緑内障31 istent? (アイステント) 最新の白内障併用緑内障手術

今晩は、ある先生が発起人になって開催された「茨城県 若手術者の会」というクローズドな第1回勉強会に参加しました。
県内の40才前後、初回は6名の医師で全員が年間数百件の執刀をするメンバーでしたが、僕の出身大学の方は1名のみで、新鮮な話題も多く刺激になりました。
本日も少しistentのことを話しましたが、
10月21日に北里大学主催で開催される第17回眼科臨床機器研究会でもistentの講演依頼がありました。⇒http://www.soci.jp/

緑内障30 istent? (アイステント)
istentの手術動画

まだまだ研鑽中ですが、10症例目の患者さんに手術動画のネット掲載を快諾して頂けたのでupしてみます。
istent手術動画 ← クリック

実際の手術手技については、
・白内障のみの手術(点眼麻酔)と異なり、眼球後方への注射による麻酔を行います。
・標準的な白内障手術を施行。最後に洗浄する目の中の粘弾性物質という薬は、まだ残しておきます。
・白内障手術のために開いておいた瞳孔(散瞳)を、閉じる(縮瞳させる)薬を投与。
・患者さんのお顔を手術をする目と反対側に傾けます。(左目なら右側)
・少し頭を上げ、顎を引く位置にも傾けます。
・目の中を観察する顕微鏡を傾け、目の中を斜め上から観察できるようにセットアップをします。
・特殊なレンズを角膜(黒目)にのせると、隅角が観察できます。
・鼻側下方の隅角に、istentを差し込みます。
⇒隅角にistentを刺すと、基本的には必ず出血します、
・顔の位置、顕微鏡の位置をまっすぐに戻します。
(実はここが、医者の筋力・疲労として一番大変な作業です。)
・白内障手術で使用した粘弾性物質と出血を洗浄して終了です。

現在は20例程度施行し、istentのみでは約2分程度の手術となっています。

istentの一番の利点は、結膜などに全く侵襲がない手術であり、
手術時にきちんと挿入できない。感染。大出血など、まず起こらないような合併症がなければ、最悪のケースでも眼圧があまり下がらなかった。という程度で、将来にマイナスとなる後遺症が全くないことです。
(トラベクレクトミーは将来的な結膜の瘢痕、虚血性変化など、手術をすれば絶対に後遺症が残る手術です。)

緑内障30 istent? (アイステント) 最新の白内障併用緑内障手術

3月25日に国内承認された新しい緑内障手術、iStent(アイステント)ですが、
当院では開始後3ヶ月で13例を執刀しました。(出張の非常勤手術は除く)
まだ術後短期の成績ですが、今のところ13例全例が手術前と比べて眼圧が下がっていて、約半数は緑内障点眼薬を全く中止した状態でしばらく様子をみられる状態になっています。
初回の患者様ではistentの挿入手技に5分程かかっていましたが、10例くらい経験すると2分もあれば挿入可能になります。非常に低侵襲で将来性のある有望な手術です。
今日はアメリカの会社から取材があり、英語が苦手な僕はドキドキしていましたが日本語の対応で大丈夫でした。
今日はistentの一般的な説明を記載してみます。

緑内障30 istent? (アイステント)
最新の白内障併用緑内障手術

istentを簡単にまとめると、
軽症の緑内障の人が、白内障手術を受ける時に、同時にistentを隅角に挿入すると、術後に眼圧が少し下がることが多く、点眼薬が減ったり不要になるケースがある。数分の治療で費用も保険診療に含まれる(多くの人は両眼の白内障手術と自己負担が変わらない)。
という手術です。
*緑内障の末期の患者さんが、失明するかしないかという時に検討をする手術ではありません。(そういうケースは多くはトラベクレクトミーという術式が選択されます。)

専門的ですが、手術を受けられる人の適応を記載します。
?早期中期の開放隅角緑内障患者で白内障を合併している人
 (現時点では白内障手術を受ける時の同時手術しか、保険が通りません。緑内障が進行期・末期の人は適応外です。)
?20歳以上の成人 (小児は受けられません)
?以前に目の中の手術を受けた人は適応外。
?開放隅角のみ適応。
 (隅角に癒着など、特殊な病態があると受けられません。)
?その他、角膜や水晶体の状態により受けられない人がいます。

こちらは眼科医側の問題ですが、資格申請に最低以下が必要です。
A. 白内障手術の経験が100件以上(僕は約20000件)
B. 緑内障手術(レーザー治療除く)の経験が10 件以上(僕は約1000件)

具体的な手術手技は次回記載します。