黒目が濁っている:Terrien周辺角膜変性症

今日は以下の手術を行いました。
・白内障手術 11件
・緑内障手術 1件
・網膜硝子体手術(茎離断) 4件
 (黄斑前膜3件、糖尿病網膜症・硝子体出血1件)
無事に終わりました。

手術の内容ではないのですが、今日手術をした患者様の病態から一つ。
Terrien周辺角膜変性症
角膜(黒目)は眼球に光を入れる窓口としての役割があり、光をよく通すために、正常な角膜は血管もなく透明な臓器です。
角膜が濁ってしまうと、濁った部位は光がとおりにくくなってしまいます。特に角膜の中心部が濁ると、視力が低下して困ってしまうのですが、角膜・黒目の周りに濁りは直接は視力に影響しません。
以前に、特に問題ない角膜のリング状の濁り「老人環:ろうじんかん」に関して記載したことがあるのですが、今日の外来でも、老人環の見た目を心配して来院された女性が1名いらっしゃいました。

ただし、黒目の周りがリング状に濁ってしまう病気は、良性の老人環のみではありません。角膜周辺部潰瘍、Mooren潰瘍など、悪い病気もあるのですが、今日は別の濁りが出てしまった患者様の手術があったので、記載してみます。

70代の女性で、小美玉市医療センターで2,3年前から担当させて頂いています。
はじめてあった時から、下の写真のように、黒目の周りが濁っていたのですが、年単位で振り返ると、徐々に濁りが増えているようです。
病態

写真のように角膜の周辺部がリング状に混濁します。良性の老人環に比べて、不均一で強い混濁を認めます。はじめは黒目の周辺に点状の混濁が始まり、徐々に混濁が強くなります。混濁は脂質が蓄積したり、本来角膜には存在しないはずの血管が侵入したり、正常なコラーゲン組織が破壊されたりして起こります。混濁と同時に角膜の厚みが薄くなって、脆くなっていきます。
重症例では、ちょっとしたケガでも薄くなった場所に穴が開いてしまう事があり、緊急手術が必要になることもあります。

症状
病気自体には強い炎症が起こることはなく、通常の落ち着いた状態では痛みなどはありません。ただし、表面がデコボコするため、キズがつくなどして痛みや炎症が起こることもあります。
余程でないと、角膜の中央までは混濁が進むことはないのですが、混濁部位を中心に角膜にヒキツレ・歪みが生じて、不正乱視とよばれる状態が起こり、視力が低下していきます。

疫学
どの年齢にも、男性にも女性にも発症することがありますが、中高年の女性に発症することが最も多く、多くは両眼性です。

原因
残念ながら正確な原因は不明です。

治療
残念ながら、進行を止めたり混濁を治したりする治療法は、現在の医学では存在しません。

今日の手術は、Terrien周辺角膜変性症の病気自体を治すわけではなく、病気をお持ちの患者様の手術だというだけなのですが、

まず左目の手術を行いました。近年は白内障の手術のキズ口は2mm程度と非常に小さいので、キズ口を縫う必要がないのですが、Terrien周辺角膜変性症ではとにかく角膜が薄いので、多くの場合でキズの縫合が必要になったりと(右写真)、通常の手術に比べて気を使う事が多々あります。続けて、緑内障の手術を行いました。

予想外に?キレイに行う事が出来たので、そのまま続いて右目の手術も。


まず白内障を行いますが、やはりキズ口は縫って補強します。緑矢印の部分は「偽翼状片:ぎよくじょうへん」と呼ばれる病態で、Terrien周辺角膜変性症では時々合併するのですが、偽翼状片が出来ると混濁部が広がり、さらに手術が難しくなります。

こちらの目は、引き続き硝子体手術(黄斑前膜)を行いました。

実は半年ちょっと前から、左目の緑内障も、右目の黄斑前膜も手術をしたほうがいいと思っていたのですが、角膜の混濁と、薄くて弱い所見から、手術で合併症が起こったら嫌だな。とためらっていた患者様です。
結局、視力も視野も悪化傾向であり、「やるしかないだろ。」と決意をして、お勧めしたのですが、終わってみれば、問題なく上手にできました。(もちろん、明日以降の観察が必須ですが。)
これなら、半年前にやってしまった方がよかったのでしょうが、全てが全て、期待通りにはいかないので、難しいのですよね・・・

「白内障、硝子体、緑内障」
他院様で手術不可能と言われた、難症例の手術もお引き受けしていますので、そのようなことがありましたら、是非お問い合わせください。

ヘルテル眼球突出計:眼球突出度測定

今日の午後は県外の眼科様、夜や緊急で県内の眼科様での硝子体手術に呼んで頂きました。結構遅くなったのでブログのお休みも考えましたが、診察室を見渡して、簡単に書けそうなネタを発見したので、ちょっと頑張ってみます。

ヘルテル眼球突出計
眼球突出度測定

病気じゃなくても、人相は人それぞれで、どちらかというと目が出ている方、逆に少し凹んでいる方(奥目の人)がいます。ある程度の個人差があってあたり前ですが、病気やケガが原因で、目が突出したり、陥没したりしているのを測定する時に役立つのが、ヘルテル眼球突出計です。


こんな形をしているのですが、両側の三角の部分に、鏡や目盛がついています。

拡大するとこんな感じ。

使い方のイメージですが、

両目の外側の骨に機械を押しあてて、矢印の方向から、鏡にうつった角膜(黒目)の頂点の目盛を測定します。


実際の測定ですが、緑矢印の部位が測定値となります。

眼球が凹む(陥没)病気というのははあまりなく、ケガで眼窩底骨折が起こった場合などに眼球が凹みます。
主に問題となるのは、眼球が突出する場合で、眼球のうしろ(眼窩内)に
感染症や腫瘍(癌)、炎症による腫れや、甲状腺の病気などで眼球が前方に押し出されることが原因となります。
(各病気の詳細は、おいおい記載していきます。)

教科書では、日本人の一般的な眼球突出度は14?16mm程度とされていますが、実際には、顔立ちは様々で個人差も大きく、10mmとか20mmとかでも全く問題ない場合(正常)も多々あります。
右目と左目の差が大きな人は少なく、一般的には左右差の正常値は2mm以内とされており、片方の目にのみ起こる病気があった場合には、とても役立つ検査です。
また、一回の測定で病気との関連が判定できない場合でも、経過とともに突出が大きくなってくる場合や、治療によって突出していた眼球が元に戻っていく場合など、眼球突出の程度が、時間とともにどう変化するかの観察にも役立ちます。

外来で「目が出てきている気がする」という訴えで受診をされる患者様がいらっしゃいますが、ご自宅にはヘルテル眼球突出計はありませんよね?
僕たち眼科医も、初対面の患者様の目が、病的に突出しているのかどうかを、いきなり判定するのは困難です。(ビックリするほど突出していれば別ですが。)
受診するときに、10年前の写真、5年前の写真、半年前など、以前の写真を一緒に持参頂けると、非常に助かります。特に、変化が大きく心配な人は、正面の写真だけでなく、頭の上側から写真を撮影したりすると、突出してきているのが分かりやすくなるのでお勧めです。
(僕も外来で、デジカメでカシャカシャと、遠慮なく皆さんを撮影していますが、診療に必要なためで、決してストーカーとかではありませんよ。)

水疱性角膜症? 治療

今日のお昼は以下の手術を行いました。
・眼瞼内反症手術 1件
・白内障手術 8件
みなさん無事に終わりました。

水疱性角膜症? 治療
水泡性角膜症は、角膜内の水分量の調節を行う角膜内皮細胞の減少が原因となって、角膜内に水が溜まって、白く濁ってしまう病態です。

角膜内皮細胞の数が増えて、元の状態に戻ることが、眼科医みんなの夢の治療ですが、残念ながら現在の医学ではかないません。
一度減ってしまった角膜内皮細胞は増えることがないのです。
(再生医療の進歩により、将来的には内皮細胞の再生が可能となる未来が来るとは思いますが。)
ですので、生まれもった角膜内皮細胞が減ることがないように、内皮細胞が減るようなリスク・原因を避ける必要があります。

さて、実際の治療ですが、
?原因の除去・予防
内皮細胞が減るような病態がが続いている場合には、それを解決して、水疱性角膜症が進行しないようにする必要があります。例えば、眼圧が高くて内皮細胞が減少する場合には、眼圧を下げて正常化する必要があります。

?点眼薬
水疱性角膜症に陥った角膜(黒目)は、キズが付きやすかったり、ドライアイ症状が出やすくなったり、感染症を起こしやすくなったりしますので、各症状に応じて適宜点眼薬を使用することになります。

?高調食塩水の点眼薬:乾いた方がよく見える
本来、角膜内の余分な水は、角膜内皮細胞によって眼球の内側に排出されます。内皮細胞による水のくみ出しが期待できなく、角膜内に水が溜まってしまう場合に、濃度の濃い塩水を目に点眼すると、浸透圧により、角膜表面から眼球の外側に余分な水が引っ張られ、角膜内の水分が減少させることができます。これによって、角膜の厚みが薄くなり、透明度が増して、一時的に視力を改善することができます。ナメクジに塩をかけて、乾燥させるのと似ていますね。
目をあいていると、角膜表面から空気中に水分が蒸発します。この蒸発も角膜内の水分を減少させる効果があります。逆に目をつぶったままだと、角膜から水分が蒸発することはないので、角膜内の水分は多めになります。このような理由で、水疱性角膜症の方で、透明でいられるか濁ってしまうかの境界程度の病態の場合には、朝起きた時が最も視力が悪く、目を開いて生活をしていると少しづつ視力が回復したりします。

?コンタクトレンズ
もう少し内皮細胞が減って、濁りが強くなってくると、角膜にキズがついたり、痛みが出たりするようになります。治療用のソフトコンタクトレンズを装用することで、角膜を保護して痛みを和らげることができます。

?角膜移植
水疱性角膜症が進行し、角膜の混濁が強くなった場合には、角膜移植を行って透明な角膜を取り戻す必要があります。角膜の全てを交換する場合と、近年は内皮細胞(もっとも内側の層)のみを主体に交換して、角膜の上皮(表面)や実質(中間部)は、そのまま残すという角膜内皮移植という術式も年々成績が向上しており、注目されています。
(すみません。当院では現在のところ角膜移植は行っておりません。)

今日もお読み頂きありがとうございました。

ジャック・オ・ランタン形成術

今週末は入院の方が3名残ってしまいましたが、今のところ皆さん良好な経過で週末の診察も気が楽です。

かなり涼しくなってきて、秋の気配が近づいてきましたね。
秋のイベントとして、何年か前から日本でもハロウィンをよく目にするようになりました。今週末は雨だったので、ハロウィンにちなんだ創作を行ってみました。

ジャック・オ・ランタン形成術
ハロウィンで有名な、カボチャの提灯です。
善霊を引き寄せ、悪霊を遠ざける効果があるとされているようですが、
「trick or treat;お菓子くれなきゃ、いらずたしちゃうぞ!」
ランタンを庭先や玄関に飾ると、子供たちに「うちに来たら、お菓子をあげるよ。」というサインとしての役割もあるよう。

では、術式を記載します。
?患者さん(カボチャ)を手に入れる。
アメリカでは10月からは、いたるところで黄色のカボチャが売られているようですが、今日はまだ早いせいか、日本のスーパーでは発見できませんでした。
妻の父(じいじ)が、趣味の家庭菜園でカボチャを作っている。との噂を聞きつけ、いきなり帰省してみたのですが、

黄色ではありませんでしたが、カボチャがゴロゴロ。お父さん、これって趣味の範疇??

?切開のデザイン
クレヨンで、顔のデザインを下書きします。

ちょっと見にくいですが、左が3歳児の下書き、右が5歳児です。3歳児には、まだ理解が難しいようです。怖いランタンほど、お化けをやっつける力があるようです。できるだけ怖ーい顔にしてくださいね。

?頭部切開と脳のくり抜き
怖い題名になってしまいました。段ボールカッターと呼ばれる、カッターとのこぎりの間みたいなものを、ホームセンターで購入(350円くらい)し、頭部を切開しました。そして、スプーンで脳??中身を出来るだけくり抜きます。

?顔面形成
同じく段ボールカッターで、顔を切り抜きます。

痛てーーっ!目が目が・・・・。

口も切り抜いて。

?ローソクを入れる
中にローソクを入れて、蓋をかぶせたら終了です。

(カボチャやローソクの大きさによって、蓋がこんがり焼けてしまうので、注意してください。青臭い臭いが、美味しい匂いに変わってしまいます。)

2個目からは30分もあれば作れそうです!とても面白いので、皆さんにもお勧めです。


trick or treat!!

水疱性角膜症? 角膜内皮細胞減少の原因

今日は以下の手術を行いました。
・加齢性眼瞼内反症(眼輪筋縫縮) 2件
・眼瞼下垂症(CO2レーザーミュラー筋タッキング) 2件
・斜視手術(前後転法) 1件
・白内障手術 8件
・網膜硝子体手術(茎離断) 4件
(若年性増殖糖尿病網膜症1件、糖尿病+白血病網膜症に伴う黄斑浮腫1件、糖尿病網膜症に伴う黄斑前膜2件)
みなさん無事に終わりました。よかったです。

さて、角膜の続きです。
水疱性角膜症?
角膜内皮細胞減少の原因

角膜内皮細胞は、角膜内の水分を眼球の内側に排出することで、角膜内の水分量を調節しています。角膜が透明に維持されるためには、一定の水分量に調節されていることが重要で、もし、角膜に余分な水分があると、角膜が厚くなって、白く混濁してしまいます⇒水疱性角膜症

実際の水疱性角膜症の患者様の写真です。
通常の黒目に比べて、白く濁っているのが分かるでしょうか?

原因
角膜内皮細胞はが何らかの原因で減少し、1mmx1mmの四角の中に内皮細胞の数がだいたい500個未満となった時に、水泡性角膜症が発生します。
角膜内内皮細胞が減少する原因としては、以下のようなものがあります。
・加齢(正常でも高齢者では少なくなります)
・外傷(裂傷などだけでなく、打撲傷でも起こります)
・眼科手術(白内障などの眼球内の操作を必要とする手術)
・高眼圧症、緑内障
・ぶどう膜炎
・感染症(角膜潰瘍など)
・コンタクトレンズによる酸素不足・誤った使用法
・点眼薬の副作用
・先天的、遺伝的な病気(Fucks角膜ジストロフィーなど)

今日もお読み頂き、ありがとうございました。

すみません。お返事が遅れています。

今日も網膜剥離が・・・。

すでに中心部(黄斑)まで剥がれており、小美玉市医療センターでの手術後に、夕方にクリニックに戻って手術をしました。手術は順調に終わりよかったです。
夜は、県内の医院様で硝子体手術。これも重症でした・・・。
病気は次から次に発生しますねぇ。

ご質問をいくつか頂いており、お返事を書きたいと思っていますが、明日か明後日にまとめて記載しますので、申し訳ありませんが、もうしばらくお待ちください。
Y様、水泡性角膜症(角膜内皮)も進めていきます。すみませんが少し時間を下さい。

今年の芝生:2012年は反省

今週末は、関東の3大祭りのひとつ、「石岡のお祭り(常陸國總社宮大祭)」で、石岡市内は大いに盛り上がったようです。
詳細は去年のブログを。
僕は今年は、出張や、ちょっと出かけたりで、チラッと「幌獅子:ほろじし」を見学しただけで終わってしまいました。残念・・・[:悲しい:]

なので、今週末は別のブログを。
今年の芝生:2012年
今年は仕事が忙しくなり、ベンチをペンキで塗ったりと、楽しい日曜大工もありましたが、堆肥やエアレーションといった、芝自体のお世話が昨年よりも少なめになってしまいました。

するとやはり、緑の具合もは昨年に比べてイマイチになってしまいました・・・。ところどころ剥げている場所もあるようです。やはり植物も生きものですから、手間をかけただけ元気になるようです。勝手にキレイな芝生にはならないのですね。「それが分かったのが今年の収穫」と思って、次年度に生かしたいと思います。


エコを目標として、緑のカーテンもチャレンジしましたが、夏も終わる今の時点で、スカスカの状態にしか育ちませんでした。これも来年リベンジです。

ただし、今年の一番の問題点は、1ヶ月くらい前ですが、芝刈りの機械に左手の人差し指を巻きこまれたことです[:撃沈:]
思ったより血がでて、手術医として「ヤバイ!」と思い、出来るだけの治療をしましたが、ケガから3日後の手術日にはどうにか間にあいました。
芝生も大事ですが、手術をお待ち頂いている方がいらっしゃることも考えて、自分の手も大事にしないといけないな。と、深く反省しました。

ここまで書いてみて、今年の芝生は、どうにも反省点だらけのようです。
来年は素敵な写真をupできるように頑張りますね[:グッド:]

水疱性角膜症? スペキュラーマイクロスコープ

連休前ですが今日も少し急ぐ症例があり、夕方は手術に。
・網膜硝子体手術(茎離断)2件
 (最強度近視・網膜多発裂孔による胞状剥離1例、増殖糖尿病網膜症・虹彩新生血管1例)
両名とも30代の患者様で、硝子体手術を受けるのにはリスクが高いのですが(若い人の手術は難しい)、重症度が高く、仕方なく・・・。といった具合です。
手術はキレイに出来たと満足していますが、合併症含めて、術後の観察はしっかりやらねば。

剥離は穴だらけ・・・。黄斑が剥がれていないのはラッキーです。反対目も穴だらけ・・・。

糖尿も両眼・・・。もとの眼科様でレーザー治療をしっかり受けていますが、それでも出血を繰り返し、カサブタや茶目の新生血管が出来はじめてしまったようです・・・。重症なのでアバスチンを入れて。今日は一応片目だけにしました。

水疱性角膜症? 
スペキュラーマイクロスコープ

先日、角膜内皮細胞が、角膜を透明に維持する役割を担っていることを記載しました。
内皮細胞は数が多いほどよく働き数が少ないと角膜を透明に維持する力がなくなってしまい、白くむくんで濁ってしまう性質があります。
通常、正常な人の角膜では、1mmx1mmの四角の中に3000個程度の内皮細胞があります。(個人差があります。)
これが、加齢や疾病、手術などによって減少し、1mmx1mmの中に500個程度になると、角膜に濁りが現れるようになります(水疱性角膜症)。
そうはいっても、1mmの四角の中の3000個とか500個とかの細胞を、肉眼で判別することはできません。眼科医が診察で目を除く、スリットランプでは、よーく頑張るとある程度、細胞のツブツブが分かるのですが、実際の診療ではもっと簡単に角膜内皮細胞の数を測定することができます。

スペキュラーマイクロスコープ
角膜に光を当てると、反射光が返ってきますが、角膜内皮と前房の房水との境界で作られる反射光にピントを合わせ、内皮細胞の拡大写真を撮影することができる機械です。

実際にはこんな機械に顔ののせて、中心部の光をじっと見ていると、機械によりますが黄色や緑の光が出てきて・・・・。ほんの数秒で撮影終了です。


?一番左が、先ほど取ってもらった僕の右目です。
1mmの四角の中に2942個の細胞があると計算されました。久しぶりに取りましたが、よかった。正常のようです。数として、3000個近くあるのが正常ですが、細胞の数以外にも、「一つ一つの細胞が6角形の形だと元気。」などと、いろいろな評価をします。
?中央は、一つ一つの細胞が大きめになって、1mmの四角の中に1162個の細胞があると計算されました。ある角膜内皮細胞が死んでしまうと、その隣の細胞が隙間を埋めるように大きくなります。なので、写真では一つ一つの細胞が大きくなったり、6角形の形がいびつになるなどの変化が起こります。
?右側の写真は角膜移植後の患者様の検査結果です。残念ですが、1mmの四角の中には、422個の内皮細胞しかないようです。一昨年は650個、昨年は550個あったので、もう少し時間がたつと、水疱性角膜症が再発し角膜が濁ってしまう可能性が推測されます。

スペキュラーマイクロスコープは、角膜が濁ってしまってからは、撮影することができない検査で、完全な水疱性角膜症に陥って、内皮細胞数が200とか300個とかの症例では検査を行う事ができません。上記の422個は、キレイに検査を出来るギリギリの結果です。

眼窩脂肪ヘルニア(脂肪脱)?

今日は以下の手術を行いました。
・白内障手術 7件
・眼瞼下垂症手術 6件(CO2レーザー)
・緑内障手術 2件(エクスプレスシャント1件、隅角解離1件)
・網膜硝子体手術(茎離断)2件
(黄斑前膜1件、糖尿病網膜症による硝子体出血1件)
みなさん無事に終わりました。
眼瞼下垂を行った方のうち、2名は今夜の時点で喜んで頂けました。電話でですが「嬉しかったので顔の写真を撮ったよ。」というお答えを頂きました。僕も嬉しいです。CO2レーザーは本当にいい機械です。

さて、先週書いた、脂肪脱の続きでも。
眼窩脂肪ヘルニア(脂肪脱)?

こんな感じで、目の外側の上の方に、眼球後方の脂肪組織がプリッと出てきてしまう病気です。

症状は、ゴロゴロなどの異物感や、あまりに大きいと外側の視界を遮ぎられる。などがあります。あとは、見た目(整容面)の問題で治療をご希望される場合も多いようです。

手術:脂肪ヘルニア切除
目薬で治ったら楽ですが、残念ながら現在は手術以外の治療法はありません。

まず、仰向けに寝て、目薬の麻酔を行い、消毒を行います。

仰向けに寝ると、重力で、プックリ出ていたヘルニアが小さく見えたりします。
脂肪ヘルニアは、結膜という粘膜やテノン嚢と呼ばれる結合組織で包まれています。まずは、ハサミで結膜やテノン嚢をチョキチョキ切って、摘出する脂肪ヘルニアを露出させます。
(CO2レーザーで行う治療も流行っていますが、当院では水色矢印のように切開部を軽くバイポーラで焼いてから、ハサミで切開しています。もしレーザーが脂肪に直接届いてしまったらと思うと、ちょっと怖くて・・・。)


緑矢印が脂肪ヘルニアです。周りの組織からヘルニア組織のみを丁寧に剥離していきます。


剥離・露出させた脂肪組織の根元を糸で縛り、縛った手前の組織はハサミでチョッキンと切ってしまいます。


縛った糸から向こう側の組織を、眼球の奥へ押し込むと、最初から何もなかったかのようにキレイに。

このまま手術を終えると、再度、脂肪が前に出てきてしまう(再発)ことがあるようで、

テノンと呼ばれる結合組織を、白目(強膜)に縫いつけて、脂肪が前に移動する隙間を閉じてしまいます。そして、最初に開いた結膜のキズを糸で縫ったら終わりです。
(手術方法は教科書や病院によって様々です。再発することがあり、みんな様々な術式を考えているようです。そう再発するものではないのですけどね。)


手術翌日は出血による赤身が目立ちますが、

2週間後にはかなりキレイなります。

目薬による麻酔で、だいたい片目が10分?15分程度の手術です。
両眼に出来ていることが多く、通常当院では日帰りで同時に行っています。
洗顔は翌日から可能です。

費用は少し変なのですが、
手術件数などで施設基準というものを満たすと、表在性眼窩腫瘍切除(価格高い)、基準を満たしていない施設では、結膜嚢形成手術(価格安い)という術式で請求されることが多く、病院によって多少の差が出るようです。
当院では、残念ながら少し高い方・・・。
ただし、70歳以上で日帰りの場合には高額医療費という制度に該当し、両眼で12000円となります。

水疱性角膜症? 角膜内皮細胞

今日のお昼は以下の手術を行いました。
・老人性眼瞼内反症 1件
・結膜弛緩症手術 2件
・白内障手術 6件
・緑内障手術 1件
みなさん無事に終わりました。
結膜弛緩症などのブログも書いてないなぁ。まだまだ病気はいっぱいあります。

今日は角膜(黒目)の話題を。
水疱性角膜症?(すいほうせいかくまくしょう) 
角膜内皮細胞(かくまくないひさいぼう)
眼球は、黒目(角膜)から光が入って、目の奥のフィルム(網膜)に光が当たると物が見える、カメラのような構造をしています。入ってきた光が、目の中で進行方向を変え(屈折)、ちょうど網膜上で像を結ぶ(ピントを合わせる)ことができれば、物が良く見えるのですが、この、光を曲げる(屈折させる)役割を担っているのが、角膜と水晶体(レンズ)になります。

赤矢印の先が角膜になりますが、角膜は光をよく通す必要があり、出来るだけ透明でなくてはなりません。この、角膜を透明に維持する役割を担っているのが角膜内皮細胞になります。


角膜の拡大図ですが、角膜は1枚の膜でできているわけではなく、緑矢印がわ(眼球の外側)を薄く覆っているのが上皮細胞。黄色矢印がわ(眼球の内側)を薄く覆っているのが内皮細胞になります。上皮と内皮の間の最も暑い部分は角膜実質と呼ばれます。

角膜内皮細胞の最も重要な仕事は、角膜の水分量を調節することです。
角膜に余分な水が溜まり過ぎると、角膜が厚くなって、白く混濁してしまいます(水疱性角膜症)。角膜内皮細胞は、角膜に溜まった水分をポンプ機能により眼球の内側へと排出し、角膜の水分量は一定に保つことで、角膜の厚みや透明性が維持することに役立ちます。

今日もお読み頂きありがとうございました。