角膜ジストロフィー? 治療その2

今日は午前の外来が55名。
緊急で眼窩底骨折の患者様がいらしてこれからMRIをとります。手術にならないといいのですが・・・。
お昼は13時半から白内障4件、結膜弛緩症2件の予定です。
夜は外出する予定なので、今日はお昼休みにブログを書いてしまおう!

先週に引き続き、角膜ジストロフィーの治療です。
角膜ジストロフィー? 治療その2

濁った角膜を交換しよう!
角膜移植
角膜が沈着物で濁ってしまった場合、濁りを取り除かなくてはいけません。
前回は、角膜の表層が濁った場合の治療で、レーザー光線を使用して削り取る、PTKという治療を記載してみました。
角膜ジストロフィーと言っても、沈着物の種類や遺伝子異常の違いによって、濁りの程度や、沈着物が蓄積する場所は様々です。PTKは顆粒状角膜変性症などの表層の濁りを削り取ることは得意ですが、濁りが角膜の深い部分にある場合では削り取ることはできません。濁りが深い場所にある場合は別の治療が必要になります。
こんな場合は、角膜を丸く切り抜いて別の角膜と交換してしまう、角膜移植という治療法が行われます。
人工角膜の開発も進み、ある程度は人間に使われることが増えてきてはいますが、現在の医学で行われる角膜移植のほとんどは、亡くなった方のご好意でアイバンクを介して頂くものです。ドナーカードをお持ちいただける方が増えては来ていますが、まだまだ数に限りがある、とても貴重な角膜です。また、PTKと比べて、かなり大掛かりな手術で手術自体のリスクもあり、治療には細心の注意や病気へのご理解が必要です。
昨年、角膜移植を行って頂いた70代の患者様の写真です。角膜移植で有名な千葉県の大学病院様に紹介、手術を行って頂きました。

青が自分の濁った角膜、赤が交換したキレイな角膜です。
大変申し訳ありませんが、PTKに引き続き、角膜移植も当院では行っておりません。当院は、ほとんどの眼科手術に対応していますが、レーザーを使用した屈折矯正手術、PTK、角膜移植、涙嚢鼻腔吻合術に関しては他院様へ紹介させて頂いております。
(角膜移植って、あまり数が多い手術ではありません。上記の千葉の病院が日本で一番手術件数が多いようなのですが、それでも年に300件とか。白内障とはわけが違います。一般のクリニックで安定した成績を残すほど件数がないのですよね。そのうちフェムトセカンドレーザ?による手術や、人工角膜、再生角膜などの開発が進み、一般的に安全に行われるようになったら、当院でも対応していきたいと。)
角膜移植も、全てを交換する全層移植から、最近は問題の場所だけを移植する部分移植(パーツ移植)など進歩があります。今日は時間もないですし、角膜移植に関しては、もっと書きたい内容が沢山ありますので、別の機会により詳しいブログを書きたいと思います。

点眼薬・眼軟膏
濁りを取ったり、視力を回復するわけではありませんが、眼表面のキズや痛みの問題に対しては、点眼薬や眼軟膏を処方し対応します。

その他
PTKと角膜移植は、現在の角膜ジストロフィーの主な治療法で、濁りを取り除く事が出来ます。ただし、再発しにくいもの・しやすいものがありますが、基本的には遺伝子の異常などが解決するわけではありませんので、一度キレイになっても、最終的には再発しうる治療法です。
学会などで耳にする限りでは、特殊な点滴薬と光線の治療で濁りを溶かし出すような治療や、遺伝子治療などで、蓄積物が溜まらなくするような治療法が、動物実験などでは行われているようです。
将来、より安全で、よりよい治療法が開発されることを祈ります。

急いで書いたので、誤字脱字あったらすみません。

角膜ジストロフィー? 治療その1

ブログのおかげだと思いますが、今日も都内からの患者様が3名いらっしゃいました。石岡のいちクリニックに、都内から足を運んで頂くのはとても光栄なことです。もちろん近隣地域の医療を担いたい。というのが一番ですが、遠くから来て頂く患者様は、どちらかというと重症例や治療が上手くいっていない方が多いようです。遠方の難しい症例に出会えることは医師としては幸せです。これからも頑張ろう!

今日は昨日の続きで、角膜ジストロフィーの治療法です。
角膜ジストロフィー? 治療その1

削り取る!
PTK (レーザー治療的角膜切除術)
沈着物の蓄積や混濁が、角膜の表面に近い場合には、その部位を削り取ってしまう。という方法が行われます。エキシマレーザーや、最近はフェムトセカンドレーザーというレーザーが使われます。
実は、このレーザーを使って角膜を削る。という手技は、LASIK・レーシックという近視を矯正の治療にとても似たものです。近視や乱視などを矯正する手術をまとめて屈折矯正手術と呼ぶのですが、現在の日本では屈折矯正手術は、自由診療という保険の効かない治療に該当します。当院では現在はレーシックは行っていないので、他の医院様にお願いする形を取らせて頂いています。

60代の女性で、昨年、県内でレーシックができる施設様で治療をお願いしました。(茨城県内にはレーシックの器械は大学病院などにもなく、2つの個人医院様にしかないようです。レーシックは都内に偏っているようですよね・・・。)
上が治療前、下が治療後です。白い濁りが削り取られて、キレイになっています。よい治療をして頂いて、本当にありがたく思います。


最近は、角膜の断面図を撮るOCTなども使われるようになりました。(通常の眼底OCT説明⇒2011.08.17.Wednesday;http://blog.sannoudaiganka.jp/?cid=5107)

右がOCTでの角膜の断面図です。青く囲んだあたりを、病気の症例でみてみると、

左が治療前、右が治療後ですが、緑矢印の先の白い濁りがなくなっていることが分かります。

このレーザーで削り取る治療ですが、近視を矯正するレーシックと似た治療なので、副作用と言いますか、近視が治ってしまったり、遠視になってしまうという事が起こります。もともと強度近視のかたなどでは、ちょうどいいかもしれませんが、近視のない方はよく注意しないといけません。また、角膜ジストロフィーの患者様が白内障手術を行う場合には、将来的にレーザー治療を行う可能性があれば、白内障手術の時に、わざと近視となるように設定しておく。なんていうことも考えておかなければなりません。

レーザーを使用してPTKを行って濁りを削り取っても、沈着物が蓄積する遺伝子・体質自体がなくなるわけではありません。なので、一度キレイになっても、その後の期間では再発してしまいます。再発の期間や程度は病気の種類によって異なりますので、詳しくは担当の医師に相談しましょう。再発時には、再度PTKで削り取ることができますが、削るたびに角膜が薄くなって、より遠視になっていきます。2?3回の治療を行うと、角膜が薄くなりすぎて、それ以上削り取ることができなくなるため、角膜移植などの治療に進みます。

医療って、お金が難しいのですが、レーシックなどの治療は自由診療です。角膜ジストロフィーの治療に限っては、実は条件を満たせば、保険が適応になるとされているのですが、常勤の眼科専門医が3名、常勤の麻酔科医師もいないといけない。など、保険が使える施設として認定されるには、ありえないような条件が必要です。なので日本中で行われる治療のほとんどが自由診療となっています。とても良い治療ですし、病気を治すためなのに、なんでそんな条件をつけたのだろう・・・。納得がいきません。

角膜ジストロフィー?

今日は午前小美玉、午後クリニックで外来です。どちらも結構混みました。お待たせしてしまった患者様、すみませんでした。
風邪は治っていると思うのですが、ノドがまだイガイガしています。外来はしゃべり続けなくてはいけないのがツライ。

今日はちょっと変わった病気のお話です。
角膜ジストロフィー
角膜は、肉眼で黒目として見えますが、実は透明な組織で、光を遠したり、屈折(ピントを合わせる)させることが仕事です。透明なので、目の内部の茶色の組織や瞳孔などが茶目・黒目として見えるのです。

この角膜ですが、透明性を維持するために、眼内を循環する房水や、涙液、または空気中の酸素などから、必要な栄養分を適宜取り入れたり、老廃物を排出したりすることを繰り返しています(代謝)。
角膜ジスロトフィーは、ほとんどの例で原因となる遺伝子の変異(間違い)が発見されており、遺伝子の問題で、栄養分の吸収や老廃物の排出などが上手くいかずに、角膜の中に不必要な物質が溜まってしまう疾患の総称です。

分類
専門的なので、詳しい内容は省略しますが、
・顆粒状角膜ジストロフィ
・格子状角膜ジストロフィ
・斑状角膜ジストロフィ
・膠様滴状角膜ジストロフィ
・フックス角膜内皮ジストロフィ

など、さらに様々な疾患があります。

原因
ほとんどの角膜ジストロフィーでは、病気の原因となる遺伝子の異常が見つかっています。なので、何かをしたから発病した。というものではなく、生まれつきの病気です。

沈着物
病気によって様々ですが、コレステロールカルシウム、聞きなれないと思いますが、ヒアリンアミロイドなんて呼ばれる物質などが角膜に溜まっていきます。

症状
沈着物によって、角膜が白く濁ってしまいます。
濁りによって、かすむ、眩しい、視力低下などの症状が起こります。
ただし、病形によって、濁りの程度や位置(中心部は視力低下につながりやすい)、発症時期、進行のスピードもかなり異なるので、一概には言えません。重篤なものでは失明に至る事もありますが、軽症例では全く自覚症状のない場合もあります。
また、角膜の表面上に沈着物がある場合には、こすれたり、キズの原因になったりして、強い痛みの原因となることもあります。


先日、他院様にて治療をお願いした女性です。
角膜の中心部の2/3くらいに、白く丸い混濁(沈着)が起こっているのが分かりますか?右側は角膜の断面図ですが、白い濁りが見えると思います。

診断
確定診断には、遺伝子検査を行う場合もありますが、遺伝子診断は保険適応外であり、多くの場合では行われません。
ほとんどの角膜ジストロフィーは、問診(家族歴)や、体の病気、そして診察所見で診断が可能です。

今日は市内の内科の先生と、食事?をさせて頂くことになりました。
ノドが悪くならない程度に、気をつけて・・・。行ってきます。