H27年の治療実績

早いもので、もう大晦日になってしまいまいました。なんだかんだと今日もレーザー治療や注射など、緊急患者様の対応がありましたが、今年は久しぶりに入院患者さん0名で年末年始を迎えられそうです。

H27年の治療実績を集計しました。
総件数も増え続け、過去最高となりましたが、なにより重症例の患者様の紹介が多かった1年でした。30代、40代の緑内障手術や増殖糖尿病網膜症の手術が数えられないほどありました。全ての治療が100点満点で完結できたとは言えませんが、多くの患者様の力になれたかと思います。
茨城県、栃木県、千葉県などの非常勤手術でも計1000件以上の手術を担当しました。この数年は勤務先に変更がなく、どの医院でも当院と同じような最新機器を導入して頂いたり、効率的に準備をして頂くようになり、1日で硝子体手術を15件とか白内障は30件とか沢山の手術ができるようになりました。ありがたいです。

疾患別では、今年は輸入角膜移植を開始しました。現在まで軽傷の拒絶反応(現在は軽快済)が1例あった以外には全例良好に経過しています。こちらは別にブログを記載したいと思います。

治療実績(H27年1月?H27年12月)

観血的手術合計 2418件
内訳
・白内障手術 1595件(眼内レンズ交換含む)
・網膜硝子体手術 316件(糖尿病・網膜剥離・眼底出血・黄斑円孔     ・黄斑前膜など)
・緑内障手術 118件
・眼瞼(まぶた)の手術 127件(眼瞼下垂・さかさまつげ・霰粒腫など)
・結膜の手術 146件(翼状片・結膜弛緩症など)
・角膜の手術 66件(角膜移植・角膜形成術など)
・涙器の手術 33件
(NSチューブ・涙嚢の手術)
・その他の手術 17件(斜視、レンズ整復、瞳孔形成、眼窩など)

レーザー手術合計 340眼
内訳
・網膜光凝固 138眼(糖尿病・眼底出血などに対するレーザー)
・緑内障レーザー 14眼(SLTレーザー・虹彩切除LI)
・YAGレーザー 188(後発白内障に対するレーザー)

*手術数は基本的に保険診療で請求された件数です。両眼同時手術などは2件と計算しています。 白内障の手術時に、逆さまつ毛や眼瞼下垂の手術を追加で行うことがありますが、それらはカウントしておりません。

抗VEGF薬 硝子体注射 853件加齢黄斑変性症や黄斑浮腫などに対する注射です。ルセンティス・アイリーア・アバスチン)

ステロイド薬 テノン嚢注射 362件(糖尿病や網膜静脈閉塞症などでの黄斑浮腫、ぶどう膜炎などに対する注射です。トリアムシノロン・マキュエイド)

結膜弛緩症手術? 手術動画

今日は僕の手術は4件のみ。その分、宮井副院長は硝子体手術含む13件と忙しそうでしたが、僕は楽をさせてもらったので今晩は頑張ってブログを更新してみます。

最近、患者さんからよりも眼科の先生からの問い合わせが多いのですが、結膜弛緩症の手術というのがあります。結膜弛緩症の病態については以前のブログを参照ください。
半年前に手術方法がいくつかあるといったブログを記載したのですが、実は当院では、この2年間は薬剤による接着法しか行っておりません。かれこれ50例以上の症例がありますが、手術時や術後の痛みが少ないと好評で、再発も全く認めていません。今日はこの手術を動画で紹介したいと思います。

結膜弛緩症手術 手術動画(←再生クリック)
結膜弛緩症の多くの手術は、結膜の余った皺・ヒダを伸ばして、または切除して、縫いつけるといった手技が行われます。(簡易的なものでは皺を電気で焼いて収縮させるといった方法も)
それでも経過がよい症例もいますが、縫うために使用した糸が術後の痛みや異物感の原因となったり、結膜と下地の強膜を固定させるのが、糸で縫った点であるために、接着が弱く年単位では再発が多いことが問題となっていました。
当院で始めた治療は翼状片手術などから応用したものですが、たわんだ結膜を下地となる強膜に接着剤(薬品)を使用して、面状にべったりと張り付けることができます。点と点の接着よりも面と面の接着の方が強固ですよね!

手術前の結膜弛緩症です。下まぶたに、しわ・ヒダが乗っかり、黒目に覆いかぶさっています。

手術翌日の写真です。多少の出血やゴロゴロは仕方ありません。

1ヶ月後にはかなりキレイになります。

治療の完全性が高く、何より再発する傾向が全くありません。結膜弛緩症の嫌なところの一つに、結膜下出血といって白目が度々赤くなってしまうことがありますが、手術中に強膜の血管を電気凝固することで、手術後には出血をすることもほぼなくなってしまいます。(特に女性は「白目が赤くなることが嫌」という方が多く、術後に赤くならなくなるのは喜ばれます。)

手術時間は片眼で約5分程度で、多くの場合は両眼同日に行います。
片眼の料金が、3割負担で7500円、1割負担で2500円程度です。
手技の中では電気凝固で痛みがあり、簡単な局所麻酔を併用します。麻酔によって見え方も麻酔され、術後は2?3時間の眼帯が必要になります。
手術後は糸を使用する手術と異なり、痛みが軽微ですが、少しの間はゴロゴロします。術後の赤みは2週から1ヶ月程度ではほぼ消失します。

*当院では軽傷の結膜弛緩症は手術適応とは考えていません。きちんとした点眼薬を使用しても症状が辛い方のみお引き受けしています。
*技術的には簡単な手術で、多くの医院で施行可能です。県外など遠方から手術のみの目的で来院される必要性は小さいです。
*眼科の先生方からの手術手技や使用品に関する質問はネットではなく、直接ご連絡頂くか、見学にいらして頂くようお願いします。

翼状片? 手術適応と遠方の患者様

今日の午後は県南の開業医様で硝子体手術を5件施行しました。
当院と同じ27ゲージ、コンステレーションシステムでの手術ができ大変スムーズに終えられました。そのまま今年最初の忘年会を楽しく過ごさせて頂きました。

さて、ちょっと酔っ払いで誤字脱字が心配ですが、今日は翼状片手術に関する注意点を書いてみます。
翼状片? 手術適応と遠方の患者様
現在の術式や手術動画は、以前にブログYOU TUBEで紹介しています。幸い当院での治療ケースが350例を超えますが、再発が1例もなく順調な経過が続いています。(細かなものなど全く合併症がないわけではありません。)
10代20代の患者さん、再発例や巨大な翼状片など、遠方からのご紹介も増え続けていますが、様々な事情で手術をお断りするケースも少なくありません。
遠方からの受診後にお断りするのは申し訳なく、代表的な2つのケースに関して記載しておこうと思います。

?見た目のみ理由に手術はしません

極小さな翼状片でも白目の赤みが嫌だと手術を希望される方がいますが、翼状片手術は決して見た目のためではなく、将来の視力低下のリスクを避けるための手術です。
翼状片が大きくなると、多くの場合で直乱視という縦方向の乱視を生じます。止血の仕方や切開の方法にもよるのですが、手術をすることで、この直乱視を打ち消して倒乱視(横方向の乱視)を生じることが多々あります。やり方にもよるのですが、手術自体、ある程度の乱視を生じることは間違いありません。
今、翼状片があるからといって、乱視が全くないような視力1.2という目は、手術によって視力低下を招いてしまいますので、今すぐには手術をするべきではありません。
今、倒乱視で裸眼視力が悪い人は、翼状片術後にはさらなる低下が予想されますので、やはり手術適応は慎重でなくてはいけません。大きくなりすぎて不正乱視を生じているケースでは仕方なく手術をして、手術後の落ち着いた時点で白内障手術による乱視矯正を見据える場合もあります。

これは先日担当したケースですが、他院様で初回手術を施行し術後再発で4年前に右眼の手術をされています。左が手術前、右が手術後でキレイに治っています。(3年前にカメラを新調したので写真の色合いが異なります。)
実はこのとき、下の写真のように左眼にも翼状片を認めています。

右眼が再発して大変な思いをしていると、左眼も早めに治療したい。という気持ちは分かるのですが、4年前の時点では軽度の倒乱視で視力が良好でした。
1年に1回の検診を行い、4年後に翼状片が大きくなったために直乱視化したので手術を予定しました。

左が4年前よりやや大きくなった手術前、右が術後2週です。翼状片が消失したのみでなく、乱視をコントロールして裸眼で1.0の視力を得ることができた症例です。
翼状片手術は、良かれ悪かれ乱視に影響します。(遠視・近視にもある程度影響があります。)手術適応には乱視を考慮する必要があります。


?紹介・連携が必要です

遠方の患者様で紹介状がない場合、多くの患者様が「術後も通えるから大丈夫です。」と仰るのですが、手術には不確定な要因も多々含まれます。術後にはステロイドという目薬をしっかりと使う必要がありますが、薬の副作用で眼圧が上がると、数日後・1週間後などに再検査が必要なケースというのは出てくるのです。来月の仕事のシフトは移動ができても、来週は無理・受診できない。という患者様が少なくありません。
やはりご近所の先生方の力を借りた方が、安全な術後経過が期待できます。遠方からの受診の患者様は、かかりつけの先生からの紹介状を持参頂き、術後は一緒に診療していけるように準備をするのが好ましいのだと思います。

また、そもそも翼状片手術の多くは簡単であり、ほとんどの症例では再発もなく良好な経過をたどります。翼状片手術自体は研修医の先生でも担当するもので、私は翼状片手術が専門ですという先生はいません。(誰でもできる手術なので)。
再発リスクの高い症例(若年性、再発例、巨大翼状片、耳側翼状片、他の疾患が元になっている)では、当院での手術にメリットがあるかもしれませんが、一般的で小さめの翼状片はご近所の開業医様でも全く問題なく手術が可能と思います。かかりつけの担当の先生が「当院では難しい」と話す場合は別として、「うちで手術をしましょう」と仰る場合は、転院を考える必要がありません。