今日のお昼は以下の手術を行いました。
・涙点-涙小管閉鎖術(焼灼術) 3涙点
・白内障手術 6件
・緑内障手術(流出路再建) 2件
無事に終わりました。
今日の手術から一つ。
涙点閉鎖術(るいてんへいさじゅつ)
涙は正常な状態では、その10%が目の表面から蒸発し、90%は涙点から鼻の奥へと流れていきます。(⇒以前のブログ:涙の役割)
ドライアイの治療については以前に書きましたが、
?環境を整えて、乾きにくくしたり、
?点眼薬を付けて潤いを与えたり、
?涙の出口(涙点)をせき止めて、涙をとどめたりする
などがあり、ある程度以上のドライアイでは、?の治療法として、
涙点プラグと呼ばれる治療法が必要になります。(⇒涙点プラグのブログ)
涙点プラグはとてもよい治療法で、多くのドライアイの患者様の役に立っていますが、稀にプラグに対して炎症が起こってしまったり、プラグが勝手に取れてなくなってしまうこともあります。プラグが取れてしまう場合には、プラグを大きくして、きつく入れ替えたりもするのですが、涙点の大きさや形状によってどうしても入れられない場合もあります。
こんな時に、手術で涙点を閉じてしまおう。というのが涙点閉鎖術になります。
涙点を手術的に閉塞させた場合、上手くいけば涙をせき止めに関しては、永久的な治療効果が期待できます。
一方、副作用としては、手術的に涙点を閉じてしまうと、涙点プラグのように嫌なら取ってしまおう。というわけにはいきません。誤って軽症のドライアイの方に手術をしてしまい、逆に涙目になってしまった。なんていうことがないように、手術の適応に関しては、ドライアイの重症度や、涙点プラグ治療後の反応などをしっかりと検討する必要があります。
*涙点プラグが上手く入らない場合に、キープティアといって、涙小管の中にゲル状の薬を入れる場合もありますが、数ヶ月でゲルがなくなってしまい、繰り返しの再治療が必要になります。重度のドライアイでは、一生涯の治療と考えると、コスト的に手術が有利になります。(1回のキープティアと、手術1回の費用が一緒)
涙点を閉じる方法としては、糸で涙点を縫いつけてしまう方法や、焼いて癒着をさせてしまう方法などがありますが、「100%完全に閉じられる」という方法や、「絶対に再発しない」という方法は、まだないようです。
当院では出来るだけ良好な成績などを期待して、主に涙点-涙小管焼灼術を行っていますが、僕の個人的な成績では、いちおうこれまでは全症例で閉鎖に成功しています。
今日の患者様は、シェ―グレン症候群という重症のドライアイの患者様で、大学病院の膠原病内科様でも治療中です。他院の眼科様でも治療に難渋し、当院転院後も涙点プラグや各種点眼薬の治療を頑張ってきましたが、糸状角膜炎や角膜ヘルペスを繰り返してしまう重症例です。
もうキズだらけ・・・。どうにも落ち着いた状態とならずに、今回、左右上下、4つあるうちの3つの涙点を手術で閉塞することになりました(もう一つは涙点プラグが入っています)。
まず、仰向けに寝て、局所麻酔の注射を行います。
滑車下神経といって、目頭付近の皮膚に垂直に針をいれます。
この麻酔はまぶたに注射をする麻酔よりも痛みが少なく、効果も高いのですが、2時間程度、麻酔が切れるまで、まぶたが開かなくなったり、物が2重に見えるなどするので、治療後、帰宅までゆっくり休んで痛く必要があります。
(麻酔の写真は取っていないのですが、すみません。)
患者様の頭側からみている状態で、左目の上まぶた、目頭側の写真です。
水色の先が涙点で、涙の排出路になります。
ここに高圧電流を流すための細い針金状の器械(緑矢印)を挿入します。
だいたい1cm強、奥まで入ったところで鼻の内側の骨に当たります。
そこから、徐々に器械を引き抜きながら、内部に高圧電流を流して、1cm強の長さの涙小管の内腔にヤケドを起こして、癒着をさせて閉塞を起こします。
最後に、出口の涙点をセッシで挟むように、ジュッと焼いて終了です。
この治療法の良いところは、縫って閉じる方法と違い、針や糸を通したりがないので、まぶたの内出血(皮下出血)などがほとんど起こらず、翌日から見た目がキレイなことです。
両眼に麻酔をして、3つの涙点を閉塞させて、だいたい10分ちょっとの手術です。費用は片眼で6300円、両眼で12600円。1割負担では片眼630円。3割負担では片眼1890円になります。
患者さんが眩しくないように、光を最小限で手術をしているので、暗くなってしまって、今日はあまりいい写真が撮れませんでした・・・。