遠方の患者様の手術

今日の午後はお休みの予定でしたが、最近あまりに重症の方が多く、臨時で手術となりました。
・白内障手術 5件
・緑内障手術(隅角癒着解離)1件
・網膜硝子体手術 4件(茎離断2件・増殖2件)
(増殖糖尿病網膜症2件、糖尿病硝子体出血1件、黄斑変性硝子体出血1件)
みなさん無事に終わり、成功と思います。
ただし、重症な方ばかりで、基本的には視力は回復はしません。

こんなカサブタだらけの人ばっかり・・・。専門的ですが、右の写真は双手法といって、カサブタがひどい場合のみに行う両手手術です。この方は50分もかかりました。

この目も大変で、網膜の後ろ側に血腫やカサブタがいっぱいあり、網膜に穴を開けて(青矢印)、カサブタなどを取り出しているところです。

良く見えるようにならないと、喜んではもらえないので、医師としてやりがいが微妙なのですが、手術しなければ失明です。失明を防ぐためには、だれかが手術を引き受けないと[:しょんぼり:]

さて、あまり医学的ではありませんが、今日の手術から一つ。
遠方の患者様の手術
開院後2年経ちましたが、重症例の手術を中心に、かなり遠方からも紹介を頂くことが増えました。コンステレーションもフル稼働です。

今日手術をした糖尿病の1名は、茨城県内の医院様からの紹介ですが、片道2時間くらいかかります。
お仕事がお忙しいようで時間がなく、なかなか手術に踏み切れなかったとのことですが、今回、手術のみ当院で、日帰りで受けて頂くことになりました。
午前中に初めてお会いして、午後に手術を行い、術後は明日もとの眼科様に戻るため、基本的にはもうお会いすることはありません。(合併症がなければ。)
手術には少なからずリスクがあるので、本来は術後も拝見したいところですが、今回、そのような手術をお引き受けしたのは、紹介頂いた先生がもともと知り合いであり、僕が医療技術を含めて、心から信頼している先生だからです。

ブログを読んで下さる方が増えて、東京都などの患者様の手術もちょこちょこあります。最近は東北地方や、関西からも手術の相談で受診していただいたり、お電話を頂くことが増えました。
とてもありがたく嬉しい事ですが、申し訳ありませんが、基本的には、きちんと落ち着くまでの間、術後の通院ができない患者様の手術はお断りしています。(信頼できる医療機関様からの紹介で、術後の管理をお約束頂いている場合は別です)

やはり、手術は完全に安全ではありません。術後もしっかりとした管理が必要です。セカンドオピニオンとして、意見のみ聞きたい。というのは、喜んでお引き受けしますが、東北や関西の方が手術を受けにくる。というのは現実的ではないと考えています。責任がもてませんので。

電話 心配な人リスト

今日は先週が連休でお休みだったせいで、午前の小美玉市医療センターでの外来が70名近くなってしまい、待ち時間が長くなってしまいました。予約制でないので、朝一番で来院される方が多く、2時間以上待っている人が沢山に・・・。本当にすみませんでした。
クリニックは予約制なので、来院時間や日程を割り振れる分、待ち時間が少なくてよいみたいです。小美玉も少しづつ変えていこうかな。と思います。

待ち時間以外にも、予約制のいいところがいくつかあります。
翌日の受診予定の患者様のカルテを予習して、必要があれば説明資料を作っておいたり。そして、何より役立っているのは、受診しなかった人が分かることです。
電話・心配な人リスト
僕は、子供で心配な症例とか、日帰り手術のあととか、気になることがあると、あまり遠慮なく患者様に直接電話をしてしまうので、たまに患者様たちにビックリされます。

予約制だと、当日来院されなかった方が把握できるので、その中から、
?緑内障や糖尿病などで、キチンと対応しないと、失明のリスクがある人
?手術後早期で、経過観察が必要な人
を毎日ピックアップして、「心配な人リスト」というのを作成しています。
そして、各患者様ごとに、1ヵ月後とか、2ヵ月後とか決めて、期間を過ぎても受診がない場合には、一度だけ電話をするようにしています。

大体、月に1回、まとめて10名弱に電話をすることになりますが、一月にみる患者様は約1000名なので、「心配な人リスト」に載るのは、1%弱の患者様ということでしょうか?

今日は比較的、仕事が早く終わったので、3月や4月に受診をしていただけなかった方に電話をしてみました。
「忘れてた。」「ありがとう。」と言ってくれる方が多いのですが、たまには、あまり反応のない方もいらっしゃいます。

僕の患者さんが失明しちゃうのは、とっても嫌ですし、糖尿病や緑内障では、悪化して回復する見込みがなくなってから、失明を防ぐためだけに手術が必要になることも多く、そういう手術をするのも嫌なので、つい電話をしちゃうのでが、ちょっと自己満足か?と悩んでしまうことも多々あります。
受診しにくかった理由が「金銭的な負担が問題だったらどうしよう。」とか、「医療の押し売り?とか思われたらどうしよう。」という不安もあります。
でも、眼科医としては、きちんとした定期検診や外来治療で、悪化や失明を防げるのに。と思うと、ついつい電話をかけちゃいます・・・。
難しいなぁ・・・。

帯状角膜変性症? 治療:薬剤での混濁除去

今日の午後は以下の手術でした。難しい手術はなかったので、5時頃には無事に終えることができました。
・翼状片手術 1件
・白内障手術 2件
・緑内障手術(トラベクレクトミー)1件
・網膜硝子体手術(茎離断:黄斑前膜・円孔)1件
・角膜形成術 2件(白内障同時:保険請求なし)

ただ、午前の外来ではちょっと頭が痛くなる方も・・・。

無治療の糖尿病網膜症です。眼科は初めて受診とのことですが、目の中がカサブタだらけです。OCTの断面図でも、網膜がヒキツレて大きく剥がれています(青が増殖膜、ピンクが網膜です)。視力はメガネをかけても0.04。ビックリするのは、なんと、こちらは良い方の目です。もう一つの目は、目の中がタンパク質(フレア)で濁っていて、写真が撮れないのですが、OCTでは

やっぱり剥がれまくり・・・。視力は光覚弁(0.01未満)です。
待っていられないので、準緊急で両眼とも今週末に臨時手術です。
糖尿病のかたはきちんと眼科を受診しましょうね。

さて、今日の手術から一つ。
帯状角膜変性症? 治療:薬剤での混濁除去
帯状角膜変性症は角膜(黒目)に、カルシウムなどが沈着し、角膜が濁っていく病気ですが、詳しくは以前のブログを参照下さい。
http://blog.sannoudaiganka.jp/?eid=139356

初期治療として、もっともキレイにできる治療はエキシマレーザーですが、現在のところ、保険診療で受けることはなかなかできません。今日は保険診療で可能な治療法の一つで、薬品を使用する方法を行いました。

ご近所の眼科様から紹介して頂いた80代の女性です。

右目と左目の写真です。
帯状角膜変性と、白内障の影響で、メガネをかけても視力は右目が0.04、左が0.01しかありません。

手術では仰向けに寝て、目薬の麻酔を十分効かせ、目を開いたままにする器械をつけます。
次に角膜の表面に張っている、角膜上皮と呼ばれる膜状の組織を、鑷子でこすって剥がします。

上皮が剥がれて、濁りが露出されました。


綿棒に薬剤をしみこませて、15秒程度軽くこすります。
EDTAという薬品や、塩酸という薬品を使用して、濁りを溶かし出していきます。
濁りをしっかり取るためには、頑張って掃除をしたいのですが、長い時間薬を作用させすぎると、薬の副作用で、逆に角膜が濁ってしまうため、どこまで治療をするかのバランスが腕の見せ所です。角膜の端から端までキレイにしよう、なんて思ってはいけません。視力に重要な中心部を重点的に掃除します。
(当院では、症例によって、1%?2%の塩酸を使用しています。)


キレイに溶けましたら、急いで、水をタップリかけて塩酸を洗い流します。

この方は、白内障手術も引き続き行い、そのまま同じ手術を反対目にも行いました。
角膜の上皮(表面の皮)が再生するまでの2日位は痛みが強いのですが、最後にソフトコンタクトレンズをかぶせることで、痛みをかなり和らげる事が出来ます。


手術から3時間半、20時の診察ですが、かなりキレイになっています。(リング状に白く見えるのは、角膜上皮を剥いたキズあとで、2日くらいたつとキレイになります。)コンタクトレンズのおかげで、両眼ともに眼帯しなくても痛みもないようで、すでに「見える!」と喜んでいただきました。

*本来、最もよい視力を期待したいのであれば、帯状変性の治療が終わって、角膜の状態が落ち着いてから、白内障の手術を行うのがよいでしょう。角膜を削ると、角膜の形が変形してしまい、白内障手術で近視や遠視などのコントロールの精度が落ちてしまうからです。
今回は、年齢や認知症の問題、生活が成り立たないほど視力が悪く、治療を急いだこと、治療費の問題などもあり、同時に行っています。
保険診療で白内障と帯状変性の手術を同時に行った場合は、帯状変性の治療費(片眼26500円)が無料になります。

老眼? 完全な治療はなし。何かしらを妥協。

連休の最終日は突風と豪雨、ひょうで散々でした[:強風:]先日せっかく植えたヒメシャラも、思いっきり倒れてしまい・・・。
http://blog.sannoudaiganka.jp/?eid=142718
つくば市では残念ながら竜巻で亡くなった方までいるようで、テレビの映像も震災を思い起こすようなもので・・・。自然災害って怖いです。

今日は以下の手術を無事に終えました。
・白内障手術 8件
・網膜硝子体手術(茎離断・裂孔原性網膜剥離)1件
連休明けですが、さっそく網膜剥離の紹介です。朝に受診して頂き、お昼休みに手術を終えることができました。

さて、老眼・老視の続きでも。
老眼治療は妥協が必要です
先日、老眼とは調節力の障害で、遠くのものが見える状態から、近くのものを見るために、目の筋肉を使ってピントを近づける(調節する)ことができない・疲れやすい状態であることを説明しました。
http://blog.sannoudaiganka.jp/?eid=142421
では、治療法は?というと、残念ながら、現在の医学では完璧な老眼の治療法はありません。老眼の治療では、何かしかの妥協が必要になります。
例えば、遠く用と、近く用のメガネを別々に用意して、見るものの距離によって、メガネを変えれば、それが最も安全に、最もよく見える方法です。ただし、メガネのかけかえの手間を妥協する必要があります。
遠近両用メガネは、近くも遠くもピントが合いますが、メガネを上半分と下半分とに分けているため、それぞれの視野が狭く疲れやすかったり、切り替えの部分が歪んだり、使い方になれないと近く用のレンズを通して足元(遠く)を見て、階段を踏み外したりします。遠近両方メガネは、メガネのかけかえから開放される半面、見え方や、使い心地の慣れなどを妥協しているのです。

大ざっぱに治療法を分けると
?メガネやコンタクトで、遠くと、近くを見る状態とを別に考える
 ⇒近く用と遠く用とのレンズを使い分けるわずらわしさを妥協。
?遠近両用メガネ
 ⇒メガネの上の方が遠く用、下が近く用で、それぞれの視野が狭い。
  遠く・近くのレンズの境目が歪んだり、メガネ使用の慣れなどを妥協。
?屈折矯正手術(レーシックやCK)
 ⇒近くを見やすくする代わりに、遠くの視力が落ちることを妥協。
  不正乱視の増加や、グレアやハローといった副作用の妥協。
?多焦点眼内レンズ(白内障手術における)
 ⇒短焦点に比べ、はっきりとは見えない。
  グレアやハロー、将来的に乱視などが変動するリスクなどの妥協
?モノヴィジョン法(左右の目を近く用、遠く用で分ける)
 ⇒それぞれの目が、近くまたは遠くの見えからが悪くなることを妥協。
?アキュフォーカスリング(黒目に小さな穴のリングを埋め込む)
 ⇒視野が狭くなり、暗く、コントラストなどが低下することを妥協

などがあります。
今後、それぞれについて、詳しく掘り下げていきたいと思いますが、
どの治療が最適か?というのは、人それぞれです
「少しくらいの眩しさや、かすみがあっても、老眼鏡は絶対かけたくない。」と、手術的な治療を希望する人もいますし、「メガネのかけかえをしてもいいから、最もハッキリとよくみえるように。」といって遠く用の眼鏡と老眼鏡の両方を作成する人もいます。
年齢や、職業、ライフスタイル、メガネの好き嫌い、性格などによって、最適な治療法は異なります。
メガネなして、遠くから近くまで、全ての距離がハッキリと見える。なんていう完璧な治療法はないので、どこを優先させて、どこを妥協するか?というのが老眼の治療を相談していく上で重要になります。
それぞれの治療については、おいおい書いて行きたいと。

筑波山

今日は子供の日ですね!
連休は混むから遠出はしないと心に決めつつ、ちょっとは出かけたい気分。
家族で筑波山に登ってきました[:日の出:]

筑波山
「西の富士、東の筑波」なんていわれるほど、峰線がキレイな山として知られています。双耳峰(そうじほう)とって、山の頂上が二つあり、筑波山では一つが男体山、もう一つが女体山と呼ばれています。
つくば市のイメージが強いですが、筑波山の東側は石岡市に所属します。

渋滞を心配して、7時15分に出発。石岡の八郷方面から筑波山へ。
ケーブルカーの始発時刻の8時に筑波山神社に着きましたが、すでに市営駐車場はいっぱい・・・
筑波山神社近くの土産店に、1日800円で駐車させて頂きました。
(混んでる日は9時ころには全ての駐車場がいっぱいになるようです。)


筑波山神社でお参りをして、


ケーブルカーに乗って、まずは男体山頂へ。


男体山頂からもとても良い眺めです。
山頂にも土産店や食事店があります。

ここから女体山頂までのぼります。(女体山の方が高い。)
予想はしていましたが、残念ながら、次女が歩き出して数分でギブアップ。
その後3時間くらい、ほとんど抱っこに・・・。
子供の日に、14kgまで、すくすくと成長した我が子の重みを確かめたいところですが、登山ではツライ・・・。


新緑がとってもキレイ。よく晴れて、暑くも寒くもなく、爽快です。


ガマ石。口の中に石を投げて乗っけると、金運UPとのこと。
筑波山はガマの油というキズ薬も有名です。

女体山頂からはほぼ360度のパノラマ水平線が見えます。


この時点で、僕が一番高い場所にいるよう。気持ちいい!


女体山頂から、つつじヶ丘駅まではロープウェーで下りました。
筑波山は観光地として成功しているようですが、ロープウェーなどもアナウンスが面白かったり、接客や気配りがしっかりしていて、好印象です。

つつじヶ丘から、筑波山神社までの登山道を迎場コースと呼ぶようですが、勾配が少ないとのことで、子供も大丈夫かな?と挑戦。

登山というより、静かな森の中を散歩。といった雰囲気で、気持ちが和らぎます。湧き水などもあり、マイナスイオンたっぷりでしょうか?

筑波山神社まで降りてきて、ちょうどお昼。

大人の足では1時間ちょっとの道のりのようですが、子供とゆっくり、4時間くらい山にいたようです。のんびり楽しい時間でした。
実は、登山には全く興味がなかった僕ですが、今回はとても感動的な体験で、ちょっぴり目覚めてしまったかも。別の季節もチャレンジしてみたいです。

筑波山登山の詳しいコースはこちらを参考に。
http://www2.odn.ne.jp/~nesia/m-44map.html
白雲橋コースなどは、とっても混んでいて、全く違った雰囲気のようです。もう数年して、子供が自分で歩けるようになったら。

それにしても、お昼の神社周辺は、駐車場待ちの長い渋滞で、最後尾の方は駐車するだけでも3時間とかかかるのでは?といった具合。石岡方面から筑波山頂へ向えるコースを作ったら、観光になるのかな?

ムリして!

今日は以下の手術を行いました。
・加齢性下眼瞼内反症手術 2件(さかさまつげ:眼輪筋縫縮)
・白内障手術 3件
・網膜硝子体手術 5件(茎離断4件、増殖1件)
 (黄斑円孔1件、糖尿病硝子体出血2件、増殖糖尿病網膜症2件)
連休中ですが、少し急がなくてはいけない(遅くなると結果が悪くなってしまう)症例の手術をメインに施行させていただきました。皆さん無事に終わっています。

今日は午前の外来と、午後の手術にも、眼科医の先生が見学に来ていただきました。当院での知識が少しでも役に立てばと思います。
夜は急きょ、県外の眼科様に手術のお手伝いに呼んでいただきました。連休中でも医療はなかなか休みがありません。

本日見学に来ていただいた先生が、「先生は漫画が好きなんですよね?」とのこと。その通りです!!⇒http://blog.sannoudaiganka.jp/?eid=139866
見学の先生は「宇宙兄弟」という、最近、俳優の小栗旬さんが主演で映画化された漫画を読み始めたそうです
医療と関係ないですが、その漫画で、僕が心に残っているフレーズの紹介を。

ムリして!
宇宙飛行士を目指す兄弟の物語を描いた漫画「宇宙兄弟」。主人公のムッタ(小栗旬さん役)のライバルで、ともに宇宙を目指す、ケンジの娘が言ったフレーズで、「スーパンダマンはムリしてがんばるんだ」というのがありました。週刊誌では半年くらい前の漫画でしたが、当時も忙しかった僕にしっくりくる言葉で印象に残っています。

ケンジの娘が少し大きくなって、パパと仕事のことについて話せるようになりだしたころ、パパを元気付ける言葉は、「ムリして!」でした。
僕が仕事で寝る時間がないと、妻も、僕の両親も心配をして「ムリしないでね。」といいます。でも、実際にそう言われると、嬉しい部分もありますが、僕の中では「30代の今、頑張らないで、いつ頑張るんだ?今頑張れなければ、僕の仕事はなんなんだ?」なんて、ちょっぴり反抗的な気持ちが出てきたりして・・・。

僕の父親も、結構忙しく働く人で、夜はあまり家にいなかった記憶があります。「忙しいのが美徳」と、ちょっと昭和の考え方かな?僕にもそういう考えが染み付いてしまったようで、なかなか、仕事から気持ちを切り離すことができない人間ですが、自分の好きでやっているので、子供に「ムリして!」なんて言われたら、熱くなってしまいそう。
家族には迷惑かも知れませんが・・・。

変な話ですみません。
連休中はブログの更新はお休みの予定です。

網膜の解像度と、視力の正常値

今日の午前外来は、連休の半ばで、学校健診で指摘されたお子さんや、普段仕事で病院を受診しにくい人が多く、60名ちょっといらっしゃいました。
午後は小美玉市医療センターで手術でしたが、眼瞼下垂と翼状片を3件づつ施行しました。

網膜の解像度と、視力の正常値
テレビの画面や、パソコンのモニターの進歩がすごいですよね。
一つ一つのピクセル・ドットが人間の目に負えない。なんていうのが、ipadの画面の特徴で、Retina displayなんて呼ばれています。(retinaは網膜の意)

左の図よりも、右の図の方がキレイに滑らかに見えますよね?左側は15×15のマ
スから出来ていますが、右は19×19のマスで出来ています。
このマス目が細かければ細かいほど解像度が高いと言えるわけです。

人間の網膜は、中心部(黄斑部)に近いほど、視細胞と呼ばれる、光を感じ取る細胞が数多く配置され、解像度が増す構造をしています。

基本的には、視細胞が多く、解像度が高ければ高いほど、視力が上昇します。
逆に、加齢や病気で網膜・視細胞が死んでしまって、数が少なければ、解像度が落ちますので、視力が下がるのです。

自分の持っている解像度を最大限に引き出すには、網膜上にピントが合う必要があり、近くや遠くを見る場合に、適切なメガネをかけた場合の視力を矯正視力といいます。

「白内障手術をして、遠くにピントを合わせたら、裸眼で1.0が見えますか?」
という質問をよく受けるのですが、答えは「やってみないと、分からない。」となってしまいます。
白内障手術によって、目の中の濁りを除去したり、近くや遠くのピントを合わせたり、乱視を軽減することは可能になりましたが、同じように手術を行った2名がいたとして、手術後の近視や遠視の度数が全く同じでも、2名の網膜の解像度が違えば、視力の数値も異なるのです。

網膜や黄斑の病気があれば、視細胞が少なく、解像度が悪く、視力測定の数値で1.0出ませんし、特に病気がなくても、視力の数値には個人差があります。
例えば、日本人の殆どの方は、若い時にはメガネやコンタクトを使用すれば1.0?1.5の視力が出ることが多いようですが、全く問題がなくても、視力が弱い家系などで0.8とか0.9までしか見えない人も時々いますし、逆に2.0見える人や、100人に1人くらいは3.0とか見えちゃう人もいます。
テレビとかで、よくやっていますが、アフリカ人などで6.0とか見えちゃう人もいますよね。
視力、網膜の解像度は、人種や個人差があり、これが正常。ということはないようです。
ただし、多くの方が1.0が見えることが多いですし、自動車の運転免許証に必要な0.7が見えないという人は非常に稀です。ですので、本当は間違っているのですが、確立の上では大丈夫だろう(普通は大丈夫だろう)という観点から、大きな病気がない場合の白内障手術の説明では、「手術後は、裸眼で運転できる可能性が非常に高いですよ。」と説明をしてしまう事が多くなります。

(一般の方に分かりやすく。と思って記載しています。本来は網膜の視細胞の数だけで決まる問題ではなく、各細胞間の信号の連携や、脳の映像処理能力なども視力に大きく影響します。また、白黒の識別だけでなく、人間には三原色(赤・緑・青)に関して、それぞれ解像度を持った視細胞が並び、これらも複雑に絡み合った構造をとっています。関係ないですが、鳥類などは紫外線などを認識する細胞もあり、4原色を認識できると言われています。)

3月にipadを買ってみたのですが、
http://blog.sannoudaiganka.jp/?eid=141015
僕の目では確かに、一つ一つのピクセルを識別することはできませんでした。これぞRetina display!
そこで、手術用の顕微鏡で拡大してみたのですが、

拡大すれば、ちゃんとピクセルが認識できるようです。僕は眼鏡をかけて2.0程度の視力、解像度を識別する能力があるのですが、視力が6.0とかのアフリカ人とかは、単純な計算では僕の3倍細かいものを識別する能力があるので、もしかしたらipadのピクセルも認識できるのかもしれません。

ついでに。

顕微鏡の照明をオンにすると、こんなふうになってしまい、よく見えなくなってしまいました。外からの光は散乱?乱反射させることで、明るい場所でも反射を起こさずに画面を見やすくするためでしょうか。アップルの特許かな?ちょっと僕には解明不能な分野です・・・。