今日は以下の手術を行いました。
・結膜弛緩症手術 2件
・斜視手術 1件(左上斜視・外斜視⇒上下直筋前後転・水平移動)
・白内障手術 10件
・網膜硝子体手術(茎離断)2件 (糖尿病黄斑浮腫)
みなさん無事に終わりましたが、80代の男性で1名、残念ながら予定外の結果に・・・。
両眼の白内障治療を予定していた患者様の手術で、無事にはできたのですが、思ったより難しくて、視力の回復に数日かかったら大変かな?とも考え、安全のために今日は片方の目だけでやめておきました。
患者様は両眼治ってしまうと思っていたと思うので、大変申し訳ないです。
心配されていると思うので、手術のビデオを差し上げようとDVDに焼いてみました。今、確認してみると手術時間は13分弱。時間も異常に長いというわけではありませんし、キレイに出来ているので、両眼頑張ってしまってもよかったかな?とか、いろいろ考えてしまいますが、手術はやっぱり安全が第一だと思います。
両眼の予定だったのに、片眼になってしまったのは開院後2例目です(前回も結局は翌週手術を行い、とても良好な結果です)。今日は見学の医師もきていましたが、予定外ってちょっとカッコ悪い。手術って難しいなぁ[:悲しい:]
ついでなので、今日の症例の話題を。
白内障手術:IFIS(アイフィス)
白内障手術では、手術の少し前から目薬をつけて、瞳孔と呼ばれる虹彩・茶目を大きく広げる必要があります。
瞳孔があまり開かない患者様もいらっしゃり、そういう場合には手術がちょっと大変。というブログを以前に書きました。
小瞳孔の例⇒http://blog.sannoudaiganka.jp/?eid=137225
今日の症例は、普通の小瞳孔(瞳孔が開きにくい)の症例とはちょっと違って、手術前はそれなりの瞳孔の大きさなのに、手術中の途中で、瞳孔が進行性にどんどん小さくなってきてしまうと言う、変動のある症例です。
IFIS(アイフィス)と呼ばれているのですが、正確にはintraoperative floppy iris syndromeと言います。
・intraoperative⇒術中
・floppy⇒フニャフニャ
・iris⇒虹彩(茶目)
・syndrome⇒症候群
白内障手術の途中で、瞳孔(虹彩・茶目)が、フニャフニャになって、手術がやりにくくなるという症例です。
原因としては、前立腺肥大のお薬の副作用が有名です。(ハルナール・ユリーフ・フリバスなど)
おしっこの出をよくするために、前立腺の筋肉を緩める効果がある薬ですが、瞳孔(虹彩・茶目)の筋肉と、前立腺の筋肉が、非常によく似ているために、前立腺の薬を長期間内服すると、虹彩の筋肉も委縮してしまう。ということのようです。
男性の手術前には、「前立腺のお薬を飲んでいますか?」という質問を行うのですが、薬を飲んだ人が全員IFISになるわけではなく、また、少しくらいIFISがあっても全く問題なく手術を出来ることが多いのですが、今日はヒドイ症例でちょっと大変な思いをしました。
手術でIFISがおこりうる可能性を説明すると、「では、手術前は薬を飲まない。」なんて言う人がいますが、筋肉が一回委縮してしまうと、内服を中断しても回復の効果はないようですので、中断する必要はありません。IFISになったら、「少し手術の時間がのびるけど、仕方がない。」と思って、医師にお任せ下さい。
実際の本日の症例です。
手術開始時の瞳孔です。赤矢印程度の大きさ5mmくらいの瞳孔があります。通常よりは小さいものの、普段の僕なら、このくらいの瞳孔は全く問題になりません。(この患者様は他にも小角膜で角膜径が9mm、しかも輪部潰瘍も合併しています。)
ところが、
濁った水晶体を取り除こうと、掃除機で吸い出し始めると、矢印の長さくらいに、瞳孔がとっても小さくなってしまいました・・・。(プレチョッパーで割っていますし、もともと内服しているのをしっていたので、低吸引低還流で水流は少ない方です。)
ただ小さくなるだけではなく、手術で目の中に発生する水の流れによって、瞳孔がフニャフニャと変形します。瞳孔がキレイな丸ではなくなっているのが分かりますか?
フニャフニャになった瞳孔・虹彩がキズ口から飛び出しやすい。というものIFISの特徴です。赤矢印の先、瞳孔が下に向かって、飛び出していきそうです(今日は脱出せずに手術が可能でしたが)。
最終的にはキチンと眼内レンズが入りました。
(時間が長めになりそうな症例では、光を特に弱くして手術をしているので、写真が暗くなってしまいます。見にくくてすみません。)
手術中はなにかあったらどうしよう。と、ヒヤヒヤしながらやるので、自分の時間感覚では30分くらいかかってしまったような気分でした。結局12分半くらいなのですが、やっぱり今日両眼やってしまったほうが喜んでもらえたかな?今更後悔しても遅いのですが・・・。
こういった難しい症例でも、当院はとにかく乱視に全力です。
IFISや、瞳孔が小さい症例では、虹彩リトラクターや、瞳孔拡張リングと呼ばれる、瞳孔を引っ張って広げる器械があり、リトラクターを使うともっと簡単に出来たのかもしれませんが、術後の乱視が強くなったり、瞳孔の形に変形が残ったり、問題も多いので、今日もどうにか使用しないで頑張りました。
もちろん、今日も乱視矯正レンズ(Toricレンズ)を使用しています。
乱視用レンズについて⇒http://blog.sannoudaiganka.jp/?eid=141878
乱視用レンズは、乱視の軸・角度の調整の問題で、瞳孔が小さい症例での使用は難しいと言われていますが、様々な道具・技術を駆使して、できるかぎり諦めないようにしています。
これは、緑内障手術で使用する特殊レンズですが、水色矢印の先に乱視の角度を示す小さな点が確認できます。
早く回復して頂いて、反対目の手術も頑張らせて頂ければと思います。
では、今日もお読み頂きありがとうございました。