであれば、残念ながら視力の改善は期待できません。
良く勘違いされてしまうのですが、弱視は眼鏡をかけても見えないのです
例えば、眼鏡をかけても0.7が見えないのであれば、一生涯運転免許は取れないということです。
その3名は、みさなん、3歳児検診や入学前検診で異常を指摘されたのに、それぞれ理由はあるのでしょうが、眼科にはかかって頂けなかったようです。

お子さんに、「君は運転はできない可能性が高い。こういう職業はあきらめましょう」と伝えるのはとても辛いです。屈折性弱視は治せる病気です。検診で異常を指摘されたら必ず受診するようにしましょう。

学校健診の紙なども、「視力が不良です。眼科の専門医の診察をお勧めします。」などとしか書かれていないものが多いですが、「将来、運転免許証が取得できない可能性があります。診察をお勧めします。」とかに変えた方が、リアリティーがあって受診してくれる親御さんが増えそうですが、どうだろう。

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
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ORT(視能訓練士)

視能訓練士(ORT)とは、視力や視野検査、小児の斜視や弱視などの検査・診療を行うための、国家資格をもった眼科専門のスペシャリストで、当院には現在3名のスタッフが働いています。視力や視野などの視機能を正しく測定、評価し、また育てるということが仕事になります。

今日は嬉しいことがありました[:楽しい:]

子供に斜視(左右の目線がずれている)や、遠視や乱視などの屈折異常に左右差がある場合には、片側の優秀な目に頼って、反対側の目の視力が成長が止まったり、機能が落ちていってしまうことがあります。このような視力が弱いほうの目を弱視と呼び、大人になってからも、メガネをかけてもぼんやりしか見えない。といったことが起こります。

眼科では、このような小児の弱視の治療法の一つとして、アイパッチがあります。
よく見えるほうの健康な目を遮へいし、よく見えないほうの弱視の目を強制的に使用させることで視力の発達をうながす治療法です。
1日に数時間、よいほうの目にシール(絆創膏のようなもの)を貼って、弱視の目だけで生活をすることになります。重症のお子様では、ぼんやりとしか見えない状態となるので、治療自体をストレスに感じてしまうことがあります。とても残念なことですが、お友達に「変だね」などと、心ない言葉をかけられたというお子さんもいらっしゃいました。

しかし、治療を行わなければ、将来的に運転免許が取れない、職業の選択に不利になることがあるなどの問題が起こりますので、医療側としてもご両親としても、どうにか治療を続けてくれるように工夫をします。
・パッチを貼ったら、とにかく褒める「カッコいいね!偉いね!」
・アイパッチ(シール)に、アンパンマンの絵を描く
など様々なことをします。

今日は当院のORTが、「こんなの作ってみました。」と、僕に自分で作成した表を見せてくれました。表には、カレンダー状の枠組みや、シールを貼る部位が記載されていました。アイパッチがきちんとできたら、時間を記入して、シールを貼るというものです。子供はシールが大好きです。この表やシールを使うことで治療がうまくいく子供さんが増えるといいなと思います。

視能訓練士(ORT)というと、眼科の検査を行う人というイメージが大きく、実際にそうとしか思っていないORTもいます。ORTのもうひとつの重要な仕事、視機能育てるということを、自分たちで積極的に考えて、行動をしたことが、とても嬉しいと感じた1日でした[:OK:]

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