ぶどう膜炎? 再発と経過観察

落ち込んでもいられないし、またバリバリ仕事頑張ります!
きっと祖母もその方が。

今日の午後の手術は以下の通りです。
・翼状片手術 1件
・白内障手術 12件
・眼内レンズ補正(他院術後)1件
・網膜硝子体手術 5件
 (硝子体混濁1件、黄斑前膜2件、網膜中心静脈分枝閉塞症後の黄斑浮腫1件、増殖糖尿病網膜症・茎離断1件)
みなさん無事に終わりました。

さて、ぶどう膜炎の説明、一般的な内容としては最後です。
ぶどう膜炎? 再発と経過観察
ぶどう膜炎??で記載しましたが、多くのぶどう膜炎では、ステロイドによる治療が主体になります。ぶどう膜に起こってしまった炎症を、ステロイド剤で炎症を抑えて、病気を落ち着かせることが治療で、炎症を起こした原因をなくしてしまうわけではありません。
なので、ぶどう膜炎は治療によって「治った。なくなった。」っというものではなく、「落ち着いた。」という状態に持っていくことが目標です。
(リウマチや、膠原病、バセドウ病なども同じで、治す。というよりも、落ち着かせる。とう病気です。)

もちろん、一回の治療で落ち着いてしまい、その後は一生涯問題を起こさない症例も数多くあります。ただし、残念ながら、一度は治療で落ち着いても、再発を起こしてしまう症例も少なくはありません。

なので、昔から、どのようにすれば再発を少なくできるか?と、過去の先生方が英知を絞って研究してきたのです。
初期治療はこうするのが成績がいい。次の治療はこうするのがいい。
ぶどう膜炎の種類によって、患者さんの年齢や状態によって、実はやるべき治療というのは、かなりマニュアル化されており、現代の医学では多くの医師が同じ治療を行っているのです(そのはずです。もちろん、重症例などで治療法に悩む場合も稀にはありますが。)

初期治療で、目薬のみで対応するのか、飲み薬や、点滴(ステロイドパルス療法)を選ぶのか。病気によっても異なりますが、そのあたりは担当の医師の指示に従ってください。はじめは患者様も、「痛み、視力低下、充血」など症状がツライので、治療にも協力的で、ほとんどの場合では問題が起こりません。
問題になるのは、その後の治療なのです。
ほとんどのぶどう膜炎では、より濃度の薄い目薬に変更したり、回数を減らしたり。と、ゆっくりとステロイド剤を減量していくことが必要です。
軽いものでは、1?2ヶ月で治療を終える場合もありますが、重症な病態では、何年もかけて薬を減らしていく場合もあるのです。それが、再発をさせない・再発率を減らせることが分かっているからです。

残念ながら、少し症状が改善すると、「治ってしまった。」と、勘違いをされるのか、目薬をつけ忘れるようになってしまったり、通院を中断してしまう場合もあるのです。それで、結局、再発してしまい、さらに悪い状態になってしまう。そんな患者様を何度も何度もみてきました。
きちんと受診するように言っているつもりですが、僕の説明が足りなかったのかのかもしれませんね。でも、中断後に悪い状態になって戻ってくる患者様をみると、どうにも嫌な気持ちで・・・。

患者様にお願いです。
ぶどう膜炎は、きちんと治療しないと再発しうる病気です。自己判断で治療や通院を中断しないようにしましょう。
(当院は出来るだけ、通院回数などを減らすように努力しており、通院回数などは少ない方だと思いますよ。)

当院は、県内外からぶどう膜炎の紹介を受けており、ステロイドパルス療法や、免疫抑制剤が必要になるような重症の患者様も多数おられます。それでも、ステロイド注射や緑内障手術などの進歩もあり、これまで失明に至った患者様は誰一人おりません。まれに、ぶどう膜炎⇒失明と、過度に不安になられる方がおりますが、失明に至ることは殆どない時代になってきています。あまり不安にならずに、治療を継続して受けるように心がけましょう。

ぶどう膜炎? 治療 その2

今日は以下の手術を施行しました。
・翼状片手術 1件
・白内障手術 9件
・緑内障手術(トラベクレクトミー) 1件
・網膜硝子体手術 2件
 (黄斑前膜1件、網膜中心静脈分枝閉塞症にともなう黄斑浮腫1件)
無事に終わりました。
昨日、市内の病院様から「頭痛・嘔吐」で困っている患者様がいると電話を頂き、往診にて重度の緑内障(開放隅角)を診断。腎臓が悪く点滴などは出来ないので、目薬を沢山処方しました。本日はどうにか当院までいらして頂いたのですが、眼圧は50(正常10?20)と高いままです。視力もあかりが分かるか分からないか?というレベルで、緊急転院・手術をさせて頂きました。
内科の先生が「頭痛や嘔吐」で、頭に異常がない場合には緑内障?眼科か?という考えをお持ちの先生で助かりました。
頭痛や嘔吐は脳出血など脳の問題だけではなく、緑内障でも起こります。頭が痛いのに眼科?と、変に感じるかもしれませんが、ちょっと覚えておいてくださいね!

ぶどう膜炎?
治療 その2

免疫抑制剤
ぶどう膜炎?では、ステロイドと呼ばれる免疫・炎症を抑える薬について記載しました。ぶどう膜炎の治療では、ほとんどの症例でステロイドの適正使用により、コントロールが可能(落ち着かせることができる)ですが、極一部の重症例の患者様で、ステロイドで落ち着かない場合や、再発を繰り返してしまう場合には、別の種類の免疫を抑える薬を使用します。
眼科では、シクロスポリン(ネオーラル・サンディミュン)という薬が多く使用されます。ステロイドと同様に、免疫反応・炎症を抑えるため、バイ菌に感染しやすくなってしまうリスクがあります。特に、シクロスポリンは腎臓の機能を障害してしまう可能性のある薬で、内服中は、数ヶ月に1回など定期的に血液検査で体の中のシクロスポリンの濃度(血中濃度)を調べる必要があります。

モノクローナル抗体製剤
ステロイドや免疫抑制剤は、とても有用な薬ですが、体の全ての炎症を抑えてしまう薬であるため、例えばバイ菌に対する抵抗力が落ちてしまうなどの副作用が目立ちます。抗モノクローナル抗体製剤は、炎症を全体的に抑制するのではなく、炎症にかかわる極一部のホルモンを抑制する薬です。
発売後、数年以内のものがほとんどで新しい薬です。現在は厳密な条件を満たすごく一部の症例に限って使用されています。眼科では、ベーチェット病でのぶどう膜炎に対するレミケードという薬が有名です(なんと一瓶、10万円)。
(一般の患者様に分かりやすい表現を心がけています。一部専門的にはどうかと思う箇所もありますが、お許しください。)
レミケードの点滴は、膠原病内科の先生との連携が必要であり、当院で治療対象の方は、近隣の知り合いの先生に点滴をお願いしています。

瞳孔管理
瞳孔は茶目(虹彩)で作られ、目の中に入る光の量を加減する働きを持っています。ぶどう膜炎?で記載しましたが、虹彩炎をきちんと治療しないと、瞳孔が小さくなったまま、癒着して開かなくなってしまう場合があります。小さくなったまま癒着をしてしまうと、光が入らず暗い所で見えない。目の中の診察が出来なくなってしまう。重度の緑内障を起こしてしまう。などが起こります。
ステロイドを使用して、炎症を落ち着かせるのはもちろんですが、炎症が強く癒着の可能性がある症例では、瞳孔を開く薬(散瞳薬)を使用して、瞳孔を運動させる必要があります。ミドリンPアトロピンという目薬、ボスミンとう注射薬などが使われます。

他院様からの紹介で、ミドリンPを使っていたのに、瞳孔が癒着してしまったという患者様です。左が紹介時、右は注射をうったあとです。わずかな癒着は残っていますが、なんとか間にあいました。癒着してから時間が経ってしまうと、薬の力ではどうにもできなくなってしまいます。ぶどう膜炎は早期からきちんと治療することが重要です。

全身管理
炎症が目の中(ぶどう膜炎)だけでなく、体の病気が原因になっている場合は、その治療も必要です。主に内科の先生と相談して頂くことになりますが、沢山の病気があるので、今回は省略させて下さい。

今日も読んで頂き、ありがとうございました。

ぶどう膜炎? 治療 その1 ステロイド

今日は以下の手術を行いました。
・白内障手術 7件
・緑内障手術(流出路再建)2件
・眼内レンズ整復 1件(他院にて20年前に手術後)
最後の人が難しかった・・・。外来も少し遅れてしまいました。

ぶどう膜炎?
治療 その1 ステロイド

ぶどう膜炎は、体に存在する免疫反応によって、ぶどう膜(虹彩、毛様体、脈絡膜)に炎症が起こる病気だと書きました。

ぶどう膜炎の治療は、「熱があるから解熱剤を飲もう。」というのと似ていて、「ぶどう膜に炎症があるから、炎症を抑えよう。」というものになります。多くのぶどう膜炎の治療には、ステロイド薬という炎症を抑える薬を使います。

ステロイド薬
ステロイドは、腎臓の上にある副腎という場所で作られる、もともと体にあるホルモンです。体にかかるストレスや負担、炎症などを抑える働きがあります。非常に強く、炎症を抑える効果があり、ぶどう膜炎だけではなく、解熱、鎮痛、喘息、膠原病、アトピー、湿疹などなど、とにかく全身の病気に使用され、大活躍です。
もともと自分の体のなかで作られるステロイドですが、ぶどう膜炎や膠原病などで、通常の状態よりも、病的に白血球の働きが強くなってしまったり、炎症が強くなった場合には、自分で産生する量では炎症を止める事ができません。そのような炎症がコントロールできない場合に、薬としてステロイド剤を使用することで、炎症を止めよう。というものです。
強力に炎症を止めてくれるため、様々な病気に使用されますが、その分、副作用もたくさんあります。

ステロイド剤の主な副作用
?感染(バイ菌)に弱くなります。
 もともと免疫や炎症は、外敵か体を守るための反応です。病気を抑えるためとはいえ、ステロイドで炎症や免疫力を抑えれば、バイ菌にかかりやすくなります。点滴や大量に内服した場合には、肺炎などに気をつけなくてはいけません。
?緑内障・白内障
 眼科的には房水の出口に作用するなどして、眼圧が上がり、緑内障を引き起こしてしまう場合があります。緑内障を起こしやすい家系や体質がありますが、ステロイド薬の使用中は、定期的に眼圧を測る必要があります。長い期間使用した場合には白内障の進行につながることもあります。
?体への副作用
点眼薬のみでは起こりませんが、内服や点滴でステロイドを使用した場合には、糖尿病、胃潰瘍、骨粗しょう症、高血圧、高脂血症、体重増加、筋力低下、精神症状など、様々な副作用が起こりえます。

ぶどう膜炎でのステロイド剤
眼科で主に使用するステロイド剤の使用方法には、主に4つあります。
?点眼薬、?注射薬、?内服薬、?大量点滴(ステロイドパルス)

?点眼薬
 主に、図の緑矢印の部分(虹彩炎)、目の前の方の部分の炎症を抑えるために使用します。ぶどう膜炎の多くは、虹彩炎を伴っているため、ほとんどの患者様が使用します。フルメトロンという目薬や、より強力なリンデロンという目薬が有名です(ジェネリック医薬品では名前が変わります)。副作用は、上記のとおり、バイ菌への感染に弱くなるリスクがあり、多くの場合で抗生物質の点眼薬を併用します。角膜にキズがつく場合や、また、全ての治療に起こりえますが、緑内障を引き起こすことがあり、使用中は定期検査が必要です。
?注射
 注射剤は点眼薬に比べ強力で、デカドロンという注射剤を白目の部分(結膜)に注射をしたり、ケナコルトという注射剤を眼球の後方(テノン嚢下)に注射をしたりします。特に、ケナコルトはかなり強力に、長期(数ヶ月)に炎症を抑える効果があり、近年、治療に使用されることが多くなってきました。当院でも、今まで飲み薬が必要だった症例でも注射薬だけで炎症を抑える事が出来る症例が増えており、たくさんの患者様の治療に役立っています。
点眼薬は虹彩炎(目の前の方の炎症)を抑える事が出来ますが、眼球後方には成分が届かないため、上の図の青矢印(毛様体)、赤矢印(脈絡膜)の炎症まで抑える必要がある場合には、注射薬などが必要になります。
副作用は、やはり感染や、緑内障のリスクになります。
特に注射が上手くできずに、眼球の奥の方ではなく、前の方に薬が漏れてしまうと、急激な眼圧上昇を起こすことがあり、注意が必要です。
(当院では年に数百件の注射を施行していますが、これまで軽度の眼圧上昇にて点眼薬を1剤使う程度の症例はありますが、内服薬や手術等が必要になる眼圧上昇を起こした症例は1例もありません。)

?内服薬
 内服薬は血流に乗って全身の臓器にいきわたるため、注射のように眼球全体への効果が期待できます。ただしその分、糖尿病、胃潰瘍、骨粗しょう症、高血圧、高脂血症、体重増加、筋力低下、精神症状など、全身への副作用も起こりえます。プレドニンという少し苦い薬が有名で、眼科では朝に1錠?重症例では8錠程度を内服します。数ヶ月以上の長期間内服する場合には、骨粗しょう症の予防薬や、定期的な血液検査が必須になります。(たまに何ヶ月とか何年も内服しているのに、骨粗しょう症の予防をしていない症例に出会ったりして、ビックリする事があります。)
また、眼科のためとはいえ、ステロイド剤を飲んでしまうと、ぶどう膜炎の原因となる疾患の炎症も抑えられてしまう事が多く、内服薬を開始する場合には、血液検査や全身の検査を済ませて、出来る限り原因疾患の究明を済ませるべきです。(手術後など、あきらかにぶどう膜炎の原因が分かっている場合には、その限りではありません)
?大量点滴(ステロイドパルス療法)
 その名の通り、ステロイド剤を大量に点滴で体に注入します。例えば、上記の内服薬プレドニンが1錠5mgだとすると、点滴では1000mg、200錠に匹敵する量を一気に流し込みます。多くの場合、3日間連続で点滴をします。強力に炎症を抑える場合に行う治療法で、眼科では原田病、癌関連ぶどう膜炎、ぶどう膜炎ではないですが視神経炎や甲状腺眼症などで行われます。
血圧変動や心臓などへの負担、感染症、高齢者では神経症状などの副作用が発現するリスクがあり、一般的には入院での治療が望まれます。

今日も最後までお読み頂きありがとうございます。
ちょっと風邪っぽいので、もう寝ます。
明日までに治さないと。お休みなさい。

ぶどう膜炎? 原因と全身の検査 その2

今日もつくば市から網膜剥離の紹介です。

写真は網膜の断裂部(裂孔)ですが、すでに黄斑も剥がれた症例で、1.0への回復は難しいようです。10日以上まえから視野が欠けていたようで・・・。受診が遅い・・・。発見後、早急に紹介してくれた先生には感謝です。11時に来院。お昼休みの12時に手術が可能でした。少しでも良好な回復を望みます。
他には、白内障手術後で手術が必要になった患者様の紹介や、硝子体出血などもあり、ちょこちょこ外来の合間に、3件の緊急手術を行いました。さすがに疲れましたが、無事に終わってなによりです。

ぶどう膜炎?
原因と全身の検査 その2

前回、ぶどう膜炎の原因となる疾患、他の全身の病気の一症状として、ぶどう膜炎を発症することがあることを記載しました。
ですので、ぶどう膜炎の患者さんが来た時には、目の検査だけではなく、体の病気も調べなければなりません。

ちなみに目の検査としては、「ぶどう膜炎??」のブログで書いたような目の中の濁りや白血球の状態を調べる検査や、視力や眼圧、蛍光眼底造影検査と言って目の中の血液の流れを調べる検査などが必要です。

左が正常、右が炎症のある造影検査の写真です。

ぶどう膜炎を引き起こす可能性がある疾患については記載しましたが、
実際には、以下のような検査を必要に応じて行います。
?問診(全て)
?口腔、皮膚、性器の診察(ベーチェット/サルコイドーシス)
?聴力(原田病)
?尿検査(腎関連ぶどう膜炎/糖尿病)
?血液検査(ウィルス/寄生虫/サルコイドーシス/糖尿/膠原病/血液疾患)
?レントゲン、CT(サルコイドーシス・リウマチ・関節炎)
?髄液検査(原田病)
?皮膚の生検やツベルクリン(サルコイドーシス)
?硝子体生検(悪性腫瘍やウィルスなど)
?遺伝子検査(原田病/ベーチェット/脊椎炎)

以上を必要に応じて、検査を行います。

実は、3割程度のぶどう膜炎は原因が不明とされており、上記の全てを行っても原因が分からないこともあるとされています。
とういか、簡単な治療で治ってしまうような軽いぶどう膜炎の場合には、上記の検査を行う必要がない場合もあります。
???くらいは、あまり体に負担がかかりませんが、
?髄液検査は「背骨に針を刺して、髄液を採取する」検査であり、体にも負担が大きく100%安全とは言えません。
?硝子体生検は、眼球内の組織を手術によって取り出すのですが、手術によってぶどう膜炎の炎症を悪化させてしまうリスクや、最悪失明につながるような合併症を起こす場合ないとは言えません。
?遺伝子検査は、現在の医学では保険が適応されず、数万円、数十万円の費用がかかる場合もあります。
それほど重大でなくても、
?レントゲンやCTは少なからず放射線被爆を受けますし、?採血だって、何項目も調べれば保険診療でも1万円の以上のコストがかかってしまう事もあります。
重度のぶどう膜炎で、治療のコントロールができない場合には、多くの検査が必要になりますが、
無駄な検査をできるだけ省いて、体への負担を減らし、医療費を出来るだけ減らし、的確な検査のみを行い、的確な診断をしていくのが僕たちの役目です。
それには、目の所見以外に、みなさんからの詳しい問診がとても重要です。体重は?頭痛は?口内炎は?など、些細な事柄でも、出来る限り協力して頂けると助かります。

個々の病気の病態や、必要な検査については、専門的になり過ぎるので、今回は記載をあきらめようと思います。

ぶどう膜炎? 原因と全身の検査 その1

昨日は雪のせいで常磐道が通行止めになったり、手術の予定が大幅に遅れるなどして、患者様含め多くの方にご迷惑をおかけしました。すみません。子供の時は雪が楽しみでしたが、仕事の事を考えると雪は困ります・・・。

今日は以下の手術を行いました。
・白内障手術 11件
・網膜硝子体手術(茎離断)3件
 (網膜剥離1件、糖尿病黄斑症1件、黄斑前膜1件)
無事に終わりました。
今日も網膜剥離の患者様の紹介がありましたが、

黄斑ギリギリです。明日には黄斑も剥がれていそう。手術ができて良かったです。

ぶどう膜炎?
原因と全身の検査 その1

免疫の異常などが元になってぶどう膜炎を起こす事を書きましたが、なぜ、ぶどう膜炎が起こるのかという事に関しては、実際には今の医学でも分かっていないことだらけです。
ぶどう膜炎の原因と書くと、実際にはちょっとおかしな表現なのですが、ぶどう膜炎は、目だけではなく体の病気に合併して起こったり、全身の病気の一つの症状として起こったりすることが多いのです

重症例のぶどう膜炎を合併する体の病気としては、
?ベーチェット病
?サルコイドーシス
?原田病

の3つが有名で、三大ぶどう膜炎なんて呼ばれています。

他には、リウマチ関節炎膠原病を持っている人に起こりやすかったり、腎炎糖尿病も、ぶどう膜炎をよく引き起こします。血液疾患悪性腫瘍が元になるものもありますし、生肉を食べた後に寄生虫に感染したり、ヘルペスやエイズなどのウイルス感染に合併することもあります。抗がん剤などの薬が原因になることも。

なので、ぶどう膜炎にかかった場合には、熱は?体重減少は?口内炎は?関節は痛くない?皮膚に湿疹はありませんか?ペットをかっていますか?旅行はしましたか?何か病気をしたり、薬を使っていますか?ストレスは?リンパ節は腫れていない?
眼科なのになぜ??っていうくらい、問診をうけたり全身をじろじろ見られたりします。

ぶどう膜炎の治療は、ほとんどの場合はステロイドと言う薬を使って、炎症を抑えることが主体になるのですが、ステロイドの使用方法や使う量などが、元になる病気の種類によって異なるため、きちんと診断していくことが重要なのですよね。
また、元になるような全身の病気があれば、そちらも治療が必要です。ぶどう膜炎の原因を調べることで、糖尿病がみつかったり、エイズがみつかったり、悪性腫瘍が見つかったりすることも決して珍しくはありません。

ちょっと難しい内容になってきてしまいました・・・。
個々の病気について書きだすと専門的になり過ぎてしまうようで、どういう内容にしようか迷います。

ぶどう膜炎? 症状・所見 その2

ちょっと忙しく、更新が滞ってしまいました。

ぶどう膜炎? 症状・所見 その2
前回は、ぶどう膜での白血球の活動、炎症自体による所見や症状について記載してみました。
今日は炎症がもたらす、その後の変化について書いてみます。

風邪で高い熱が出たとき(炎症)には、だるいなどの症状がでます。みなさん、症状が辛いので冷やしたり、解熱剤を使ったりすると思います。
ただ、解熱剤の使用には、他にも体力の消費を抑えたり、たんぱく質の変性などを抑える効果もあります。例えば、42度を超える熱により、組織の機能が障害され、無精子症になったり、耳が聞こえなくなったり。という話を耳にしたことがあるでしょうか?
熱以外でも、例えばリウマチで関節に炎症がある場合は、痛みの自覚だけでなく、きちんと消炎(炎症を抑える)しなかれば、どんどん関節が変形してしまいます。
(故意に専門的な表現を省いています。耳でムンプスとか、明確に解明されていない部分や、炎症という言葉の使用について、医師向けの説明ではありません。分かりやすくするため。)

ぶどう膜炎も早期にしっかりとした治療を行わないと、目の中で組織が癒着を起こしたり、様々な変化が出てきます。

目の前の方(虹彩付近)の変化
目の前の方のぶどう膜に炎症が起こると、瞳孔や隅角と呼ばれる房水の出口の組織に癒着が起こってしまう場合があります。

こちらは、瞳孔の部分が癒着していた症例です。瞳孔には明るさによって、広がったり、縮まったりします。瞳孔が癒着してしまうと、目の中に入る光の量を加減する働きがなくなってしまいます。あまりに、瞳孔が小さくなると、暗く感じたり、物が見えなくなります。また、眼科医は瞳孔から目の中の状態をのぞいて診察するので、診察が困難になります。
ぶどう膜炎では、瞳孔の癒着を防ぐために、瞳孔を広げる目薬を使用したり、場合によっては注射をすることもあります。こちらの症例は注射で広げることができましたが、古くなって硬く癒着してしまうと、手術以外では治せません。ところが手術はぶどう膜炎を悪化させる可能性があるので、半年以上、炎症が落ち着いてからしかできませんので、やはり早期から癒着をしないようにすることが重要です。

これは、隅角とよばれる虹彩の根元、房水の出口の構造です。
上の正常な写真と比べ、下の写真の矢印は癒着を起こして、出口がふさがっています。隅角に癒着が起こり、房水の出口がせまくなってしまうと、目の中に房水が溢れ、眼圧が上がって。続発性の緑内障が起こってしまいます
やはり、重度のものでは、将来的に手術が必要になったりしますので、癒着が起こる前にしっかりと炎症を抑える治療をすることが重要です。
ぶどう膜炎によって、失明する場合、この続発性の緑内障が原因となることが多くあります。

目の奥の変化
目の中が白血球で濁っただけであれば、治療により炎症が落ち着くことで、濁りは徐々にキレイになっていきます。
ただし、炎症が強かったり、長引いたりすれば、やはり後遺症が残ってしまいます。

50代の男性の眼底写真です。眼内の多くを占める硝子体と呼ばれるゼリー状組織が、白血球で濁っているので、写真が上手くとれません。白っぽくかすんでいますね?視力は0.1で紹介されてきました。

ケナコルトというステロイドの薬を注射して2週間後です。かなりキレイになってきました。


注射後3ヶ月です。濁りは全くないので、視力は1.0まで回復していますが、ピンク矢印の部分は血管に炎症が起こった後で、血流が悪く、血管が白く見えます。この部位の視野は見え方が悪くなっています。今後、出血を起こす可能性もあり、場合によっては、レーザー光線で網膜を焼くなんていう治療が必要になる場合もあります。出血がひどい場合にはそこからカサブタが生まれ、増殖網膜症といって失明につながるような病態に進むこともあります。
青矢印の部位には、黄斑前膜というカサブタ状の膜が形成されています。ぶどう膜炎の炎症によって出現したものです。現在は小さく、視力への影響が少ないのですが、今後の経過によっては、カサブタにより網膜が引き連れ、物が歪んで見えたり、視力が低下したり。場合によってはカサブタを剥がす手術が必要になる可能性もありえます。
(黄斑前膜の参照⇒http://blog.sannoudaiganka.jp/?cid=4940)
炎症が強い時期には、黄斑浮腫といって、やはり物が歪んで見えたり、長引けば視力が低下し、回復できない状態になることもあります。



この2枚は、メラノサイトと呼ばれる、ぶどう膜(茶目)の色のもとになっている部分に直接白血球が攻撃をして、炎症が起こった症例です。
上の発症時に比べて、下の半年後には、色素が薄くなってしまッているのが分かりますか?色のもとになるメラノサイトがいなくなってしまったのです
オレンジ色の網膜で、夕焼け眼底なんて呼ぶこともあります。
原田病という病気で、若い男性の患者様、早期にステロイドパルスりょうほうという点滴の治療が行えたため、視力も1.0に回復。大きな問題はなく安定していますが、茶色のメラニン色素が少なくなってしまっているため、発症前に比べて強い光に弱く、眩しいと感じることが多いようです。

ぶどう膜炎での主だった変化を、書いてみましたが、例えば白内障が進みやすくなるなど、実際には、まだまだたくさんの変化が起こりえます。

ぶどう膜炎で大事なことは、
?早くから、しっかりとした治療をする。 
おかしいと思ったらすぐ病院へ。
癒着が起こってしまってからでは完全には元に戻りません。
?医師の指示に従って最後まで治療する。
痛みがよくなると、勝手に薬をやめたり、通院しなくなってしまう人がいます。再発したり、あとから2次的な変化が起こって、結局見えなくなってしまいます。

ぶどう膜炎? 症状・所見 その1

今日の午後は以下の手術です。
・翼状片手術 1件
・白内障手術 13件
・緑内障手術(トラベクレクトミー)1件
・網膜硝子体手術(茎離断)2件(黄斑前膜2件)
無事に終わっています。

ぶどう膜炎? 症状・所見 その1
炎症とは、組織が熱を持ったり、赤くなったり、腫れたり、痛んだりすることです。ぶどう膜炎はぶどう膜に炎症を起こすので、目の中に、同じような症状や所見が現れます。


ぶどう膜炎の人の写真です。ぶどう膜に炎症があると、白目(強膜や結膜)にも炎症が波及し、充血します。痛みもでます。バイ菌がついた結膜炎程ではないですが、分泌が少し増えてメヤニも多少出ることがあります。

次に目の中を観察してみると、

緑矢印
本来、目の中には毛様帯というぶどう膜の構造から産生された、房水というお水が循環しています(イラスト水色)。体の他の部位は赤い血が流れて栄養や酸素がいきわたりますが、目の中に赤い血が流れていたら、光がとおりませんよね。
毛様帯では、通常は血液の中から栄養分の豊富なキレイなお水だけを濾過して、眼内に送り出すのですが、ぶどう膜炎で免疫反応が活発な時には、免疫を担当する白血球と言う細胞が、房水の中に出てきてしまうのです

こんな感じで、角膜の裏側に白血球の塊がべったりついたり、房水の中を白血球がうようよと泳ぐようになります。
透明で光を通す役割の角膜や、房水が濁ってしまう状態なので、自覚症状とちては、かすんで見えたり(霞視;むし)、光が散乱してまぶしく見えたり(羞明;しゅうめい)します
このような目の前の方(水晶体より前)のぶどう膜炎を、特に虹彩炎(こうさいえん)、または前部ぶどう膜炎と呼んだりもします。

青矢印
硝子体と呼ばれる、目の中の広範囲を占めるゼリーの中にも白血球がうようようごめくようになります。やはり、濁ってしまうので(硝子体混濁)、かすんで見えたり、視力が下がったりします。

このような硝子体の濁りで、特に毛様体の近くで炎症が強いぶどう膜炎は、中間部ぶどう膜炎なんて呼んだりもします。

赤矢印
網膜や、その奥にある脈絡膜と呼ばれるぶどう膜に炎症が起こる場合もあります。網膜の血管に炎症が起こると、出血を起こすこともあります。出血で硝子体が濁ってしまうため(硝子体出血)、やはり視力が低下します。

(もっと血みどろの例も多いのですが、血みどろの症例は写真が撮れないというか、うつらないのですよね。)
網膜の血管の炎症や、出血、浮腫など、目の一番奥の方で炎症が起こるぶどう膜炎を後部ぶどう膜炎と呼んだりもします。

全部
前部(虹彩)、中間部(毛様体)、後部(脈絡膜)、3つのぶどう膜のうち、どのぶどう膜に炎症が起こるかで、呼び方が変わったりしますが、3つの全てというか、全域で炎症が起こる場合も多く、そのような場合は汎ぶどう膜炎(はんぶどうまくえん)という名前で、重症例になります。ただ、医師から患者様に説明する場合には、説明も大変なので「ぶどう膜炎ですね。」という説明のみになってしまう事が多いかと思います。

これみんな、ごく最近の症例の写真ばかりです。やっぱりここは重症例が多いなぁ。次回は、ぶどう膜炎が長引いた時に起こる2次的な所見などについて書いてみたいと。

ぶどう膜炎? ぶどう膜って?

今日のお昼は、白内障手術 8件、緑内障手術(流出路再建)2件を行いました。無事にできました。

さて、昨日の続きです。

ぶどう膜炎? ぶどう膜
まず、普通の目の写真ですが、

この茶目の部分をみて、何に似ていると思いますか??
賛否両論あると思いますが、これの茶目(虹彩)が、ブドウの皮の色に似ていると思われたことで、ぶどう膜っていう名前が付けられたようです。
この茶色の組織ですが、実は、写真のように肉眼で見える部位のみではなく、目の中の内側全面に広がっているのです。

赤矢印が肉眼でも見える虹彩(こうさい)、そこから後ろに続き、緑矢印の部分を毛様体(もうようたい)、さらに眼球の後方に伸びて、後ろの方の青矢印の部分は脈絡膜(みゃくらくまく)と呼ばれます。

この虹彩・毛様体・脈絡膜の、茶色状の組織、三つを合わせて、ぶどう膜と呼びます。ぶどう膜の特徴として、メラノサイトという日焼けやホクロの原因となる色素成分が豊富であることや、血管が多く、血流が豊富な事が挙げられます。(免疫の主役は、血液中の白血球であると昨日書きましたが、ぶどう膜は血液が豊富な組織であるため、免疫反応が強く起こるのです。)

三つのぶどう膜には、それぞれ以下のような働きがあります。
?虹彩
虹彩のない、黒目の中心部を瞳孔と呼びます。虹彩・瞳孔の役割は、明るい場所や暗い場所で、瞳孔の大きさを変え、目の中に入る光の量を加減する働きがあります。(暗い所で瞳孔が開き、明るい所では小さくなります。)
?毛様体
血管が豊富で、血液から必要な栄養分を含んだお水を濾過して、目の中に流しこみます。(房水の産生機能)
?脈絡膜
脈絡膜の内側は光を感じるフィルムである網膜、外側は白目(強膜)です。
脈絡膜は豊富な血液を使用して、網膜に栄養分を与えたり、色素を利用して、白目側からの光が目の中に入らないようにする暗室効果(眼内を暗くする)などがあります。

分かりやすく書きたいと思いつつ、難しい文章に近づいているなと・・・。
ぶどう膜炎は、「濁っているから手術で取ってしまおう。」といった外科的な病気と異なり、診断で頭をかなり使ったり、治療は手術ではなく、薬が中心で、眼科の中では、かなり内科的な病気になります。
細かいことを書いても分かりにくいかもしれないので、次回は写真などを多用して、炎症の所見について書いてみようかなと思います。

ぶどう膜炎? 自己免疫性疾患

昨日の超重症の糖尿病の方たちも、思ったよりキレイで安心しました。
ところが、「うつ伏せはしてないよ。」なんて自己申告の患者様が・・・。
失明するかどうかと何度も言っているのに・・・。またグチを言ってしまいそう。悲しい・・・。
そんなブログばかりではいけないので、
きちんと病気のことも。

ぶどう膜炎? 自己免疫性疾患
ぶどう膜とは、眼球内の重要な組織にあたりますが、今日はぶどう膜の説明の前に、病気の基本となる免疫や炎症という概念について書いてみたいと思います。

免疫・炎症とは?
例えば、風邪のウィルスが喉につくと、体は免疫という反応を起こし、喉の血流が増えて赤くなったり(充血)、腫れたり、熱を持ったり・分泌物が増えたり・痛みが出たりします。
このような現象を炎症と呼び、炎症を起こす働きが、免疫反応・免疫力(抵抗力)になります。、
本来、免疫力は体に侵入してきた細菌やウィルスなどの外敵から体を守るための正常な防衛反応で、なくてはならないものです。
細菌などの感染症以外でも、体は異物が入ると排除しようとするのですが、花粉に対して過度に免疫力が働いた場合がアレルギー(花粉症)になります。
また、何かの病気で臓器の移植をした場合で、拒絶反応という言葉を聞いたことがあるでしょうか?自分以外の臓器が入ってきたと体が認識してしまうと、免疫力が炎症を起こして、移植した臓器を排除しようとしてしまいます。骨髄移植を行うときに、HLAという遺伝子の検査などを行うのは、自分に対しては炎症・免疫が起こらないため、出来るだけの自分と似ている遺伝子の人を探して、拒絶反応が起こりにくくするためです。

他に、免疫反応以外でも、体にケガをしたり、ぶつけたりした場合に、ケガを治そう・回復しようとして血流が増え、赤くなったり、腫れたりする場合も炎症が起こります。

免疫の働きの多くは、血液の中の白血球という細胞が担当しています。
(血液の中には、大きく赤血球という酸素を運ぶ赤い粒と、白血球というバイキンをやっつけ、免疫を担当する白い粒、出血をした時に血を止める、血小板などがあります。)

自己免疫疾患とは?
自己免疫性疾患とは、なんらかの原因(ストレスや、遺伝、疲労など、多くは原因不明)をもとに、免疫力がウィルスなどの外敵ではなく、自分自身の組織を標的に攻撃をして、炎症が起こる病気で、よく難病と呼ばれます。

自己免疫性疾患として、有名な病気としては、リウマチがあります。
リウマチは、関節が腫れたり、痛んだりして、曲がっていってしまう病気ですが、決して関節にバイ菌が感染したわけでもなく、ケガでぶつけて腫れているわけでもありません。体の免疫力が何かの間違いで、関節を外敵と認識して、炎症を起こしてしまう病気です。明確な原因は分かっていません。
・関節を中心に炎症が起こる病気⇒リウマチ
・皮膚を中心に炎症が起こる病気⇒膠原病
・甲状腺(喉)を中心に炎症が起こる病気⇒バセドウ病
  
などとなり、どこに、炎症が起こるか、間違った免疫が働くかで、病状・病名が変わりますが、基本的には自分の組織に免疫力が働いてしまう病気で、体の様々な場所に起こりえます。

眼科では、
?ぶどう膜を中心に炎症が起こる病気⇒ぶどう膜炎
?黒目(角膜)を中心に炎症が起こる病気⇒角膜炎
?白目(白目)を中心に炎症が起こる病気⇒強膜炎
?視神経を中心に炎症が起こる病気⇒視神経炎

などの病気があります。