今日は以下の手術を行いました。
・眼瞼下垂症 2件(CO2レーザー:ミュラー筋タッキング)
・翼状片切除 1件(遊離弁移植)
・白内障手術 10件
・緑内障手術 1件(エクスプレスシャント トラベクレクトミー)
・網膜硝子体手術(茎離断)2件(糖尿病網膜症1件、黄斑前膜1件)
難しい症例はなく、時間内に終わりました。
最近は毎週のように眼科医の先生に見学に来て頂いています。
ありがたいことです。
久しぶりに病気のことを。
加齢黄斑変性症? 萎縮型黄斑変性症
以前に記載しましたが、黄斑変性症は大きく滲出型と萎縮型に分類されます。
今日は萎縮型に限定して、記載してみます。
病態と原因
萎縮型の加齢黄斑変性症は、黄斑部の網膜がその名の通り、萎縮してしまう病態です。dry typeとか、非滲出型と呼ばれることもあります。
加齢は人類全員に起こる仕方のない変化ですが、加齢によって老廃物が溜まって網膜が栄養不足に陥ったり、紫外線によって障害を受けるなどして、網膜の細胞が変性・萎縮(特に網膜色素上皮が萎縮)してしまう病態です。
同じ年齢でも、タバコや紫外線などの、黄斑変性症を発症しやすいリスク因子や、家系・遺伝などによって、病気になりやすい人・なりにくい人がいます。
症状
黄斑部に該当する、視野の中心部の見え方が侵されます。
視力低下、歪んで見える、小さく見える、色がぼやけるなどが起こります。
疫学
厳密な意味での、正式な「萎縮型黄斑変性症」は日本人には少ないとされ、有病率は、50歳以上の方で約0.1%程度とされています。
ただし、滲出型黄斑変性症の治療後などで、出血や浮腫がなくなり、乾いた安定した状態になった病態も、同じような病態と考え、非滲出型・非滲出型と呼んでしまう場合もあります。
検査
ちょうど今日、萎縮型黄斑変性症の患者様が初診となりました。
眼底写真をとると、矢印のように、黄斑部に円形の萎縮がみられます。本来、黄斑はオレンジ色が強くなるのですが、白っぽく、色が抜けてしまっているのが分かりますか?
これは、OCT検査:黄斑部網膜の断面図です。
上が正常な黄斑部ですが、ピンクで指した部位に、キレイな層構造と、ある程度の厚みをもった網膜があります。
下が、今回の患者様の断面図ですが、矢印の先、黄斑部の網膜が萎縮してなくなってしまい、層構造が侵され、網膜が薄くなっているのが分かります。
治療
最近、加齢黄斑変性症の治療として、眼球に注射をする治療が流行っています(後日、記載する予定です)。テレビや、新聞、雑誌などでも黄斑変性症の治療を取り上げる事が増え、患者様も治療を期待されていらっしゃるのですが、注射による治療などは、基本的に滲出型黄斑変性症に行われる治療です。
残念ながら、現時点では萎縮型黄斑変性症の治療法は見つかっていません。
最近ノーベル賞で話題の、ips細胞による治療や再生医療などの研究が進み、黄斑部の網膜の細胞を再生したり、移植したりできる日が来るといいですね。
萎縮した細胞を「元に戻す」という、積極的な治療はまだありませんが、紫外線やタバコによって悪化することは分かっていますので、
進行予防として、禁煙、サングラス、肉より魚中心・緑黄色野菜などの食生活などを心がけることが望まれます。
定期健診
治療法がない、萎縮型黄斑変性症ですが、年単位で少し視力が落ちるなど、多くの場合で進行は非常にゆっくりです。ゆっくりゆっくり進むために、自覚症状が乏しいのも特徴です。
ゆっくりしか進まないし、治療法もないのなら、眼科に通う必要はないのか??というと、そうではありません。実は、萎縮型だと考えていた病態が、滲出型に変わってしまったりと、稀ですが急激に悪化することもあり得るのです。
当院では、通常、初診の場合で3ヶ月?半年後に再検査、その後は変化がなければ1年に1回の定期検査を予定しますが、
月に1回くらいは、ご自身で片目づつ見え方をチェックして、歪みや視力低下を自覚した場合には、早急に受診して頂くことも重要です。