先週末は、海外の眼内レンズ工場の見学・勉強に行ってきました。忙しいスケジュールで往復ともに夜間の便にして睡眠に充てましたが、旅行気分で楽しくすごせたので、思ったより爽快です。
さて、眼科の進歩はとにかく早いのですが、9月11日にALCON社より素晴らしい製品がでました!!
以前に記載しましたが、当院では2011年にコンステレーション ビジョンシステムを茨城県では初めて導入しました。(今は大学病院を始め、いくつかの病院に設置されています。)
このコンステレーションに接続される新しい機器によって、より低侵襲・負担の少ない手術が可能になります。
27ゲージ硝子体手術
網膜硝子体手術は、糖尿病網膜症、網膜剥離、黄斑円孔、黄斑前膜、眼底出血など、眼球の奥の方の、どちらかというと重症例の病気に対して行う手術です。
1980年代以後の硝子体手術では、20ゲージという約0.9mm程度の太さの器械を眼内に挿入して行い、術後に傷口を糸で縫う必要がありました。
6年ほど前から、25ゲージ、0.5mm程度での器械が普及し、当院では全例で25ゲージでの手術を行っていたのですが、
このたび9月11日に、27ゲージ、0.4mm程度の器械が発売されたのです。
器械が小さくなれば、傷が小さくなるので、手術中や術後の痛みが軽減されますし、バイ菌が入るリスクも少なくなります。
さらに、専門的ですが、カットレートと言って器械がどれくらい早く動けるかという単位で、今までは1分間に5000回転だったものが7500回転まで上昇しました。基本的に早く動く方が手術が安全になります。ALCONすごい!!
先週から当院でも27ゲージでの手術を開始しましたが、またもや茨城県では初めての導入になったようです。県内第一例目の患者様に、ビデオの公開を許可して頂けましたので、YOU TUBEにアップしてみます。
患者様は60代女性。
2年前に当院で白内障手術をしています。手術前の視力は裸眼0.3で、メガネで0.4でした。白内障手術後は裸眼0.9で、メガネで1.2と経過良好でしたが、黄斑前膜があり半年に1回の検査を続けて頂きました。
黄斑前膜に関しては、以前のブログをご覧ください。
これは昨年の12月のOCT検査(網膜の断面図)です。
黄斑前膜は軽度で、矯正視力は1.2と良好です。通常、手術適応ではありません。
半年後の今年の6月のOCTです。黄斑前膜のヒキツレによって網膜に皺がよってしまいました。ゆがみも出現し、視力も裸眼で0.7、矯正で0.8まで低下したため手術を決断していただきました。
手術後2日です。病気が古く、やや手遅れにってから受診される患者様と異なり、定期検診から早期手術につながった人は、ほとんどの場合ですぐに網膜の皺が正常化します。それでも手術の炎症などで視力が回復するまでは数日かかりましたが、27ゲージと最小の器械での手術によって、術後2日目には裸眼で1.0、矯正で1.2と、非常に早い素晴らしい回復となりました。
初めて触る器械でしたが、思った通りのところ、そうでないところがありました。総じて操作性は良好で、よい手術器械だと思います。
器械の内径が狭い分、掃除機としての吸引効率が少し落ちるので、手術時間が数分伸びる可能性がありますが、手術自体の安全性が勝る方が患者様のためになると思います。
(専門的ですが、ブリリアントブルーGという青い色素の洗浄に、通常の数倍の時間がかかり、染色が強くなってしまいました。患者様にはお伝えして、結果は喜んで頂けています。今後、染色方法を調整します。手術時間も25ゲージよりも数分長くなってしまいましたが、各種設定を行い、さらに効率の良い手術を目指します。)
昨日、価格交渉などがまとまりまして、
10月から当院では全例で27ゲージでの硝子体手術に移行します!
傷口が小さく、より安全で、より痛くなく、術後に白目が赤くならない。そんな手術にご期待ください!!
そして、今日はALCON社の最新型白内障手術マシーン、センチュリオンを体験。実際に手術を行いました。素晴らしい安定性でした。
僕の白内障手術で感じる不具合が、1000件に1件から2000件に1件くらいに減るかもしれません。微々たる変化かもしれませんが、器械オタクの僕としては、最新で高性能のものは全て欲しくなってしまいます。
まだ茨城県では1台も売れてないそうです。すごーく欲しいですが、今のものでも困っていませんし、そしてすごーく高い。困ったなぁ。困ったなぁ[:撃沈:]