黄斑円孔? 治療:手術

今日は以下の手術を行いました。
・白内障手術 13件
・水晶体摘出術+前部硝子体切除(亜脱臼・浅前房)1件
・網膜硝子体手術(茎離断) 4件
 (裂孔原性網膜剥離1件、糖尿病網膜症1件、黄斑前膜2件)
皆さん無事に終わりました。

と、県南の病院様からお電話があり、明日も網膜剥離があるようです。
でも、ただいま満床です。うーん、困ったぞ・・・。

黄斑円孔? 治療:手術

硝子体が収縮して、黄斑部の網膜を引っ張って、ビリっと破けてしまう病気ですが、黄斑円孔は残念ながら目薬では治りません。治療法は手術のみになります。
硝子体手術と言って、目の奥の方まで器械を入れる必要があります。

まず、仰向けになって、麻酔の目薬や消毒、注射の麻酔を行います。

50?60歳以上では、白内障の手術を同時で行います。

次に目の奥の方まで器械を入れ、収縮して網膜を引っ張っていた硝子体を出来る限り切除します。残念ながら、硝子体に連れ去られてしまった黄斑部の網膜を元の位置に戻すことはできず、硝子体と一緒に切除してしまいます

その後、網膜の最表層の薄皮を1枚だけピンセットで剥いで、網膜をやわらかくする作業を行います。(内境界膜剥離)。
実は網膜は10枚の膜が重なって出来たような構造をしていますが、一番内側の内境界膜は網膜を硬く固定する役割などがありますが、物を見るという機能には関与していません。内境界膜を手術で1枚剥いでしまうと、網膜がやわらかくなり、伸びやすくなります

緑矢印が黄斑円孔です。内境界膜は透明に近い膜で、ピンセットでつまみにくい場合があり、そんな時には、青や緑の色素を振りかけて、膜に色をつけることで、手術中に見やすくしたりします。黄斑円孔の周りで肌色のようになった部位が内境界膜が剥がされた部位になります。

最後に目の中に空気を入れて、手術は終了になります。目の中に空気が入っている間はキラキラと目が光って見えます。

だいたい20分?30分くらいの手術ですが、実はこれだけで終わりではありません。きちんと治すためには、手術後に数日、うつ伏せを頑張って頂くことになります。

手術後にうつ伏せをすると、空気の浮力によって、目の奥の方(黄斑のほう)に向かって力が働きます(赤矢印)。この浮力が眼球内の斜面では、網膜を眼球の最後方、頂点に向かって、網膜を引き伸ばすような力に変換されます(青矢印)。この力によって、黄斑円孔の方向へ網膜が引き寄せられ、穴が閉じることになります

黄斑円孔? 経過

今日の午後は、小美玉市医療センターで井上先生と手術でした。
・白内障手術 6件
・翼状片手術 2件
すごーく早く終わって、3時には暇に。久しぶりに幼稚園のお迎えに行ってみました[:子供:]まぁ、ゆとりは長くは続かず、夜には網膜剥離の紹介のお電話で、明日さっそく緊急手術となりそうですが[:冷や汗:]スタッフのみなさんよろしくです。

黄斑円孔? 経過
黄斑円孔は中心部の見え方が低下する病気ですが、基本的には治療法は手術しかありません。では、手術をしないとどうなってしまうのでしょう?みんな失明してしまうのでしょうか?答えはNOです。

黄斑円孔の大まかな自然経過としては、
?稀ですが、自然治癒(穴が勝手に閉じる)する場合があります。
?同じく稀ですが、網膜剥離という病態を合併して、失明に至ることがあります。
?そして、それら以外、最も多くの場合では徐々に視力が低下し、中心部のみの見え方が奪われ、0.02とか、0.05とか、0.1以下の視力で落ち着いてしまいます。

通常は、黄斑部以外の網膜には異常が出ないため、周辺部の見え方(視野)は正常なままで、失明に至ることは殆どありません
なので、患者様が90歳とか100歳とか、あまりに高齢で、もう片方の目が問題ない場合には、「こっちの目はこのままでいいかな?」なんてお勧めする事もあります。また、発症後1年以上経ってしまった症例は、穴が閉じても視力の回復は殆ど望めないため、既に視力が0.04で病気が古くなってしまった症例なども手術は行いません。(いつから見えにくくなったかを、ハッキリ覚えている人ばかりではないので、迷う事も多々ありますが・・・。)
(当院で、開院後2年間を調べると、古いものを含めて黄斑円孔を認めた人は39名のようですが、手術をしたのは29名のようです。ちなみに手術をした全員で円孔の閉鎖を得られています。)

また、稀に自然治癒する事があると書きましたが、それは視力が元通りに戻るという意味ではありません。穴が閉じて、それ以上の悪化を認めなくなる。という意味です。例えば、発症後に半年も経ってから自然に穴が閉じても、良好な視力は望めません。
後日詳しく記載する予定ですが、黄斑円孔は発症早期に手術をするほど、視力の回復が良好なので、発症早期の患者様が見つかった場合には、通常は出来る限り早く手術をすることが多くなっています。

注)上記は一般的な特発性黄斑円孔についてです。僕たちが診察をして、自然治癒を期待することが出来そうだと思えば、少し様子とみたいと説明する場合もありますし、強度近視などで、黄斑円孔網膜剥離という失明につながるような合併症の発症リスクが高い場合には、積極的に手術をお勧めする場合もあります。詳しくは担当の先生とよく相談しましょう。

黄斑円孔? 原因

今日のお昼は以下の手術を行いました。
・眼瞼腫瘍切除 1件
・眼瞼下垂症手術 1件
・麻痺性内斜視 1件
・白内障手術 5件
無事に終わっています。

さて、黄斑円孔の続きです。
黄斑円孔? 原因
黄斑円孔の原因を分類すると、以下のようになりますが、
?特発性(加齢に伴う後部症下剥離に伴うもの)
?近視性(強度近視に伴うもの)
?続発性(黄斑前膜など、他の病気によるもの)
?外傷性(外傷により後部硝子体剥離が早まった場合など)

最も多いものは特発性と呼ばれる、加齢に伴って起こる病態です。
加齢に伴って、目の中の硝子体が収縮し、後部硝子体剥離と呼ばれる現象が起こることを以前に書きました。(⇒後部硝子体剥離について以前のブログ
硝子体の収縮により、正常な目では、網膜と硝子体が問題なく分離・剥離していきます。ところが一部の患者様で、網膜と硝子体の癒着が強い場合に、網膜をビリっと破いてしまう場合があります。黄斑は構造上、薄く弱いという特徴があり、後部硝子体剥離によって、黄斑部の網膜がビリっと破けて、硝子体にくっついていってしまうと、黄斑にぽっかり丸い穴が開いてしまうのです。


若い時の硝子体は、目の中いっぱいに広がり、黄斑部でも網膜と硝子体はペッタリくっついています。


加齢に伴って、硝子体が前の方に向かって収縮を始めます。通常は網膜と硝子体はキレイに離れていきますが、黄斑部での癒着が強いと、硝子体が黄斑を引っ張ってしまいます。OCTでは水色矢印の先に白い線が見えますか?これは硝子体の最後方の境界が写っている画像です。このような状態を黄斑牽引症候群といって、黄斑円孔のリスク群(予備群)として、ゆがみを自覚したりします。

さらに硝子体が収縮した場合にも網膜との癒着が取れないと、網膜がビリっと破れてしまい、黄斑部の網膜が硝子体にくっついて連れ去られてしまいます。OCTで水色矢印の先が硝子体の境界です。ピンク矢印の先に破れた網膜の断片が写り、黄斑部がポッカリと穴になってしまっています。

そんなわけで、
後部硝子体剥離を原因とする裂孔原性網膜剥離と同じようになりますが、
特発性黄斑円孔の原因をあえて上げようとすると、
●生まれ持った性質(黄斑部の網膜が薄い、硝子体と網膜の癒着が強い)
●加齢

という事になりますので、なにか悪いことをしたのかな?などと後悔をする必要はなく、「病気になる人はなる。」という程度にお考えください。

他の黄斑円孔の原因としては、
?強度近視のかたは、網膜が薄く、眼球の形状にも問題があり、黄斑円孔が起こりやすくなったり、重症化しやすくなったりします。
?網膜剥離などで硝子体手術後やレーザー治療後、黄斑前膜でカサブタのヒキツレにより網膜が断裂してしまう場合、
?外傷による外力で、穴が開いてしまう場合などがあります。

?については、網膜剥離の手術後などは、どんなに落ち着いても、1年に1回などの定期通院をお勧めする理由になります。

黄斑円孔(おうはんえんこう)? 病態・検査・症状

なんと、今日(日曜日)は入院患者さん0名、救急外来も0名でした。(夜大丈夫ならですが。)こんなことって、すごく久しぶり[:楽しい:]
とても、ゆっくりと過ごせました

今日はきちんと眼科の病気のことを書いてみようかな。
黄斑円孔(おうはんえんこう)
眼球はカメラにとてもよく似ていて、レンズ(水晶体)が光を通して屈折させたり、フィルム(網膜・眼底)が光を感じ取ったりする構造をしています。そのフィルムの中心部を黄斑(おうはん)と呼び、視野の中心部で、細かいものを良く見るといった役割があります。(⇒黄斑については以前のブログを。)

黄斑円孔(おうはんえんこう)は、その黄斑に丸い穴が開いてしまう病気です。
実際の写真で見るのが分かりやすいかな?

眼底写真と呼ばれる、目の奥・網膜の写真ですが緑矢印の先が黄斑です。この症例では、丸くリング状に、オレンジ色が濃くなっているのが分かるでしょうか?半透明の網膜に穴があいて、裏側にあるオレンジ色の脈絡膜の色がむき出しになるために、オレンジ色が強く見えます。

OCTと言って、網膜の断面図を撮影する検査を行うと、(⇒OCTについて、以前のブログ)

上が正常な断面図で、下が黄斑円孔の症例です。正常では黄斑は少し凹んだ形をしているのですが、下の図では、黄斑の部位(ピンク矢印)で網膜が断裂しているのが分かるでしょうか?
(今回の眼底写真は穴が大きめで、かなり分かりやすい症例を出したのですが、実は、写真をとったり、眼科医が診察するよりは、OCTで断面図を調べる方が、ずっと正確です。初期で治療をする事が重要な病気ですが、初期で穴が小さい場合に、OCTがないと病気を見逃してしまう事が多々あります。)

症状は病気の程度によりますが、物を見る中心部のフィルム(網膜)が障害されるため、中心暗点と言って、視野の真ん中が見えなくなって視力が低下したり、中心部の色が暗く見えたり、小さく見えたり、ゆがみを自覚したり(変視症;へんししょう)します。

日常生活では物を両眼で見ることが多いため、片方の目に異常があっても気が付きにくいものです。たまにでいいので、片方の目を手で隠して、カレンダーの文字がキチンと見えるか、チェックして頂くと早期発見につながります。

黄斑の病気では、ゆがみを自覚するものが多いのですが、アムスラーチャートといって、以下のような方眼紙を、片目のみで見る検査が有用です。

病気の場合には、下のように歪んで見えたり、部分的に見えない場所を自覚しやすくなります。何か異常を感じたら明日必ず受診しましょう!!(黄斑の病気は早期発見・早期治療が重要です。)

H24年5月の手術実績:茨城県 山王台病院 眼科

5月の治療実績を集計しました。
ゴールデンウィークがあったのですが、重症・緊急性の高い硝子体手術の紹介が多かったせいか、かなりの件数になってしまいました。忙しかった。
スタッフのみんなも、忙しかったり、ちょっと疲れているかと思いますが、いつも協力してくれてありがとう。

H24年5月の手術実績
手術合計 142件
内訳

・白内障手術 88件

・網膜硝子体手術 21件(糖尿病・網膜剥離・眼底出血・黄斑円孔など)
・緑内障手術 4件
・涙器の手術 9件(NSチューブ・涙点閉鎖など)
・眼瞼(まぶた)の手術 12件(眼瞼下垂・さかさまつげ・霰粒腫)
・結膜の手術 6件(翼状片・結膜弛緩症)
・その他の手術 2件

レーザー手術合計 14眼
内訳
・網膜光凝固 9件(糖尿病・眼底出血などに対するレーザー)
・YAGレーザー 2件(後発白内障に対するレーザー)
・SLTレーザー 3件(緑内障に対するレーザー)

*手術数は、分院である小美玉市医療センターとの合計数です。手術数は基本的に保険診療で請求された件数です。両眼同時手術などは2件と計算しています。 白内障の手術時に、逆さまつ毛や眼瞼下垂の手術を追加で行っておりますが、それらはカウントしておりません。また、病気が古くてNSチューブが挿入できなかった症例などもカウントしていません。

抗VEGF薬 硝子体注射 38件(加齢黄斑変性症などに対する注射です。ルセンティス・マクジェン・アバスチンの合計)

ステロイド薬 テノン嚢注射 19件(糖尿病や網膜静脈閉塞症などでの黄斑浮腫などに対する注射です。トリアムシノロン)

白内障などの緊急性のない手術の待ち時間は、約3ヶ月待ち、9月前半からの予約となっています。

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 行方市 鉾田市 茨城町)

ドライアイ? 涙点閉鎖術・涙点焼灼術

今日のお昼は以下の手術を行いました。
・涙点-涙小管閉鎖術(焼灼術) 3涙点
・白内障手術 6件
・緑内障手術(流出路再建) 2件
無事に終わりました。

今日の手術から一つ。
涙点閉鎖術(るいてんへいさじゅつ)

涙は正常な状態では、その10%が目の表面から蒸発し、90%は涙点から鼻の奥へと流れていきます。(⇒以前のブログ:涙の役割
ドライアイの治療については以前に書きましたが
?環境を整えて、乾きにくくしたり、
?点眼薬を付けて潤いを与えたり、
?涙の出口(涙点)をせき止めて、涙をとどめたりする

などがあり、ある程度以上のドライアイでは、?の治療法として、
涙点プラグと呼ばれる治療法が必要になります。(⇒涙点プラグのブログ

涙点プラグはとてもよい治療法で、多くのドライアイの患者様の役に立っていますが、稀にプラグに対して炎症が起こってしまったり、プラグが勝手に取れてなくなってしまうこともあります。プラグが取れてしまう場合には、プラグを大きくして、きつく入れ替えたりもするのですが、涙点の大きさや形状によってどうしても入れられない場合もあります。
こんな時に、手術で涙点を閉じてしまおう。というのが涙点閉鎖術になります。
涙点を手術的に閉塞させた場合、上手くいけば涙をせき止めに関しては、永久的な治療効果が期待できます。
一方、副作用としては、手術的に涙点を閉じてしまうと、涙点プラグのように嫌なら取ってしまおう。というわけにはいきません。誤って軽症のドライアイの方に手術をしてしまい、逆に涙目になってしまった。なんていうことがないように、手術の適応に関しては、ドライアイの重症度や、涙点プラグ治療後の反応などをしっかりと検討する必要があります。

*涙点プラグが上手く入らない場合に、キープティアといって、涙小管の中にゲル状の薬を入れる場合もありますが、数ヶ月でゲルがなくなってしまい、繰り返しの再治療が必要になります。重度のドライアイでは、一生涯の治療と考えると、コスト的に手術が有利になります。(1回のキープティアと、手術1回の費用が一緒)

涙点を閉じる方法としては、糸で涙点を縫いつけてしまう方法や、焼いて癒着をさせてしまう方法などがありますが、「100%完全に閉じられる」という方法や、「絶対に再発しない」という方法は、まだないようです。
当院では出来るだけ良好な成績などを期待して、主に涙点-涙小管焼灼術を行っていますが、僕の個人的な成績では、いちおうこれまでは全症例で閉鎖に成功しています。

今日の患者様は、シェ―グレン症候群という重症のドライアイの患者様で、大学病院の膠原病内科様でも治療中です。他院の眼科様でも治療に難渋し、当院転院後も涙点プラグや各種点眼薬の治療を頑張ってきましたが、糸状角膜炎や角膜ヘルペスを繰り返してしまう重症例です。

もうキズだらけ・・・。どうにも落ち着いた状態とならずに、今回、左右上下、4つあるうちの3つの涙点を手術で閉塞することになりました(もう一つは涙点プラグが入っています)。

まず、仰向けに寝て、局所麻酔の注射を行います。
滑車下神経といって、目頭付近の皮膚に垂直に針をいれます。
この麻酔はまぶたに注射をする麻酔よりも痛みが少なく、効果も高いのですが、2時間程度、麻酔が切れるまで、まぶたが開かなくなったり、物が2重に見えるなどするので、治療後、帰宅までゆっくり休んで痛く必要があります。
(麻酔の写真は取っていないのですが、すみません。)

患者様の頭側からみている状態で、左目の上まぶた、目頭側の写真です。

水色の先が涙点で、涙の排出路になります。
ここに高圧電流を流すための細い針金状の器械(緑矢印)を挿入します。
だいたい1cm強、奥まで入ったところで鼻の内側の骨に当たります。

そこから、徐々に器械を引き抜きながら、内部に高圧電流を流して、1cm強の長さの涙小管の内腔にヤケドを起こして、癒着をさせて閉塞を起こします


最後に、出口の涙点をセッシで挟むように、ジュッと焼いて終了です。

この治療法の良いところは、縫って閉じる方法と違い、針や糸を通したりがないので、まぶたの内出血(皮下出血)などがほとんど起こらず、翌日から見た目がキレイなことです。

両眼に麻酔をして、3つの涙点を閉塞させて、だいたい10分ちょっとの手術です。費用は片眼で6300円、両眼で12600円。1割負担では片眼630円。3割負担では片眼1890円になります。

患者さんが眩しくないように、光を最小限で手術をしているので、暗くなってしまって、今日はあまりいい写真が撮れませんでした・・・。

後部硝子体剥離? 合併症のリスク

後部硝子体剥離は加齢に伴う硝子体の収縮が原因で、飛蚊症を自覚するものの、多くの場合は時間の経過ともに気にならなくなっていくことを書いてきました。

ですので、外来では「あまり心配せずに様子をみましょう。」という形になるのですが、全員が問題なく経過するわけではなくて、稀にですが後部硝子体剥離に伴って、合併症が起こることがあり注意が必要です。
通常は網膜と硝子体がキレイに分離していくのですが、網膜と硝子体の癒着が変に強かったりすると、硝子体の収縮によって網膜が引っ張られるような形になります。網膜は光を感じ取ったら、その信号を脳へと伝える役割があるのですが、
硝子体との癒着部で引っ張られた場合には誤作動を起こして、光がピカピカ見えることがあり、光視症(こうししょう)と呼ばれます。(暗いところで目をつぶって、指で目がしらを押すと、視野の外側に光が見えるのが分かりますか?これは、網膜が外側から押されて、誤作動を起こしている状態です。中から硝子体に引っ張られても同じような事が起こるのです。注:眼球が凹むほど強く押してはいけませんよ。危ないので。)
このような、網膜と硝子体の癒着部位で、網膜が硝子体に引っ張られてた時に、その部位の網膜がビリっと破けてしまうと、網膜剥離や黄斑円孔という重大な合併症が起こることがあるのです。

なので、後部硝子体剥離と思われる飛蚊症の症状を自覚した場合には、一度は眼科で精密検査を受けるようにしましょう。
後部硝子体剥離が起こった直後は問題がなくても、網膜と硝子体の剥離・分離が周辺部に進むに時期に、あとから遅れて網膜剥離が起こる場合もあり得ます。一度、眼科で問題ない。と言われても、飛蚊症がさらに増えたり、視野がかけたり。症状が悪化する場合には早急に再受診をしてください。

当院では、後部硝子体剥離の発症後に受診した患者様は、初回の診察で問題がなくても、念のため一ヶ月後に再診をお願いして、問題がないことを確認してから終了としています。(もちろん、途中で自覚症状の悪化があれば受診をしてください。また、飛蚊症を自覚して、すでに一ヶ月以上経っている場合は再診の予約は取りません。)

最後に、実際に外来で使用している説明プリントを添付して、後部硝子体剥離のブログは終了とさせていただきます。

後部硝子体剥離? 治療法と経過

今日は以下の手術を行いました。
・眼瞼下垂症(CO2レーザー:ミュラー筋タッキング)3件
・白内障手術 7件
・網膜硝子体手術(茎離断) 3件
 (黄斑前膜2件、増殖糖尿病網膜症・網膜剥離1件)
無事におわりました。

後部硝子体剥離?
先日は後部硝子体剥離の症状、飛蚊症について書いてみました。
黒い点やモヤが動いて見えるので、ビックリして来院したり、結構困った顔で来院されるかたが沢山います。
では、治療法は?というと。

治療法と経過
残念ながら、目薬や、飲み薬で有用なものはありません。もちろん、ブルーベリーもサプリメントも効きません。
どうしても治したいという場合には、手術で治せます。硝子体手術で硝子体ごと濁りを撮ってしまうのです。
後部硝子体剥離を起こした中で、どのくらいの人が手術を受けるかというと、手術ばかりの僕でも年に2名とかそれくらいです。後部硝子体剥離は加齢が原因で、ある程度の年齢になれば必ず起こります。白内障も加齢によって必ず起こる病気ですが、僕はだいたい年に1000件くらいこなします。どちらも必ず起こる現象なのに、白内障と比べると飛蚊症の手術を受ける人は500分の1という計算になります。
では、手術を受けない、あとの499名はずっと飛蚊症に苦しむのでしょうか?答えはNOです。
硝子体の濁りはなくなりませんが、だんだんと気にならなくなっていくのですマリオット盲点に気がつかなかったり、緑内障での視野欠損に気がつかなかったり、人間って都合の悪いことは認識しなくなっていく傾向があるようで、飛蚊症の濁りも出来た始めのうちは気になるものの、徐々に認識しなくなっていくようです。また、長期的には、硝子体がかなり小さくなって、後部硝子体剥離の濁りが眼球の端っこの方に移動してしまって、構造上として見えなくなってしまう場合もあります。
僕たちが数ヶ月とか1年とか経って定期検査をすると、しっかりと濁りが存在するのですが、「治ったよ!」なんていう患者さんばかりになってきます。
みなさん、いろいろな言い分があるようで、「よく寝たら治った。」「ブルーベリーを食べたら治った。」「数万円の真珠の粉を飲んだら治った。」などとおっしゃる方が沢山いるのですが、実際に眼底検査をすると必ず濁りが残っているので、お返事に困ってしまいます・・・。(本人が満足ならいいのかな?)

しばらく我慢すれば、濁りは消えなくても、ほとんどの場合で、本人が気にならなくなってしまう飛蚊症です。濁りを取るための硝子体手術は、手術自体が20分くらいかかりますし、数万円も支払って、数日入院して(希望者は日帰りでもやりますが)、100分の1位では再手術などのリスクがあって。そんな手術はあまり受けたくないですよね?
ですので、後部硝子体剥離に伴う飛蚊症では、濁りの程度が強かったり、大きかったり、濁りが視野の中心部に近くて、生活に不自由がでるほど困っていたり。そんな重症な患者様の一部が希望をされるのですが、ほとんどの人は様子をみて、気ならなくなる時期を待つことになります。

後部硝子体剥離は全員に起こるのですが、僕たち診察の所見と照らし合わせると、
・硝子体にかなり大きな濁りがあっても、「全く気にならない。」という、おおらかというか、大ざっぱな人もいます。
・逆に、とても小さな濁りしかないのに、救急車を呼んだり、心配で何度も外来を受診してしまうような、繊細というか、神経質な人もいます。
感じ方って、個人差というか、性格なんかも大きく作用するのかもしれませんね。

ガレキ

今日の午後は遠方の医院様で硝子体手術のお手伝いをしてきました。どこも重症の患者様が多いようです。

最近、医学的なブログをさぼりがちですが、今日もおそくなってしまったので休憩で。明日からまた頑張ろう。

ちょっと別件で2件。

�眼科の知識が広まって、病気の早期発見・早期治療などに役立っているといいなと思い、ブログを書いたり、質問にお答えしたりしていますが、ブログへアクセスして頂いて、トップページ以外をクリックして頂いた方のアクセス数というのが分かるのですが、最近はだいたい1日400名程度の方にお読み頂いているようです。ところが、昨日のアクセス数はなんと1200件近くに。日食網膜症のせいでしょうか?日食効果すごい。
1200人に読まれたかと思うと、毎日ビールを飲みながら書いて、誤字脱字も気にしない。というのはちょっと気が引けます・・・・。

�インターネットのニュースで見ただけなので、正確な詳細は不明ですが、震災のガレキの受け入れを拒否して問題になっている地域があるようです。個人的にはとても悲しい気持ちと強い憤りを感じます。日本全体の問題です。日本人みんなで助けあう必要があります。
自分の地域がキレイならいい。俺の世代だけよければいい。うちの子だけ助かればいい。そうではないですよね?
原発もガレキも、日本の将来、ずっとずっと先まで考えて検討しないと。

金環日食

今日のお昼は以下の手術を行いました。
・眼瞼内反症手術(眼輪筋縫縮)1件
・白内障手術 7件
無事に終わりました。

僕は患者さんの緊張をほぐすために、手術中に結構話しかけるようにしています。多くの場合は「ちょっと薬がしみますよ。」とか、「濁りが取れたので、新しいレンズを入れますよ」とかの、手術の内容の説明ですが、緊張が強い人には、「お昼ご飯はなんでした?美味しかったですか?」「出身は?お孫さんは?」なんていう話題の事も。
今日は、「今朝は金環日食見ました?」という質問を3名にしてみたのですが、なんと全員見たとのこと!日本中で沢山の人が見たのでしょうね!

金環日食
以前にも書いたり、もうテレビも新聞も、日食の話題だらけなので、皆さんご存じと思います。
我が家も、コンビニで日食観察グラスを購入して、7時半から観察しました。予想通り、ご近所さんの皆さんが庭に出ていて、ちょっぴり恥ずかしい。

以前に書いた、ピンホールカメラの原理でも日食を観察してみました。
紙皿1枚に針で穴をあけて、もう一枚の紙皿に日食をうつします。

赤矢印の先に針穴(ピンホール)、青矢印に日食がうつっていますが、小さいので拡大してみると以下のように。

通常の一眼レフカメラでも撮影してみました。ピントをマニュアルで遠方に合わせて、カメラのレンズに日食観測グラスをくっつけて撮影してみると、

とてもキレイな写真が撮れました。やったね!!

外来では、
・「日食を裸眼で見た後、しばらく中心部が暗くなってしまったが、病院に付く前に治ってしまった。」という、軽症の日食網膜症と思われる女性や、
・学校健診で指摘されて受診した中学生は、「ずっと裸眼で日食・太陽を見続けたが症状はない。」なんていうツワモノもいました・・・が、
当院では大きな問題となる網膜症の患者様は発生しませんでした。

「太陽は一瞬たりとも見てはいけない。」「太陽を探すときも必ず観察用グラスを使う。」「曇りでも危ない。」という説明が多くの場面で飛び交いましたが、実際には光量が少ないとは言っても、初日の出や夕日の観察はどうなのだろう?
日時計や方角を見るときや、子供に「あれが太陽だよ」と教えるときにもグラスは必要なのでしょうか?
日光網膜症に関しては、発症率も低く、詳しいことが解明されていないようですが、どのくらいの光量で、どの程度のリスクがある。というのがよく分からないのですが、患者様に質問を受けるかもしれないので、どうにか勉強してみたいと思います。