視神経炎? 病態と症状

最近、花粉症で来院される方が増えている印象です。
今日のお昼は以下の手術を行いました。
・白内障手術 9件
・緑内障手術 1件
みなさん無事に終わりました。

視神経炎? 症状
視神経は、眼球内で光を感じ取った網膜(カメラのフィルム)が、束になって脳へ伸びていく、橋渡しのコードです。視神経炎は、この視神経になんらかの原因で炎症が起こってしまう病気で、免疫機能の異常が原因として推測されています。

電化製品のケーブル・コンセントは、電線がゴムやビニールのカバーで包まれることで、電気が安全に内部の電線を伝って、流れることができます。剥き出しの銅線では、電気が別の方向へ流れて、ショートしてしまいますよね??
正常な視神経のコードも、髄鞘(ずいしょう)と呼ばれる成分で包まれていることで、ものすごいスピードで、かつ正確に、眼球から脳へと信号を伝えるのに役立っているのです。
視神経炎では炎症によって、このカバー(髄鞘)が破れてしまい、中の電線(視神経)がむき出しになることで(脱髄:だつずい)、信号を上手に伝えることができなくなったり、ダメになってしまうのです。
眼球に映った映像の情報を、脳へと送る事ができなくなるので、ものの見え方が低下してしまいます。

症状
視力低下:重症例では、数日以内に0.1以下になることもあります。
視野異常:特徴的な例では、中心暗点(物を見る中心部の視野欠損)
色覚異常:特徴的な例では、赤や緑が分かりにくくなります。
瞳孔異常:目に光と当てた時の瞳孔の反応が弱くなります(対光反応減弱)
眼球運動時痛:目を動かすと痛みが出ることがあります。

次回、記載しますが、実は視神経炎の一部は、脳や脊髄にも同じような病変を合併するものがあり、それらの病気の場合には、
脳や脊髄の病気の発生した場所に一致して、様々な症状が出現します。
手足の麻痺、振え、痛み、しびれ、
表情が作れない、ろれつが回らない、話せない、飲み込めない
排尿障害、失禁、気分障害
眼振、物が2重に見える(復視)
 などなど

このような症状が合併する場合には、眼科のみで診療を行うのではなく、
神経内科の先生が主体となって治療をお願いすることになります。

視神経炎? 視神経(ししんけい)とは

今日は県外から、外来や手術見学の先生に来て頂きました。
午後は以下の手術を行いました。
・眼瞼下垂症 2件(CO2レーザー:ミュラー筋タッキング)
・白内障手術 9件
・網膜硝子体手術(茎離断)3件
(黄斑前膜1件、動脈瘤1件、BRVO後の増殖網膜症1件)
あまり難しい手術はなく、5時前に終わって、夜は見学に来てくれた先生と食事ができました。

時間も出来たので、久しぶりですが病気のブログを進めます。
視神経炎? 視神経とは
普段の診療でみる眼科の病気というと、ほとんどが眼球の内部、もしくは眼球の表面上の問題です。
(中が濁っているとか、網膜が破れているとか、出血している。または、眼球の表面が乾いている、ゴミが入った、充血して目ヤニが出る。などなど)
表面上の問題は、スリットランプで拡大して診察すれば、簡単に把握できますし、眼球の内部の問題も、瞳孔を開いて、レンズでのぞきこめば殆どの病気はすぐに診断がついてしまいます。
ところが、「目が見えなくなった。」と、患者さんが来院された場合に、どんなに目の表面や、目の内部をのぞきこんでも、全く異常がない場合も稀にはあるのです。
「物が見える」という事象は、実は眼球だけで成り立っているわけではありません。眼球は光を感じ取る、ただのアンテナの役割で、実際に物を見て認識しているのは脳なのです。
「目が見えない=目の中に異常がある」と考える人が多いかと思いますが、実は、眼球に全く異常がなくても、脳が機能しなければ物は見えないのです。例えば、後頭部の脳梗塞で、視覚野が完全にダメになってしまうと、目の中はキレイで問題のない状態でも、失明してしまうのです。
(目玉だけを取り出して、物を見ることができるのは、ゲゲゲの鬼太郎のお父さんだけですね。)


これは、眼球から伸びた神経が、脳の後方の視覚野(しかくや)と呼ばれる部位までつながっているイメージ図です。(黄色矢印の先が視覚野です)

視神経(ししんけい)
視神経は、眼球内で光を感じ取った網膜(カメラのフィルム)が、束になって脳へ伸びていく、橋渡しの部分です。上のイメージ図の赤矢印の部位が視神経です。両眼の視神経は、頭の中の視交叉(しこうさ)と呼ばれる部分で混ざり合って、その後再度分離して、後頭部の視覚野に伸びていきます。

・視交叉よりも後方、後頭部の脳側に異常があると、両眼から伸びる神経が含まれているため、基本的には両眼の目の見え方に同じような障害をきたします。
・視交叉よりも前方、眼球との間、つまり視神経に異常があると、異常がある方のみの見え方に障害をきたします。

視神経や視交差、脳などの病気は、頭の内部の問題であり、通常の外来診療で、スリットランプやレンズを使っても、のぞきこむことはできません。
視神経の病気を疑った場合には、視力や視野などの検査に異常がないか?左右差がないか?対光反射に左右差がないか?などをよく観察し、MRIなどの検査を行っていく必要があります。

赤でくくった部位が視神経です。この中に、なんと約100万本の神経線維が存在しているんですって。

外科的な手術に比べると、複雑で難しい分野なのですが、僕は個人的に、眼球内に異常が見当たらない場合に、視神経に異常があるのか?それとも脳?脳のどのあたりが悪いのか?などを、いろいろ考えながら、診療を勧めるのが結構好きなのです。
続きはまた後日。最後までお読み頂き、ありがとうございました。