眼瞼下垂症 手術? 上眼瞼リフト(眉毛下皮膚切除術)

今日のお昼は以下の手術でした。
・翼状片切除 1件
・白内障手術 7件
・緑内障手術 1件 みなさん無事に終わっています。

久しぶりに、まぶたの話でも。
眼瞼下垂症 手術?
上眼瞼リフト(眉毛下皮膚切除術)

眼瞼下垂症は、主に加齢を原因として、まぶたが下がって目が開きにくくなってしまう病態です。(ハードコンタクトレンズや、外傷、脳神経の異常など様々なことが原因となりえます。)
まぶたの筋肉だけでは、目を開けることができずに、おでこの筋肉を使って、眉毛を含めてまぶたを引き上げようとするため、

こんなふうに、まぶたの縁と眉毛までの距離が長くなったり、おでこにシワがよったりするようになります。
治療法は手術になるのですが、病状や患者さんの希望で様々な術式があり、今日はそのうちの一つを書いてみます。

当院でもっとも多く行っている手術は、炭酸ガスレーザーを使用したミュラー筋タッキングという術式ですが、

まぶたの直上の余った皮膚を切開し、縫い縮めます。皮膚の中に埋まっている筋肉も縫い縮めることができるので、まぶたの開き具合は比較的良好です。傷口が二重のラインに隠れたりするのも、この術式のいいところです。
デメリットは、まぶたが少し厚ぼったくなることです。緑矢印の部位の皮膚に比べて、黄色矢印の皮膚の方が厚みがあるのですが、まぶたの直上で皮膚を切除すると、二重のライン近くに黄色の厚みのある皮膚が下りてくるためです。
ミュラー筋タッキングは皮膚が下りてくるイメージ

上眼瞼リフト(眉毛下皮膚切除術)は、逆に皮膚が持ち上がるイメージになります。(リフト:持ち上げる)

このように、伸びてしまったまぶたの皮膚を、眉毛のすぐ下で切除する方法です。利点は二重のラインが、生来生まれ持った皮膚で再現されるので、二重という意味では自然な状態に仕上がります。
欠点は、まぶたを開ける筋肉まで伸びてしまっている場合には、少し効果が弱くなったり、筋肉の手術を別に追加する必要があります。また、切開位置を眉毛に近づけて、出来る限り傷口が目立たないようにしますが、傷口を二重に隠せるミュラー筋タッキングに比べて、傷が剥き出しになる感じは否めません。
上眼瞼リフト(眉毛下皮膚切除術)では、術後に眉を書きたすなどして傷を隠す必要があります(アイブロウ)
上眼瞼リフト(眉毛下皮膚切除術)は、比較的若い女性で、自然な二重が希望で、眉毛を書くことが苦でない人、まぶたの皮膚が厚ぼったい人にお勧めする場合があります。
(当院では、美容目的の手術は引き受けていません。あくまで、医学的に手術が必要なレベルの方のみ対応します。)

実際の手術ですが、

手術の写真は上下逆さまです。赤矢印の先が眼球、下の端っこに眉毛が見えます。切除するべき余った皮膚にペンで印をつけます。その後、麻酔の注射をします。

ペンでつけた目印通りに、メスで皮膚を切除していきます。通常のメスではここで出血がひどいのですが、炭酸ガスレーザーメスなら、出血はごく少量で済みます。

皮膚を切除した後。殆ど出血がありません。あとはこれを上下に縫い縮めます。

ただ切ったり縫ったりするだけの手術で、だいたい片目15分くらいです。
皮膚にパツパツに緊張がかかり、傷が開くと嫌なので、だいたい2週間程度待って抜糸を予定します。

眼瞼下垂の術式は他にもいろいろありますが、担当の先生とよく話し合って決めていきましょう。

さて、明日も網膜剥離の紹介があるようです。頑張らねば!

木漏れ日 形成術

今日は千葉県の先生に、午前の外来・午後の手術と見学に来て頂きました。
当院には初めての先生ですが、喜んで帰って頂けて良かったです。
手術は白内障11件、網膜硝子体手術(茎離断)2件(黄斑前膜・黄斑円孔)、緑内障手術(エクスプレスシャント)1件でした。
順調に終わって5時には終了出来ました。
昨日までかなり忙しかったのですが、今日からは少し時間が取れそうです。

木漏れ日 形成術
うちの長女は泥んこ・自然が大好きです。最近の口癖は、「お部屋を森にして。」とのことで、部屋に観葉植物を置いてみたり、日曜大工でハンモックを作成してみたり、普段遊べない分、ついついご機嫌をとってしまいます。
子供部屋の証明が電球剥き出しのタイプだったのですが、少しアレンジをしてみようと。

まず、電球に触れて火事がおきないように、簡単に針金で囲いをつくりました。

カインズホームで買ってきた、緑の針金入りの網を切って、

電球の上に巻いてみます。
そして最後に、人工の観葉植物(アイビー)を針金の網に巻き付けて。

いい感じです。
木漏れ日という雰囲気には、もう少しアイビーを買い足したほうがよさそうですが、あまり巻きつけると、照明として暗くなっちゃうかな??

さて、子供たちは喜んでくれるのでしょうか?
ワクワク。

視神経炎? 治療その4 その他 

今日は午前の外来後に急いで移動し、午後は県南の医院様で白内障手術や硝子体手術、10数件を執刀させて頂きました。
その後、久しぶりにTX(つくばエキスプレス)に乗って、夜は都内で50分程度の講演を担当。僕が特に力を入れている糖尿病黄斑浮腫という病気についてまとめてみましたが、そのうち黄斑浮腫のブログもかかなくちゃ。
渋谷で食事をして、帰りはフレッシュひたち(常磐線)で、ブログを更新してみます。少し酔っていますが、誤字脱字があってもご勘弁を。フレッシュひたち、なかなかいいシートで、快適です。

視神経炎の最後です。
視神経炎? 治療その4 その他
視神経炎の治療のメインは、ステロイドパルス療法です。他に抗AQP4抗体陽性視神経炎では血漿交換なども有効であることを記載しました。
ただし、これらの治療だけで、全ての視神経炎が治療可能なわけではなく、また、ステロイドの副作用が強くでて、ステロイドを使い得ない患者様などもいらっしゃいます。このような場合には、ステロイド以外の免疫抑制剤や、インターフェロンという薬を併用するなどして、治療効果を向上させよう。といった治療法も試されています。

以前にも記載しましたが、長期的な経過をみると、もっとも有効と思われているステロイドパルス療法でさえ、大きな改善効果はない。とする研究もありますし、治療への反応が悪い・難治性の視神経炎が存在することは確かです。
難しい病気ですので、「大学病院で治療をしたのに、それでも見えなくなった。」と、セカンドオピニオンとして当院を受診された方もいらっしゃいますし、Q&Aでも質問を受けたこともあります。
同じ視神経炎といっても、実際の症例ごとに治療への反応も異なり、簡単に治ってしまうもの、なかなか難しい経過をとるもの。様々な症例があります。
いい訳ではありませんが、現在の医学で考えられている、全ての治療を行ってもどうにもできない症例もあるのだと思います。
(幸いにも、開院以降の当院で治療をした症例では、もっとも悪い結果の方でも視力0.2?0.3程度で、失明に至った患者様はいらっしゃいませんが、超重症例が少なかったのだと思います。)
医学が進んで、よりよい治療法が開発されることを祈るばかりです。

また、視神経炎は再発しうる疾患です。
一度、視力が落ち着いたからと言って、「もう一生大丈夫。」という事はありません。当院では落ち着いていても、半年?1年に1回程度の定期健診をお勧めしていますが、予約の前でも、視力の低下を自覚したり、眼球を動かした時に痛みがある場合(視神経炎の症状の一つ)などには、早急に受診をしてください。

視神経炎は初期治療も再発時の治療も、治療をするのであれば、できるだけ早くに治療をする事が重要です。炎症・脱髄が起こっても、すぐに消炎をすることができれば、神経細胞の障害には至らずに回復が可能ですが、炎症が起こってから時間がたつほど、神経の変性・萎縮が進行してしまいます。見え方が悪いと思った時には、すぐに診察を受けるようにしましょう。
僕たちは、できるだけ早く治療に進めるように、「この検査は明日」「また別の日にこっちの検査」などということはせず、早急な診断に努めたいと思います。

今日もお読み頂き、ありがとうございました。

視神経炎? 治療その3 血漿交換

今日のお昼は白内障や翼状片の手術を行いました。夕方の外来が終わってから、夜は県南のクリニック様で網膜剥離のお手伝いに。
実は先週の金曜日に当院で1件。土曜日にも他院様に網膜剥離の手術に。なんだか茨城県は網膜剥離だらけのようです[:冷や汗:]

明日まで少し忙しいのですが、少し時間が出来たので、ブログを進めてみます。
視神経炎? 治療その3 血漿交換

視神経炎は、免疫機能の異常を元に発症する病気で、視神経を構成する成分に対して自己抗体(免疫力の間違えで、自分自身を攻撃してしまう)が形成され、視神経に炎症や脱髄が起こってしまうものと考えられています。

視神経炎の治療の基本は、ステロイドパルス療法であることは間違いないのですが、実はステロイドパルス療法のみで良くなる症例ばかりではないようです。

視神経炎の分類については、視神経炎?で記載しましたが、現在のところ、視神経以外にも炎症が起こるかどうかで、大きく以下の4種類(?と?を同じとする場合は2種類)に分けられています。
?多発性硬化症(MS):視神経と脳を中心に炎症がおこるもの
?視神経脊髄炎(NMO):視神経と脊髄を中心に炎症がおこるもの
?抗AQP4抗体陽性視神経炎:NMOのうち明確な自己抗体が判明しているもの
?特発性視神経炎:視神経のみに炎症がおこるもの

?や?の視神経炎ではステロイドパルス療法がよく効いて、視力の回復を得られることが多いのですが、特に?の症例ではステロイドパルス療法の効果が弱く、それのみでは視力の回復を得られない場合が多いとされています。
そんな時に行うのが、血漿交換になります。

血漿交換(けっしょうこうかん)
血液の中には、酸素を運ぶ赤血球、バイキンをやっつけるなど免疫力を担当する白血球、出血を止める血小板などが流れていますが、これら3つの血球成分が浮かばせて流している液体の成分を、血漿と言います。
たんぱく質などの栄養分に富んだ水ですが、この血漿の中には、自己免疫性疾患の元になる(視神経などを攻撃してしまう)自己抗体や、炎症を起こす働きをするホルモンなども含まれています。
血漿交換は、血液の中に含まれる、これらの自己抗体や炎症を起こすホルモンを除去してしまおうという治療です。
足の付け根などの太い血管に、太めの針を刺し、患者さんの血液を取り出します。取り出した血液を遠心分離にかけ、血小板・白血球・血小板などの血球成分を分離したあとに、残ったお水(血漿)を破棄します。最後に、献血などで頂いた健常な方の血漿と、分離しておいた自身の血球成分をまぜて、体の中に戻していきます。
一気に全ての血漿を交換することは、体への負担が大きいためできません。ゆっくりと時間をかけて、数回に分けて血漿を交換していきます。

病気の主因となる物質を体から除去できるので、視神経以外の他の自己免疫性疾患を含めて非常に有効な治療法ですが、体への負担もありますし、他の方の血液を体内に入れるので、もしかしたら何かの感染症がうつってしまったりと(ほぼ心配ない確率ですが)絶対に安全とは言い切れない治療です。ですので、基本的には血漿交換療法は、ステロイドパルス療法などが無効であった時のみに検討される治療法です。

*抗AQP4抗体陽性視神経炎
視神経を構成する成分である、アクアポリンAquaporin4にする自己抗体の発生が病気の主因であると考えられている、近年発見された視神経炎の特殊型といえる疾患です。
比較的高齢の女性に多く発症し、高度の視神経が再発を繰り返すなどして、失明にまで至ることも少なくない、重症型の視神経炎です。他の視神経炎(明確な自己抗体が判明していない)に比べて、ステロイドパルス療法が効きにくく、以前は治療に難渋していましたが、血漿交換によって視力の回復を得られることが多くなってきています。(病気を抑えていくためには、ステロイド剤の併用は必要です。)

視神経炎の初期治療でステロイドが無効であった場合には、早急に血漿交換が必要になるケースがありますが、当院は眼科・内科クリニックでもともと、施設内に人工透析が備わっています。早急な人工透析・血漿交換が可能な施設です。

H25年3月の手術実績:茨城県 山王台病院 眼科

今日はかなり遠方からいらした患者様の手術(硝子体茎離断術)がありました。

まだお若い患者様ですが、糖尿病の重症例です。
本日初診で、日帰り手術、明日には元の先生の医院にお戻り頂きますが、
元の先生が、僕の大先輩の先生なので術後followが安心してお願いできます。
夕方は県内の医院様で硝子体手術のお手伝いをさせて頂きました。

4月から新しいスタッフが増え、にぎやかになっています。今後、増築工事なども予定されていますが、おいおい紹介していきたいと思います。
来週は都内で講演の予定があり、準備のためブログ更新が遅れます。

3月の治療数をカウントしてみました。
H25年3月の手術実績
手術合計 109件
内訳

・白内障手術 76件

・網膜硝子体手術 13件(糖尿病・網膜剥離・眼底出血・黄斑円孔など)
・緑内障手術 2件
・眼瞼(まぶた)の手術 7件(眼瞼下垂・さかさまつげ・眼瞼腫瘍)
・涙器の手術 5件(NSチューブ・涙嚢切開など)
・その他の手術 6件(結膜の手術・角膜の手術・硝子体注入吸引など)

レーザー手術合計 17眼
内訳
・網膜光凝固 10眼(糖尿病・眼底出血などに対するレーザー)
・YAGレーザー 7眼(後発白内障に対するレーザー)

*手術数は、分院であった小美玉市医療センターとの合計数です。手術数は基本的に保険診療で請求された件数です。両眼同時手術などは2件と計算しています。

抗VEGF薬 硝子体注射 40件(加齢黄斑変性症などに対する注射です。ルセンティス・マクジェン・アバスチンの合計)

ステロイド薬 テノン嚢注射 16件(糖尿病や網膜静脈閉塞症などでの黄斑浮腫などに対する注射です。トリアムシノロン)

白内障などの緊急性のない手術の待ち時間は、4ヶ月半待ち、8月中旬からの予約となります。

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 行方市 鉾田市 茨城町)

最後の外来  小美玉市医療センター

今日は少ししんみりした気分です。

最後の外来  小美玉市医療センター
5年前に筑波大学からの派遣として、非常勤で勤務が始まった小美玉市医療センターですが、その後、山王台病院の常勤となってからは毎週外来・手術と、さらに数多くの患者様の診療に携わらせて頂きました。
5年間も関わると、重症で思い入れの強い患者様、家族みんなで通院してくれた患者様、何度も通院が途切れて怒ってしまった患者様・・・。たくさんの思い出があります。
もともと小美玉市の病院であった国保中央病医ですが、5年前に指定管理者として山王台病院(幕内会)が指定を受けました。今回、5年間の任期が満了し、山王台病院(幕内会)としては、医業の派遣が終了となりました。
3月は「先生に会いに来たよ。」と、顔を見に受診をしてくれる患者様も沢山いました。外来が混んでしまうので、なかなか長話はできませんでしたが、とても嬉しかったです。
お昼に外来が終わって、人気のない待合室と、だれもいない手術室を歩きましたが、なんとも言えない気分です。

5年間、小美玉市近隣の地域のためにどれくらい役に立てたかは不明ですが、少しは貢献できたのでしょうか。もう少し頑張るところがあったのかな?外来は待ち時間が長くなりがちでしたが、予約制にした方がよかったのか。モニターや、病気の説明など、分かりやすい医療の設備をもっと整えたほうが良かったのか。
かなりの手術を行いましたが、術後感染症(眼内炎)が1人も発生しなかっのは本当に良かった。
終わってしまってからの方が、いろいろと考えてしまいます。

長らく支えて下さった地域の患者様、そしてスタッフの皆さん、本当にありがとうございました。

お住まいが近く、眼科内科クリニックへの受診が不自由でない場合には、引き続き診療をさせて頂ければと思います。

交通の手段など、通院が難しい場合には、現在も常勤の井上先生に診療の依頼をしてありますので、小美玉市医療センターでの通院を継続して下さい。
医療センター受診中でも、急に見えなくなった場合などは、遠慮なく山王台の眼科内科クリニックに電話を下さい。

最近受診をされて、紹介状などを受け取っている方は、そのままクリニックの予約をとって頂ければ大丈夫です。受診間隔が長期で、紹介状などもなしでクリニックに受診される場合は、現在お使いの点眼瓶(目薬)、もしくはお薬手帳を持参頂けると助かります。
小美玉市医療センターでの外来と異なり、基本的に完全予約制・予約優先の診療をしています。受診前にお電話にてご予約をお勧めします。

さくら

今日の午後は臨時で手術を行いました。
・緑内障手術 1件
・白内障手術 1件
・網膜硝子体手術(茎離断)2件
 (黄斑円孔1件、眼内悪性リンパ腫疑い生検+黄斑前膜)
無事に終わっています。

さくら
急に暖かくなってきて桜の季節になりました[:桜:]今年は早いですね。
4月に子供が小学校に入学しますが、きっと散ってしまっているでしょう・・・[:汗:]

病院の桜もいい感じ。僕は朝と夜にちょっと見るだけですが、なんとなく気持が華やぎます。僕は夜のライトアップが結構好きです。
眼科内科クリニックで処方箋をもらって、本院前の薬局屋さんに行く人は、歩いて向かうのもいいかもしれませんよ。

でも、平日はもちろんですが、次の週末は仕事の予定なので、我が家は残念ながら今年のお花見は難しそう[:悲しい:]

視神経炎? 治療その2 ステロイドパルス療法

今日のお昼は白内障手術のみ9件、無事に終わりました。
午後の外来は空いていて、のんびり。久しぶりに、外来が途切れてしまっている「心配な人リスト」に電話ができました。リストがキレイにさっぱりしました。

今日は視神経炎の具体的な治療に関してです。
視神経炎? 治療その2 ステロイドパルス療法
体内にはステロイドといって、体にかかるストレスや負担、炎症などを抑える働きを持つホルモンが、もともと存在しています。
以前に、ぶどう膜炎のブログでステロイド治療について記載したことがありますので、ご参照ください。
視神経炎は免疫のバランスが崩れて(自己免疫性疾患)、自身の視神経(症例によっては脳や脊髄)に炎症を起こしてしまう病気ですが、
治療法は、ステロイドを体外から余分に投薬してあげることで(自分が産生する量以上に)、視神経の炎症を抑え、病態を落ち着かせることを目的とします。
ステロイドには内服薬(飲み薬)や、注射薬(点滴)、眼科では点眼薬(目薬)、眼球周囲への局所注射などの使用法があります。
目薬では眼球の後方の視神経には届きませんし、初期治療として安易に飲み薬を使用することは予後を悪くするという報告もあり、視神経炎の標準治療としては、点滴による治療が行われています。

ステロイドパルス療法
炎症を抑える働きをもつステロイド剤を、短期間で大量に点滴する治療法です。
当院では、主にソル・メドロールという薬を使用しています。
ソル・メドロール 1000mgの点滴を、午前中に1時間かけて投与
同じ点滴を3日間、連続で行います。

(人間が正常時に自分の体で産生するステロイドの、200倍以上の量を、1日で投与します。まさに大量療法ですね。)
超高齢者や、小児のお子さん、他の疾患で全身的なリスクが高い患者さんでは、500mgと半分の量で治療をしたりもします。

副作用
ステロイド剤はとっても有用なお薬ですが、残念ながら副作用も沢山あります。
・感染症が起こりやすくなる、糖尿病の悪化、胃潰瘍、骨粗しょう症、高血圧、高脂血症、体重増加、筋力低下、精神症状、体が火照る、不眠などなど。
(もともと、免疫力による炎症は、バイ菌などの外敵が体内に入ってきた時に、体を守る防衛反応として存在します。ステロイドは炎症を抑えてしまうので、バイ菌が体に入った時の防衛反応が出来なくなってしまうのですね。)
副作用と書くと、みなさん治療に怖気ずいてしまうのですが、ステロイドパルス療法では、ステロイドの量が多い割に、全身的な副作用が起きにくいとされています。
ただし、重症の肺炎を起こしたり、糖尿病が急激に悪化したり、血圧の変動から脳や心臓に急に負担がかかったりと、非常に稀ですが、重篤な副作用も起こりうるので、基本的には入院での治療をお願いしています。
(当院では外来治療は行っていません。)
比較的よく起こる副作用としては、ドキドキと動悸を感じたり、体がほてったり、眠りにくくなったり。このような場合は安静にしたり、睡眠薬を処方して対応します。超高齢者では、一過性ですが、精神症状「ここはどこ?私はなにしているの?」など、精神的に不安定になってしまう事があり、家族の方に付き添いをお願いする場合があります。

その後
3日間の治療1回(1クール)で、完全によくなってしまう症例はいいのですが、残念ながらまだ病気の勢いが残ってしまう場合もあります。そのような場合には、1週間毎程度で同様の治療を繰り返し、重症例では3クールの治療を行う事があります。
また、点滴でのパルス療法の終了後に、再発のリスクが高い症例では、飲み薬のステロイド剤を内服し、ゆっくりとステロイドを減らしていく治療を追加することもあります。

今回例にしている患者様のケースでは、

初診日の視野検査の結果です。視力は0.05まで低下しています。
初診日にMRIを含めて全ての検査を施行し、当日中に確定診断。
翌日の朝から入院し、ステロイドパルス療法
(夜に治療をすると眠りにくくなったり大変なので、翌朝からの治療に。)

1クール目のパルス療法後です。まだ中心部に暗点(視野の見えない部位
)が残っており、視力は0.2
MRIでも僅かに炎症があり、翌週に2クール目のパルス療法を施行しました。

2クール目の治療後は、暗点が縮小し、視力も0.8まで回復しました。
2週間程度様子をみたのですが、反対目の視神経に炎症と視野障害があり、ステロイドの飲み薬を開始。(プレドニン1日30mgから徐々に減量中)

これは最近の結果ですが、両眼ともに落ち着き、視力も0.9?1.0を保っています。

視神経炎? 治療その1 なにもしない

今日は日曜日ですが、茨城県眼科医会主催の勉強会に参加しました。
糖尿病黄斑浮腫と前眼部OCTの講演でした。
糖尿病黄斑浮腫の講演では、現在当院で行っている医療とほぼ同じ、むしろ当院の方がかなり積極的な医療を行っていることが確認でき、安心できました。
(当院では糖尿病でレーザー治療が予定された段階で、OCTの黄斑マップでほんの僅かでも浮腫があれば、アバスチンとマキュエイド・ケナコルト注射をルーチンで併用して、視力の低下を防ぐ工夫をしています。)
夜は、県内の大先輩の先生にお酒を奢って頂きました。明日は平日なので、体調がちょっと心配です。ブログを書く前にウコンドリンクを飲んでおこう。

さて、視神経炎の続きです。
視神経炎? 治療その1 なにもしない
急に視野が欠けたり、視力が低下してしまう視神経炎。自己免疫性疾患と言われても、難しい内容だし、あまり納得できない患者さんも多いのでは?
少しでも早く、治療を受けたい。元に戻りたい。と思うのがあたり前ですよね?

後日記載しますが、基本的な治療は炎症を抑えるホルモン製剤である、ステロイドという薬を使うことです。
(⇒ステロイドについては、以前のぶどう膜炎のブログを参照
ステロイドには目薬や飲み薬、点滴などの使用方法がありますが、視神経炎の初期治療では、主に
ステロイドパルスと呼ばれる大量の点滴療法が行われます。
ところが、僕たちは視神経炎と診断したからと言って、全員の患者さんを治療するわけではありません。

治療をしても長期成績は変わらない??
現在の医学の基本的な考え方は、エビデンス ベースト メディスンが基本です。(⇒エビデンスの詳細は、以前のブログを
科学的根拠に基づく医療という意味で、たまたま1人に行った医療が上手くいったかではなく、何百・何千といった、多数の治療の結果を統計学的に評価して、
本当に有効であった治療を行っていこうというものです。

視神経炎について、アメリカで発表された多施設調査の結果では、なんと、治療を受けたグループと、無治療で観察したグループとの10年後の長期予後(治療成績)は、あまり差がなかった(治療の意味がなかった)というものでした。

治療をしなくても(無治療でも)、回復する症例は自然に回復するし、
治療をして一度は回復しても、再発を繰り返して、最終的に失明に至る確率は、無治療で失明していく確率と同じくらい。といった具合です。

では、治療は全くの無意味なのか?というと、そうではありません。
10年後の結果は同じでも、回復までの期間を早めたり
残念ながら再発を繰り返し、最終的に失明に近い状態になる運命でも、無治療で早々に見えなくなってしまうよりも、治療によって出来るだけ見える期間をのばすことは可能です。
また、症例によっては、多発性硬化症と呼ばれる、脳に病変が合併する病態
への進行を抑える可能性があると考えられています。

ステロイドには副作用がありますし、治療をした方が良い・しなくても同じ?などさえハッキリしないのですが、今の医学では、ステロイドパルス以外にきちんとした治療法が確立されていないので、申し訳ありませんが、僕たちの説明も少しあいまいなものになってしまいます。(これで治ります!!とは言い切れない。)そもそも難病に指定されている難しい病気なのですよね。

現時点の一般的な考え方としては、
・視力低下や視野欠損の程度が軽く、片眼性で、脳や脊髄への病変を認めない場合⇒無治療で観察
・視力低下や視野欠損が高度、両眼性の病気、脳や脊髄にも病変がある。または脳や脊髄に病変が発症する可能性が高い⇒ステロイドパルス療法+α
となっています。
(+αについては、後日記載)

別件ですが、ステロイドパルス療法(点滴)後に、ステロイドの内服薬を用いることはありますが、初期治療で内服薬を使用することはありません。
初期治療で安易に内服薬を処方した場合には、多発性硬化症という全身的な病気を発症するリスクが高まってしまうとさえいわれており、治療というよりやってはいけないこと。と考えられています。

次回から具体的な治療について記載していきます。

点鼻薬

今日も花粉症の患者さんが沢山きました。
午後は、県内の医院様で手術をさせて頂きました。
硝子体手術や、白内障、眼内レンズ縫着、まぶたの手術など10数件。
自分の医院以外での手術をするのは、環境や器材・設備も多少づつ異なり、新鮮な気持ちになります。特に、いろいろな分野の手術が入っていると、ワクワク楽しいです。

ブログで花粉症と書いたからでしょうか?
知り合いの先生が薬を送ってくれたり、薬剤師の先生が薬の情報を教えてくれたり。ノドが痛いのも、スタッフがノド飴をくれたり、すぐに水を用意してくれたり、手術中も飲めるようにストローが準備されていたり。
みなさん、ありがとうございます[:楽しい:]

眼科医だけあって、目薬の勉強はしているつもりですが、
どうしても、内服薬や、他の薬の知識が乏しくなってしまいます。
僕は、花粉症の患者様に点鼻薬を処方する場合に、フルナーゼやザジテンという薬を処方することが多かったのですが、今回、薬のことを教えて頂いた時に、聞いたことがない名前の点鼻薬の話が出てきました。

アラミスト点鼻薬
花粉症のお薬は、飲み薬、目薬、点鼻薬、超重症例では注射薬などがあります。
飲み薬は、目にも鼻にも効きますが、眠気などの副作用が起こりえます。目薬や点鼻薬は、症状のある場所だけに効果的に働き、全身的な副作用が少なくてすむのが利点です。
アラミスト点鼻薬は、僕がこれまで処方していた薬と違って、1日1回で効果が安定することで、人気のある薬らしいです。
鼻腔の中にスプレーすることで、鼻粘膜のヒスタミンを減少させ、抗炎症作用、抗アレルギー作用を示し、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの鼻症状を改善させる効果があります。

毎日1回、続けることで効果が安定するようです。
僕は、月曜日のお昼にもらってすぐにつけ始めましたが、今日、水曜日の夜にはかなりいい感じです!!薬剤師の先生、ありがとうございます。

薬の効果や使い心地には個人差があります。決してアラミストがベストだという事ではありませんが、
薬の使用回数は少ない方が楽。今までの薬が効きにくい。という方は、是非教えてくださいね。
(僕は恥ずかしながら、きちんと回数を守れないタイプなので、1回で済むのはとても嬉しく思いました。)

それにしても、アラミストの発売は3年前のよう。
眼科専門の薬ではなくても、もう少し早く情報を手に入れられるように、幅広く勉強をしなくてはいけないと実感しました・・・・。