色覚異常? 職業適正

今日は以下の手術を行いました。
・眼瞼内反症手術 1件(眼輪筋縫縮術)
・眼瞼下垂症手術 2件(CO2レーザー:ミュラー筋タッキング)
・翼状片切除術 1件(遊離弁再建)
・白内障手術 10件
・緑内障手術 2件(エクスプレスシャント1件、流出路再建1件)
・網膜硝子体手術(茎離断) 3件
 (黄斑前膜1件、黄斑円孔1件、テルソン症候群硝子体出血1件)
無事に終わっています。

さて、続けてきた色覚異常をそろそろ終わりにします。
色覚異常? 職業適性
先天色覚異常では、赤・緑・青の3つの錐体が正常に機能せず、正常色覚者に可能な色の判別が難しかったり、色の誤認が起こりうることなどから、以前は様々な職業に制限があり、就職に不利な時代があったようです。間違った差別が生まれたり、先天赤緑異常では遺伝例が多いこともあり、結婚や出産に関して問題となることもありました。

しかし、先日書いたように、多数派の見え方を正常と呼んでいるだけであって、決して色覚異常の見え方が劣っているというわけではありません。ユニバーサルデザインなど、万人向けの社会作りといった考え方が復旧し、色覚異常があっても問題なく生活を送れるようになってきているようです。
現在は、飛行機や船の運転などに関するような職業を除いて、ほとんどの職業で、色覚異常があるから就職が受からない。ということはないようです。

そういう社会になってきてはいるものの、外来などで相談を受ける質問で最も多いのは、やはり職業の適正についてです。
具体的には、お母さんたちから、「うちの子は色覚異常ですが、美容師の専門学校へ行くことをどう思いますか?」というものや、「僕は色覚異常ですが、医者はどうですか?」などの質問を受けます。

どうこたえるかというと、申し訳ありませんが、僕はいつも明確な答えができません。美容師で髪の毛の色を染める場合、医者で病変を色調から判断する場合、どちらかと言えば、色覚異常がある人の方が難しく感じる機会が多いのは間違いないでしょう。デザインや色合いなどに直接関係する職業に就くことは、色覚異常の程度によりますが、少なからず不自由な思いをするのではないかと思います。
でも、もしかしたら、色覚異常の方が美術や美容の職種に進んだとして、天才的な感性として認められる可能性だってありますし、眼科医になって、目薬の容器の色が分からなくても、形や文字など別の方法で確認する努力によって、キャップの色だけで適当に処方をする医者よりも、正確な仕事ができる可能性だってあります。

もしかしたら、少なからず苦労をする可能性はあるわけで、安易に「全く問題ないから、どの職業でも大丈夫!」とも言えないし、努力によって賄える可能性があるのに、「辞めた方がいい」とも言えません。
なので、僕はいつも、「人より労力がかかったり、苦労をする可能性があるけれども、それでも頑張っていく気持ちがあれば、頑張って下さい!」という答えになってしまいます。

僕が子供の時には、学校で石原式色覚表で色覚検査を受けた覚えがありますが、差別をなくそうとする問題からか、1990年代以降の法律改正により、就職時や学校検診などでは色覚検査を行うことがほとんどなくなりました
色覚異常があるから、就職を拒む。というのはよくない思いますが、色覚異常であることを知らないまま、職業の選択に進んでしまう子供たちが生まれないか、少し心配です。精神的な負担はあるかもしれませんが、中学?高校くらいの学校検診で1回でいいので色覚検査を行って、自分のことをしっかりと自覚した上で、職業を考えていく方がいいのでは?と個人的には思っています。
学校検診で色覚検査を行った上で、全員にしっかりとした色覚教育を行って、「色覚異常があっても生活がしやすい社会づくり」が進むといいなと思うのですが。

最近、子供と一緒にチャギントンという機関車トーマスの現代版?というような、電車のアニメを見ていて、「色の判別をしにくいチャガー(電車)もいる。」といった題材があり、イギリスのアニメなのですが、欧米の方が子供の時からの教育が進んでいるのかな?なんて思ってみたり。

ちなみに、双子のチャガー、フートとトゥートのフートが赤緑異常のよう。

色覚異常? 色誤認

今日も午前中の外来が70名強と、少し待ち時間の長い患者様が出てしまいました。すみませんでした。
午後は知り合いの先生の病院でお手伝いに行きました。少し難しい症例もありましたが、無事に終わって安心です。

少しサボってしまったのですが、色覚異常の続きです。
色覚異常? 色誤認
以前も少し記載したのですが、先天性の色覚異常で問題なのは、緑が緑に見えないことではなく、赤や緑をハッキリ区別して見えている人たち(正常色覚)と、色の判別が異なってしまう事です。
仕事で、赤のカードと緑のカードがあって、「赤ならこの作業」「緑ならこの作業」と言われた時に、判別しにくいのは問題ですよね?

そういうと、先天赤緑異常などの色覚異常の方が、劣っているのでは?という誤解が生まれそうですが、決してそうではありません。例えば、鳥類は赤・緑・青以外に、紫外線より短い波長の色の認識が可能で、4原色を認識する錐体があるとされています。人間やサルの多くは3原色ですが、他の哺乳類は赤と青の2原色の錐体をもつようです。
差別的な問題を少なくするために、3錐体の正常色覚者、97%のことを多数派色覚3%の色覚異常者をまとめて、少数派色覚と呼ぶ団体もあるのですが、
どちらが優れている・どれが一番良いという事はなく、それぞれ長所と短所があり、たまたま人間の多くが、赤・緑・青の3原色を認識する色覚(正常色覚・多数派色覚)の持ち主であったようです。
民主主義での選挙もそうですが、世の中はどちらかというと多数派に有利に出来ており、多数派の見え方と異なる色覚異常(少数派色覚)の方には若干不便になってしまうのですよね。

治療
残念ながら、現在の医学では先天色覚異常の治療法はありません。
色覚異常の方は、多数派の正常色覚と呼ばれる人たちと生活していく上で、自分がどのような色が見えにくいのかをしっかりと認識をしていくことが重要となります。
どのような色の見わけが付きにくいのかは、色覚異常のタイプによって異なるのですが、基本的には経験によって獲得していくものです。一応、先天赤緑異常で見分けにくい色を記載しみます。
?
?オレンジ黄緑
?
?
?ピンク白や灰色
?黒や灰色
?
?ピンク水色

上記の色をそれぞれ明るくした色や、暗くした色も判別しにくくなりますが、最終的には経験上、難しかった色について、対策を考えていくのが重要です。
仕事で、色のついたカードが判別しにくいのであれば、各色ごとにカードの大きさや形を変えるなど、色以外の方法で判別ができるようにるようにしたりします。

では、正常色覚の人は自分の思うままに生活すればでいいのでしょうか?それはNOです。色覚異常の人もいるのだと言う事を忘れずに、色覚異常(少数派色覚)の人が不自由をしないように、色覚異常があっても判別しやすい社会を作るべきです。
人類の数%を占める先天赤緑異常が読めない教科書は作るべきではありません。緑の背景に赤い文字を書いたら、認識できない人がいることに配慮しなくてはいけません。
義務教育の教科書などは、かなり気を使ったものが増えてきていますし、ユニバーサルデザインと呼ばれるような万人向けのデザインのものにも、色覚の概念が取りいられるようになっており、社会は徐々に変わってきているのかもしれません。
一方で、眼科の学会のポスターやプレゼンテーションで、色覚異常に全く配慮をしていないものを目にすると、とても残念な気分になったりする事もあるのですけどね・・・。

色覚異常? 検査・診断

今日の手術は白内障手術が7件で、無事に終わりました。
だんだんと、暑い夏が増えてきましたね。

今年はアサガオの緑のカーテンに挑戦しているのですが、どのくらい育ったか、
毎朝毎朝気になってしまいます[:見る:]

色覚異常? 検査・診断
先天色覚異常の多くは、実は問診だけで診断が付きます。
というのも、眼科に受診する時点で、ご両親や自分自身で色覚異常だと認識して相談に来ることが多いからです。
色覚異常の多くは、先天赤緑色覚異常と呼ばれるL-錐体M-錐体の異常なのですが、男女を決定する染色体(遺伝子)に原因があることがおおく、殆どの患者さんは男性になります。
父親や、母方を含むおじいさんや、おじさんに、同じような症状の方がいるため、受診時にはなんとなく気がついていたり、すでに自覚していていることが多く、「父親やお爺さんが色覚異常で、この子もなんとなく色を間違えやすいみたい。正確に診断できますか?」という相談や、「色覚異常ですが、この職業に就くのは可能ですか?」という相談が多くなります。

実は、先天赤緑異常は軽いものを含めると、なんと、日本人男性では20人に1人弱(5%弱)と、とても身近にありふれたものなのです。(女性では500名に1人弱と極端に男女差があります。)

次に黒っぽい赤黒っぽい緑などの見分けが付きにくいかどうか?等を聞いて、赤に関連したものが見えにくい⇒L-錐体異常(1型)と診断がついてしまいます。

そうは言っても、本当に患者さんが来た場合には、せっかく受診して頂いたので、きちんとした検査を受けて頂きます。

?仮性同色表
いくつか種類があるのですが、当院では石原式仮性同色表を採用しています。

正常色覚では数字が書いてあったり、クネクネの迷路を指でなぞったりすることが可能です。色覚異常で、赤や緑などの背景と文字や線の見わけが付きにくい場合には、数字が読みにくくなります。
全てのページを検査すると、かなり軽い色覚異常でも、発見することが可能です。逆に、仮性同色表をスラスラ判読できる場合には、色覚異常は心配ないとも言えます。
(たまに、本当は物が見えるのに、見えないふりをする困ったお子さんや、保険金の裁判中なんていう仮病・詐病の人が来院されます。仮性同色表には、ある程度の視力があれば、色覚異常の方でも判読できるページもあり、そういう判定にも役立ちます。内緒のページなのでUPはできません!)

パネルD-15テスト
グラデーションで色がついたパネルを、色合いが近い順から並べていくテストです。一番左端の青だけは固定で、順に15個のパネルを並べていきます。

正常色覚では上のように順に並べることが可能ですが、

色覚異常では、上のようにごちゃごちゃと並べてします。
パネルの裏側には番号が付いていて、

並べ方によって、赤の異常なのか、緑の異常なのか、青の異常なのかを判定することができます。
(パネルD-15は、色覚異常が軽度の場合には正常に配列が可能で、中程度以上の異常を診断することが可能です。)

アノマロスコープ
光の3原色で書いたのですが、赤の光と緑の光を合わせると、黄色の光ができます。アノマロスコープは、上下に2つに分けられた丸があり、

・上半分は緑→黄色→赤へと変化、
・下半分は黄色の明るさ(明るい黄色・暗い黄色)を変化
させることができる装置です。
正常色覚では、少し暗い黄色で、上下の色がほぼ同じになるように調節することが可能ですが、色覚異常者では「正常者が上下の色は異なる色だ」と判断する状態で、色が同じになった。と認識します。
この上下の色の解析により、どの錐体にどの程度の異常があるのかを、かなり正確に判定することが可能です。

どこま正確なのかは不明ですが、i-padのアプリで、パネルD-15などを見つけました!3000円で購入してみました。

医学で使うものって、値段がなんで??と思うものが多いのですが、上記の正規の検査機器は8万円以上します。僕は結構いろいろな病院で勤務歴がありますが、当院以外では大学病院くらいでしかパネルD-15を見たことがありません。
数千円のアプリでも正確な検査が可能なのであれば、日本中の眼科で使われるようになるのかな??と期待をしつつ、しばらくは両方の検査をやって頂き、正規のものと判定が異なるかどうかを確認してみたいと思います。
注)アプリには、あくまで参考です。正確な診断は病院で正規の検査を受けるべきだと注意書きがありました。

色覚異常? どんなふうに見える?

色覚異常? どんな見えかた?
錐体細胞には、L-錐体M-錐体S-錐体があることを書きましたが、多くの色覚異常は、L-錐体M-錐体に関するもので、先天赤緑色覚異常と呼ばれます。

では、L-錐体が全く機能しない場合には、赤い色・光が真っ暗に見えるのか?というと、そうではありません。L-錐体は赤い光(長波長)によく反応しますが、それ以外の光にはある程度反応します。
逆に、M-錐体S-錐体も、多少は赤い色・光に反応しますので、もし、L-錐体が全く機能しない場合でも、赤い色・光を見たときには何も感じないわけではなくて、正常色覚者と比べて別の色合いに見えてしまうのです。

L-錐体(赤)と、M-錐体(緑)の完全な機能消失(色盲:2色覚)の場合の、実際の見え方のイメージは以下のように推測されます。

ただし、実際に色覚異常の方の見え方を実感することは出来ないので、とても難しい範疇です。重度の異常である色盲(2色覚)の方は少なく、上記のイメージはやや極端な例ですが、赤や緑の錐体の機能が弱い場合の、色弱(異常3色覚)では、その程度によって上記のイメージと正常との間に位置することとなります。

「赤が赤に見えないなんて、大変そう。」と思うかもしれませんが、「赤を赤だと認識する」ということは、生まれてからの経験によって獲得するものであり、もともとそういう世界に生まれた人たちは、自分の中だけでは違和感を感じません。
問題は、正常色覚の人との間で、色を判別する能力が異なることで、間違えた色と判断してしまうこと(色誤認)が生活上の不都合になります
赤いカードと緑のカードが置いてあって、「赤いカードを取って!」と頼まれたときに、緑のカードを選んでしまったり。ということです。

色覚異常で重要なのは、「赤が、正常色覚者にとっての赤に見えないこと」ではなく、正常色覚者と色覚異常者とを比べて、どういう風に見えにくいのか?、何色と何色が見分けがつきにくいのか?ということを、お互いに認識をすべきだということです。

テレビの構造がそうであるように、光の3原色の組み合わせで、殆どの色が作成できることを色覚異常?で記載しましたが、この3原色()を120度づつ3等分にならべ、色相によって順序良く色を配置したものを、色相環といいます。

環の反対側に位置する色を、捕色といいますが、相手を引き立てる・目立たせる色になります。聞いたことがあるでしょうか?
正式な色相環だと、ちょっと分かりにくいので、目立つ色だけ端折って抜き出してみます。

正常色覚だと、このような色の配置で、それぞれが独立して認識されるのですが、色覚異常の場合には、この環の形に変形が起こります。


これはL-錐体の異常(1型)でのイメージ図です。環が横方向から押しつぶされるような形状になり、赤と緑、青と紫などが正常な色覚に比べて、近い色・似たような色として認識されます。L-錐体の機能が低ければ低いほど、環のつぶれ具合が大きくなりますが、L-錐体が全く機能しない(1型2色覚:赤の色盲)では、環が完全につぶれて、赤と緑がほぼ同じ色として認識されます。

M-錐体の異常(2型)では、環がつぶされる角度が異なり、

こんなふうに、斜めの方向に近いイメージになります。障害の程度によって、環のつぶれる具合、色が分かりにくくなる程度が異なります。(色盲ではペッタンコ)

正式には上記の色相環のみではなく、色の飽和度や彩度、明るさなどが様々に組み合わさって、さらに複雑に色の認識に差がでます。

色覚異常? 病態と分類

今日の午後は以下の手術を行いました。
・加齢性下眼瞼内反症(逆さまつ毛)1件
・翼状片手術 1件
・白内障手術 11件
・網膜硝子体手術(茎離断) 3件
 (黄斑前膜2件、網膜中心静脈閉塞に伴う黄斑浮腫1件)
まずまずの症例ですが、17時前には終わってしまいました。手術の準備や移動などがとてもスムーズで、スタッフに感謝です。ありがとう。
今日は早めに帰って、子供の相手もできました。

色覚異常? 病態
網膜の中の視細胞に光が届いて、物が見えるときに、錐体という視細胞が色を判別するのに役立つことを、色覚異常?にて記載しました。
赤色によく反応するL-錐体、緑色によく反応するM-錐体、青色によく反応するS-錐体の3種類が、それぞれ光に反応し脳へと信号を送ります。そして、3つの錐体から届けられた情報を脳が再合成して、色を再現するのです。

色覚異常?光の3原色について書きましたが、

例えば、緑の光が目に入ると、M-錐体が主に反応し、脳に信号を送ります。
黄色の光が入った時には、L-錐体M-錐体が主に働き、脳に信号を送るのですが、脳ではこの2つの信号を再合成して黄色と判断します。
強い白い光を見たときは、L-錐体M-錐体S-錐体の全てが強く反応するのです。
(一般の方が分かりやすいかな?というレベルで書いています。専門的に表現が異なることはご理解下さい。)

色覚異常とは、この3つの錐体のどれかに異常があり、ある色の光への反応がなくなってしまったり、鈍くなってしまうことを言います。
ある錐体が全く機能しないものを色盲反応が弱いが、ある程度は機能するものを色弱と呼びます。
実は、最近の正式な学会などでは、色盲や色弱という呼び方はされなくなり、
1つの錐体が全く機能しない場合に、残りの2種類の錐体で読み取ることから2色覚(以前の色盲)
1つの錐体が正常には機能せず、反応が弱いながらも、一応は3種類の錐体が機能している場合に、異常3色覚(以前の色弱)
と呼ばれるようになっています。

また、専門的ですが、
赤に反応するL-錐体の異常⇒1型
緑に反応するM-錐体の異常⇒2型
青に反応するS-錐体の異常⇒3型
などという分類もあり、

上記の分類とあわせて、例えば赤に反応する錐体が全く機能しない場合には、1型2色覚、少しは機能する場合を1型異常3色覚というように呼びます。

と、ここまで書いてみましたが、自分で読み返してみても、眼科医とかではない皆様に呼んで頂いても、全く分からないのでは??と、ちょっと冷や汗をかいています。困ったな・・・・。

赤・緑・青を感知する錐体のどれに異常があっても、色覚異常になるわけですが、赤だけの場合、赤と緑の場合、青だけの場合、全ての錐体が駄目な場合(杆体1色覚:全色盲)など、様々な組み合わせがあり、組み合わせの種類によって、「どのような見え方になるのか、視力がまずまずなのか、視力も悪いのか。」症状は様々なのですが、全ては書ききれないし、逆に分かりにくくなってしまいそうです。
実は色覚異常をお持ちの方の大多数は、1型色覚(L-錐体の異常)、2型色覚(M-錐体の異常)の2つになるので、今後は、この2つについて書いて行くことにしますね。
先天的なL-錐体の異常M-錐体の異常をまとめて、先天赤緑色覚異常と呼びますが、一般的に先天色覚異常といえば、この赤緑異常のことを言います。
(先天性の杆体1色覚:全色盲などは数万人に1人の病気で、僕の人生ではまだ担当したことがないくらい稀な病気です。)

色覚のこと、ちょっと書こうと思ったのですが、なんだか大変な分野です・・・。もう何回かに分割して書いて行きたいと。

色覚異常? 錐体と光の波長(色)

今日は以下の手術を行いました。
・白内障手術 9件
・緑内障手術 1件(ぶどう膜炎後の隅角癒着解離)
・斜視手術 1件(外斜視+上下斜視、前後転+移動)
・網膜硝子体手術 3件(茎離断2件・増殖1件)
(黄斑円孔1件、硝子体混濁+黄斑前膜1件、増殖糖尿病網膜症1件)

無事に終わりましたが、硝子体手術では外来の診察では分からなかった、予想外の重症例があったりして、結構今日はヒヤヒヤしました。日帰りで硝子体を行う事が増えていますが、自宅でうつ伏せをするのは大変なので、日帰りは簡単な症例だけの方がいいのかなぁ・・・。
しかし、コンステレーションはすごい。急な難症例でも、以前の器械と比べて安心感が違います。専門的ですが、もし穴が開いても、剥がれてこないのですよね。器械がいいだけですが、なんとなく自分が上手くなった気分で、なかなか[:グッド:]

色覚異常? 錐体を光の波長(色)
人間の網膜には、光を感じ取る「視細胞」という細胞が、片方の目だけでも1億個以上あります。
視細胞は大きく2種類に分けられ、強い光を色まで細かく判別可能な「錐体細胞;すいたいさいぼう」と、明るい・暗いしか分かりませんが、弱い光でもしっかりと反応する「捍体細胞;かんたいさいぼう」になります。
網膜の中心部である黄斑には、錐体細胞が密に存在し、細かいものを判別したり、色を判別したりする事に長けています。黄斑から離れるほど、錐体細胞は少なくなりますが、網膜全体では600万個程度の細胞があると推測されています。
捍体細胞は黄斑以外の部分に、錐体細胞に比べるとまばらになりますが、網膜の全域に広く存在し、網膜全体では約1億個もの細胞があるようです。

ここで話が変わりますが、
人間に見える光は、可視光線といって、波長が370nm位から780nm位までの間の光になります。それよりも、波長が短い光が紫外線、長い光が赤外線になりますが、
可視光線の中では、長いものから、短くなるにつれ、
長い赤外線::短い紫外線
という、色として人間に認識されています。

ここで、視細胞・錐体細胞の話に戻りますが、人間の錐体細胞は、光の3原色である赤・緑・青の光を、それぞれ最もよく吸収する細胞に分かれていて、それぞれ、?L-錐体、?M-錐体、?S-錐体と呼ばれています。
?L-錐体
主に560nm程度(Long:赤い光)によく反応する視細胞です。
?M-錐体
主に530nm程度(medium:緑の光)によく反応する視細胞です。
?S-錐体
主に430nm程度(short:青い光)によく反応する視細胞です。

3種類の錐体細胞のうち、例えばL-錐体に異常があると、赤の光が分かりにくくなるのですが、そのあたりはまた次回。

今日もお読み頂きありがとうございました。

色覚異常? 光の3原色と色の3原色

親知らず抜歯後で、やっぱりちょっとは歯が痛く(食べたり、ハミガキしたりするからかな?)、今日の外来ではちょこちょこ痛み止めを飲みました。
お昼の手術も痛み止めを飲みながらですが、
・白内障手術 7件
・瞳孔形成+抜糸+LRI+結膜弛緩症手術などまとめて 1件
無事に終わりました。

色覚異常?
光の3原色と色の3原色

子供の時に、色の3原色って習いました??
赤と青と黄色をの混ぜ合わせて、いろいろな色が作れるってやつですね。
正式には、赤紫(magenta)、青緑(cyan)、黄色(yellow)を使う場合が多いのですが、青(青緑)や黄色を混ぜると、緑になるってやつですね。

こんな感じ。色の3原色は、絵の具や絵画などで触れ合うせいか身近に感じるのは僕だけでしょうか?混ぜれば混ぜるほど、色が暗くなる特性があり、混ぜるほど光のエネルギーが減少するので、減法混色なんて呼ばれます。3色を混ぜると黒に近づくのですが、図工の時間に、絵具を混ぜるほど茶色や灰色、黒などの暗い色になった覚えがあります。
プリンターなども、色の3原色が基本になっています。(最近は出来るだけ色を細かく再現するために、6色インクなんていうもの流行っていますが)

では、テレビやパソコンのモニターも、同じ色の3原色で出来ているのかというと、ちょっと違うのですよね。
光(発光体)で色を作る場合には、光の3原色というのがあって、
赤(red)、緑(green)、青(blue)の3つの色を組み合わせて、様々な色を作り出します。色の3原色では、色を混ぜるほど暗くなりましたが、光の場合は、色を混ぜるほど明るくなる性質があり、混ぜるほど光のエネルギーが加算されるので、加法混色と呼ばれます。
赤と緑の光を混ぜると、黄色になるのですよね。絵具のイメージだとちょっと想像しにくいのですが・・・。

こんな感じで、赤・緑・青の3色の光を加えると、白を作り出すことができるのです。
テレビや、パソコンのモニター、携帯電話やスマホも光の3原色を使って色を表現しています。
(最近は、液晶テレビでクアトロンなんていう、黄色を加えて4色を使ったタイプも発売され出しましたが、黄色がキレイに光る分、赤・青・緑の明るさは落ちるんですよね。)

なんだか、美術の授業みたいになってしまいましたが、
実は人間の目は、光の3原色と同じで、赤と緑と青を感知する視細胞から出来ています
色覚異常は、この赤・緑・青のうち、一つまたは、2つ、または3つの全てに異常があり、色の感じ方に障害を起こす病態の総称です。

色覚異常?

今日は以下の手術を行いました。
・加齢性眼瞼内反症(さかさまつ毛・眼輪筋縫縮)2件
・白内障手術 6件
・眼内レンズ縫着術(無水晶体眼)1件
・網膜硝子体手術 4件(茎離断3件・切除1件)
 (黄斑浮腫1件、黄斑前膜2件、硝子体混濁1件)
無事に終わりました。

Q&Aで、色覚異常についての質問があり、少し書き始めてみますね。
色覚異常(しきかくいじょう)
目がいい。目が悪い。というと、病気ではない多くの人は、1.0とか0.2とか、視力検査の数値を頭に思い浮かべるかと思います。
このような一般的な視力検査は、形態覚と言って物の形を判断する能力の評価になります。他に、見え方の評価としては、緑内障などで問題となる視野(見える範囲)も必要ですし、そして、色覚(色がきちんと認識する能力)も考える必要があります。
視力の数値が1.0あって、広い正常な視野があっても、色が白黒の世界では生活が不便ですよね?

色覚異常は、この色を判別する能力に何らかの異常をきたした状態です。
まず、大きく、先天性(生まれつき)と、後天性(生まれた後に病気が原因で)の二つに分けられます。

後天性の色覚異常は、
例えば、白内障で水晶体が濁ることで、青や黄色の色合いに変化を感じるようになったりするのも、色覚異常に該当します。(逆に手術で治すと、もともとの正常な見え方に近づくため、色がキレイに見えるようになったと喜んでもらったりします。)
他に、重度なものとしては、色を感知することを得意とする錐体という視細胞が障害されるような、錐体ジストロフィーや、錐体が多く集まる黄斑部の病気(黄斑変性症や、糖尿病黄斑浮腫など)でも、視力の数値も低下しますが、色の判別が難しくなったり、重症例では白黒の判別しかできなくなることもあります。

上記のような後天性の色覚異常で、ある程度の年齢で、他の病気を原因として色覚が障害された場合は、患者様自身も「色が見えにくい。」と自覚することができますが、先天性(生まれつき)に色が分かりにくい場合には、初めから、そういう世界で育っていくために、自分が病気であるということを認識できません。
先天性の色覚異常は、本人が自覚しにくく、また、周囲の人間も色覚異常のかたの見え方を実感できるだけではないので、お互いに理解しあうことが難しいようです。

とっても難しい分野なのですが、今後、先天性の色覚異常について、少しづつ記載を続けていきたいと思います。