色覚異常?

今日は以下の手術を行いました。
・加齢性眼瞼内反症(さかさまつ毛・眼輪筋縫縮)2件
・白内障手術 6件
・眼内レンズ縫着術(無水晶体眼)1件
・網膜硝子体手術 4件(茎離断3件・切除1件)
 (黄斑浮腫1件、黄斑前膜2件、硝子体混濁1件)
無事に終わりました。

Q&Aで、色覚異常についての質問があり、少し書き始めてみますね。
色覚異常(しきかくいじょう)
目がいい。目が悪い。というと、病気ではない多くの人は、1.0とか0.2とか、視力検査の数値を頭に思い浮かべるかと思います。
このような一般的な視力検査は、形態覚と言って物の形を判断する能力の評価になります。他に、見え方の評価としては、緑内障などで問題となる視野(見える範囲)も必要ですし、そして、色覚(色がきちんと認識する能力)も考える必要があります。
視力の数値が1.0あって、広い正常な視野があっても、色が白黒の世界では生活が不便ですよね?

色覚異常は、この色を判別する能力に何らかの異常をきたした状態です。
まず、大きく、先天性(生まれつき)と、後天性(生まれた後に病気が原因で)の二つに分けられます。

後天性の色覚異常は、
例えば、白内障で水晶体が濁ることで、青や黄色の色合いに変化を感じるようになったりするのも、色覚異常に該当します。(逆に手術で治すと、もともとの正常な見え方に近づくため、色がキレイに見えるようになったと喜んでもらったりします。)
他に、重度なものとしては、色を感知することを得意とする錐体という視細胞が障害されるような、錐体ジストロフィーや、錐体が多く集まる黄斑部の病気(黄斑変性症や、糖尿病黄斑浮腫など)でも、視力の数値も低下しますが、色の判別が難しくなったり、重症例では白黒の判別しかできなくなることもあります。

上記のような後天性の色覚異常で、ある程度の年齢で、他の病気を原因として色覚が障害された場合は、患者様自身も「色が見えにくい。」と自覚することができますが、先天性(生まれつき)に色が分かりにくい場合には、初めから、そういう世界で育っていくために、自分が病気であるということを認識できません。
先天性の色覚異常は、本人が自覚しにくく、また、周囲の人間も色覚異常のかたの見え方を実感できるだけではないので、お互いに理解しあうことが難しいようです。

とっても難しい分野なのですが、今後、先天性の色覚異常について、少しづつ記載を続けていきたいと思います。

おくやみ欄

今日は小美玉市医療センターで井上先生と手術でした。
難しい症例もいましたが、無事に終えました。

小美玉市医療センターでは非常勤も含めると、かれこれ4年、
眼科・内科クリニックの常勤も2年以上が経過しました。
以前は大きな病院で、毎年転勤を繰り返していたのですが、
長く一か所で勤務を続けると、以前とはいろいろと異なるがあります。
ずっとここで働いて行こう。と心に決めていますが、
転勤がないということは、治療が上手くいかない場合も、どんなに頑張っても回復が望めない病気の患者様ともずっと長く付き合っていく必要がありますし、責任をより重大に感じることになります。
そういうプレッシャーもありますが、他に思う事も。

最近はなんとなくですが毎朝、朝刊の「おくやみ欄」を見るようになりました。
石岡・小美玉・かすみがうら・行方・笠間、なんとなく目を配ると、残念ながら数日に1回は思いあたる名前を目にします・・・。
「似ている名前だな。あの人じゃないといいな。」と思うだけで、気持ちものらないので、それ以上は無理に調べないようするのですが、次の外来予約日に来なかったりすると、なんとなく悟ってしまいます。
そういう気づき方以外にも、実は先週・今週は特に数が多くて、5名の患者様の家族に、「亡くなりました・・・。」との報告に来て頂きました。
(Y様、I様、K様、N様、S様、今回は全員がある程度高齢の男性でした。これまで、どうもありがとうございました。)
緑内障や糖尿病の患者様は、長い間のお付き合いがあったり、手術を何回も担当させて頂いたりと、思い入れも強いのですが、眼科医って命の問題には全く力になれないので、なんともやりきれない気持ちなることもあります。
大きな病院に勤めている時には、そういう経験は少なかったのですが、ご家族がわざわざ眼科医の僕のところにまで、亡くなったという報告にきてくれるのは、とてもありがたいことです。
今回ではありませんが、数ヶ月前に小美玉で80代の緑内障末期の患者様が亡くなった時に、「生きている間、光が保てて良かったです。」というお手紙を、奥様に頂いたのですが、これにはグッとくるものがありました。

これからも、ここで働いて行くとなると、もっともっと同じような経験をするのかもしれませんが、少しでも不自由のない生活のお手伝いができるといいなと。

なんだか、個人的で、よく分からないブログになってしまいましたが、お読み頂きありがとうございました。

緑内障? GSL(隅角癒着解離術)

今日のお昼は以下の手術を行いました。
・治療的角膜切除術 1件(帯状角膜変性症治療)
・白内障手術 7件
無事に終わりました。

今日は緑内障の治療の話を進めてみます。
緑内障? GSL
隅角癒着解離術(Goniosynechialysis)

緑内障?の分類で記載したのですが、実は一口に緑内障と言っても、いろいろと分類があります。閉塞隅角緑内障はあまり多くない少数派の病態なのですが、眼圧が高めになったりして、重症の例もそれなりに多いのが嫌なところです。

目の中を循環する水(房水)の出口を隅角と呼びますが、右のイラストは開放隅角といって房水の出口が広く保たれるタイプですが、赤矢印の方向へ水が流れ、最中的に黄色のカッコでくくった構造(隅角)から目の外に流れていきます。
左が、閉塞隅角緑内障のイラストですが、茶目(瞳孔・虹彩)が前の方に移動し、角膜とくっついていることで、黄色のカッコでくくった隅角が塞がれてしまっています。これでは、房水の排泄が悪くなって眼圧が上がってしまいます。
隅角が閉塞したり、癒着をしてしまう原因には、遠視などの生まれ持った体質や、加齢による白内障、ぶどう膜炎での癒着などがあります。

今回の症例は、5月1日に「両眼見えない」と初診になった77歳の男性です。
右目は、末期の黄斑変性症・硝子体出血で、視力は光覚弁とほとんど見えません。
そして左目は、眼圧が30mmHgと高く、視力は0.4、残念ながら視野は末期です。
中心部の視野がごくわずか。
初めて診察した瞬間から、「どうにも・・・困った。」という症例です。

これは、目に特殊なレンズをあてて、隅角をのぞく検査(隅角検査)の結果ですが、専門的で分かりにくいと思いますが、癒着がひどく水の出口がハッキリ見えません。(以前にぶどう膜炎の既往があるようです。)
ひとまず一気に3種類の点眼薬を処方し、1週間後に再診となりましたが眼圧は20mmHgといまいち。閉塞隅角では、基本的に出口が塞がれているので、目薬では眼圧が下がりにくい場合があります。末期の緑内障では出来れば10mmHgくらいの眼圧がいいのですよね。
右目も手術が必要なので、どうせ入院するなら。と、5月12日に両眼手術となりました。

目薬の麻酔をして、消毒をして、簡単な注射の麻酔をします。

白内障手術を同時に行うと、水晶体の厚みの分(人工のレンズの方が薄い)、虹彩(茶目)が後ろ側に移動するため、隅角が広くなります。今回も同時手術で。

こんなときでも、LRIをやって乱視を減らします!


ちょっと斜めに傾いたレンズを黒目にのせて、上からのぞくと、隅角が観察できます。緑矢印は、隅角を押し広げたり、切り開いたりする特殊な針です。

目の下側、写真では上側の隅角ですが、針で手前側に広げるように切開します。

切り開いた部分は、多少出血するのですが、矢印の部分に赤い出血があるのが分かりますか?(出血は手術中に出来るだけ止めますが、キレイになるまでに数日間かかることもあります。)

白内障手術もいれて、だいたいここまでで10分くらいの治療です。
(この方は、反対目の硝子体手術の方が大変でした・・・。)

先週の土曜日、6月16日に経過観察でいらして頂きましたが、

左が治療後、右が初診時の隅角の写真です。緑の矢印の長さだけ、隅角の癒着が剥がされ、水の出口の構造がハッキリと見えるようになっています。
眼球の全周、全ての範囲の癒着を剥がすわけではなく、僕は安全にできる下方の癒着を主に剥がすようにしています。

同じ人の写真ですが、赤の部分は癒着を剥がした場所、黄色はとくに何もしていない癒着したままの隅角です。
ちょっと専門的な内容になってしまいましたが、わかりますでしょうか?

気になる眼圧は、目薬を1種類使用して、12mmHgまで下がっていて、とてもいい経過です。(手術の効果だけでも正常な眼圧を保てますが、非常に末期の症例で、出来る限り眼圧を下げるために目薬を追加しています。)
白内障手術の効果で視力は0.4から0.8に改善していますが、視野が狭いので、歩くのは大変そうです・・・。緑内障で失った見え方を取り戻す治療ができるといいのですけどね・・・。

とうふそば処 しげふじ (八郷)

今日はムシ暑い日でしたね。
昼から晴れたので、石岡の北西、自然豊かな八郷地区へドライブにいってみました[:車:]
八郷付近は果物狩りが有名なのですが、イチゴは終わり、ブルーベリーはまだ先、大好きな温泉「ゆりの郷」は、なんと現在改装中でお休みです。
それでも、田園がキレイだったので車を走らせてみると、前から行ってみたかった蕎麦屋さんが目に入りました。

とうふそば処 しげふじさん

石岡八郷産の大豆のみで作った、しっかりとした味の自家製豆腐と、常陸秋そばを使用した10割蕎麦、蕎麦がき、おからなど、かなりこだわりを感じるお店です。

とってもおいしかったです。

窓の外はキレイな田園で、このあたりのイネは、府中誉れさんの日本酒「渡舟」の酒米だそうです。お店にも渡舟が置いてあり、父の日だったので妻に運転をお願いして、昼からちょっとだけ[:熱燗:]
ご主人が「めったに出さないんだけど・・・」と、自家製豆腐を発酵させた、沖縄の「とうふよう」のようなツマミを下さいました。これも美味しかった。


どこも、キレイな緑の田園なのですが、ところどころ秋のような茶色の風景が。気になったので車を降りて見ると、「麦」のようです。これが美味しいビールになるのかな?麦は6月とかに茶色になるのですね[:見る:]世間しらずで知りませんでした。

しげふじさんの近くで、ひっそりした看板を発見。
喫茶・ギャラリー・フラワーアレンジメント
木古里さん

コーヒーとケーキを頂きました。写真では伝わりにくいかもしれませんが、よく手入れされたテラス・庭からは、とってもキレイな自然の景色が。
もし、温泉が豊富にでたりしたら、八郷地区は栃木の那須に負けない観光地になるのでは?なんて勝手に思ったり。

さらに、その近くで、
めだかの郷という看板を発見。

気になったのでのぞいてみると、

メダカの養殖をして、インターネットで販売しているんですって!
いろいろ見学をさせて頂きましたが、メダカにはものすごい数の種類があって、品評会とかまであるようです。
キラキラひかるメダカに惹かれると、「幹之・みゆき」という種類のようで、1匹500円?、高いものは1匹1万円を超えるものも!!
ご主人はメダカが大好きなようで、嬉しそうにいろいろ教えて頂きました。ちょっとサービスして頂いて、幹之を4匹頂戴しました。
今、僕のパソコンの横の水槽でちょろちょろ動いています[:魚:]

父の日

今日は父の日でした[:楽しい:]

子供たちが、似顔絵を書いてくれたり、

お手伝い券??など、いろいろ作ってくれました。

まだ、たどたどしい平仮名ですが、
「かたたたきをしながら、おしゃく」
「まっさーじをしながら、おしゃく」
「パパがねるときに、ふとんになってあげる」など、
なかなか素敵な券です。

親バカに拍車がかかります[:ときめき:]

角膜鉄片異物

今日の話題から一つ。
角膜鉄片異物
角膜鉄片異物はその名の通り、角膜(黒目)に、鉄のかけらなどが刺さった状態です。当院には2週に1名か2名程度の患者様がいらっしゃいますが、殆どの患者様が男性で、「仕事中にサンダーで鉄を削っていて痛くなった。」などの理由が多いようです。

先週の患者様です。(緑内障の手術後で、上方の瞳孔が欠けています。)

瞳孔の左下、水色矢印の部分に黒いかけらが刺さっているのが分かりますか?
このままほっておくと、鉄の周りが炎症を起こし、錆が角膜に沈着し、炎症を起こして角膜が白く濁っていきます。キズに感染症が起こると最悪失明に至ることも。

点眼薬の麻酔をして、針やセッシで鉄のかけらを除去します。
刺さってすぐに来てくれたら、錆が残らずに簡単に除去できて楽なのですが・・・、

だいたいの人は、数日我慢して、それでも痛いから。と受診されます。この方も、錆が出てきて、角膜に茶色いリングが残っています。錆を残すと、炎症が長引いたり、角膜に濁りが広がってしまう事が多いので、出来る限り除去します。

まるで歯医者さんのようですが、こんなドリルを当てて角膜を削ると、錆は簡単に1?2秒で除去できます。

多くの方は、目の前で作業をされると怖くて目が動いてしまいます。僕たちはまっすぐ見ていて頂くのが一番やりやすいのですが、動くと危ないので、あまり針などが見えないように、出来る限り、横や上を見ていて頂いて、目が動かないうちに、パパッと作業をします。

まずまずキレイになりました。
削ったところは、感染症に弱いので、抗生物質の目薬キズを早く治すための目薬(ヒアルロン酸など)、痛みが強い場合には軟膏を入れて眼帯をするなどの処置を行って頂き、2?3日後に必ず再診をお願いしています。

この方は、3日後に再診に来て頂いた時点で、キズが治り、濁りの残存もなく、キレイになっていたため終了となりました。

皆さんが、きちんと目薬をつけて再診に来て頂けると助かるのですが、残念ながら、角膜鉄片異物で処置をした人は、半数程度が再診をしてくれません・・・。
鉄片をとって薬をつけ、痛みが消失してしまうと、受診したくなくなるようです。だいたい、仕事を持っている男性に起るので、仕事が忙しかったり、建築関係の人などは点眼薬を持ち歩いて、昼につけたりするのは難しいのかな?
例えば、この方は半年前の患者様ですが、

青矢印の部位に鉄片を認め、除去しました。

2日後の再診では、軽度の混濁を認めるものの、まずまずキレイになってきています。ところが問診で、「忙しくて薬は付けてない。」と・・・。濁りが出そうな患者様にはステロイドという目薬を使うのですが、処方を行い一週間後に予約をとりました。
と、残念ながらその後、音信不通に・・・。
その方が本日、別の目のメヤニで久しぶりに来院されたのですが、

思いっきり濁りが残って拡大しています。角膜がヒキツレて、デコボコになる不正乱視という状態となっており、視力も0.8まで下がってしまいました。もう半年もたっているので、今更目薬を使っても治せません。まだ若いのですが、視力1.0は諦めて頂きます・・・。

痛みが取れても、きちんと治療をしないと、角膜に濁りやヒキツレが発生して、5年や10年など、長時間たってから視力が低下してしまう事もあります。将来、白内障の手術が必要な場合にトーリックレンズなどの高性能レンズが使えなくなってしまうケースもあります。

角膜鉄片異物で受診される方にお願いです。
忙しいと思いますが、
?きちんと目薬をつけましょう。
?きちんと通院をしましょう(ほとんどが2回、たまに3回受診するくらいです)

?サンダーなどを使う時にはゴーグルをつけましょう。

今日も30歳くらいの若い男性の鉄片を除去しました。土曜日に再診の予約をとったのですが、来てくれるかな?

個人的な話題で申し訳ありませんが、錆を取るドリルの写真を見ていたら、歯医者さんを思い出しました。実は、親知らずが生えていて、痛みがあるため、23日の土曜日に口腔外科の先生に抜いてもらい予定です。山王台の口腔外科先生たちは評判がいいので、安心してはいるのですが、僕もなかなか休めないので、一回で4本全部抜いてもらう事に。大丈夫かな?月曜の外来でちゃんとしゃべれるかな?
人の手術は簡単ですが、自分が受けるのはプレッシャーを感じますね[:冷や汗:]

白内障手術 乱視矯正? LRI(乱視矯正角膜輪部切開)

今日は以下の手術を行いました。
・眼瞼下垂症手術 2件
・加齢性下眼瞼内反症(逆さまつ毛)1件
・瞳孔形成術+眼内異物除去 1件
・白内障手術 6件
・網膜硝子体手術(茎離断:黄斑前膜)1件
・緑内障手術(バルベルトインプラント)1件
みなさん無事に終わりました。今日は片眼の方が多くちょっと少なめ。
最後の症例は、重症例の緑内障のみに今年の4月から正式に保険診療で認められた術式です。今日の方は、大学病院などで両眼ともにそれぞれ3回以上も手術をされている患者様でしたが、なかなかコントロールがつかずに新しい術式で対応させて頂きました。
技術としては難しい手術ではないのですが、昔の手術の癒着がひどいのと、まだ僕が慣れないせいもあり、50分ちょっとかかってしまいました・・・。もっともっと勉強・修行が必要です。

今日の緑内障の手術方法なんかもブログに載せようとか、書きたいことがいっぱいあるのですが、なかなか忙しくて・・・。とりあえず、地道にすすめていきます。
白内障手術 乱視矯正?
LRI(乱視矯正角膜輪部切開)

最近は、白内障手術を行う時には、ついでに乱視(眼球のゆがみ)を補正してしまおう。というのが、多くの眼科で流行ってきているようです。
当院は特に乱視の軽減に力を入れており、以前に主な方法について書きました。
白内障手術 乱視矯正? 強主経線切開
白内障手術? トーリック眼内レンズ
最近は?のレンズの開発が進み、かなり強い乱視までを補正できるようになってきています。
なので、なかなか出番がないのですが、最近行った乱視矯正の患者様が今週再診でいらしたので、そこから話題を。

眼球が完全な球体であれば乱視がない状態、ラグビーボールのようなキレイな楕円状にゆがんだ状態を正乱視(せいらんし)と呼びます。そして、眼球がデコボコとしていびつにゆがんだ状態を、不正乱視(ふせいらんし)と呼びます。
上下左右対称のような、キレイなゆがみの乱視(正乱視)には、トーリック眼内レンズによる補正がとても有力で、かなり強度のゆがみまで補正出来るようになってきています。

ところが、デコボコにゆがんだような不正乱視にトーリックレンズを入れると、相性が悪くて余計に見えにくく感じてしまう症例があることが分かっています。
こんな時には、角膜(黒目)を切り刻むことで、角膜の形状を変化させ、乱視を軽減させる方法が有用です。
白内障手術 乱視矯正? 強主経線切開でも書いたのですが、基本的に角膜を切開すると、切り込みを入れた方向の角膜のカーブが和らぎ、その方向の近視の度数が減弱します。


昨年末に翼状片という角膜(黒目)の上の出来物を切除した69歳の女性です。(本当は、こんなに大きくなるまで放っておいてはいけません。)

これは、翼状片切除手術後、一週間の写真ですが、一見かなりキレイになっています。

今回、約半年過ぎで前回手術後の角膜のキズや形が落ち着いたことと、70歳になって1割負担になったころから、白内障の手術が予定されました。手術の前の検査で角膜(黒目)のデコボコさ加減を、精密に測定する角膜トポグラファーで撮影をしてみると、

写真や診察ではキレイに見えても、実際には角膜はデコボコで、専門的ですが、-5.75Dというかなり強い乱視が残ってしまっています。このまま白内障手術をしたのでは、裸眼の視力はかなり悪いものとなってしまいます。
そこで、手術では角膜を切開して、どうにか目玉がマル、球体に近づくようにと頑張ります。

6月4日の手術ですが、
?まず、通常の白内障手術で、強主経線切開を行い、少しでも乱視を和らげます。斜めの乱視が強いのですが、青線の方向の乱視を弱める効果があります。

?次に、手術前に角膜トポグラファーで撮影した角膜のゆがみを補正するように、角膜に切開を加えます。

右が切開後ですが、わずかに出血の赤い線が見えるくらいで、肉眼ではあまり片がが分かりませんね。

こんなナイフを使って、角膜に切り込みをいれます。

基本的に、角膜の厚みを測定し、角膜90%の深さを切開をします。残りが10%しかなくなるので、かなり深い切り込みを入れることになります。強い乱視を補正するには、長い切り込みをいれ、弱い乱視を補正するには短い切り込みをいれるのですが、やり方は施設毎にある程度は異なりますので、詳しくは担当の医師にお聞きください。


これは、6月11日の外来で撮影した術後のトポグラファーですが、キレイとは言えませんが、かなりゆがみが減少して、乱視の度数を-1.69Dまで軽減することができました!患者様にもとても喜んで頂いています。

最近はトーリック眼内レンズの普及で、LRIを行う事がだいぶ減りました。上記のような角膜がデコボコの特殊な例(不正乱視)に行うだけなので、月に1件とか2件とか。
ところが、ちょうど最近、正乱視でもLRIをやった症例がいたので、ついでに。
6月6日に手術をした80代の女性ですが、黄斑前膜という手術を行います。既に他院で白内障手術が済んでおり、眼内レンズが入っているため、トーリックレンズが使えません。

トポグラファーと照らし合わせて、切り込む位置に目印をつけます。

角膜の厚みの90%まで切開できるメスをつかって、黒目の両脇に切開を入れます。

黒目の両脇に赤い出血の線がみえますか?

引き続き、黄斑前膜の手術を行います。
(LRIはついでに行い、無料です。)

左が手術前、-3.25Dの乱視がありましたが、2日後の検査では右側、-1.0Dの乱視にまで軽減できています。

順番待ちが・・・。

今日は県南の開業医様で、白内障や硝子体の手術を行わせて頂きました。
無事に終えて良かったです。

とうとう、白内障などの、緊急性のない手術の順番待ちが10月になってしまいました・・・[:冷や汗:]
あまり長いと、手術を予約したことを忘れちゃったり、体調が変わってしまったりと、いろいろ困ることもあります。開院以来、着々と1日にできる手術数を増やして対応してきましたが、そろそろ、そういう対応では限界が近付いているようです。
次年度から、眼科医師の増員と施設の拡張を検討しているところですので、もうしばらくお待ち頂く形となりますが、ご了承ください。(緊急性のある病気は、適宜対応しています。)
実は、茨城県は眼科医が少ないことで有名です。
当院も決してサボっているわけではなく、一生懸命にやってもやっても追いつかないのです・・・。頑張ります。

そうそう、先ほど、新しい炭酸ガスレーザーの購入が決まりました[:ときめき:]
今度は眼科専門の器械ではなく、美容外科での採用が多いレーザーを購入してみました。主に、眼瞼下垂という病気の手術で使うのですが、炭酸ガスレーザーは、出血をさせないで皮膚や筋肉を切ることができるので、術直後からの見た目がキレイにできます。
美容目的ではありませんが、どうせやるなら、美容外科に負けないぞ!の気持ちでやらないと。(器械だけでも?)

切れ味がすごくいいのですが、他の特徴としては、実は今回の機種はいろいろなモードやハンドピースがついていて、なんとホクロやイボなんかも除去出来ちゃうんです!!
こっそり僕のホクロが消滅する状況を、あとでブログに載せてみますね。
注)当院はホクロも含めて、美容目的での手術は引き受けていません。すみません。

さっそく明日の手術から使用開始です。
僕は新しい手術器械が大好きで、まさにオタクな感じなのですが、早く使いたくてワクワクしてしまいます[:ラブ:]

黄斑円孔? 手術後の回復・見え方

今日のお昼は以下の手術を行いました。
・白内障手術 5件
・涙小管形成手術(涙小管断裂)1件
無事に終わりました。

黄斑円孔、今日で?ですが、そろそろ終わりです。
黄斑円孔? 手術後の回復・見え方
黄斑円孔の手術に関しては、?で記載しましたが、簡単におさらいすると、目の中に器械をいれて、内境界膜という網膜の表層の膜を剥離し、網膜を柔らかくします。その後、目の中に空気を入れてうつ伏せをすることで、円孔の周囲の網膜を浮力で引き寄せて、穴を閉じる。という方法です。

ここで重要なのですが、手術は、
なくなってしまった中心部(黄斑部)の網膜を元に戻すのではありません。
周りの網膜を引き寄せて、穴を閉じ、中心部の網膜の代役をさせるのです。

イメージ図にしてみると、

?正常な網膜です。中心部の赤い部分の網膜には、物を見るための視細胞が沢山集まっています。その周りの青にも、視細胞がありますが、赤に比べると数が少なくなります。緑はさらに見え方が落ちる部位です。
?黄斑円孔で、赤の部分の網膜が硝子体に引っ張られて断裂し、無くなってしまうと、視野の中心部が欠損、見たい部分が見えなくなってしまいます。
?手術の効果で、青や緑の網膜を中心部に引き寄せます。
?青の部分の網膜が、視野の中心部の視界を担うようになります。

僕たち眼科医の感覚では、穴が閉じることを治癒「病気が治った」と表現しますが、これは「全く元の状態に戻った。」という訳ではありません
赤に比べて、青の網膜は、視細胞の数も能力も乏しくなります。この青の網膜が中心部の見え方を担当するようになるので、どんなに回復しても「視力が悪い」、「感度が悪い」、「少し暗く見える」などが残り、完全に元通りという事はあり得ないのです
また、中心部にギュッと網膜を引き寄せた感じになるために、基本的には「ゆがむ」「物が小さく見える」などの症状も残ります。

青に比べて、緑はさらに感度が悪いのですが、黄斑円孔の穴が大きく、青の部分まで無くなってしまった症例では、緑が中心部の役割を担うために、さらに後遺症が大きく残ります。
⇒手術前の穴が、大きければ大きいほど術後の回復が悪く、穴が小さければ小さいほど良好な回復が得られます

完全に元に戻らない。なんていうと、ガッカリしてしまいますが、黄斑円孔は手術直後に見え方が悪くても、数ヶ月?半年程度は改善傾向になることも多いので、術直後の見え方だけで落ち込む必要はありません。
例えば、右利きの人が、事故で右手を失った場合に、全く同じとは行かなくても、長い期間のリハビリによって、左手を右手の代わりに使えるようになると思います。
同じように、最も重要な黄斑の網膜(赤)がなくなって、その周りの網膜(青)が中心部の代役を担うようになって、何ヶ月も経つと、脳が映像を補正するなどして、青の部分の網膜があたかも赤の部分のように働けるようになる場合もあります。
こういう反応って、器用・不器用などの個人差も大きいのですが、年齢も重要です。一般的に年齢が若い時の方が回復がよいようです。10代で右手を失っても、左手を利き手として、あまり不自由なく生活ができるようになる人が多いと思いますが、80代で利き手を失ってしまった場合に、反対の手でいろいろな仕事を行えるようになるのは大変なことです。
⇒年齢が若い患者様のほうが良好な回復が得られます

黄斑円孔の手術後の回復の程度や見え方は、円孔の大きさや、発症からの時間、年齢など、様々なものが関与するため、一概には言えないのですが、完全な元通りを期待するものではないことはご理解下さい。
僕は手術の前から上記のような説明をして、「元通りにはならないですよ。」と数回お伝えしてから手術をするのですが、黄斑円孔ってなかなか理解が難しいようで、手術後1週間とか2週間とかで、手術前よりも視力の数値が改善していても「まだあまり見えないけど、いつころ元に戻るの?」「中心部がゆがんで見えにくい」「中心が少しくらいけど」といった質問を多々受けます。
「だから、完全に元には戻らないって、何度も言ってますよね?」って、ちょっと凹んでしまいます。僕の説明がまだまだ分かりにくいのかな・・・。

逆に、早期に手術ができて、視力が1.0以上に回復する症例も多々あり、「私は手術後に全く不満がなく、完璧に治った。」と喜んでくれる方もいますが、これは正確な話ではなくて、その方は症状に疎いというか、多少のゆがみなどは気にしなかったり、気が付きにくいだけなのです。まぁ、医師としては喜んでもらえたほうがうれしいのですが、そういった意見を待合室で耳にしてしまうと、「あっちの人は治ったのに、私は治ってない。」というクレームの元になってしまうのが難しいところです。

なんだか、よく分からない話なってしまいましたが、
基本的には黄斑円孔の手術を行って穴が閉じれば、
・病気が極端に古いとかでなければ、視力がある程度は改善します。
・両眼で物を見るときは、多くの人がゆがみや違和感を感じにくくなります。(片眼づつ見え方を比べると、何らかの後遺症を自覚する例がほとんどです。)
以上の回復は、手術直後に起こるわけではなく、手術後に数ヶ月?半年程度の期間をかけて完成されていきます。

今日も最後までお読み頂き、ありがとうございました。

黄斑円孔? 実際の症例

今日も網膜剥離の紹介がありました。
午前中は小美玉市医療センターで外来だったので、お昼休みに戻り次第手術ができ、中心部の網膜(黄斑)が剥がれる前に手術ができました。きっといい視力が温存できるはず。よかったです。
今日の患者様は、県内の眼科医様のご親せきの方ですが、同業の先生に頼って頂くのはとても嬉しいことです[:楽しい:]
ブログ見て頂いているでしょうか?バッチリ手術できましたよ[:チョキ:]

黄斑円孔のブログもだいぶ進んできましたが、現実味がないので先月手術の実例をもとに書いてみますね。
黄斑円孔? 実際の症例
5月14日:初診
いつから見えないかは不明で、眼鏡をかけた矯正視力は0.1

写真だとなかなか分かりにくいのですが、拡大した写真の青矢印の先が、丸く穴になっているのが分かるでしょうか?OCTだと、網膜の断裂がとってもよく分かりますね。
黄斑円孔は、一般的に網膜剥離ほど緊急性は高くないので、翌週か翌々週に手術をする事が多いのですが、今回は予約枠の都合と患者様の協力もあって、すぐに手術が可能でした。

5月16日:手術手術法は前回のブログを。
局所麻酔(テノン嚢下麻酔:眼球後方への注射)
白内障とあわせて、30分くらいの手術です。

5月17・18日:手術後はとにかくうつ伏せ!!
うつ伏せをして、手術で眼内に入れた空気の浮力で、網膜を引き延ばして穴を閉じます。
(うつ伏せをしなくても穴が閉じたという報告も出てきていますが、穴が閉じない場合には、結局再手術をして入院期間が長くなってしまいます。当院では現時点の医学でもっとも安全・成績がよいと言われる手術法を選択するようにしています。大変だけど頑張りましょう!)

5月19日:円孔閉鎖

写真の上方が黒っぽくうつるのは、まだ空気が上半分に入っているからです。空気に邪魔されて、キレイなOCT画像が撮影できませんが、網膜の断裂がなくなっていることは確認できます。この時点で、うつ伏せの必要はなくなり退院が可能となります。(希望者は日帰り手術も可能ですが、入院の方がきちんとうつ伏せが出来るようです。)
もしかしたら、手術の翌日には穴が閉じていて、うつ伏せは必要なくなっている可能性もありますが、空気が沢山入っている間は、正確なOCTの撮影ができないので、しっかりとした撮影ができるまでは、うつ伏せを保って頂くようにしています。当院ではだいたい2日半から3日位でうつ伏せが終了となります。

5月23日:術後経過
矯正視力は0.3まで改善しています。

円孔が閉じて、黄斑部のオレンジ色が濃くなり、均一でキレイな色調に変わっています。OCTでは断裂がなくなっていますが、中心部にわずかに黒く抜ける部分があるのが分かりますか?まだ網膜の構造には隙間があるようです。

5月30日:術後経過?
矯正視力は0.5まで改善しています。

隙間もなくなり、正常な網膜のOCT・網膜の断面図に見えるようになりました。

今後、半年間くらいは回復基調となりますが、どこまで見えるようになるかは不明です。ただし、残念ながら手術前が0.1なので、1.0まで改善する症例は非常にまれです。
一般的には、
・発症から手術までの時間が早いほど
・年齢が若いほど
・穴が小さいほど
・手術前の視力がよいほど(0.7とか、0.8とか)

視力の予後が良好とされています。(視力1.0以上に回復しやすい)

今日も最後までお読み頂きありがとうございました。