今日のお昼は白内障や翼状片の手術を行いました。夕方の外来が終わってから、夜は県南のクリニック様で網膜剥離のお手伝いに。
実は先週の金曜日に当院で1件。土曜日にも他院様に網膜剥離の手術に。なんだか茨城県は網膜剥離だらけのようです[:冷や汗:]
明日まで少し忙しいのですが、少し時間が出来たので、ブログを進めてみます。
視神経炎? 治療その3 血漿交換
視神経炎は、免疫機能の異常を元に発症する病気で、視神経を構成する成分に対して自己抗体(免疫力の間違えで、自分自身を攻撃してしまう)が形成され、視神経に炎症や脱髄が起こってしまうものと考えられています。
視神経炎の治療の基本は、ステロイドパルス療法であることは間違いないのですが、実はステロイドパルス療法のみで良くなる症例ばかりではないようです。
視神経炎の分類については、視神経炎?で記載しましたが、現在のところ、視神経以外にも炎症が起こるかどうかで、大きく以下の4種類(?と?を同じとする場合は2種類)に分けられています。
?多発性硬化症(MS):視神経と脳を中心に炎症がおこるもの
?視神経脊髄炎(NMO):視神経と脊髄を中心に炎症がおこるもの
?抗AQP4抗体陽性視神経炎:NMOのうち明確な自己抗体が判明しているもの
?特発性視神経炎:視神経のみに炎症がおこるもの
?や?の視神経炎ではステロイドパルス療法がよく効いて、視力の回復を得られることが多いのですが、特に?の症例ではステロイドパルス療法の効果が弱く、それのみでは視力の回復を得られない場合が多いとされています。
そんな時に行うのが、血漿交換になります。
血漿交換(けっしょうこうかん)
血液の中には、酸素を運ぶ赤血球、バイキンをやっつけるなど免疫力を担当する白血球、出血を止める血小板などが流れていますが、これら3つの血球成分が浮かばせて流している液体の成分を、血漿と言います。
たんぱく質などの栄養分に富んだ水ですが、この血漿の中には、自己免疫性疾患の元になる(視神経などを攻撃してしまう)自己抗体や、炎症を起こす働きをするホルモンなども含まれています。
血漿交換は、血液の中に含まれる、これらの自己抗体や炎症を起こすホルモンを除去してしまおうという治療です。
足の付け根などの太い血管に、太めの針を刺し、患者さんの血液を取り出します。取り出した血液を遠心分離にかけ、血小板・白血球・血小板などの血球成分を分離したあとに、残ったお水(血漿)を破棄します。最後に、献血などで頂いた健常な方の血漿と、分離しておいた自身の血球成分をまぜて、体の中に戻していきます。
一気に全ての血漿を交換することは、体への負担が大きいためできません。ゆっくりと時間をかけて、数回に分けて血漿を交換していきます。
病気の主因となる物質を体から除去できるので、視神経以外の他の自己免疫性疾患を含めて非常に有効な治療法ですが、体への負担もありますし、他の方の血液を体内に入れるので、もしかしたら何かの感染症がうつってしまったりと(ほぼ心配ない確率ですが)絶対に安全とは言い切れない治療です。ですので、基本的には血漿交換療法は、ステロイドパルス療法などが無効であった時のみに検討される治療法です。
*抗AQP4抗体陽性視神経炎
視神経を構成する成分である、アクアポリンAquaporin4にする自己抗体の発生が病気の主因であると考えられている、近年発見された視神経炎の特殊型といえる疾患です。
比較的高齢の女性に多く発症し、高度の視神経が再発を繰り返すなどして、失明にまで至ることも少なくない、重症型の視神経炎です。他の視神経炎(明確な自己抗体が判明していない)に比べて、ステロイドパルス療法が効きにくく、以前は治療に難渋していましたが、血漿交換によって視力の回復を得られることが多くなってきています。(病気を抑えていくためには、ステロイド剤の併用は必要です。)
視神経炎の初期治療でステロイドが無効であった場合には、早急に血漿交換が必要になるケースがありますが、当院は眼科・内科クリニックでもともと、施設内に人工透析が備わっています。早急な人工透析・血漿交換が可能な施設です。