緑内障? 治療:SLTレーザー

今日の午後は以下の手術を行いました。
・翼状片手術 1件
・白内障手術 10件
・斜視手術 1件(甲状腺眼症:眼筋移動)
・緑内障手術 1件(トラベクレクトミー:血管新生緑内障)
・網膜硝子体手術(茎離断)3件
(黄斑前膜1件、糖尿病網膜症1件、裂孔原性網膜剥離1件)
つくば市の眼科様から緊急で網膜剥離の紹介があり、予定より件数が伸びたため、全部終わると18時で、ちょっと遅くなってしまいました。スタッフのみなさんご苦労様でした。手術は無事に終わっています。

緑内障
治療:SLTレーザー

緑内障の治療は眼圧を下げて視神経が押しつぶされることを止めよう。というものです。失った視野や視力が元に戻る方法はまだありません。

眼圧を下げるには、目の中を循環する房水(ぼうすい)の産生量を減らすか、排出量を増やすかになります。治療法に関しては、緑内障?にも書きましたが、点眼薬、レーザー、手術などに分類されます。
http://blog.sannoudaiganka.jp/?cid=4931

今日はSLTレーザーについて記載しようと思います。

まず、房水は目の中の隅角(ぐうかく)という出口から排出されていきます。

図の赤矢印の先が隅角になります。
緑内障の患者様では、この出口の構造に問題があって、房水の排出が悪いことがあります。SLTレーザーは、隅角に特殊なレーザー光線を照射することで、隅角からの房水の排出を増加させ、眼圧を下げる治療法です。

隅角からの房水の排出を邪魔する、色素細胞に影響することで、房水の排出を増加させるのではないか?と推測されていますが、別の説を唱える先生もいらっしゃり、明確な原理は不明です。

治療方法
点眼薬の麻酔で施行可能で、痛みは殆どありません。
・片目の治療で、隅角に約120回レーザーを照射します。治療時間は5?10分
外来治療で、当日から入浴や洗顔も可能です。生活の制限はありません
・炎症を抑える目薬を、治療後1週間程度使用します。
・副作用のチェックや、効果の判定を、1週間後、1ヶ月後に行います。

SLTの良い点
・レーザーが良く効いた人は、点眼薬をつけなくてよくなったり、点眼薬の数を減らすことができます。
効果が約1年間持続します。効果が弱くなってきた時には何回でも再治療が可能です。

ここまで書くと、とってもいい治療!なんて思いますよね??
でも、問題点もあるんです。

SLTの悪い点
費用が高い。(1割負担で片眼9000円弱、3割負担で片眼27000円弱)
・人によって効果に差があります。
 良く効く人では、治療前35の眼圧が10とかにまで下がることがあります。
 逆に、全く効果が出ない人も20%くらいあります
・一過性眼圧上昇:治療後の炎症などから、眼圧が一過性に上昇することがあり、きちんと検診が必要です。(稀ですし、対処法があるので過度な心配はいりません。)

目立って副作用がなく、点眼薬から開放されると思うと、ぜひチャレンジしたい治療法ですが、結構な金額を払って、もしも無効だったらと思うと、実は、僕は第一選択ではお勧めしていません。
(病院経営としては、数分で終わるSLTレーザーは、緑内障の治療法の中では、最も儲かる治療法でしょう。でも、毎日の目薬が可能で、眼圧下降が得られる症例では、今の医療情勢では、点眼薬による治療が第一選択ではないかと思います。点眼薬1剤を1年間購入しても、片眼のSLTレーザーよりも余程安価です。両眼SLTレーザーではかなり差がでます。)

僕がSLTをお勧めする場合は、以下のような場合です。
?点眼薬を使用しているのに、眼圧下降が十分に得られない症例
?仕事が不規則などで、点眼薬を規則正しく使用できない症例
?点眼薬への副作用があり、点眼薬が使用できない症例
?点眼が面倒という主張で、かつ、経済的に恵まれている方
?水晶体嚢性緑内障(PE)、色素緑内障、ステロイド緑内障など、高い効果を望めそうな方

保険診療って、案外面倒です。
もしも、SLTレーザーが今の3分の1位の費用で可能であったら、おそらく3倍以上の患者様の治療に用いられているでしょう。
価値観や経済力は、人それぞれですが、片眼3000円で、目薬をつけなくてよくなるかも。となったら、治療希望者も沢山いそうですよね??

茨城県には10台弱のSLTがあるのかな?と思いますが、
もちろん当院にもあって、毎月数名の患者様の治療をしています。
上記???に当たる方で、治療のご希望があれば、受診してみてください。

緑内障? 治療:目薬

今日は、
・白内障手術 15眼
・緑内障手術 3眼
・網膜硝子体手術 2眼
 (黄斑前膜1眼、ぶどう膜炎後の黄斑前膜・黄斑円孔1眼)
無事に終わっています。
件数の割に定時に終わりましたが、なんだか今日は目がショボショボします[:悲しい:]
ドライアイ?眼精疲労??自分の目は診察できないので、いい加減な診察ですが、ヒアレインという目薬をつけてみます。

緑内障? 治療:目薬
繰り返しになりますが、緑内障の治療は、眼圧を下げて視神経が押しつぶされることを止めること!
眼圧を下げるには、以下が必要になります。
A:房水の産生量を減らす
B:房水が排出量を増やす

点眼薬も各種類によって、AまたはB、もしくはA+Bの両方の作用があり、
結果として眼圧を下げ、病気の進行を遅らせることが期待できます。
(近年は、ある種の点眼薬には、目の血流を改善させて、視神経を丈夫にする可能性があるかも知れないと考えられていますが、まだ明確な治療法とはいえないレベルです。)

現在の日本では、緑内障の点眼薬というと、
プロスタグランジン関連薬、交感神経遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬などが主に使用されますが、他にも症例によって交感神経刺激薬、副交感神経刺激薬と呼ばれるものがあり、それぞれ効果や副作用が異なります。
さらに、たとえば、交感神経刺激薬はαブロッカーや、βブロッカー、αβブロッカーなどに分類され・・・・・、
さらに、各会社から別の種類の薬が開発され・・・、
さらにさらに、ジェネリック医薬品・後発医薬品という薬が・・・・。
ジェネリックについて⇒http://blog.sannoudaiganka.jp/?eid=122782

このブログは、一般の皆様が分かりやすい内容で!というのを目標にしていますので、個々の薬の専門的な特徴は省略させていただきます!

簡単に言うと、緑内障の薬は数え切れないほどあって、各医師が患者様に最適と思われる処方を行っているはず?です。
(よく何の点眼薬を使っていますか?と聞くと、オレンジの袋で・・・。なんていうお返事が多いのですが、袋がオレンジの点眼薬だけでも何十種類もあります。ご自分で使う薬は、できるだけ正式な名称を控えるようにしましょう。)

今回は、緑内障の患者様に守って頂きたい事を書いてみます!

?毎日、点眼薬を!
とにかく毎日つけてください!緑内障の治療は、目標眼圧を達成できるうち、通常は副作用・経済的・点眼回数など、できるだけ負担の少ないものから始めます。もし、ある一種の点眼薬を使用している人が、その後の検査で悪化した場合には、より低い目標眼圧を定めて、点眼薬を2種類に増やしていきます。
ここで問題なのは、
「今までの目薬では治療効果が不十分だったから」のか、
「その目薬で十分なはずなのに、つけ忘れが多かったから」
どちらの原因で悪化したのかは、誰にも分からない。ということです。
本当は一種類で十分なのに、悪化して、より強い治療となれば、その分負担は増えていきます。
そうは言っても忘れちゃう・・・。という方は、
今すぐ、目薬専用の目覚まし時計をセットしましょう!
携帯電話を持っている人も増えていますので、携帯のアラームを、朝起きるためではなく、たとえば夜20時に目薬をつけるために、セットしましょう!

?使用方法を守って!
点眼薬(目薬)については、以前のブログもご参照ください。
http://blog.sannoudaiganka.jp/?eid=122783
緑内障では、特に以下に注意しましょう。
・1回1滴で十分です。
 何滴つけても効果は変わらず、副作用が増えるだけです。
・2種類以上の目薬をつける場合は間隔をあけて。
 緑内障の目薬は10分以上あけて頂くのが望ましいです。
・開封後1ヶ月以上たったら、残っていても交換。
 特に夜に1回などと処方されているプロスタグランジン製剤は薬品として
 不安定であり、開封後1ヶ月以上たつと、効果が弱くなってしまいます。

?問題があれば、早めに医師に相談を!
他の点眼薬に比べて、緑内障の点眼薬は副作用だらけです。
充血、黒ずみ、目やに、ドライアイ、しみる、心臓や肺に影響する全身的な副作用も多々あります。それらの副作用があっても、失明とどっちがいいですか??という治療なのです。
そうはいっても、やはり個々の患者様との相性もあるので、「少ししみる。」くらいは別にして、「すごく痛い・メヤニが止まらない・呼吸が苦しい」など、辛いことがあった場合には電話でもいいので、すぐに医師に相談してください。
「目薬がしみて、辛かったから、勝手にやめて、通院もしなかった。」と、結局、見えなくなってから眼科に戻ってくる患者様が大勢いる病気です。
点眼薬との相性が悪いようであれば、副作用を打ち消す薬を追加したり、目薬を別の種類に変更したり、SLTレーザーや手術など、別の治療法を相談することだってできます。

?定期通院を!
一般的には、点眼薬の効果で目標眼圧を達成できるまでは、毎月の検査。
一番多いのは、2ヶ月に1回程度の検査。数年悪化していないような人は3ヶ月に1回などで、定期検査が必要です。
たまに、「目薬だけつけてればいいんだから、検査はしない。」なんていう人がいますが、そんなことありません。高血圧で毎朝1錠の薬を飲んでいた人が、薬が利きにくくなったり、病気が悪化した場合には、血圧が上がって朝晩2回薬を飲むようになったりします。
緑内障の点眼薬も、たとえば交感神経遮断薬などは、数年使用したりすると、効果がなくなってきてしまう場合が多々あります。眼圧はご自宅では測れませんので、せっかく病院に来るときには、きちんと眼圧を測定する必要があります。

緑内障・・・・。
まだまだ続きます・・・。
眼科手術専門といいつつ、手術の話題はまだ先になりそう・・・。

緑内障? 治療方法

今日は白内障6件、結膜弛緩症1件。無事に終わっています。

夕方に緊急で来られた患者様が・・・。急性緑内障発作で眼圧が60以上。反対目は数十年前に失明しており、見えている方の目がほとんど見えなくなっています。
実はしばらく前から、「治療をしないと、いつか急性緑内障を起こして急に失明しますよ。」と、何度も勧めていたのに治療を拒否されていた患者様です。
そう説明すると、「もう年だから失明してもいい」とか「見えなくなったら死ぬから。」なんて反論する人が、残念ながらたくさんいるのですが、実際に見えなくなると、「どうにかして!」「やっぱりなおして!」と、結局来院されるのですよね・・・。困ります。
今日の患者様も、「失明は嫌だけど、今日入院するのも嫌」と、すぐにでも失明しそうな状態で、どうしていいのか・・・。結局、今日は無理やり入院して頂きました。

緑内障? 治療方法
緑内障の治療は眼圧を下げて視神経が押しつぶされることを止めよう。というものです。

眼圧は、目の中の房水(ぼうすい)が多いほど高く、少ないほど低くなります。
なので、実際に眼圧を下げるためには、
A:房水の産生量を減らす
B:房水が目から出ていく量を減らす

といったことが必要になります。

通常の具体的な治療方法としては、
?点眼薬(もっとも行われている治療です)
?レーザー治療(SLTレーザーや、虹彩光凝固術)
?緑内障手術
(虹彩切除、隅角形成術、線維柱帯切開術・切除術)
?飲み薬(短期間の治療に)
?白内障手術(閉塞隅角緑内障などに)

などがあります。また、続発性緑内障といって、別の病気が原因となる場合には、
元になる別の病気をコントロールすることが必要になります。
?原因疾患の治療
例えば、
・血管新生緑内障⇒抗VEGF薬の注射
・ぶどう膜炎⇒ステロイド薬による消炎
・ステロイド緑内障⇒ステロイド薬の中止
・水晶体による合併症⇒手術
・硝子体・前房出血によるもの⇒止血剤・手術

上記のように、治療法は個々の病態に応じてたくさんあるのですが、基本的には、簡単でリスクが少なく、手間が少なく続ける事が可能で、治療の経費が安いものから始めます。
緑内障の治療法は、患者様にとっては面倒で、お金もかかって、副作用の心配もして・・・。全て嫌なものだと思います。それでも失明には変えられません。
また、一つの治療を始めても、治療法との相性で、全く効果がないことなども良くあります。目標眼圧をしっかりと定めて、一つの治療を行っても無効だったり、十分に眼圧が下がらない場合には、治療法を変更したり、追加していく必要があります。
例えば、点眼薬を2種類つけでも駄目なら、3種類に。3種類つけても駄目ならレーザーを追加して。それでも駄目なら手術をしましょう。といった具合です。

個々の治療法に関しては、また別の機会に。
では、お休みなさい。
今日も最後まで呼んで頂いた方、ありがとうございました。

緑内障? ベースライン眼圧と目標値眼圧

今日の手術は、
・白内障手術 12件
・翼状変手術 1件
・網膜硝子体手術(茎離断) 3件
 内訳:増殖糖尿病網膜症(中症)1件、糖尿病黄斑症1件、黄斑前膜1件
まずまずの件数ですが、終わってみれば3時間半くらい。定時で終わりです。
スタッフのみんなが頑張って準備や、患者様の入退室をしてくれるので、本当に早い。器械の設定なども完ぺきで、僕は手術だけしてればいいので、とても楽です[:楽しい:]

緑内障?
ベースライン眼圧と目標値眼圧

緑内障の治療は、眼圧を下げることで、進行を遅らせることであることを昨日記載しました。
では、眼圧を下げる場合には、いくつくらいの眼圧にすればいいのでしょう?
以前のブログ(⇒2011.11.12 Saturday)で、書いたのですが、眼圧には正式な意味で正常値と言うものがなく、自分の眼圧に自分の視神経が耐えられない場合に、発症・悪化する病気です。なので、血圧のように、180だと駄目で120ならOKと言うわけにはいきません。

もしも、眼圧が20mmHgで緑内障(正常眼圧緑内障)が発症、診断された場合には、治療によって、まずは20%下げて16mmHgにしようとか、または30%下げて12mmHgにしようとか、治療の目標を決定します。この場合の、無治療での病気の発症の元になった眼圧(この場合20)をベースライン眼圧、下げる目標とする眼圧(この場合16や14)を目標眼圧と呼びます。

緑内障では眼圧は下げれば下げるほど病気が進行しにくくなります。ですので、この例でいうと、眼圧が10になった方が病気としては、管理がよいともいえます。ではなぜ、初めから10を目標にしないのか?と言うと、単に大変だからです。
眼圧を大きく下げようとすれば、その分、強い治療が必要で、1日に何度も・何種類も目薬をつけなくてはなりません。すると、目薬をつける時間も手間も、お金も副作用も余分にかかってしまいます。
例えば、正常眼圧緑内障で多い報告は、ベースライン眼圧から20%眼圧を下げると、約半数の患者様で進行を止められ、30%下げると約80%の患者様で進行が止められるとされています。
ですので、まず初めの目標としては、20%とか、30%の眼圧下降を目標として治療を行い、それでも緑内障が進行してしまった場合には、より強い治療に変更し、次の目標眼圧は40%、50%の眼圧下降にしようと、進めていくようにします。

ここで、注意が必要なのは、眼圧測定には誤差がある
ということです。
眼圧の測り方は以前のブログ(⇒2011.11.08 Tuesday)で記載しました。
器械よる測定誤差というのもありますが、患者様自身の測定誤差もとても大きい場合があります。
例えば、血圧だって、緊張したりするだけで変動しますよね?冬に高い人や、夜のみ高い人もいます。眼圧も同様で、測定時の風が嫌いな人では、測定時に力が入ってしまって眼圧が高く出てしまう事がよくあります。そして、やはり測定する時間によっても異なりますし、季節や体調でも変動があります。

緑内障学会でも正式に推奨されていますが、
特に正常眼圧緑内障では、ベースライン眼圧を決定するためには、別の日の同じ時刻に、最低3回の眼圧測定を行い、その平均値をベースライン眼圧として、その結果から目標眼圧を決定するように!となっています。
一見、面倒で時間がかかるように思えますが、緑内障は10年、20年、基本的に一生涯付きあっていく病気です。最初の1?2ヶ月を急いで治療に入るよりも、しっかりとした目標をもって治療に臨む事が重要です。
こうした手順を誤って、例えば、本当の眼圧は12mmHgである人が、初めての眼科で、緊張して測った眼圧が16mmHgであったとして、緑内障だからと、すぐに点眼薬を使用。「眼圧が12だから、もとの16より下がって、薬が効いているな」なんて思っていたら、実は薬は全く無効で、5年間意味のない治療をしていた。なんてことが起こりうるのです。

眼圧が40とか50とか、極端に高い場合を除き、初めてかかった眼科で、診察直後に「あなたは緑内障です。今日からすぐに点眼薬を使用します。」なんてことになったら、ちょっと変だな?と。少し考えてみてもいいかもしれません。

当院では、よほど緊急の治療が必要な場合以外では、基本的に、3回の午前中の測定、視野検査は午後に特別枠の予約制ですが、この午後の検査でも眼圧を測定し、測定時間による変動なども検討して、ベースライン眼圧の決定、目標眼圧の測定を行うようにしています。
世の中には、緑内障の初診時には、まず入院して、朝昼夕、寝ている途中でも眼圧を測定して。やっとベースライン眼圧を決定する熱意のある先生もいるようです。(入院して、夜中に検査をするのは、患者様に少なからず負担がありますので、どこまでやればいいかは、一長一短ですが、一つの例として。)

注)
眼圧が40とか50とか、あまりに高い場合には、初診時にすぐに治療を始める場合もあります。20台の眼圧でも視神経が弱っていて、既に緑内障が進行期で、早めの治療が望ましい場合にも初日に点眼薬を始めることもあります。逆に、若い患者様で視神経が丈夫で、まだ障害を認めない場合には、眼圧が30以上でも少し様子をみることもあります。何回目の診察でベースライン眼圧を決定するのかや、治療を始めるかは、個々の患者様の状態や、医師の考えかたでも異なりますので、担当の先生とよく相談するようにしてください。
ただし、一般的には眼圧が10台とかの正常眼圧緑内障で、1回の眼圧測定で、すぐに治療をしましょう。と、いうのは信頼性の観点から、行うべきではないと思います。

緑内障? 治療の目的は維持:眼圧を下げる

今日の午後は小美玉で手術を。
夕方?夜は移動して、知り合いの開業医さんで手術のお手伝いに。
開業医さんですが、なんと午後だけで15名も手術があり、硝子体手術もあって。茨城の眼科医は忙しい人が多いようです[:びっくり:]

さて、今日は少し時間があるので、緑内障の続きを。
(とはいっても、23時ですが・・・。)
緑内障? 
治療は維持:眼圧を下げる

緑内障とは、眼圧に関連して視神経が障害され、視野(見える範囲)が狭くなる病気です。
残念ながら、今の医学では、緑内障で一度欠けた視野は一生涯戻りません。
よく、「緑内障って治らないんでしょ?」と患者様に質問を受けますが、まさにその通りです。
緑内障の治療で、現在の医学で明確に分かっていることは、眼圧を下げることで進行を抑えることができる。ということだけです。
(他には、目の奥の血流を改善させる方法や、人工の網膜など、様々な研究が行われてはいますが、まだまだ、きちんとした治療とは言えないレベルです。)

眼球の中を流れて、眼球と言うボールを膨らませている房水の圧力(眼圧)によって、視神経が押しつぶされてしまう病気なので、その圧力(眼圧)を減らして、それ以上、視神経が押しつぶされないようにしよう。というのが治療法になります。
決して、押しつぶされて、死んでしまった神経をよみがえらせたり、失明したり、視野が欠けてしまったことをもとに戻すことはできません。

治療の目標は
・生きている間に失明させないこと
・視機能を出来るだけ温存し、生活に不自由がでないようにすること

になります。

実際に眼圧を下げる方法には、
?点眼薬
?レーザー治療
?手術
などがありますが、今後ゆっくりと書いて行きたいと思います。

白内障で手術をすると、だいたい皆さんに喜ばれます。
結膜炎で、点眼薬を処方し、メヤニが止まっても喜ばれます。
では緑内障はどうか?というと、
ほとんどの場合、緑内障の治療を行っても全く喜んで頂けません
緑内障の治療は、上記の、どの治療法を選んでも、ある程度はツライ・面倒なもので、しかもお金もかかります。
例えば、ほとんどの緑内障の目薬は、他のドライアイなどの目薬に比べて高額です。また、目薬には多かれ少なかれ副作用があります(しみる、充血、まぶたのくろずみ、メヤニ、ドライアイの悪化、全身的な負担など)。
お金を払って、しみる目薬をつけて、充血して。なのに、目が良くなるわけでもなく、現状維持が精一杯。みなさんが治療が嫌になってしまう気持ちも分かります。
それでも、失明は避けなくてはいけません。眼科医としては、喜んで頂けないのは仕方ありませんが、維持するために治療を受けて頂く以外ないのです。

もっともっと医療が進んで、緑内障が本当に治ってしまう日が来るといいのですが。

緑内障? 視野:ハンフリーvsゴールドマン

東京国際フォーラムまで高速で1時間ちょっとなので、車で往復していますが、今日は寒くて雨で、交通事故渋滞が多発。行きも帰りも2時間以上かかりました。追突玉突き事後も目撃しましたが、大変そうでした。僕も気をつけなくては。

さて、今日は二つの視野検査の比較です。
静的視野(ハンフリー)vs 動的視野(ゴールドマン)
どちらも、まっすぐ前の一点を動かずに凝視して、周囲に光が見えたらボタンを押す検査で、視野(物の見える範囲)を測定するのですが、測定方法や得意不得意など、少し違いがあります。

指標
・静的視野は、光の指標が動かずに、一点でピッと光ります。
・動的視野検査は、見えない部分から光を見える部分に動かしていく検査です。

何を測定?
・静的視野(ハンフリー)は、主に中心30度の視野を、詳細・微細に測定することができ、中心に近い視野の変化をかなり初期の段階から指摘する事が出来ます。
・動的視野(ゴールドマン)は、より広い範囲で、視野全体がどんな形をしているか、そして暗点が存在するかどうかを調べることができます。

器械vs人間が測定
・静的視野(ハンフリー)は、基本的にコンピューター制御で、測定器がほぼ全自動で効率よく測定します。一般に測定時間が短く、器械が勝手に測定するため、検査員の技量で検査結果に大きな差がでにくい。というメリットがあります。医院によっては看護師さんや、助手さんが測定することもあるようです。(実際には、先日説明したキャッチトライアルなどを、どう対応するかで差が出来ますが。)
測定時間は上手に検査ができる人では、片眼10分かからないくらいです。(器械のスピードを落としたり、やり直す場合は長くなります。)
患者さんとしては、検査が一定のスピードで、ピッ・ピッ・ピッと、自動で進んでいってしまうので、理解力や体力などに不自由がある方(子供や高齢者など)が検査を受けると、上手にボタンを押せなくて、誤差だらけになってしまいます。視力の悪い患者様も、中心の光を見続けるなどが難しかったりで、検査が上手くいきません。
・動的視野(ゴールドマン)は、検査員(人間)が視標を出し、検査員(人間)が検査結果を記録します。静的視野の正確さが器械の能力に左右されるのと違って、動的視野では、測定する検査員の技量によって正確さが大きく左右されます。ですので、多くの施設で、国家資格のあるORT(視能訓練士)が検査を担当します。僕は当院のクリニックのORTを信頼していますが、かなり正確に結果が取れていると思います!
検査の時間は病態や、年齢などにより大きく異なります。視野や視力が正常で、若い患者様では片眼10分弱で終わってしまうかもしれませんが、高齢の方で、見えない場所がポツポツと点在するような、複雑な視野の患者様では片眼で30分以上かけて、じっくりと見えない場所を探していくこともあります。
高齢者や視力が悪いなどで、静的視野では上手く検査ができない患者様でも、動的視野はORTが、様子をみながらゆっくりと検査をしたり、休憩しながらも出来るのが大きな利点です。
(近年、コンピューター制御の動的視野計も発売されるようになりましたが、技術をしっかりもったORTによる検査と比べると、正確さと言う意味では、天と地ほどの差があります。)

緑内障:初期or進行期
ここまでの話は、分かりましたでしょうか?分かりやすく書きたいと思いつつ、なかなか表現って難しい・・・。
緑内障の患者様に限って、まとめるてみますと、
?初期?中期で、微細な病変を調べる場合
 ⇒静的視野(ハンフリー)
?静的検査が難しくなってくる緑内障の進行期、高齢者など
 ⇒動的視野(ゴールドマン)

と考えて頂ければOKです。
なので、高齢で検査が苦手という方を除き、若い患者様で、動的視野(ゴールドマン)の検査をして、結果のコピーを渡されている患者様は、申し訳ありませんが、少し重症なのだと思って、診療にお付き合い頂ければと思います。(1?2ヶ月に1回の検査を行います。)

最後に
費用
・静的視野は片眼3000円・両眼6000円(1割負担で600円)
・動的視野は片眼1950円・両眼3900円(1割負担で390円)

検査員の労力が少なめて、時間も早くて、器械が自動で行う静的視野の方が費用は高くて、
人間が時間をかけて測定し、ORTの専門的な技術を必要とする動的視野の方が検査が安いのです。
多くの眼科医、ORTが納得がいかない部分ですが、医療ってよく分かりませんね。
検査に使う器械が高価か、どうかで医療費が決まっているようです。静的視野はコンピュータ制御で、器械自体は確かに高いのですが。「重症例の患者さんを正確に評価するため」に必要な動的視野よりも、静的視野が高いのはどうなのだろう?

緑内障? 動的視野検査:ゴールドマン

今日のお昼は手術でした。無事に終わっています。
・白内障手術 4件
・翼状片手術 1件
・眼瞼下垂症手術 2件

眼瞼下垂は炭酸ガスレーザーといって、レーザー光線で止血をしながら、組織が切れる。というメスを使用して行ってみました。確かに出血しなくて、手術が終わった瞬間からキレイ[:見る:]
手術はなんでもキレイに越したことはありません。医学の進歩ってすごい[:ときめき:]
明日の午後は、眼瞼の手術ばかり10件もさせて頂く予定なのですが、レーザーメスの威力を実感してみたいと。術式や経過などは後日報告いたします!

緑内障?
動的視野検査:ゴールドマン視野計

先日までは、静的視野検査、光がある一点で急に光かって、それが見えたらボタンを押す。という検査の説明をしました。
今日の話題の動的視野検査、ゴールドマン視野計は、光の指標を動かして行って、光が見える範囲に来たら、ボタンを押して頂く。(病状によっては、見える場所から始めて、見えない場所になったら。というのもありますが)
という検査です。指標が動くので動的視野検査。


この大きなドーム状の器械、ゴールドマン視野計を使います。患者様は、椅子に座って、矢印の部位に顔をのせ、半球の中をのぞきます。


本来は、その後に、部屋を暗くして、青矢印の先にじっと見つめる指標(固視点)が光るので、そこを見続けます。検査員が光った指標を、視野の外側の方から、ゆっくりと内側に移動させますが、光が見えるようになった時に、ボタンを押していきます。
最初は大きく、強く光る指標から測定し、徐々に小さく、弱く光る指標へと変えて測定ます。

これは、正常な人のゴールドマン視野の結果です。

赤矢印の部分が物を視野の中心部になります。左目の検査結果ですが、通常の人はこのように、鼻側よりも耳側のほうが視野が広くなっています。
緑の矢印の部分は、以前に何回か説明した、マリオット盲点になり、脊椎動物はみんな見えない場所です。。
一番外側の青い輪は、最も強く、大きな光の指標で測定した「見える範囲・視野」になります。赤、青、赤と、円が内側に向かうほど、弱く小さい光の指標で測定した結果となっています。
(赤や、青などで結果に色をつけるなどは、病院や派閥によって手法が異なります。結果の見やすさや、しきたりなどの問題です。)

実際の緑内障の患者様のサンプルです。
スキャナを準備するのが面倒で、結果を写真で取って載せています。見にくかったらすみません。(晩酌をしながらだったり、一部手抜きをしながら書いています。長く続けるために負担を減らして行こうかと。誤字脱字もご了承ください。)


これは、上方の視野が大きく欠けている患者様です。右下のほうも欠けていたり、中心から少し下の部分に円形に視野が欠けている場所(暗点:あんてん)もあります。


これは、右下の視野が欠けている患者様です。緑内障の視野欠損では、このように、視野の欠損の状態が上下で差があることが特徴的です。


これは、視野が欠けている。というより、中心部と、少し右下に見える部分がある。というレベルです。見える場所がパラパラと離れているので島状視野(とうじょうしや)なんて呼ばれたりします。


最後に、緑内障の末期で、中心部の視野だけが残された患者様です。これでも、中心部は見えるので、矯正視力は0.9もあるんです。お会いした時から、反対目も進行期なので日常生活はかなり不自由ですが。
(みんなが、最後に中心部が残るわけではなく、周辺の視野がぽつんと残ったり、いろいろなパターンがあります。)

緑内障? 静的視野検査:ハンフリー その2

今日は、昨日と同じ、緑内障の静的視野検査の結果についてです。
静的視野を測定する器械は、数社から発売されており、機種によって結果の表示が異なるのですが、当院で使用しているハンフリーという機種で説明します。
(ハンフリーは世界で最も有名、高価な機種です。)

緑内障?
静的視野検査:ハンフリー その2


昨日も出したサンプルです。

視野欠損
まず、右上の緑の○の部分が、視野の欠けている状態で、一般の方でもイメージしやすいかと思います。これは右眼の検査結果ですが、上方、とくに鼻側の上方の視野が欠けている事が分かります。
黒い部分が大きくなってくるようであれば、徐々に視野が狭く、悪化しているという判断になります。当院に通院の患者様は視野検査の結果を受け取っていると思いますが、できるだけ捨てずに保管するようにして下さい。1回前の検査結果と比べるだけだと、変化がないと思うような場合でも、1年前、2年前、3年前と、きちんと並べて比べてみると、実は徐々に悪化していることが分かる場合なども多々あります。
特に、大きな病院などで、担当の先生が毎年のようにコロコロ変わる場合は要注意です。1人の先生が担当した1年の間では、ほんの少しの悪化しかないと判断し、次に担当する先生も、この1年ではあまり変化なし。なんていうことを繰り返していってしまう事があります。
10年、20年と付き合っていく緑内障では、1年の悪化がごく少量でも長い目でみたら、かなり悪化していた。なんていう事もあるのです。
例えば、1年間に5%の視野が欠けていくのを見逃すと、単純計算では、5% x20年=100%、20年では失明してしまうのです。(もちろん実際には、そう単純な計算ではありませんが。)
視野検査をできるだけ保管して、5年前などと比べることは、とても重要です。10年、20年という病気では、その間に引っ越しや転院をするときもあるかもしれません。そんな時にも、昔の視野検査はとっても役立つのです。

MD値
次に、青の○の部位には、MD(mean defect)と呼ばれる値が書かれています。
このMD値は、視野検査の重症度、病気の進行具合を評価します。
視野が欠け、病気が重度になるほど、MD値がマイナスに大きくなっていきます。
例えば、MD値が0dB(デジベル)では正常、上のサンプルは-10dB程度で中期になります。

学会や、各医師によって、分類が多少は異なりますが、一般的に多く用いられている分類を紹介すると、
MD値が、
0?6 dB ⇒ 早期視野欠損(初期)
6?12 dB ⇒ 中等度視野欠損(中期)
12 dB以上 ⇒ 重度視野欠損(進行期
)と分類されます。
多くの場合、初期?中期では自覚症状は全くありません。中期?進行期になって初めて、視野が欠けていることを自覚することができるようになるようです。

特に以下の数値に入ると失明するかしないかなどの検討に入ります。
15? 危険領域
20? 日常生活が不自由
25? 機能的・社会的失明

(片足をなくしても十二分に生活できる人もいれば、全く歩けなくなってしまう人もいます。緑内障も、重症と分類されても、それなりの生活ができる人、軽症でも不安で歩けなくなってしまう人もいます。上記の分類は、それくらいの人が多いという意味です。)

上記の視野欠損のイメージ図を比べる以外にも、MD値の絶対値が徐々に大きくなる場合は、悪化していると言う事になります。例えば、1年間にMD値が3づつ悪くなるなら、8年間では24dB。初期の人が失明に至る悪化のスピードです。
(1年でMD値がどれくらい落ちていくのかを、MD slopeと呼び、手術をするかどうかなどの判断に使ったりします。)

キャッチトライアル・固視不良などの誤差
実は、緑内障の静的視野検査は、誤差がとても大きな検査です。
光が見えたらボタンを押す。光ってもボタンが押せなかった部分の視野が欠けていると判断していくのですが、
もしも、完全に失明して、盲目の人が検査を受けたとするときに、光が見える見えないに関わらず、ボタンを押しまくっていたら、全ての光が見えたことになり、結果は正常だとの判定になってしまいます。
こういった事、不正がないかを監視するために、ハンフリー視野計では、様々な罠を仕掛けています。
例えば、光は、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ。と、ある程度リズムよく光っていくのですが、器械が意地悪をして、ピッ。と音を出すのに、わざと光らない場合を作ったりするのです。
・ゲーム感覚で、いい点数をとるぞ!!なんて気分で検査に臨むと、とにかくボタンを押しまくってしまい、本来は病気で見えない場所があるのに、全て見えたことになって、正常でした。なんて結果になることも。
・逆に、高齢の方や、睡眠不足、気分がめいっている場合などでは、ボタンを押すのが遅れてしまって、本来見えるべき光でも、ボタンを押せずに、過度に重症の結果が出てきてしまったりします。

このような偽陽性・偽陰性と思われる検査の結果を、器械がじっと観察して、何%の誤差がある。なんていう事が表示されています。
他にも、目がきょろきょろと、動いてしまった回数(固視不良)なども表示されます。

誤差は少なければ少ないほど、正確な検査となりますが、緑内障と診断される当初は、検査が上手に行かない場合も多々あり、本来、病気でない人が病気と判断されたり、その逆の場合も出てしまう事がありえます。

ボタンの押しすぎ、押さなすぎ。というのが、上のサンプル、赤○の部分に、キャッチトライアルとして、3%などと表記されるのですが、これがもし20%とか、30%とか、あまりに大きい場合には、もはや検査を行った意味がありません。体重を計るのに、米俵を持って体重計に乗るようなもので、時間とお金の無駄です。

静的視野検査では、出来る限りリラックスして臨み、はっきりと光が見えたときのみ、ボタンを押すようにしましょう。(迷った時はボタンを押さない。)
それでも、得手不得手があったり、高齢者などで検査が難しく、誤差が大きい時には、後日記載しますが、動的視野検査などの別の検査をお勧めすることになります。

このように視野検査は誤差のある検査です。初診時から重症例。などを除けば、一度の検査のみで緑内障と確定して、すぐに治療。なんていうのは医師の横暴で、きちんと誤差がない検査結果が得られて、きちんとした治療の目標、ビジョンをもって臨むことが眼科医には望まれます。

ここで、患者様にお願いです
当院では、誤差が大きかった場合や、目や体が動いてしまう場合などは、出来る限り、光がでるスピードを遅くしたり、検査をやり直すなどして、せっかくの検査が無駄にならないよう、できるだけ正確な検査ができるように、国家資格をもったORTのみが検査を行い、30分に1名以下と、通常の医院に比べると、かなりゆっくりと時間をとって検査を頑張ってくれています。(多くの症例がキャッチトライアルは5%未満。たまには10%程度くらいの人がいます。20%を超えるのは年に数回というレベルで、本当に検査が苦手な人のみ。というか、20%を超える場合は検査結果としてあまり参考にしていません。)
ですので、1日にできる視野検査の件数が少なく、予約枠の確保には少し苦慮しています。検査は完全予約制ですが、もしも検査日や時間の都合が悪くなった場合には、無断でキャンセルをすることなく、なるべく早めにお電話を頂けますと幸いです。

緑内障? 静的視野検査:ハンフリー その1

なかなか忙しくて、毎日更新するのは難しいです・・・。すみません。
Q&Aやコメントでも緑内障の質問を頂いたのですが、緑内障は難しいですよね。
できるかぎり分かりやすく書きたいとは思っているのですが。頑張ります。

今日は視野検査のお話です。
緑内障?
静的視野検査:ハンフリー その1

実際に、緑内障で視野がどれくらい欠けているのかを評価するための検査です。
緑内障の診断や、定期検査で悪化がないかなどに使用します。

視野検査には大きく2種類あり、静的視野検査と動的視野検査に分かれます。
視野を測定するための光の指標が、動かずにピカッと光るだけのものと、光の指標を見える場所から見えない場所に動かしながら測定するものになります。
暗い部屋で行います。静的視野検査では、じっと検査機器の正面を見ていて、周囲の視野に光がピカッと点灯した時に、光が見えた時はボタンを押します。


これが視野検査の器械です。赤矢印に顔を入れて覗き込みます。
視野検査の器械にも様々あるのですが、当院では一般的に世界で最も優秀とされている、Zeiss社のハンフリー視野計の最新機種を使用しています。


正面から拡大すると、青矢印に顎を載せて、緑矢印先に光る場所があるので、そこをじっと見ています。その状態で、例えば、黄色の点が光ったりするのですが、光がはっきり見えた場合のみボタンを押します。もしも、視野が欠けている場所が光っても、その場合は本人には光が見えないので、ボタンを押しません。これを場所をかえて何度も何度も繰り返して、視野が欠けている場所を探していくのです。

緑内障?でもUPした、緑内障中期の患者様の右目の眼底写真です。

視神経乳頭から左下に向かって、神経の薄い場所(NFLD)があります。
眼球内の下の方が神経が薄くなると、上から入ってくる光を感じにくくなります。

同じ患者様の視野検査の結果がこちらになります。

右上の一番大きな円形図が視野検査の大まかな結果です。視野の中心部から左上の方に黒い影があるのが分かるでしょうか?ここが緑内障で視野が欠けている部分です。眼底写真で下方の神経が薄く、視野検査では、その薄い神経の部位に対応する形で、上方の視野が欠けていることが分かります。

目の中の網膜・神経は、上の方と下の方で異なる支配になっており、初期?中期の緑内障の方が視野検査を行うと、多くの場合には、この症例のように、視野の結果も上下で差ができます。(逆にいえば、上下の境が全くなく、黒い部分がつながっている場合には、緑内障以外の原因で視野が欠けている可能性が高いということです。)


これは、正常な患者様の左目の視野検査です。
青矢印の部分に一つだけ影がありますが、これはマリオット盲点と呼ばれる部位にあたり、生まれつきもともと見えない場所であり、正常な所見です。


これは右目、初期の緑内障です。
マリオット盲点以外に、上方に向かって、薄い影が広がっています。


これも初期の緑内障(左眼)です。青矢印以外に、下方に視野欠損を認めます。
このようなレベルでは、まったく自覚症状はありません。


これは、進行期の緑内障(左眼)です。
これを見ると、ほとんど真っ暗?なんて思いますが、中心部はきちんと視野が残っており、視力検査ではきちんと1.0見えます。このくらいになると、自覚症状で分かる人が多いですが、一部、全く症状もない人もいます。
(静的視野検査では、多くの場合で、生活に重要な、30度くらいの中心部に近い視野を測定します。実際にはもっと広い範囲で視野が存在します。)


これは、初期?中期の右眼の緑内障の患者様ですが、左側が1年前、右側が今年になります。僅かですが、進行しているのが分かるでしょうか?この1年間、一つの目薬をつけて、眼圧が15?16くらいで落ち着いていましたが、悪化してしまったようです。今回、点眼薬を2種類に増加し、目標眼圧を10?12程度と、さらに下げるように治療を強化している最中です。

緑内障は自覚症状で気が付きにくいために、病気に納得ができず、治療に積極的になれない人が多いことで有名です。
当院では、基本的に全ての患者様に、視野検査の結果をコピーしてお渡しするようにしています。
少しでも、病気の理解に役立てて頂ければと考えています。

次回は、この視野検査の読み方や、注意点について書いてみます。

緑内障? 視神経:OCTで評価

今日のお昼は白内障手術8件。無事に終わりました。
最近、多焦点レンズを選ばれる患者様が少しづつ増えているようです。

緑内障?
OCT
(optical coherence tomography:光干渉断層計)

OCTについては、以前のブログを
http://blog.sannoudaiganka.jp/?eid=128936

緑内障で押しつぶされた視神経を評価する方法は、まず診察による眼底検査、そして先日記載した眼底カメラによる記録が重要です。
しかし、数年前からは、より正確に、視神経の状態を測定、結果を保存できる方法として、眼底三次元画像解析検査という検査を行うことが増えてきました。
眼底写真が2次元(平面)での評価だとすると、眼底三次元画像解析検査はその名の通り3次元、3D、立体的に評価する方法です。検査に使用する光線の種類や方法などで、8年くらい前からGDxなどの器械が、3年くらい前からはOCTが使えるようになりました。眼底写真がレントゲンだとすると、GDxやOCTなどはCTやMRIに相当する検査です。最近3Dの映画やテレビが流行っていますが、いつの間にか、眼科の世界も3Dが当たり前に。

視神経をOCTで撮影すると、

図の右側のような断面が撮影出来ます。水色の矢印で囲んだ部分が網膜の厚み、視神経線維層を表しています。
このような断面図を数え切れないほど撮影して、コンピューターが3D画像に再合成します。すると、こんなにキレイに視神経の形を測定・再現できます。

実際に正常な人の測定結果と、緑内障の患者様の結果を比べてみると、

上が正常、下が緑内障です。
・左の眼底カメラでは、上の正常な視神経乳頭は、ドーナツのリングがしっかりとしていて、下の緑内障ではリングが薄くなっています。特に、視神経乳頭から左下に向かって、神経が薄く押しつぶされた部位、NFLD(神経線維層欠損)を認めます(赤矢印)。
・中央は視神経乳頭をOCTで3D表示したものです。NFLD、神経が薄くなっている所見がはっきりと分かります(赤矢印)。
・右側は断面図ですが、正常の方の網膜・神経の厚み(ピンク矢印で挟んだ部位)に比べて、緑内障の方(赤矢印)で薄いことが分かります。


これは、初期の緑内障の患者様で、視神経から下方に伸びる神経が薄くなっています。同年齢の正常人と比べて、OCTでは薄くなった神経(NFLD)が赤く表示されていますが、左の写真で同じ部位の網膜の色が若干色が暗いのが分かりますか?


これは上にも下にも薄い部分、NFLDが出来ている患者様です。


これは末期の患者様で、赤いところ(薄いところ)だらけです。

OCTで緑内障の検査をするメリットは

?客観的な評価が出来る。
神経が押しつぶされて見えなくなっていく病気ですが、今までは、診察以外に視野検査という検査で、診断や、進行・悪化を決定していました。今でも視野検査が最も重要な事に変わりはありませんが、後日書く予定ですが、視野検査はボタンの押し間違いや、目が動く、検査中のまばたきなど、誤差が多い検査としても有名です。OCTは本人のやる気や、検査の上手・下手に関係なく測定が可能です。

?簡単・正確
強い白内障や、瞳孔が極端に小さくない場合を除き、散瞳(瞳を開く)せずに、数秒で検査が可能です。測定時のまぶしさもありません。また、測定値は、誤差も少なく、医師(人間)の目による診断能力を大幅に上回る正確さです。強度近視の方などでは緑内障の診断が難しいのですが、これまで医師の目による診断で、なんとなく緑内障の治療を続けられていた患者様が、OCTの出現によって、実は緑内障ではなかった。なんて患者様が世界中で数え切れないほど出現しました。

?早期発見が可能に
緑内障で、神経が押しつぶされて行く場合に、実は20%以上の細胞が障害されて、初めて、視野検査で見えない場所として現れてきます。OCTでは、例えば、10%くらい障害された場合などの、まだ視野が欠ける前の状態でも、緑内障のごく初期、または予備軍として発見することができます。
(僕は、視野が全く欠けていない症例では、眼圧が重度に高い場合や、家族に緑内障で失明した人がいる場合などを除き、治療はせずに様子をみるようにしていますが、緑内障の予備軍として、1年後に必ず診察を。と促す時にはとても役立ちます。)

当院では最新機種のOCTを緑内障の診断に活用しています。
また、緑内障で治療中の患者様でも、初期?中期の患者様で1年に1回、中期から進行期の患者様では1年に2回ほど測定し、病気が進行していないかどうかの判定に役立てています。

それにしても、OCTが一般に緑内障に利用されるようになって、まだ3年くらい。
今ではなくてはならないものですが、医学の進歩は速いですね。