ちょっと忙しく、更新が滞ってしまいました。
ぶどう膜炎? 症状・所見 その2
前回は、ぶどう膜での白血球の活動、炎症自体による所見や症状について記載してみました。
今日は炎症がもたらす、その後の変化について書いてみます。
風邪で高い熱が出たとき(炎症)には、だるいなどの症状がでます。みなさん、症状が辛いので冷やしたり、解熱剤を使ったりすると思います。
ただ、解熱剤の使用には、他にも体力の消費を抑えたり、たんぱく質の変性などを抑える効果もあります。例えば、42度を超える熱により、組織の機能が障害され、無精子症になったり、耳が聞こえなくなったり。という話を耳にしたことがあるでしょうか?
熱以外でも、例えばリウマチで関節に炎症がある場合は、痛みの自覚だけでなく、きちんと消炎(炎症を抑える)しなかれば、どんどん関節が変形してしまいます。
(故意に専門的な表現を省いています。耳でムンプスとか、明確に解明されていない部分や、炎症という言葉の使用について、医師向けの説明ではありません。分かりやすくするため。)
ぶどう膜炎も早期にしっかりとした治療を行わないと、目の中で組織が癒着を起こしたり、様々な変化が出てきます。
目の前の方(虹彩付近)の変化
目の前の方のぶどう膜に炎症が起こると、瞳孔や隅角と呼ばれる房水の出口の組織に癒着が起こってしまう場合があります。
こちらは、瞳孔の部分が癒着していた症例です。瞳孔には明るさによって、広がったり、縮まったりします。瞳孔が癒着してしまうと、目の中に入る光の量を加減する働きがなくなってしまいます。あまりに、瞳孔が小さくなると、暗く感じたり、物が見えなくなります。また、眼科医は瞳孔から目の中の状態をのぞいて診察するので、診察が困難になります。
ぶどう膜炎では、瞳孔の癒着を防ぐために、瞳孔を広げる目薬を使用したり、場合によっては注射をすることもあります。こちらの症例は注射で広げることができましたが、古くなって硬く癒着してしまうと、手術以外では治せません。ところが手術はぶどう膜炎を悪化させる可能性があるので、半年以上、炎症が落ち着いてからしかできませんので、やはり早期から癒着をしないようにすることが重要です。
これは、隅角とよばれる虹彩の根元、房水の出口の構造です。
上の正常な写真と比べ、下の写真の矢印は癒着を起こして、出口がふさがっています。隅角に癒着が起こり、房水の出口がせまくなってしまうと、目の中に房水が溢れ、眼圧が上がって。続発性の緑内障が起こってしまいます。
やはり、重度のものでは、将来的に手術が必要になったりしますので、癒着が起こる前にしっかりと炎症を抑える治療をすることが重要です。
ぶどう膜炎によって、失明する場合、この続発性の緑内障が原因となることが多くあります。
目の奥の変化
目の中が白血球で濁っただけであれば、治療により炎症が落ち着くことで、濁りは徐々にキレイになっていきます。
ただし、炎症が強かったり、長引いたりすれば、やはり後遺症が残ってしまいます。
50代の男性の眼底写真です。眼内の多くを占める硝子体と呼ばれるゼリー状組織が、白血球で濁っているので、写真が上手くとれません。白っぽくかすんでいますね?視力は0.1で紹介されてきました。
ケナコルトというステロイドの薬を注射して2週間後です。かなりキレイになってきました。
注射後3ヶ月です。濁りは全くないので、視力は1.0まで回復していますが、ピンク矢印の部分は血管に炎症が起こった後で、血流が悪く、血管が白く見えます。この部位の視野は見え方が悪くなっています。今後、出血を起こす可能性もあり、場合によっては、レーザー光線で網膜を焼くなんていう治療が必要になる場合もあります。出血がひどい場合にはそこからカサブタが生まれ、増殖網膜症といって失明につながるような病態に進むこともあります。
青矢印の部位には、黄斑前膜というカサブタ状の膜が形成されています。ぶどう膜炎の炎症によって出現したものです。現在は小さく、視力への影響が少ないのですが、今後の経過によっては、カサブタにより網膜が引き連れ、物が歪んで見えたり、視力が低下したり。場合によってはカサブタを剥がす手術が必要になる可能性もありえます。
(黄斑前膜の参照⇒http://blog.sannoudaiganka.jp/?cid=4940)
炎症が強い時期には、黄斑浮腫といって、やはり物が歪んで見えたり、長引けば視力が低下し、回復できない状態になることもあります。
この2枚は、メラノサイトと呼ばれる、ぶどう膜(茶目)の色のもとになっている部分に直接白血球が攻撃をして、炎症が起こった症例です。
上の発症時に比べて、下の半年後には、色素が薄くなってしまッているのが分かりますか?色のもとになるメラノサイトがいなくなってしまったのです。
オレンジ色の網膜で、夕焼け眼底なんて呼ぶこともあります。
原田病という病気で、若い男性の患者様、早期にステロイドパルスりょうほうという点滴の治療が行えたため、視力も1.0に回復。大きな問題はなく安定していますが、茶色のメラニン色素が少なくなってしまっているため、発症前に比べて強い光に弱く、眩しいと感じることが多いようです。
ぶどう膜炎での主だった変化を、書いてみましたが、例えば白内障が進みやすくなるなど、実際には、まだまだたくさんの変化が起こりえます。
ぶどう膜炎で大事なことは、
?早くから、しっかりとした治療をする。
おかしいと思ったらすぐ病院へ。
癒着が起こってしまってからでは完全には元に戻りません。
?医師の指示に従って最後まで治療する。
痛みがよくなると、勝手に薬をやめたり、通院しなくなってしまう人がいます。再発したり、あとから2次的な変化が起こって、結局見えなくなってしまいます。