今日のお昼は白内障手術8件。無事に終わりました。
最近、多焦点レンズを選ばれる患者様が少しづつ増えているようです。
緑内障?
OCT(optical coherence tomography:光干渉断層計)
OCTについては、以前のブログを
⇒http://blog.sannoudaiganka.jp/?eid=128936
緑内障で押しつぶされた視神経を評価する方法は、まず診察による眼底検査、そして先日記載した眼底カメラによる記録が重要です。
しかし、数年前からは、より正確に、視神経の状態を測定、結果を保存できる方法として、眼底三次元画像解析検査という検査を行うことが増えてきました。
眼底写真が2次元(平面)での評価だとすると、眼底三次元画像解析検査はその名の通り3次元、3D、立体的に評価する方法です。検査に使用する光線の種類や方法などで、8年くらい前からGDxなどの器械が、3年くらい前からはOCTが使えるようになりました。眼底写真がレントゲンだとすると、GDxやOCTなどはCTやMRIに相当する検査です。最近3Dの映画やテレビが流行っていますが、いつの間にか、眼科の世界も3Dが当たり前に。
視神経をOCTで撮影すると、
図の右側のような断面が撮影出来ます。水色の矢印で囲んだ部分が網膜の厚み、視神経線維層を表しています。
このような断面図を数え切れないほど撮影して、コンピューターが3D画像に再合成します。すると、こんなにキレイに視神経の形を測定・再現できます。
実際に正常な人の測定結果と、緑内障の患者様の結果を比べてみると、
上が正常、下が緑内障です。
・左の眼底カメラでは、上の正常な視神経乳頭は、ドーナツのリングがしっかりとしていて、下の緑内障ではリングが薄くなっています。特に、視神経乳頭から左下に向かって、神経が薄く押しつぶされた部位、NFLD(神経線維層欠損)を認めます(赤矢印)。
・中央は視神経乳頭をOCTで3D表示したものです。NFLD、神経が薄くなっている所見がはっきりと分かります(赤矢印)。
・右側は断面図ですが、正常の方の網膜・神経の厚み(ピンク矢印で挟んだ部位)に比べて、緑内障の方(赤矢印)で薄いことが分かります。
これは、初期の緑内障の患者様で、視神経から下方に伸びる神経が薄くなっています。同年齢の正常人と比べて、OCTでは薄くなった神経(NFLD)が赤く表示されていますが、左の写真で同じ部位の網膜の色が若干色が暗いのが分かりますか?
これは上にも下にも薄い部分、NFLDが出来ている患者様です。
これは末期の患者様で、赤いところ(薄いところ)だらけです。
OCTで緑内障の検査をするメリットは
?客観的な評価が出来る。
神経が押しつぶされて見えなくなっていく病気ですが、今までは、診察以外に視野検査という検査で、診断や、進行・悪化を決定していました。今でも視野検査が最も重要な事に変わりはありませんが、後日書く予定ですが、視野検査はボタンの押し間違いや、目が動く、検査中のまばたきなど、誤差が多い検査としても有名です。OCTは本人のやる気や、検査の上手・下手に関係なく測定が可能です。
?簡単・正確
強い白内障や、瞳孔が極端に小さくない場合を除き、散瞳(瞳を開く)せずに、数秒で検査が可能です。測定時のまぶしさもありません。また、測定値は、誤差も少なく、医師(人間)の目による診断能力を大幅に上回る正確さです。強度近視の方などでは緑内障の診断が難しいのですが、これまで医師の目による診断で、なんとなく緑内障の治療を続けられていた患者様が、OCTの出現によって、実は緑内障ではなかった。なんて患者様が世界中で数え切れないほど出現しました。
?早期発見が可能に
緑内障で、神経が押しつぶされて行く場合に、実は20%以上の細胞が障害されて、初めて、視野検査で見えない場所として現れてきます。OCTでは、例えば、10%くらい障害された場合などの、まだ視野が欠ける前の状態でも、緑内障のごく初期、または予備軍として発見することができます。
(僕は、視野が全く欠けていない症例では、眼圧が重度に高い場合や、家族に緑内障で失明した人がいる場合などを除き、治療はせずに様子をみるようにしていますが、緑内障の予備軍として、1年後に必ず診察を。と促す時にはとても役立ちます。)
当院では最新機種のOCTを緑内障の診断に活用しています。
また、緑内障で治療中の患者様でも、初期?中期の患者様で1年に1回、中期から進行期の患者様では1年に2回ほど測定し、病気が進行していないかどうかの判定に役立てています。
それにしても、OCTが一般に緑内障に利用されるようになって、まだ3年くらい。
今ではなくてはならないものですが、医学の進歩は速いですね。
「目 神経 薄く」で検索してこちらのブログに辿り着きました。
父の眼圧が高く、近所の眼科でもらった目薬を刺していても18?22で変化しています。
先日大きな眼科に行って眼底や網膜の写真などを撮ってもらい、診察を受けたら、片方の目の一部の神経が薄くなっているところがある、とのこと。
でも、視野検査ではそちらの目に異常はなく、目薬も特に今の状態では必要ないだろう、とのことで、目薬をやめて1ヵ月後に再診することになりました。
そこで質問なのですが、OCT検査はしてみた方が良いのでしょうか?
検査費は視野検査などに比べて高額ですか?
こんばんは。ご連絡ありがとうございます。
診察もなし、写真や視野もなしで、いい加減なことも言えないのと、年齢、元の眼圧、なんという点眼薬を使用?などが分からないと、記載しにくいのですが。
一応、書けることだけ。
・静的視野は片眼3000円・両眼6000円
・眼圧は820円
・OCT検査は2000円
(眼圧・OCTは片眼・両眼同じ)
上記が全額自己負担の場合です。
1割負担ならOCTが200円、3割なら600円です。
検査は時間や金額的な問題がなければ、副作用もありませんし、受けて悪いことはありません。
視野が正常で、眼圧が20以上であれば、診断は緑内障の前段階で、高眼圧症となるのかもしれません。
神経が薄くなっているのが本当で、例えば、今のOCT所見と1年後のOCT所見で、明らかに悪化していくのであれば、視野が欠ける前に、前もって治療を開始することもありえます。(個人的には、眼圧が25以上とか30以上とかで、比較的早期に重症化する可能性がある場合を除き、視野が欠けてくるくらいまでは様子をみることが多いですが)
ただし、視野検査が正常で。となると、そもそも、本当に緑内障であったのか?治療が必要であったのか?など、もとの眼科様の判断に疑問も出てきます。新しい眼科様に通院を変えたのはなぜですか?
申し訳ありませんが、世の中には、全く緑内障出ない人が、緑内障の治療を受けている事も多々ありますので・・・。
本当に視野が正常であれば、緑内障であるにしても、ごくごく初期にあたります。
点眼薬を辞めてみての眼圧が、あまりに高い。とかでなければ、しばらく経過観察になるかと思います。
視野正常⇒1ヶ月後に眼圧を再測定
という流れは、とても自然で、僕もそうすると思います。
新しいご担当の先生に従ってみてはいかがでしょうか?
先生 ご親切に回答いただき、感謝いたします。
そうですよね、年齢など何も記載せず、失礼いたしました。
父は67歳です。
元の眼圧が23?25くらいでトラバタンズを2年間点眼し続けていて、眼圧は18?22の間をいったりきたりしている状況でした。視野検査は変化しない状況で、「点眼薬を増やしましょう」と言われて、納得いかなかった様子で、かと言って、質問もしなかったのだそうで・・・。
娘の私(41歳)も両目とも眼圧が22あり、視野や神経は特に問題ないので、もともと眼圧が高い家計なのかもしれません。
で、私が一年に一度通院している眼科専門病院に父も行って経緯を話したところ、新しい先生の判断は、栗原先生と同じだった、という事です。
OCT検査ですが、明細を見たところ、初診で行っていました。失礼いたしました。
お答えのなかでひとつ気になったのは、「高眼圧症」は緑内障前段階 なのでしょうか?
父ではなく私ですが、初診時に計った角膜の硬さ?厚さ?(仰向けになって上から眼をプレスされる検査・・・)も正常だったので、もう何年も21?22の状態が続いています。
現段階でできる予防は、一年に一度くらい、視野検査やOCT検査などを受けるしか無いということでしょうか。
こんばんは。
高眼圧は前段階と言いますか、予備軍のようなものです。そもそも眼圧に正常値、いくつならOKで、いくつなら緑内障になる。という値はなくて、今現在の眼圧に、自分の視神経が耐えられるかどうかで、発症します。
ただし、眼圧が15の人に比べれば、25である人が、緑内障を発症する確率が高くなります。(基本的には、低いほど発症しにくい病気です。)
緑内障の家族歴や、反対目が緑内障、視神経所見が悪化していく。などの所見がなければ、僕は20?25mmHgくらいまでの眼圧であれば、無治療で半年後に再検査を、それでも変化がなければ以後は1年に1回程度の検診で十分だと思います。
(どんどん、眼圧が上がっていく場合などは別で)
将来的に緑内障になって、視野が欠けていき、不自由が出ることが確実であれば、視野が欠ける前から、早めに治療をする方が、進行を遅らせるという意味で、メリットが大きいでしょう。
ただし、視神経が丈夫な人では、生涯30以上の眼圧でも視野が欠けない人もいます。
もしも、今後も視野が欠けずに一生涯過ごせるのであれば、今から治療を続けることは、検査や薬のお金、通院の時間、薬の副作用といったデメリットを受けるだけで、メリットは全くありません。
勝手な推測で、申し訳ありませんが、
緑内障=失明、何が何でも治療!!というイメージになっているのではないでしょうか?
緑内障で失明する方が多いのは、まず、有病率が高いこと(お父様の年齢では10人に一人とかです)。自覚症状がないので気がついて病院に来る時には末期の人が少なくない事。目薬をきちんとつけられない事。病気を理解できずに、通院を中断してしまう方が多いこと。
などが主な理由です。
目薬やSLTレーザー、場合によっては手術。緑内障の治療法も日々進歩しており、初期で発見されて、きちんと治療を受ければ、基本的には失明に至ることは、特殊な症例(血管新生緑内障や、続発性緑内障など)を除けばほぼない。という時代になってきています。
今回は、高眼圧症のみで、まだ緑内障でもない。という段階なのであれば、たまには検査をして、もし発症したのが早期で見つかった場合には、その時点から治療を始める。というので十分ではないか?という判断なのだと思いますよ。
(診察していないので、少し無責任ですみません。)
点眼薬で眼圧が下がらないのであれば、手術で下げれば?という具合でしょう。
ですので、新しい担当医の先生と、ともさんの、病気に対する深刻さに解離があるのかもしれませんね。
僕たちは、患者さんの目が見えなくなることを、もっとも避けるように考えています。ただ、それ以外にも、経済的・時間的な負担をなるべくかけたくない。とも考えています。
緑内障の目薬って目薬の中では、かなり高額で、副作用も多い。というか副作用だらけ。
「しみる・充血・ドライアイ・メヤニがでやすい・まぶたのくろずみ」なんて当たり前、全身の心臓や肺にまで負担がかかるものもあります。それでも失明には代えられない。という方には必須ですが、現時点ではそこまでの治療が必要ないのかもしれません。
僕たちは、緑内障で進行期でも目薬も通院もサボってしまう人が、とても多くて困っています。このように質問を頂けるだけあって、病気に関心が高いことは、とてもいいことです。でも、過度に心配する事のないように、担当医の先生を信頼してみるのもいいかもしれませんね。
急いで書いたので、誤字脱字あればすみません。
お力になれたなら幸いです。
先生
お忙しい中、大変丁寧に返信をいただき、感謝いたします。
「きちんと定期的に検査に行くこと」
を守って、目を大切にして行きます。
どうもありがとうございました。
※誤解を招いてしまったかもしれませんが、担当の先生を信頼していないわけでは全然ないのです。むしろ、「薬をやめてみましょう」という対応に好感を持っています。
もともと父が通っていた眼科と治療法が違ったので、そこに疑問があっただけです。