今日は以下の手術を行いました。
・白内障手術 10件
・網膜硝子体手術(茎離断)2件
(黄斑前膜1件、増殖糖尿病網膜症1件)
みなさん問題なく終わっています。
最後の症例は、未治療の糖尿病なのですが、ちょっと変な症例でした。
小さな白いカサブタが、眼底の広範囲にまんべんなく張っていて、術後にビデオで数えると18か所も。手術でキレイに取れたため、うつ伏せなども必要ありませんが、一つ一つ削り取るような方法で45分くらいかかりました。疲れた。
しかも、目の中がカサブタだらけなのに、中心部には硝子体出血は少なくて、黄斑浮腫がそれなりにあるのですが、手術前の中心視力はまだ0.9もあるのです。(反対の目は、初診時からかなりヒドイ状態で、良好な視力は望めません。)
今回の手術では、とにかく失明を防いで、上手くいけば運転免許の0.7を温存したいというのが最大の目標です。
今日のような手術では失明を防ぐことが目的で、視力の回復が得られるわけではありません。手術がどんなに上手くいっても、手術後に「あまり見えないね・・・。」とか言われる事が多く、眼科医としてはガッカリすることがほとんどです。
同じような手術をする場合には、「今回の手術は回復が目的ではありません。失明を防ぐために行うもので、むしろ手術前より少し見えにくくなります。それでも失明を防ぐためには必要です。」と、手術の前に何度も説明しているつもりです。
すると、みなさんその場では「分かった。」とおっしゃるのですが、「手術をすれば見えるようになる。」という概念が強い患者様が少なくありません。
例えば、手術前が視力0.2、手術後が0.4と、むしろ視力が改善していても、「まだすっきり見えない。」「かすむ」などと言われることも多々あります。
こちらからすると、「手術は成功して、約束通り失明を防いだ!」と充実した気持ちでも、「まだ見にくい。」なんて言われると、「まだ見えないって、現状維持が目標で、それ以上良くならないって、何度も言ってますよ・・・。」と、ガッカリしてしまいます。
白内障の手術はみんな喜んでくれるのですが、糖尿病網膜症や、網膜中心静脈閉塞症での硝子体手術、緑内障などは、現状維持が目標の事も多く(病状によって様々ですが)、基本的にあまり喜ばれないのですよね・・・。網膜剥離や、黄斑円孔でも、どんなに上手くいっても、完全に元の状態に戻ることはありえないと説明してから手術をするのですが、「少しゆがむ」「少し暗い」と、「何で治せないんだ?」という剣幕でおっしゃる方も・・・。
でも、喜ばれないと分かっていても、誰かが引き受けなければいけません。嫌な思いをしても、もっと悪くなったり、失明する可能性があるものを放っておいて、実際に失明されてしまったら、もっと嫌な気分なのかな?と、僕は思ってしまうので、なんでも引き受けてしまうのですが、たまには、ガッカリして疲れてしまう事もあります。
今日のブログはグチになってしまいました。
朝に、芸能人の旦那様が、「網膜中心静脈閉塞症で失明」というニュースがあり、もちろん当院とは関係ありませんが、「手術をするたびに悪くなったという印象」なんてコメントがあり、きっとその担当医も全力でやったろうに。と思うと、ちょっとやるせない気持ちになってしまいまして。
すべての病気が治せるわけではありません。元に戻るわけでもありません。喜ばれないと分かっていても、出来る限りの治療をしてあげたい。と、医師はきっとみんなそう思っているはず。
さっき、その芸能人のブログをみてみましたが、「手術のせいで悪くなった!」という書き方ではありませんでしたが、その文章だけを選んで報道するマスコミの取り上げ方に問題があるのでしょうか。面白く報道すればいいというものではありません。
同じ中心静脈閉塞症の患者様が、この報道を見て「手術したら失明するんだ」と思ってしまったらどうするのでしょう?元には戻らなくても、光を残せる可能性のある目を治療できなくなってしまう可能性があるとは考えなかったのでしょうか。
今日は少し感情的なブログになってしまい、申し訳ありません。最後まで読んで頂きありがとうございます。
ちなみに、僕の妻のおばあちゃんも、3年前に網膜中心静脈閉塞症になってしまい、硝子体手術も緑内障手術もして。その後も何回もアバスチンの注射をして、どうにか最近は落ち着いて0.3を保っています。出来ることは全部やったつもりですし、もっと見えるように、どうにかしてあげたいけど。
どうにもできないこともあるのですよね。無力・・・。