緑内障? ベースライン眼圧と目標値眼圧

今日の手術は、
・白内障手術 12件
・翼状変手術 1件
・網膜硝子体手術(茎離断) 3件
 内訳:増殖糖尿病網膜症(中症)1件、糖尿病黄斑症1件、黄斑前膜1件
まずまずの件数ですが、終わってみれば3時間半くらい。定時で終わりです。
スタッフのみんなが頑張って準備や、患者様の入退室をしてくれるので、本当に早い。器械の設定なども完ぺきで、僕は手術だけしてればいいので、とても楽です[:楽しい:]

緑内障?
ベースライン眼圧と目標値眼圧

緑内障の治療は、眼圧を下げることで、進行を遅らせることであることを昨日記載しました。
では、眼圧を下げる場合には、いくつくらいの眼圧にすればいいのでしょう?
以前のブログ(⇒2011.11.12 Saturday)で、書いたのですが、眼圧には正式な意味で正常値と言うものがなく、自分の眼圧に自分の視神経が耐えられない場合に、発症・悪化する病気です。なので、血圧のように、180だと駄目で120ならOKと言うわけにはいきません。

もしも、眼圧が20mmHgで緑内障(正常眼圧緑内障)が発症、診断された場合には、治療によって、まずは20%下げて16mmHgにしようとか、または30%下げて12mmHgにしようとか、治療の目標を決定します。この場合の、無治療での病気の発症の元になった眼圧(この場合20)をベースライン眼圧、下げる目標とする眼圧(この場合16や14)を目標眼圧と呼びます。

緑内障では眼圧は下げれば下げるほど病気が進行しにくくなります。ですので、この例でいうと、眼圧が10になった方が病気としては、管理がよいともいえます。ではなぜ、初めから10を目標にしないのか?と言うと、単に大変だからです。
眼圧を大きく下げようとすれば、その分、強い治療が必要で、1日に何度も・何種類も目薬をつけなくてはなりません。すると、目薬をつける時間も手間も、お金も副作用も余分にかかってしまいます。
例えば、正常眼圧緑内障で多い報告は、ベースライン眼圧から20%眼圧を下げると、約半数の患者様で進行を止められ、30%下げると約80%の患者様で進行が止められるとされています。
ですので、まず初めの目標としては、20%とか、30%の眼圧下降を目標として治療を行い、それでも緑内障が進行してしまった場合には、より強い治療に変更し、次の目標眼圧は40%、50%の眼圧下降にしようと、進めていくようにします。

ここで、注意が必要なのは、眼圧測定には誤差がある
ということです。
眼圧の測り方は以前のブログ(⇒2011.11.08 Tuesday)で記載しました。
器械よる測定誤差というのもありますが、患者様自身の測定誤差もとても大きい場合があります。
例えば、血圧だって、緊張したりするだけで変動しますよね?冬に高い人や、夜のみ高い人もいます。眼圧も同様で、測定時の風が嫌いな人では、測定時に力が入ってしまって眼圧が高く出てしまう事がよくあります。そして、やはり測定する時間によっても異なりますし、季節や体調でも変動があります。

緑内障学会でも正式に推奨されていますが、
特に正常眼圧緑内障では、ベースライン眼圧を決定するためには、別の日の同じ時刻に、最低3回の眼圧測定を行い、その平均値をベースライン眼圧として、その結果から目標眼圧を決定するように!となっています。
一見、面倒で時間がかかるように思えますが、緑内障は10年、20年、基本的に一生涯付きあっていく病気です。最初の1?2ヶ月を急いで治療に入るよりも、しっかりとした目標をもって治療に臨む事が重要です。
こうした手順を誤って、例えば、本当の眼圧は12mmHgである人が、初めての眼科で、緊張して測った眼圧が16mmHgであったとして、緑内障だからと、すぐに点眼薬を使用。「眼圧が12だから、もとの16より下がって、薬が効いているな」なんて思っていたら、実は薬は全く無効で、5年間意味のない治療をしていた。なんてことが起こりうるのです。

眼圧が40とか50とか、極端に高い場合を除き、初めてかかった眼科で、診察直後に「あなたは緑内障です。今日からすぐに点眼薬を使用します。」なんてことになったら、ちょっと変だな?と。少し考えてみてもいいかもしれません。

当院では、よほど緊急の治療が必要な場合以外では、基本的に、3回の午前中の測定、視野検査は午後に特別枠の予約制ですが、この午後の検査でも眼圧を測定し、測定時間による変動なども検討して、ベースライン眼圧の決定、目標眼圧の測定を行うようにしています。
世の中には、緑内障の初診時には、まず入院して、朝昼夕、寝ている途中でも眼圧を測定して。やっとベースライン眼圧を決定する熱意のある先生もいるようです。(入院して、夜中に検査をするのは、患者様に少なからず負担がありますので、どこまでやればいいかは、一長一短ですが、一つの例として。)

注)
眼圧が40とか50とか、あまりに高い場合には、初診時にすぐに治療を始める場合もあります。20台の眼圧でも視神経が弱っていて、既に緑内障が進行期で、早めの治療が望ましい場合にも初日に点眼薬を始めることもあります。逆に、若い患者様で視神経が丈夫で、まだ障害を認めない場合には、眼圧が30以上でも少し様子をみることもあります。何回目の診察でベースライン眼圧を決定するのかや、治療を始めるかは、個々の患者様の状態や、医師の考えかたでも異なりますので、担当の先生とよく相談するようにしてください。
ただし、一般的には眼圧が10台とかの正常眼圧緑内障で、1回の眼圧測定で、すぐに治療をしましょう。と、いうのは信頼性の観点から、行うべきではないと思います。

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