27ゲージ 硝子体手術 近況報告

今日は県内の医院様で十数件の手術を行いました。今日も網膜剥離の手術があって、冬の到来を感じます。

僕は現在のところ、当院以外に7つの医院様で定期的に手術を担当しています。
僕の一番の専門は網膜硝子体手術という眼球の奥の方の手術になり、網膜剥離や糖尿病、眼底出血、黄斑疾患などに対する手術です。眼球の中に入れる器械の大きさが日進月歩で小さくなっていますが、日本で購入できる器械の大きさは以下の4つになります。
・20ゲージ(0.9mm)
・23ゲージ(0.7mm)
・25ゲージ(0.5mm)
・27ゲージ(0.4mm)←今年の9月に発売
日本中には、まだ20Gや23Gの器械で手術をしている医院もあるのですが、僕が出入りする医院は全て25G以上の手術設備を導入して頂いています。
パワーの大きな太い器械に比べて、小さく細いデリケート器械では手術の効率(スピード)が落ちる可能性があるのですが、傷が小さい方が痛みが少なく、合併症など患者さんのリスクが小さくできるのは間違いありません。傷口が大きければ、傷を縫うことが必要になり、術後の痛みに直結しますが、僕はこれまで25Gで手術をして、傷口を縫ったことはただの1回もありません。患者さんの負担を考え、できる限り小さな傷での手術を目指すのが医師としての信念です。
当院では9月の発売直後に27Gを経験し、10月からは全ての網膜硝子体手術で27Gでの手術に移行しました。(25Gは取り扱いがありません。)

27Gでは矢印の先、わずか直径0.4mmの細い器械で手術が可能です。
10月の1ヶ月間で宮井副院長とあわせて40件の硝子体手術がありましたが、複数の先生から「27G、どう?」と質問を頂くので、現状で分かっていることを記載してみます。
(今回は一般の方にはわかりにくい専門用語も多々あります。すみません。)

27ゲージ 硝子体手術 近況報告
・効率
硝子体攝子、カッター含めて、操作性は良好で大きなストレスはありません。
(主に使い捨てのアルコン・マックスグリップ攝子を使っていますが、小さい分とてもファインで、ILMがよく切れます。把持力は25Gより少し弱いです。)
ただし、とにかく細い器械なので眼球内部を掃除する効率が悪く、硝子体切除、出血や薬剤の吸引が遅いです。黄斑前膜や黄斑円孔など15分程度で終わるような手術では平均3?5分程度長くなっています。今後、設定値や器械への慣れで少しは改善すると思いますが、25Gより時間がかかるのは間違いありません。濃厚な硝子体出血の症例では、通常より10分くらい時間がかかったように思います。
患者様にとっては少し時間が長くなるのは負担に感じるかもしれません。ただし手術は早さを望むことがベストなのではありません。安全性、痛み、術後の赤みなどが小さい方ことのほうが重要です。これらは小さい器械での手術のほうが優れていますので、数分ですが手術時間が長くなるのはご了承下さい。
・閉創(傷の閉じ)
傷口の閉じ具合は非常に良好です。25Gでも傷口を縫う必要はありませんでしたが、1日程度のわずかな低眼圧はありました。27Gではまず起こらないだろうと思います。
クロージャーバルブは25Gよりもさらに漏れがないため、術中の眼圧はさらに安定していますが、パーフルオロンを入れる時などは還流液が全く漏れないため、眼圧が高くならないように圧を逃がすように、より注意が必要です。
・耐久性
カッター、イルミネーションともに、眼球を傾けるさいにやや曲がってしまうことがあります。器械台からカッターを手にとる時にちょっとぶつけただけで曲がってしまったり・・・。
剛性が低く強く眼球を傾ける時は曲がってしまうこともあります。最周辺部の処置は圧迫して直視下で操作したほうが良さそうです。(奥目の患者様は曲がりやすい・・・。)
そして、バックフラッシュニードルの先端のシリコンチップはものすごくよく取れます(取れるほうが当たり前というくらい。再滅菌などは期待しないで下さい。)

黄斑円孔での空気置換です。矢印の先にシリコンチップがついているか毎回確認した方がいいです。眼内で外れて迷入しないように気を付ける必要があります。
・付属不足
まだ発売直後なので付属品が少ないようです。一番嫌なのは、トロッカーのみの販売がありません。重症例で4ポートを作成して、シャンデリア照明を使おうとしたら、9万円のトータルパックをもう一つ開けるのでしょうか??
・シリコンオイル
シリコン1000は、VFCを使用して27Gのトロッカーから問題なく注入できました。まだ当院では1例しか経験がありませんが、宮井副院長の症例です。
30代の精神疾患のある患者様、多発裂孔+下方の巨状縁断裂後、時間のたった網膜剥離です。

赤矢印の先が巨状縁断裂です。27Gはカッターの剛性が弱くて、眼球を大きく傾けるのは難しいようです。再周辺部の処置が必要な場合は、写真のように圧迫して直視下での観察が必要です。
総合的な判断から、シリコンオイル置換をすることとなりましたが、今まで25Gで使用していたVFCのパックには、先端に付けるものとして、20G・23G・25Gの針しか含まれていません、注入時は27Gの創口以外にもっと大きな創口を作成するか相談となりました。

これが実際の写真ですが、黄緑の矢印が27Gのトロッカー、水色矢印は25GのVFCです。25GのVFCの先端を27Gのトロッカーにしっかりを押し当てると問題なく入注入できます。(しっかりおしあてないと、少し漏れます。注入圧を40psiの設定で約2分くらいで注入できました。女性の宮井副院長でも軽々入れられます。VFCは本当に便利です。
*未経験ですが、おそらく比重の重いシリコンは27Gでは注入不可と思います。

以上、ひとまず1ヶ月間使用した感想です。
結論としては、少し手術時間が長くなりますが、患者さんの負担を減らそうという気持ちがあれば、27Gでほぼ全ての手術が可能です。付属品が充実していけば数年後には日本でも間違いなくスタンダードな手術になるでしょう。

余談ですが上記のシリコンオイルの症例はかなりの難症例です。術後経過は非常に良好で間違いなく復位を得られそう。年明けにはオイル抜去を予定します。宮井副院長は僕が知っている後輩の眼科医の中では、間違いなくトップの技術力です!これからも一緒に頑張りましょうね[:グッド:]

H26年10月の手術実績:茨城県 山王台病院 眼科

月末です。今月も忙しさの最高を更新したかと思います[:冷や汗:]
あちこちの医院で網膜剥離の患者様がいて、少し寒くなってきたからかな?
(冗談のようですが、寒くなると網膜剥離が増える印象です。)
当院での手術数も過去最高ですが、出張手術でも1日に25人の手術や、1日で13件の硝子体手術を引き受けたりと、当院をあわせると担当した眼科手術が、とうとう300件/月を超えました。
手術器械が進歩し、スタッフが優秀になり、そして僕も上手くなり??、個々の手術にかかる時間が短縮されているためと思いますが、そろそろ個人の力の限界かもしれません。あとは、どんどん上手くなる宮井副院長にお任せしよう[:きのこレッド:]。

当院の10月の手術件数です。
H26年10月の手術実績
手術合計 217件
内訳

・白内障手術 137件

・網膜硝子体手術 40件(糖尿病・網膜剥離・眼底出血・黄斑円孔など)
・緑内障手術 5件
・結膜の手術 11件(翼状片・結膜弛緩症など)
・眼瞼(まぶた)の手術 13件(霰粒腫・眼瞼下垂など)
・涙器の手術 7件(涙嚢摘出、NSチューブなど)
・その他の手術 4件(角膜形成・網膜剥離へのガス注入など)

レーザー手術合計 44眼
内訳
・網膜光凝固 20眼(糖尿病・眼底出血などに対するレーザー)
・YAGレーザー 22眼(後発白内障に対するレーザー)
・SLTレーザー 2眼(緑内障に対するレーザー)
*手術数は基本的に保険診療で請求された件数です。両眼同時手術などは2件と計算しています。

抗VEGF薬 硝子体注射 77件(加齢黄斑変性症などに対する注射です。ルセンティス・アイリーア・アバスチンの合計)

ステロイド薬 テノン嚢注射 44件(糖尿病や網膜静脈閉塞症などでの黄斑浮腫などに対する注射です。マキュエイド・ケナコルト)

白内障などの緊急性のない手術の待ち時間は約6ヶ月待ち、来年の4月からの予約となります。

寒くなってきました。のんびり温泉にでも行きたいです。

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 行方市 鉾田市 茨城町)

白内障手術:瞳孔拡張リング 手術動画

お久しぶりです。ブログの更新が1ヶ月ほどあいてしました。
最近、「you tubeをみたのだけど」と、面識のない眼科の先生方から電話やメールなど、質問を頂くことが増えています。もらった電話で、僕も新しい知識を頂いたり楽しいものです。
今日は先週の手術の動画をUPしてみます。
眼科の先生方で、何かアドバイスなどあればぜひご連絡ください!

小瞳孔の白内障手術:瞳孔拡張リング(手術動画)
今回は動画がメインです。以前に基本的な内容は記載したことがあります。そちらもご参照ください。
白内障手術を安全に行うには、目薬を使用して瞳孔を開く必要があります。
当院では手術の1時間くらい前から、1種類の目薬を2?3回使用しています。多くの患者様では、瞳孔(茶目)が大きく開いて安全に手術が可能ですが、様々な理由によって瞳孔が大きく開かない状態を小瞳孔(しょうどうこう)と呼び、少し手術が長めになったり、難しくになったります。
(小瞳孔に関しては、以前のブログをご参照ください→小瞳孔?IFISの手術例

瞳孔を無理に広げることは、あとで瞳孔機能に障害が起こることもあり、好ましいことではないのですが、あまりに小さい場合に無理な手術をして合併症を生じるもの問題です。当院では概ね直径4mm以下の瞳孔の場合には、切開をしたり、瞳孔拡張リングを使用した手術を行うようにしています。(リングを使用するのは1年に2回くらいです。)


これは手術前の写真です。お若い時にケガか病気によって角膜(黒目)が濁ってしまったようです。瞳孔は中心をずれて、やや右下に針の穴のような隙間があるだけ。瞳孔を開く目薬をつけても3mm以下の瞳孔です。また、外傷後などの症例は他にも何か異常があって手術が難しいことがあるので、きちんと瞳孔を広げて手術をした方が安全そうです。
下の左の四角◇が、瞳孔を広げるリングです。これを使って手術をしました。

手術動画←クリックを

通常の白内障手術は目薬の麻酔しか行いませんが、瞳孔(茶目)に触ると少し痛みがあるので、リングを使用する場合の手術開始時には麻酔の注射が必要です。
手術時間が数分余分にかかりましたが、とてもきれいにできました。

手術翌日の写真です。瞳孔の形もまずまずです。

H26年9月の手術実績:茨城県 山王台病院 眼科

当院での手術を希望してくださる患者様、当院に紹介をしてくださる眼科の先生方が年々増えていますが、どうしても順番待ちの問題が出てしまいます。
もともとは、月曜日昼・水曜日午後が定時の手術日でしたが、最近は金曜日のお昼休みにも数名の手術を施行させて頂くこととなりました。
金曜のお昼前からは、予約外の患者様は担当医師が選べなくなってしまうのですが、申し訳ありません。できるだけ予約を取って外来受診をお願いします。
月・水・金と、お昼休みから手術をしてしまうので、看護師さん含め、スタッフはお昼休みもあいまいな状態ですが、とてもよくやってくれています。本当にありがとうございます。

9月の手術件数を集計しましたので記載します。
昨年と比べると、やはり今月も多くなっていて、このままいくと、年間2000件以上の眼科手術が確実のようです。2000件を超えるのは茨城県では大学病院でもなく、水戸市の大きな病院に次ぎ2番目になります。
H26年9月の手術実績
手術合計 174件
内訳

・白内障手術 116件

・網膜硝子体手術 22件(糖尿病・網膜剥離・眼底出血・黄斑円孔など)
・緑内障手術 5件
・結膜の手術 17件(翼状片・結膜弛緩症など)
・眼瞼(まぶた)の手術 8件(霰粒腫・眼瞼下垂など)
・その他の手術 6件(涙器・角膜・瞳孔など)

レーザー手術合計 32眼
内訳
・網膜光凝固 19眼(糖尿病・眼底出血などに対するレーザー)
・YAGレーザー 11眼(後発白内障に対するレーザー)
・SLTレーザー 2眼(緑内障に対するレーザー)
*手術数は基本的に保険診療で請求された件数です。両眼同時手術などは2件と計算しています。

抗VEGF薬 硝子体注射 60件(加齢黄斑変性症などに対する注射です。ルセンティス・アイリーア・アバスチンの合計)

ステロイド薬 テノン嚢注射 43件(糖尿病や網膜静脈閉塞症などでの黄斑浮腫などに対する注射です。マキュエイド・ケナコルト)

白内障などの緊急性のない手術の待ち時間は、6ヶ月待ち、来年の3月からの予約となります。

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 行方市 鉾田市 茨城町)

27G 硝子体手術 手術動画 当院ではH26年10月から全症例に!

先週末は、海外の眼内レンズ工場の見学・勉強に行ってきました。忙しいスケジュールで往復ともに夜間の便にして睡眠に充てましたが、旅行気分で楽しくすごせたので、思ったより爽快です。

さて、眼科の進歩はとにかく早いのですが、9月11日にALCON社より素晴らしい製品がでました!!
以前に記載しましたが、当院では2011年にコンステレーション ビジョンシステムを茨城県では初めて導入しました。(今は大学病院を始め、いくつかの病院に設置されています。)
このコンステレーションに接続される新しい機器によって、より低侵襲・負担の少ない手術が可能になります。

27ゲージ硝子体手術
網膜硝子体手術は、糖尿病網膜症、網膜剥離、黄斑円孔、黄斑前膜、眼底出血など、眼球の奥の方の、どちらかというと重症例の病気に対して行う手術です。
1980年代以後の硝子体手術では、20ゲージという約0.9mm程度の太さの器械を眼内に挿入して行い、術後に傷口を糸で縫う必要がありました。
6年ほど前から、25ゲージ、0.5mm程度での器械が普及し、当院では全例で25ゲージでの手術を行っていたのですが、
このたび9月11日に、27ゲージ、0.4mm程度の器械が発売されたのです。

器械が小さくなれば、傷が小さくなるので、手術中や術後の痛みが軽減されますし、バイ菌が入るリスクも少なくなります。
さらに、専門的ですが、カットレートと言って器械がどれくらい早く動けるかという単位で、今までは1分間に5000回転だったものが7500回転まで上昇しました。基本的に早く動く方が手術が安全になります。ALCONすごい!!

先週から当院でも27ゲージでの手術を開始しましたが、またもや茨城県では初めての導入になったようです。県内第一例目の患者様に、ビデオの公開を許可して頂けましたので、YOU TUBEにアップしてみます。

27ゲージ硝子体手術 ←動画クリック

患者様は60代女性。
2年前に当院で白内障手術をしています。手術前の視力は裸眼0.3で、メガネで0.4でした。白内障手術後は裸眼0.9で、メガネで1.2と経過良好でしたが、黄斑前膜があり半年に1回の検査を続けて頂きました。
黄斑前膜に関しては、以前のブログをご覧ください。

これは昨年の12月のOCT検査(網膜の断面図)です。
黄斑前膜は軽度で、矯正視力は1.2と良好です。通常、手術適応ではありません。

半年後の今年の6月のOCTです。黄斑前膜のヒキツレによって網膜に皺がよってしまいました。ゆがみも出現し、視力も裸眼で0.7、矯正で0.8まで低下したため手術を決断していただきました。

手術後2日です。病気が古く、やや手遅れにってから受診される患者様と異なり、定期検診から早期手術につながった人は、ほとんどの場合ですぐに網膜の皺が正常化します。それでも手術の炎症などで視力が回復するまでは数日かかりましたが、27ゲージと最小の器械での手術によって、術後2日目には裸眼で1.0、矯正で1.2と、非常に早い素晴らしい回復となりました。

初めて触る器械でしたが、思った通りのところ、そうでないところがありました。総じて操作性は良好で、よい手術器械だと思います。
器械の内径が狭い分、掃除機としての吸引効率が少し落ちるので、手術時間が数分伸びる可能性がありますが、手術自体の安全性が勝る方が患者様のためになると思います。
(専門的ですが、ブリリアントブルーGという青い色素の洗浄に、通常の数倍の時間がかかり、染色が強くなってしまいました。患者様にはお伝えして、結果は喜んで頂けています。今後、染色方法を調整します。手術時間も25ゲージよりも数分長くなってしまいましたが、各種設定を行い、さらに効率の良い手術を目指します。)

昨日、価格交渉などがまとまりまして、
10月から当院では全例で27ゲージでの硝子体手術に移行します!
傷口が小さく、より安全で、より痛くなく、術後に白目が赤くならない。そんな手術にご期待ください!!

そして、今日はALCON社の最新型白内障手術マシーン、センチュリオンを体験。実際に手術を行いました。素晴らしい安定性でした。
僕の白内障手術で感じる不具合が、1000件に1件から2000件に1件くらいに減るかもしれません。微々たる変化かもしれませんが、器械オタクの僕としては、最新で高性能のものは全て欲しくなってしまいます。
まだ茨城県では1台も売れてないそうです。すごーく欲しいですが、今のものでも困っていませんし、そしてすごーく高い。困ったなぁ。困ったなぁ[:撃沈:]

白内障手術 入院か日帰りか

今日は土曜日で、開業医様で硝子体手術を12件、白内障や翼状片などを十数件担当しました。その後、網膜剥離の緊急手術のため夕方から別の開業医様に移動。黄斑(視界の中心部)がはがれていたので、週明けまで待ってもらうよりよい結果になると思います。土曜日に手術をすると日曜日にも診察が必須です。開業医の先生たちは通常、日曜日に診療をすることは少ないと思いますが、僕の周りには熱心な先生たちが多くて、自分も頑張らなくてはですね。

さて、今日の開業医様では両眼の白内障や硝子体手術を行った患者さんがいましたが、特に硝子体の手術後は麻酔が切れるまでの数時間は見えないので、近くの病院に入院して観察するそうです。
白内障手術は両眼同時でも手術の直後からある程度は見えてしまうので、基本的には外来手術で十分ですが、希望によって入院するかたもおられます。
今日は、外来でよく質問を受ける、「入院か日帰りか?」について書いてみます。

白内障手術 入院?日帰り?

1.基本的には日帰りで十分な手術です。
歯医者さんで虫歯の治療をした時に、入院しよう。とは思わないですよね?
全身麻酔で心臓やおなかを切る手術と異なり、白内障治療は通常は点眼麻酔(目薬の麻酔)で施行します。全身麻酔のようなトラブルもありませんし、意識もなくならず、手術中は僕たちと世間話などをして過ごします。
当院ではほとんどの症例で、両眼を同時に行いますが、眼帯もせずに手術直後からある程度見えるので、付き添いは必要ですが特に問題なくお帰り頂けます。
そもそも欧米では、白内障手術では保険を使って入院することはできないそうです。それくらい簡単で、安全性の高い手術と考えられています。
費用も日帰り手術の方が安価になります。

患者様やご家族様から「入院の方が安全ですか?」という質問が多々あります。
答えはNOです。白内障手術で最も怖い合併症は、眼内炎といってバイ菌の感染によるものですが、入院だからキレイとか、自宅だから汚い。ということは言えません。そもそも病院は無菌ではありません。少しの風邪で内科を受診したら、待合室でインフルエンザをもらってきた。なんて笑い話がありますが、病院は病気の人、咳をする人、弱っている人、メヤニが出る人が密集する場所です。キチンと掃除や換気をすれば、ご自宅の方が細菌が少ないこともあるのです。
報告にもよりますが、中には入院の方が眼内炎の発症率が高いという報告があります。これは、病院が危ないというよりは、もともと体が弱っている人、合併症になりやすい人が入院を選ぶことによって起こった、統計的な偏り(バイアス)と思われますが、どちらにしても入院の方が安全ということはないようです。
ちなみに、僕は白内障手術を十数年間、かなりの患者さんを執刀していますが、今まで感染症を起こしたことがありません。なので、日帰りと入院の成績を比べることはできませんが、あまり起こらない合併症と考えてよいでしょう。
*術後3?4日程度は洗顔ができない。手術後は目薬をきちんとつけるなどは、入院でも日帰りでも守らなくてはいけません。

2.入院が望ましい場合
では、全員が日帰りがよいのかというと、そうではありません。例えば以下のような場合には入院の方がよいかと思います。
・一人暮らし
万が一にも、夜間に具合が悪くなった場合などに、視力が悪くて電話がかけられないなど、病院に連絡が取れない場合は困ってしまいます。 
・送り迎えや通院が困難
基本的にはどんな日帰り手術も、何かあった時に1時間以内に受診ができることが望ましいと考えられています。手術直後は自分での運転が難しいので、送迎や付き添いが困難であったり、遠かったり、交通手段が不便である場合などは、もしもの場合のために入院が望ましいと思います。
*これは、医療サイドの受け入れも同じです。開業医様など入院設備のない医院で手術を受ける場合、ほとんどないとはいえ、ごく稀にでも強い痛みが出たときや、もしも転んで目をぶつけてしまったときなど、緊急時は夜間でも連絡がとれるのか?、どのように処置をしてもらえるのかどうか?などはよく相談して、手術する医院を選びましょう。
・一部の認知症の方
多くの認知症の方は、入院によって環境が変わってしまうと、認知症が一過性に悪化してしまうようです。ですので、日帰りの方が望ましくなります。ただし、認知症の程度や、家族構成(特に一人暮らしなど)によっては、通院の予約が分からなくなってしまったり、手術後の目薬を理解できなくなってしまうケースもありえます。総合的に判断して、入院が望ましい場合もあるでしょう。

このように書くと、多くの方が外来手術ですみそうですが、実はそうではありません。実際には、一人暮らしの高齢者はどんどん増えていますし、茨城県では手術をする眼科医の数が少なく(医療過疎)、当院にも1時間以上かけて受診される方が数えられないほどいらっしゃいます。当院では全体として外来手術の方が多いですが、入院が必要・必須なケースも確実に存在するのです。

さて、H26年4月に診療報酬改定がありました。
20床以上の病院に入院して白内障手術を受ける場合、片目のみの手術で退院する場合は、診療報酬が高くなって病院の利益が大きくなります。逆に、1回の入院で両眼の手術をすると病院が赤字になってしまうという特殊なルールができました。
当たり前ですが、病院も赤字ではやっていけませんので、片目が終わったら1回退院して、あとで再度入院して反対の目。という面倒なことが必要になったのです。
厚労省の狙いは、医療費削減のために、入院を不便・高額にさせて、安くすむ日帰り手術を増やそう。というものだと思いますが、もともと入院を選ぶ人は、それなりに理由があって入院を希望します。もし、入院を希望する患者さんが少なくならなければ、医療費削減どころか医療費が増加してしまうのですが、2年後の診療報酬改定までにはうまくいったのかが判明するのでしょう。

当院は幸い19床のクリニックであり上記のルールに該当しませんでした。当院ではこれまで通り両眼の白内障手術が2泊3日の1回の入院で行えます。時間も費用も非常にお得な医院となってしまったので、患者さんにとってはとてもよい医院なのではないでしょうか?
ただ、自分自身では最高の手術機械と最高のレンズを使用して、そして手術技術を磨くため誰より研鑽しているつもりですが、当院で行う白内障手術よりも、他の20床以上の病院で行う手術の方が、保険点数が高いというのはちょっと寂しく思います。僕の手術よりも、大学病院の研修医の先生の手術の方が点数が高いなんて。
保険診療って公平なはずなのに、医院の規模で差がでるのは少し納得がいかないと思うのは僕だけでしょうか・・・。(医療サイドだけではなく、同じ医療に患者さんが支払う医療費も、施設によって異なります。)

眼内レンズ脱臼(落下) 眼内縫着術 動画

今日から9月ですが、重症例の紹介もなくのんびりとした月初めでした。
先月は網膜剥離や眼内レンズ落下(脱臼)などの準緊急手術が多かったので、9月は少しのんびり出来るのでしょうか?
昨日数えたところ、8月だけで5件の眼内レンズ縫着を行っていました。(山王台3件、他院2件)眼内レンズ落下はそうそうあるものではないのですが、本日退院の患者様がビデオの公開に賛同頂けたので、お言葉に甘えさせて頂きます。

眼内レンズ落下・眼内レンズ縫着術
 ↑ 動画クリック

先日、CTRのブログ(CTR?CTR?CTR?)でも書いてみたのですが、眼内レンズを支える眼球内の構造が弱いと、手術後に眼内レンズがずれたり、目の奥に落下(脱臼)することがあります。
眼内レンズの落下は、レンズがなくなってしまうために、極度の遠視となり分厚いメガネが必要になるだけではなく、目の奥の組織を傷つけて網膜剥離をきたし失明に至るリスクを生じます。

以前に、眼内レンズの亜脱臼(少しズレた)に関するブログを書いたことがあったのですが、8月は亜脱臼ではなく、落下(脱臼)ばかり4名の手術を担当しました。(全員、僕が白内障手術をしたわけではありません。)

今回、ビデオの公開を許可頂けた患者様は、60代の男性です。1年前に眼球穿孔というケガで白内障手術が必要になり、県南の開業医様で手術を受けましたが、外傷後の白内障は難しいもので、少し不安定な形でのレンズ挿入となり、その後に落下のリスクのある症例として当院を紹介となりました。
(決して開業の先生の手術に問題があったわけではありません。外傷後の白内障はもともと難しく、少し不安定でも眼内レンズをいれることができたのは、先生が非常に優秀で上手だったからです。もしも技術のない先生であれば、レンズの挿入どころか、合併症で大変なことになっていた可能性もあります。)

1年前の写真です。分かりにくいですがレンズが左側にずれています。患者さんは、これでもきちんと見えています。
残念ながら、自覚症状が乏しく定期検診にいらっしゃらなくなってしまったのですが、今回、急に見えなくなったと来院されました。

診察すると、レンズが眼底(目の奥の方)に落ちています。

眼内レンズが落下した場合の手術としては大きく2つの種類があります。
A.落下した眼内レンズを再利用し、目の中に縫い付ける。
B. 落下したレンズは取り出し、新しい別のレンズを縫い付ける。

Aの利点は、傷が小さく済むことです。
Bは、落下したもとのレンズが濁っていたり、近視や遠視などの屈折度数が合わない場合に、新しいレンズでよりより視力を期待できることが利点ですが、通常はAに比べて傷が大きめになります。近年多用される1ピースレンズは、Bの手術に向かないなど、眼内レンズの性状によっても向き不向きがあります。
今回は、レンズの特性などからAの手術となりました。

今回は、外傷後なので仕方のない症例ですが、手術後の高齢化や、CTRやその他の手技により、無理にでも眼内レンズを縫わずに終わる先生が増えていますので、今後はどんどんレンズが落下する症例が増えてくるのだと考えています。そのような患者さんたちに少しでも参考になればと思います。
(CTRなどを使用する条件・適応がきちんとしていればいいのですが、残念に思う症例も多々あります)

(眼科医の先生には、縫着刺入部が角膜より過ぎるという意見を頂きそうな動画ですが、術前のレフ値から、わざとやや角膜よりにしています。正視に近づけて、術後2日の時点で裸眼で視力0.7とすることができました。)

追記:術後1週で視力1.2と回復しました。よかったです。

大自然 茨城:海遊び

今日は日曜日。入院の患者様も全員経過良好です。
急患の問い合わせもなく、午後から海に出かけました。

大洗サンビーチ
茨城県は太平洋に長く面しており、いくつかの海水浴場があります。
我が家は、茨城町(大洗町)の大洗サンビーチと、鉾田市の大竹海岸に行くことが多いのですが、今日は国防男子のA君(航空自衛隊)にサーファインを習ってきました。


8月も末日で、今日は少し涼しかったのですが、ものすごく混んでいました。
海が好きな人はいっぱいなのでしょうね。
すごく上手なA君のようには乗れませんが、丁寧に教えてもらい、ボードに立てるように。これが波乗りか!! とても楽しく体を動かせました。
高速で40分ちょっと。一般道でも1時間もかからず行けますし、体力作りにもいいかも??
当院、心臓血管外科の川口先生も、サーフィンがしたくて茨城県にいらっしゃった?と聞いたことがあります。川口先生、今度一緒に連れていってくれませんか?

子供たちはというと、海は寒かったようで、


砂に埋まったり、

砂に登ったり。
海を楽しんでほしい大人の意向とは違いましたが、楽しく遊んでいるようでした。大自然茨城県、子育てに最高です。

最後に少し失敗談を・・・。
晴天ではなく、気温も低めだったので、日焼け止めを忘れてしまったら、顔が真っ赤に[:怒り:]
しばらく外来でも、顔が真っ赤と思いますが、決して飲酒後ではありませんよ。

H26年8月の手術実績:茨城県 山王台病院 眼科

今週は様々な医院様で、日月火水木金土と、毎日、硝子体手術の執刀をさせて頂きました。これは初めての経験です。
勉強会や講演会の講師も2件あり、眼科の先輩たちとも飲み会もあったり、ちょっと激務な一週間で、丸1日体調を崩した日がありましたが、手術にもさしさわるので体調管理もきちんとしないといけないですね。反省。

8月の治療実績の更新です。
実は今月は急な出張が数日間あり、私の手術はお休の日があったのですが、宮井副院長がすべて同様に診療を引き受けてくれたおかげで、いつもと変わらない手術数となりました。昨年から2人体制になりましたが本当にありがたいです。
スタッフも毎日大変と思いますが、当院で治療をしてあげられる患者さんが増えるのは、とてもいいことです。いつも協力してくれてありがとうございます。
H26年8月の手術実績
手術合計 179件
内訳

・白内障手術 119件

・網膜硝子体手術 30件(糖尿病・網膜剥離・眼底出血・黄斑円孔など)
・緑内障手術 8件
・結膜の手術 11件(翼状片・結膜弛緩症など)
・眼瞼(まぶた)の手術 5件(霰粒腫・眼瞼下垂など)
・その他の手術 6件(涙器・角膜・瞳孔など)

レーザー手術合計 16眼
内訳
・網膜光凝固 7眼(糖尿病・眼底出血などに対するレーザー)
・YAGレーザー 9眼(後発白内障に対するレーザー)
*手術数は基本的に保険診療で請求された件数です。両眼同時手術などは2件と計算しています。

抗VEGF薬 硝子体注射 68件(加齢黄斑変性症などに対する注射です。ルセンティス・アイリーア・アバスチンの合計)

ステロイド薬 テノン嚢注射 29件(糖尿病や網膜静脈閉塞症などでの黄斑浮腫などに対する注射です。マキュエイド・ケナコルト)

白内障などの緊急性のない手術の待ち時間は、6ヶ月待ち、来年の2月または3月からの予約となります。

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 行方市 鉾田市 茨城町)

白内障手術 手術費用(当院は両眼同時に治せます)

今週はお盆のせいか、午後の外来が空いています。(そうは言っても1日100名強の来院がありますが。)ちょこちょこ「お盆もやっているの?」と質問があります。僕は筑波大、土浦協同病院、当院でしか就職したことがないのですが、どの病院にもお盆休みというのがなかったので、「普通は休みなの?」と逆にビックリしたり。
「仕事が休めないから、お盆休み中に手術を受けたい。」という患者様も多くて、当院では今週も通常通りの診療体制です。
週末は、友人の先生の医院で16名の手術を担当します。両眼の人も多く、1日の件数では今年最多の手術件数となりそうです。集中力が途切れないよう頑張ります!

さて、先日、高額療養費に関するブログを記載しました。
?療養費の制度?療養費の上手な使い方
今日は眼科の手術で最も多く、質問も多い、白内障手術の費用について記載してみます。
白内障手術 手術費用
*のマークを付けたものは、
標準収入の家庭で、高額療養費を利用した金額になります。

外来手術
・片眼手術
 70歳以上 1割負担 12000円*
 70歳以上 2割負担 12000円*
 70歳未満 3割負担 45000円

・両眼同時手術
 70歳以上 1割負担 12000円*
 70歳以上 2割負担 12000円*
 70歳未満 3割負担 80000円

入院手術(2泊3日)
・片眼手術
 70歳以上 1割負担 20000円
 70歳以上 2割負担 40000円
 70歳未満 3割負担 58000円

・両眼同時手術
 70歳以上 1割負担 33000円
 70歳以上 2割負担 44000円*
 70歳未満 3割負担 81000円*

入院の場合、この他に食事として1560円が加わります。
(食事は高額医療に含まれません。1日目昼?3日目朝;合計6食分)

例えば、手術中に血圧が上がって薬を追加することもありますし、手術で特殊な材料を使用することもありえます。手術費用は、使用する薬剤・機材の量によって個人ごとに多少の増減があります。
また、所得金額によって、高額療養費の上限や、負担する医療費も異なりますので、正式な金額は病院で相談をしてください。
多焦点レンズは自由診療(保険診療外)になります。別途相談ください。