ピンホールカメラ

今日は水晶体亜脱臼による緑内障発作の患者様がいらっしゃり、お昼休みに緊急手術をさせて頂きました。
入院のほうがいいかな?と思いましたが、あいにく満床なので、日帰りで。
先ほど電話をしたら、手術前のような痛みは全くなくなったとのこと。
よかった。一安心です[:楽しい:]

あとで書こうと思っているブログの準備知識を。
ピンホールカメラ
昔のカメラの構造ですが、黒い小さな箱に小さな穴(針穴:ピンホール)を開けて、外からの光が入ってくると、箱の中で反転した映像が、感光剤(フィルム)に当たって写真が写る。という原理があります。
光が弱く、感光剤(フィルム)が反応するまで、かなりの時間がかかったり、現在のカメラに比べて、映像がはっきりしない。など、いろいろ問題があり、最近は趣味の世界でしか使われませんが、
このピンホールカメラ、ちょっと難しいのですが、通常のレンズ光学や、散乱と呼ばれる光の特性と、ちょっと異なり、焦点という概念が当てはまりません。

一般的なカメラは、ピンホールではなく、レンズを使用するのですが、レンズに入った光がフィルムにピッタリと焦点(ピント)があえば、明るく、キレイな画像を得ることができます。


これはピンホールカメラのイメージ図です。太陽からの光が木のてっぺんに当たったとします。通常はそこで散乱と呼ばれる光の広がりが起こり、光が散らばって進みますが、箱の中に入れる光はピンホール(針穴)を通った光だけになるので、木のてっぺんの光は、180度反転して、フィルムの一番下方に当たります。同じように、木の根元からの光は、フィルムの上方の一点に当たります。さらに同様に、木の各部位ごとに、1対1の関係でフィルムに光が当たる構造をとります。
ピンホールと、フィルムの距離が変わっても、基本的には1対1の関係で光が進むことに変わりないため、ピンホールカメラでは、焦点という概念がなく、どの距離のものでも、ある程度はピントのあった画像を得ることができます。

このピンホールカメラの原理を使って、
来月5月21日に起こる金環日食を見よう!という話題を書きたかったのですが、ちょっと説明が難しい・・・。
僕も頭では理解していても、本当に??と思う事もあり、
一応、実験をしてみます。


左から、我が家のダウンライトです。
中央、厚紙を星型に切り抜き、ライトに張り付けてみます。
右、ライトを点灯させます。


左、別の厚紙に、ボールペンで穴を開けてみました(ピンホール)。
右、下に白い紙(フィルムの役割)をおいて、少し離して、ピンホールの厚紙を持ってみました。すると、青矢印の部位に、確かに星型が!!

ちょっと分かりにくいので、拡大してみると、

やっぱり星型。
フィルムの役割の白い紙と、ピンホールの役割の厚紙の距離によって、星型の大きさと、明るさが変わりますが、本当に焦点という概念がなく、基本的にはいつも星形にうつりました。

(注:電球が熱を持って、なんと厚紙が焦げてしまいました。絶対に真似しないように!)

今回はボールペンで開けた穴のせいか、ピンホールの大きさが少し大きすぎて、ちょっとボヤけた映像になってしまいました。
ちょっと専門的ですが、フィルムに作られる像の解像度は、ピンホールの大きさに左右されます。穴が大きいと、少し大きな光の点で映像を写しだすことになり、穴が小さい方が、小さな光の点で映像を写し出すことができます。なので、小さい穴の方がキレイな映像が作れます。ただし、あまりに小さくなりすぎると、回折という別の光の働きが出てきてボヤけてしまうようになります。一般的には0.5mmくらいの穴(ピンホール)が、うつりがいいようです。
なんだか、ちょっと難しい話になってしまいましたね・・・。

老人環(ろうじんかん)

今日は他院の先生に手術見学にきて頂き、以下の手術を行いました。
・翼状片手術 1件
・内斜視手術 1件(脳出血後麻痺性斜視)
・白内障手術 11件
・眼内レンズ縫着術 1件(他院術後の無水晶体眼)
・網膜硝子体手術 3件(茎離断2件、切除1件)
 (糖尿病黄斑浮腫1件、黄斑前膜1件、硝子体混濁1件)
無事に終わりました。

今日、外来で受けた質問の話題で。
老人環(ろうじんかん)
月に1回くらい、中高年?比較的高齢の女性が、「黒目の部分が白く濁ってきた。」と心配になって受診することがあります。
今日いらっしゃった患者様も、「久しぶりに鏡をみたら、黒目の内側が丸く、白く濁っていてビックリしてきた。」という訴えで受診となりました。68歳の女性です。
写真はこんな感じ。

黒目(角膜)の輪郭のあたり、赤矢印のあたりに、白から少し黄色っぽく濁りを認めます。
本来、黒目(角膜)は透明な臓器なのですが、加齢によって血管や血流に変化が起こり、血管から漏れ出した脂質(リポ蛋白など)が、透明なはずの角膜内に貯留してしまい濁って見えるようになります。
通常は、角膜の上方や下方の周辺部から濁りが出現し、次第に広がり、1周ぐるっと濁りがつながってしまいます。濁りは角膜の周辺部のみに出現し、視界にかかる中心部にまで広がることはないため、視力や見え方には影響はしません。
角膜の一番端っこから濁りが出来るのではなく、青矢印の先のように、ちょっとだけ透明な部分(透明帯)が残って、その内側がリング状に濁っていきます。

見た目を気にして受診される女性が多いのですが、残念ながら治療法はありません。今の医学ではキレイにしてあげることは出来ないようです。

しかも、この濁りのことを質問された場合、説明をするのがとっても嫌なのです。最初に書いたのですが、病名は「老人環:ろうじんかん」。見た目を気にして病院に来るので、年齢とか、加齢とかという言葉が嫌いそうな人が多いのですが、老人環って、ヒドイ名前ですよね・・・。加齢環のほうがまだいいかと。脂質環とかでもいいかも。
基本的にちょっと見栄えが悪いですが、悪い病気ではなく、ちょっと見栄えに影響する。といった状態です。

そういうわけで、残念ながら年齢による変化という説明となってしまうのですが、稀に30歳とか40歳で濁りが出てしまう事があります。この場合の名前もちょっと変なのですが、「若年環:じゃくねんかん」なんて呼びます。あまりに若い年齢で若年環が出来る時には、高脂血症、高コレステロール血症などが隠れていることがあり、内科への受診を勧める事があります。

今日もお読み頂き、ありがとうございました。

老眼(ろうがん)? 調節力

今日のお昼は以下の手術を行いました。
・眼瞼内反症 1件(加齢性のさかさまつ毛)
・白内障手術 8件
・網膜硝子体手術 2件(茎離断1件、増殖1件)
(裂孔原性網膜剥離1件、増殖糖尿病網膜症1件)
無事に終わりましたが、午後の外来に遅刻しないかヒヤヒヤでした。スタッフが協力してくれるので、つい無理をしてしまいますが、お昼休みに硝子体2件は無謀かな。ちょっと考えないと。


網膜剥離の紹介は、残念ながら4日前から中心部が見えなかったとのことで、黄斑まで剥がれてしまっています。1.0への回復は難しいかと思われますが、少しでも回復してくれればと思います。


こちらは、2週間前に紹介頂いた糖尿病網膜症です。白内障が邪魔をしていて、眼底の診察が少し曖昧だったのですが、手術をしてみたら、思ったより重症で・・・。

カサブタ(増殖膜)だらけ。失明は防げたと思いますが、視力の大きな回復は難しいです。
網膜の病気は、できれば見えなくなる前、もし見えにくくなったらすぐに。受診頂けるといいのですが、なかなか難しいようです。

よく外来で質問を受ける、老眼についても書き始めてみようかと思います。
老眼? 調節力(ちょうせつりょく)
老眼とは、遠くのものを見ている状態から、近くのものを見るために、ピントを近づけるための、調節力という力が衰える事です。
人間の目の構造は、遠くを見る時がリラックスした状態で、近くを見る時が力をいれた、無理をした状態です。目の中の筋肉に力をいれて、水晶体というレンズを厚くすることで、焦点(ピント)を近づけるのです。


遠くから目の中に入ってくる平行線の光が、リラックスした筋肉、薄い水晶体の状態で、網膜にちょうどピントを結ぶ状態・よく見える状態である目があるとします。


同じ人の目で、同じくリラックスした筋肉、薄い水晶体で、近くのものを見ようとしたときの光の進路はどうなるかと言うと、リラックス状態では、近くからの光の焦点は網膜よりも後ろ側にズレてしまい、ボヤけた見え方になってしまいます。


そこで、人間は下のイメージ図のように、赤矢印の筋肉(毛様体筋)に力をいれて、水晶体を厚く変形させ、焦点を網膜上に移動させようとします。

この、毛様体筋に力を入れて、水晶体を厚く変形させて、ピント(焦点)を近くに移動させる働きのことを調節(ちょうせつ)、その力のことを調節力といいます。

けっこう遅くなってしまいました。
明日も仕事がいっぱいなので、今日はこれでおしまい。
お読み頂きありがとうございました。

常陸風土記の丘

今週末は入院患者さんも少なく、緊急もなく、落ち着いた週末でした[:楽しい:]
ちょっとだけ診察をして、あとは春の散策に。

常陸風土記の丘(ひたちふどきのおか)
近所では、「お獅子さん公園」などとも呼ばれています。
クリニックから八郷、筑波山方面へ車でいつもは15分くらい。(今日はお花見渋滞でしたが・・・。)
石岡市は、土器や遺跡などの歴史的文化財が沢山発見されます。風土記の丘には、縄文・弥生時代の家や、江戸時代の家、土器・石器などが沢山展示してある施設なのですが、恥ずかしながら僕は、そういうのは全く知識がないので、今日は省略。
他に、公園や、アスレチック、お蕎麦屋さんなどがありますが、今の時期の風土記の丘は、なんといっても桜で有名です。


風土記の丘の特徴は、関東で一般的なソメイヨシノの品種だけでなく、いろいろな桜の種類があることです。今日はソメイヨシノは満開で少し緑の葉も見え隠れするものもありましたが、枝垂れ桜がとっても見ごろでキレイでした[:桜:]


無料でお抹茶がふるまわれていたり、右の写真はちょっと歴史的で、赤が古代の門、青が中世代、緑が近代の門とかを意味しているとのことでした。


子供用のアスレチックも、今日はとっても混んでいます。


お獅子さん公園と呼ばれる所以が、この巨大なお獅子。
右の写真の矢印の先が、我が子ですが、まるで食べカスくらいの大きさです。

本当は、この後、近くにある温泉「ゆりの郷」に行きたいところですが、今日はあまりに混んでいそうなので、諦めました。
代わりと言ってはなんですが、
近所の公園で、魚や鳥にエサをあげたり、カエルの卵をゲットしたり、

夕方には、四万騎農園さんで、菜の花の芽を摘ませてもらったり、春を存分に楽しみました。

明日からまた頑張るぞ!
って、さっき網膜剥離の紹介のお電話を頂きました。
スタッフの皆さんは大変だと思いますが、ご協力よろしくお願いします。

白内障手術 乱視矯正?

今日は緊急、重症の患者様はおられず、比較的落ち着いた日でした。
高齢の方の涙目の治療で、NSチューブというのがありますが、1日に3件やったのは初めてで、ちょっと疲れました。治療自体は比較的簡単なのですが、麻酔など少し痛い治療のようで・・・。痛い治療って、気分的に、お互いになんとなく嫌ですよね。NSチューブのブログもまだ書いていませんが、おいおい頑張ります。

さて、久しぶりに白内障の手術でも。
白内障手術 乱視矯正?
トーリック眼内レンズ(乱視矯正レンズ)

以前に、当院で白内障手術をする時には、必ず全ての患者様に、乱視を少なくする努力をしていることを記載しました。
詳しくは⇒http://blog.sannoudaiganka.jp/?eid=140047
前回は、強主経線切開といって、白内障手術のキズ口の作る位置によって乱視を減らす方法を書いてみたのですが、強主経線切開による乱視の矯正効果は、比較的小さいもので、乱視が弱めの人に行う治療です。
今回は、当院で現在最も多く行っている乱視治療について書いてみます。
白内障手術では、濁った自分のレンズを取り出して、人工のキレイなレンズと交換するのですが、この人工のレンズ(眼内レンズ)に乱視の度数を加えたレンズが、トーリック眼内レンズ(乱視矯正レンズ)になります。


眼内レンズの写真ですが、左の写真の赤矢印の先に、小さな3つの点があるのがわかるでしょうか?これが、このレンズに加えられた乱視の方向(軸)の目印になります。右も同じレンズの写真ですが、青方向と、緑方向でレンズの度数が異なる構造となっています。


実際の例です。手術の前に角膜トポグラファーという検査の器械で、角膜(黒目)の乱視成分を測定します。この症例では、横方向の歪みが強いようです。

ちょっと専門的なのですが、この歪みの強さ(度数)や、縦か横かなどの方向(軸)の数値をコンピューターで計算すると、

こんな結果が出てきます。
この患者様では、4度、横方向にレンズを入れるといいみたい。


手術の前に、どの方向(軸)にレンズを合わせるかなどをチェックして。

いざ手術。

手術では、白内障の濁りを取った後に、小さく折りたたんだレンズを目の中に挿入します。


目の中にいれたレンズが広がると、赤矢印の先に乱視の方向(軸)を表す印が見えます。この患者様は、横方向にレンズを入れると乱視が減る予定なので、針でつっついて、レンズを目の中で時計回しに回転させています。

最後は、こんな感じ。とってもキレイに入りました。

今までは、乱視の強さが3段階のレンズしかなかったのですが、昨年からかなり強い乱視まで7段階に矯正できるようになり、手術後に乱視が強すぎて・・・。なんていう症例はまずいなく、とっても役立っています。

乱視用のトーリックレンズは、日本では2009年から発売されていますが、本日の時点では、アルコン社(レンズ販売数世界1位)という会社からしか発売されていません。
独占販売だから?なんと、定価は1枚15万円とかして、日本で使用できる眼内レンズのなかで最も高価です。(当院はこのレンズが手術総数の3?4割とかなり多いので、割引して頂いてはいますが。)
保険診療では、患者様が支払う費用はどんなレンズを入れても一緒なので、出来るだけいいレンズ、少しでも乱視が減って、よい視力が得られるレンズを。と思って、トーリック眼内レンズを使用しています。

うわーぁ・・・。

今日は午前が小美玉、午後がクリニックで外来です。
夕方からは予約が少なめで、ちょっとのんびりだなぁ。なんて思っていたのですが、最後の3名、5眼が・・・。

初診で、手術目的で紹介された患者様たちなのですが、重度の糖尿病などです。
ゴールデンウィーク前は手術を控えようと思っていましたが、ちょっと急いで手術をしなくてはいけないので、何例かはどうにか手術をしてあげたいと。頑張りがいがありますね。

今晩は、手術の方法を念入りに考えたいと思います。

円錐角膜? 治療

今日は以下の手術を行いました。
・翼状片手術 1件
・白内障手術 11件
・網膜硝子体手術(茎離断)3件
 (網膜中心静脈閉塞症、黄斑前膜、網膜中心静脈分枝閉塞症での黄斑浮腫) 
無事に終わりました。

今日の外来でも網膜中心静脈閉塞症の初診が来ましたが、結構大変な病気です。おいおいブログを書きたいと思っている病気です。

ちょっと間があきましたが、円錐角膜のブログを終わらせちゃおう。
円錐角膜 治療
今の医学では、円錐角膜であったことを全てなくしてしまう治療、完治させる方法は残念ながら、ありません。上手に付き合っていくことが治療です。

?ハードコンタクトレンズ
円錐角膜の患者様に行う治療のうち、もっとも標準的な治療です。強い乱視を和らげるために、突出した黒目(角膜)の上にハードレンズを乗せることで、目の表面(コンタクトの表面)が平坦になるようにします。
先日ハードレンズを処方した方の写真です。
初期の円錐角膜で、突出が軽度の場合にはソフトコンタクトレンズでの矯正も可能ですが、ある程度以上の突出では、やわらかいソフトレンズでは、矯正が出来ずに、硬いハードレンズが必須になります。円錐角膜の患者様のほとんどは、このハードコンタクトレンズの装用によって、通常の生活を送ることができます
あまりに突出が強くなると、ハードレンズがすぐに外れてしまうようになったり、目にあわなくて、痛みからコンタクトレンズが付けられなくなってしまう場合があります。
このような場合には、特殊なコンタクトレンズを作成したり、ソフトレンズを装用した上に、2枚重ねでハードレンズを乗せるなど、複雑なレンズの処方が必要になります。

ハードコンタクトレンズの使用は、円錐角膜の進行を遅らせる効果がある。という報告と、そのような効果はない。という報告があります。どちらかというと、近年は効果がない。という報告が主流になってきているようです。(進行予防と言うよりは、見え方を改善させるための治療です。)

?角膜移植
突出が強すぎてコンタクトレンズがのせらてない場合や、角膜が濁ってしまった症例など、重度の円錐角膜では、角膜移植を行います。薄く弱くなって突出した角膜を切除して、アイバンクなどを通して、亡くなった方から頂いた平坦な角膜に交換する手術です。
保険診療で高額医療費などの申請も可能ですが、拒絶反応が起こる場合や、手術なので合併症のリスクもありますし、現在の医学では、精度も高い手術とは言えません。安易に行う治療ではなく、コンタクトレンズが装用出来ずに、生活に不自由が起こる場合などが適応です。
(そのうち、レーシックのようにレーザー光線を使用して角膜を交換することが一般的になれば、より精度の高い手術が可能になりますし、人工角膜や、自己再生角膜などの研究も少しづつ進んでいるようです。医学の進歩が楽しみです。)

?角膜内リング
角膜の一部に、シリコンでできた透明のリングを埋め込む手術です。リングの強度(緊張・テンション)によって、突出してしまった角膜を平坦化させます。円錐角膜の進行を遅らせる効果も期待できるとされ、施行症例が増加してきている治療法です。
問題点は、現時点では保険外診療(自由診療)であり、数十万円の費用がかかることが多いこと、まだ精度が高い手術とは言えず、ある程度の乱視が残る症例も多いようです。ただし、少しでも突出を弱くすることで、ハードコンタクトレンズの装用が可能になる事もありますし、乱視が上手くコントロールできない場合など、リングをあとから除去することも可能です。

?リボフラビン
円錐角膜では、角膜に薄くて弱い部位があり、そこが突出していきます。リボフラビンとはビタミンB2の一種ですが、角膜を組織しているコラーゲンにしみこませ、紫外線をあてると、反応が起こり、角膜を硬く丈夫(架橋)にして、突出を抑える事が可能になります。
角膜の表面の膜を剥離し、リボフラビンを点眼、角膜の実質に浸透させます。その後、特定波長の紫外線を照射します。
円錐角膜の進行を抑制する治療の一種ですが、やはり保険が効きません。

円錐角膜とレーシック
よく質問を受ける事柄ですが、円錐角膜の患者様は、レーシックと呼ばれる近視や乱視をなおす屈折矯正手術は受けることができません。
レーシックは、レーザーで角膜を薄く削ることで治療を行います。円錐角膜は、角膜が薄く弱い部分が突出してきてしまう病気なので、レーシックで削ってしまうと、角膜がさらに薄くなってしまい、さらに悪い状態として再発してしまいます。
なので、レーシックを行う前には、円錐角膜ではないかを精密に調べます。実は、近視を治そうとおもって、レーシックを行う眼科に行ったら、円錐角膜を診断されてしまった。なんていうことが多々あります。

春です!

石岡市でも、昨日、桜が一気に開花しました!
今日は午前中に外来をして、午後は県南の医院様で手術をさせて頂きましたが、お昼に車で移動すると、どこもかしこも桜が満開で、なんだかとってもいい気分[:桜:][:桜:][:桜:][:桜:][:桜:][:桜:][:桜:][:桜:][:桜:][:桜:][:桜:][:桜:][:桜:][:桜:][:桜:]
仕事の移動というより、爽快なドライブになりました[:車:]


これは、山王台病院の敷地にある桜です。
左は、昨日の夜にライトアップされたもの。
右は、今朝の通勤時に撮影しました。
キレイですよね。

石岡市には、「風土記の丘」という桜が沢山の歴史スポットがあります。
週末に散策に行って、素敵な写真をupしたいと思います。

ドライアイ? ジクアス・ムコスタ

今年の学会も、多少は耳にしたことがあることばかりで、びっくり驚くような発表はなかったようです。そう簡単に医学は進まないのかな?
いろいろな手術や検査の器械がバージョンアップされ、購買意欲は刺激されましたが、「どうしても欲しい!」というものはなかったです。

ドライアイの目薬に関して、いくつか発表がありましたが、それについて書いてみようかな。
ドライアイ
新しいタイプの点眼薬「ジクアス・ムコスタ」

以前に、ドライアイの治療について書いてみたのですが、
http://blog.sannoudaiganka.jp/?eid=124000
ドライアイの治療は、環境の整備や、目薬、涙点プラグ等があります。
ドライアイの目薬というと、10数年前に発売されて以来、ヒアレインという水色の目薬がとってもよく使われてきました。ヒアルロン酸という成分が主体で、保湿力が高く、化粧水にもよく使用されています
(最近は、ジェネリック医薬品というのが多くなって、いろいろな名前の目薬が、いろいろな色の容器に入っているので、水色の・・・なんて訳にはいかなくなりましたが。)

軽症?中症の患者様を中心に、ほとんどのドライアイの方では、ヒアレインを代表とする、このヒアルロン酸製剤のみの使用で、症状の改善が得られるようです。ただし、ヒアルロン酸製剤の欠点は、点眼薬をつけた時には潤いが得られますが、1時間とか時間が経過すると、保湿成分が目の表面からなくなってしまい、朝・昼・晩と目薬をつけても、点眼薬の合間、たとえば夕方などに乾きを感じることが出てしまう事があります。

涙点プラグは、常に涙の排出を抑えるため、点眼と点眼の間の乾きを抑える事が出来ましたが、ホコリを洗い流す能力が落ちるなど、問題点もあります。

ドライアイの治療に関しては、長年、目立った進歩がなかったのですが、昨年から新しい点眼薬が発売され、学会などでも臨床経験に関する報告が増えてきました。(ヒアレインから、実に15年ぶりの久々のドライアイ新薬です。)

左が昨年発売された、ジクアス点眼薬
右が今年発売された、ムコスタ点眼薬です。
これまでの点眼薬は、簡単に言うと、「足りないものは、人工の涙で補う。」という概念で、補充した直後は潤いがありますが、時間がたつと、乾いてしまうことが問題でした。
これらの新しいタイプの点眼薬は、「自分の粘液や水分の分泌を増やして、乾きにくくする。」という効果が期待できます。
自分の粘液が増えて、乾くのを抑えるので、涙の動態として、より自然な治療法ですし、点眼薬の効果が切れる時間帯。などの問題をクリアしてくれるようです。

以前も書いたのですが、涙は水分のみで出来ているわけではありません。
http://blog.sannoudaiganka.jp/?eid=123591
油層・水層・ムチン層という3層構造からなり、最も外側の油層が、水分の蒸発を防いでいます。
ムチンは結膜や角膜から分泌される粘液で、角膜のみに比べると、保水力のある粘液が間に存在することで、涙液の蒸発がゆっくりになります。また、表面張力などの影響を受けずに、涙がすき間なく、角膜全体に均一に広がることに役立ちます。
ジクアスや、ムコスタ点眼は、結膜の細胞などに影響して、このムチンの分泌を増加させ、より乾きにくい・涙液の安定した状態を保つことができるようになります。

とてもよい点眼薬で、僕もドライアイの患者様で症状が強い方には、かなり処方が多くなっています。涙液の蒸発亢進型のドライアイの女性にジクアスを出したら、とっても喜ばれたり、先日は、シェ―グレン症候群(涙が出なくなる病気)で、涙点プラグも、点眼薬もいろいろ使ってもキズだらけ。なんて方に、ムコスタを出してみたら、2週間でキレイになってしまった人も経験しました。

ただし、いくつか問題点も。
?ジクアスは少し「しみる」と感じる方が多いようです。
?ムコスタ白く濁った薬で、つけたあとしばらくは、曇った見え方になります。また、もともと胃薬の成分なのですが、点眼後は「苦み」を感じます。
?点眼をすることで、効きすぎてしまって、逆に「涙がうるんでしまって、見にくい」という患者様もいます。
?効果が安定するのに、1日4回とか、6回とか、ある程度の点眼回数が必要です。

?や?の付け心地は、人それぞれなので、実際に試してみるのがいいかと。
「しみる」目薬が気持ちいい。という人もいますし、「しみる」目薬は痛くて嫌だ。という方もいます。なんの治療でも相性がありますよね。
?や?は、ドライアイの中でも、ある程度重症の方で、しっかりと点眼を必要とする患者様の薬だと言えるでしょう。
新薬が出ると、「ドライアイの治療は、全てその薬にしよう」なんていう先生もいますが、軽症で「乾いたときのみ1日1回くらい点眼薬をつけてる。」なんていう人には、ヒアルロン酸製剤のほうがあっているかと思います。

効果が高くて、簡便で、費用が安い。そんな治療が一番いいのですが、
ドライアイの治療は、キズの状態とか、医師の診察のみで決めるわけではなく、
症状の感じ方、点眼薬の付け心地、どこまで治療するかなどの治療への積極性など、個々の患者様で差があるので、そこが難しいところです。僕たちが、1日4回と処方しても、なかなか全員の患者様が4回守ってくれるわけではありませんしね。
症状がどのように残っているか、それをどうしたいのか、いろいろ情報を頂けると、診療が楽になります。

日本眼科学会 総会

昨日から、都内で日本眼科学会の総会が行われています。
診療があったので、遅れてしまいましたが、
これから出発、日曜まで頑張って勉強してきたいと思います。
昨年は震災直後で、参加者が少ない印象でしたが、今年はどうでしょう。
ワクワクするような新しい知識が手に入ったらいいのですが。
日々の診療に生かせるように、集中して学んできますので、
ブログは数日お休みです。