お薬大好き・・・。

今日のお昼は以下の手術を行いました。
・白内障手術 6件
・網膜硝子体手術(茎離断)2件
 (硝子体混濁+黄斑前膜、再発性網膜剥離:退院様術後)
無事に終わりました。
むしろ、土曜日に手術の増殖糖尿病網膜症の患者様の眼圧が高く(悪性緑内障疑い)、再手術かどうか、悩ましい・・・。

お薬大好き日本人
外来をやっていると、とにかく目薬を欲しがる人が多くてビックリします。
例えば、
結膜下出血は、薬は効かず、自然治癒します。
白内障の点眼薬に、明確な進行予防があるというエビデンスはありません
それでも、「せっかく眼科に来たから。」とか、「効かなくても、みんなが付けてるから。」とか、とにかく目薬が欲しいよう。

困ってしまうのは、
眼鏡を作りにきて「何も症状はないけど、何か薬をくれ。」
という患者様もいます。いったい何を出せばいいのでしょう・・・。

引っ越しなどで転院してきた人が、結膜炎・ドライアイ・アレルギー、様々な点眼薬を4つも5つも使っていて、「どの症状が一番困っていますか?」と聞くと、「特に症状はないけど、いつの間にか増えていった。」なんていう人もいます。

白内障の手術後の炎症なんて、1?2ヶ月も経ったら消失するものますが、5年前に手術をした人が、当院にたまたまいらした時に、「なんで目薬をつかっているのですか?ゴロゴロするのですか?」と聞くと、「何だかわからないけど、もらえるものはもらっておいた。」というのもよくあります。自分の薬が何で出ているのかも不明のようです。「手術後だから。」なんていう人もいますが、手術後に5年も経って炎症があるのなら、それは手術失敗です・・・。
(もちろん、慢性結膜炎などで症状があれば薬は必要です。)

「ゴロゴロする、痛い、痒い、メヤニが出る。」
なにか症状があって、その症状を和らげるために薬を使うのは問題ありません。

問題は、必要のない薬を欲しがるのはやめましょう。という事です。

世の中に、
全く副作用のない薬はありません。
付けるほどよく見える・健康になる薬もありません。

薬は得られる効果(メリット)と、副作用のリスクや経費(デメリット)を天秤にかけて、メリットが大きければ使うべきものです。

例えば、殆どの点眼薬には防腐剤と呼ばれる添加物が入っています。防腐剤が入っていることで、開封後1ヶ月とか、中身が腐らないようになっています。この防腐剤はアレルギーを引き起こしたり、角膜にキズが付きやすくなるなどの副作用が知られています。長く使うほど、リスクが高まることも。
食べ物の食品添加物を気にする人は多いのに、目薬の添加物は気にならないのでしょうか?

日本の医学の歴史が好ましい方向には進まなかったせいでしょうか?
自己負担が少なくて済む、国民皆保険のせいでしょうか?
医療=薬という誤った考えが広がり、とにかく、薬をもらう事が医療を受けること。と勘違いをされている方が多いようです。
「薬は安いから。」という人がいますが、1割負担で薬をもらったら、残りの9割はみんなの税金が使われるのです。1割負担の人が薬局で2千円払ったら、それは2万円の薬です。2万円払う事に納得がいくほど、本当に必要な薬ですか?
そういうお薬の積み重ねが、日本の財政が悪くして、消費税を上げるのかもしれません。

のどにウィスルがつく場合を、一般的に風邪と呼びますが、
実は、インフルエンザ以外の、多くのウィルス感染症では薬は効きません。風邪の殆どは自然に治るのです。
抗生物質は細菌という種類のバイキンに効果があるのですが、例えば小児科で熱のあるお子さんに抗生物質を処方しないと、「あの医者は薬も出してくれない。」というクレームが起こったりします。
優秀な小児科の先生は、ウィルス感染による風邪には抗生物質が効かないことを踏まえて、薬によって副作用が起こるリスクや、抗生物質の多用によって起こる耐性菌(抗生物質が効きにくい菌)の発生を心配して、わざと薬を処方しないのです。

日本では、薬を沢山処方してくれる医者が良い医者として、人気が出るのです。
薬がなくても治る場合や、薬の効果が期待できない場合には処方をしない。必要最低限の投薬で治療する。という医学知識のほうが優秀だと、僕は思うのですが・・・。

欧米の患者様に、効果がハッキリしない薬を処方したら、「効果がないものを処方するなんて詐欺か?」と、怒られることが多いようですが、
日本人は、効果がはっきりしなくても、「気休めでもいいから薬が欲しい。」という人が沢山います。
その割に、実際に副作用が起こった場合には、薬害だとかいろいろ騒ぐ人が多いのも特徴ですが・・・。

自分の使っている薬は、何に効果があって、どんな副作用がありうるのか。
多少は知っておくべきではないでしょうか?

僕は、基本的に必要のない薬は出しません。と、強気でいたいのですが、
「薬も出さない、ケチな医者」と怒られるのも微妙なので、
「効果がないと分かっていても、とにかく何か欲しい。」という場合には、「自己責任でね。」と付けくわえて、結局処方をしてしまいます。
我ながら意思が弱いなぁ・・・。

もう一度。
その薬、本当に必要ですか?

(注:医師が診療の上、必要だとして処方している薬は、症状がなくても勝手に中断してはいけません。必要のない薬を、ただ無意味に欲しがるのはやめましょう。というお話です。)

点眼薬アレルギー

こんにちは。
午前の外来が55名、午後が20名、お昼休みは白内障手術が7件でした。

点眼薬アレルギー
どの薬もそうですが、絶対に安全な薬というものは存在しません。
どんな薬だって、薬との相性によっては、副作用が起こることがあり得るのです。ちょっとした風邪薬や、ダイエット薬などでも、数百万人に1人などでは命を落とすことがあります。

今日は、午前中に診察をした患者様が、「家に帰ってから目が腫れた。かゆい。」とのことで電話を頂き、先ほど診察すると、検査をした左目が充血し、メヤニが出て、まぶたが腫れていました。
かゆみもあり、検査で使用したミドリンPという薬の成分に対する、点眼薬の急性アレルギーのようです。

眼科では点眼薬を使って、瞳を大きく開いて(散瞳)、眼底検査をすることが多々あります。この患者様は、4月に黄斑円孔という病気の手術をした70歳の患者様で、視力も0.9?1.0程度にまで回復している患者様で、これまでも同様の検査を行っていたのですが、突如アレルギーが出るようになってしまったようです。
花粉症も昨年までなかった人が、急に発症するのと同じで、今まで大丈夫だったから、絶対にないという事はないのです。

薬は、考えられる副作用に比べて、効果が大きいと判断される場合に使われます。実は、点眼薬に対するアレルギーは、それほど珍しいものでなく、毎日外来をやっていれば、時々は起こってしまうことです。ただし、飲み薬などと違って、命にかかわったり、失明するようなことはありえず、今回のように、「かゆみ・充血・メヤニ」などが起こるのみで、基本的には炎症をおさえる目薬で数日で軽快します。
たまには、起こりうる副作用ですが、検査の重要性の方が大きいと考えられるので、一般的には検査・目薬が優先され、起こった場合には治療をしたり、今後は同じ目薬は使わない。という事になります。

重要なのは、何か予想外の症状が出た場合には、その時に診療をした担当医に、すぐに報告することです。今回は、手術も担当させて頂き経過も良好ですので、おそらく僕と、患者様の信頼関係が築かれており、すぐに教えてくれたのだと思います(思いたい)。
問題なのは、何か上手くいかなかった場合に、そのことを報告せずに、すぐに病院や医師を変更してしまうことです。僕たち医師は上手く行かなかったときほど、相談してほしいのです。
使った目薬が相性が悪かった時や、あまり良くならなかった時には、その経験を踏まえて、よりよい治療をしようと頑張ります。それでも駄目なら、さらに違う治療をと。そこが腕の見せ所!
自分の手に負えない場合には、他の専門医の先生に治療を依頼するために、紹介をすることだってあります。
患者様から他の病院を紹介してほしいと言われたら、きちんと経過やデータを記載して、紹介をすることで早く治ってほしいのです。きちんとした医療をやっていると自負があれば、紹介を嫌がるなんて医師は普通いません。むしろ、自分がどんな医療をしているか、ほかのDrに見てほしいものです。
自分の患者様が失明をしてしまったり、上手く治療ができないでいるのは、とっても嫌ですし、責任問題になってしまいますから。
(一般的に、世の中で認められている全ての治療を行っても、どうにもならない病気に関しては、希望がない限り、紹介をすることなどはありませんが)

もう一度。
薬が効かない。治らない。調子が悪い。そんな時は、(そんな時こそ)、出来るだけ教えて下さいね。

今日は、この後、茨城でご開業の先生と食事をします。
最近、いろいろ相談にのっていただく先生が増えていますが、たくさんのDrとお話をすると、様々な意見が聞けて面白い!勉強になります!

ジェネリック医薬品(後発医薬品)

ジェネリック医薬品という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
ある製薬会社が薬品を開発し、その薬の成分自体の物質特許を取得した場合、その後の10年間は他の会社は同様の薬を販売することが難しくなります。はじめに作った会社の薬を先発品と呼びます。

10年が経ち、特許が切れた場合に、他の製薬会社が同様の成分の薬を製造し、販売することがありますが、この、あとから発売される薬のことをジェネリック医薬品(後発医薬品)と呼びます。

ジェネリック医薬品の最大のメリット(良い点)は価格が安いことです。
薬を開発し、認可されるためには、研究開発費・動物実験・臨床治験など様々なコストや時間がかかりますが、ジェネリック医薬品はこれらの多くを省くことができるために、安い値段で製造・発売が可能になるからです。

こんなご時勢ですので、医療費の削減は国家としても重要なことです。使い方によってはジェネリック医薬品を選択することは、とてもよいことだと思います。ただし、なんでもジェネリックにすればよいというものではなく、特に点眼薬に関して注意するべき点を記載します。

?ジェネリックは全てが同じ薬ではありません
薬の特許には、薬の成分自体の物質特許以外にも製法特許や製造特許というものがあります。薬の成分・物質自体を溶液(お水)にどのように溶かすか、どのような溶液に溶かすかなどにも特許はあります。基本的には薬の成分自体が同じであれば、それは同じ薬(ジェネリック)として認められます。
多くの点眼薬には防腐剤(薬が傷まない・腐らないようにする添加物)などが含まれていますが、近年、防腐剤による角膜障害などの副作用の報告が数多くなされています。防腐剤にアレルギーがある方もいらっしゃいます。薬の成分自体が同じであれば、防腐剤の種類や濃度に違いがあっても、ジェネリックとして販売が可能なのです。

また、効果に関してですが、基本的に統計学上で±15%程度の効果があれば同等の薬として認められる事となっています。15%を大きいと思うか、小さいと思うかは、人それぞれだと思いますが全く同じと表現するのはどうでしょうか。多くの先発品は数多くの、そして長期間の検査をクリアしてやっと販売許可が下ります。臨床治験や市販後調査など、数千、数万、数十万人という莫大なデータを取得・調査する必要があります。
一方、薬によってですが、ジェネリックの調査は先発品との効果が同等かどうかを数十例とか、数百例集めるだけで認可される場合もあり、データの信頼性といった点でも全く同じという訳にはいかないと考えられます。溶かし方や、添加物が違えば、目の中にきちんと到達する薬の量が異なることも容易に推測できます。

?ジェネリック医薬品を選択したことを医師に伝えましょう!
決してジェネリックを批判している訳ではありません。
薬の費用が安いことは、患者様の経済的な負担が減りますし、国の財政としてもとても大きなメリットがあります。
僕も白内障手術などで使う粘弾性物質と呼ばれる薬などはジェネリックを使用しています。(人工のレンズを入れる場合に滑りを良くするのに使う薬です。レンズを入れた後は目の中を洗浄するために眼内には残りません)
また、ドライアイに使用するヒアルロン酸製剤と呼ばれる薬では、付け心地がよいとの評判で、一部の患者様には始めからティアバランスと呼ばれるジェネリック医薬品の目薬を処方することもあります。(目薬には相性がり、全員にいいと言っているわけではありません)

開業医様などで薬を院内で処方する場合には、その医師が安全性などについて検討した結果で、採用・処方しているのだと思いますのが、現在、多くの病院では院外処方といって、処方箋を発行し、あとは患者様が好きな薬局で薬を購入することになっています。多くの医師は先発品をイメージして薬の処方箋を出しますが、患者様が薬局でジェネリックに変えたことは医師には伝わらないこともあります。

上述したように、ジェネリック医薬品は薬を溶かすお水や、防腐剤の種類、濃度など、全てが一緒ではありません。点眼薬では、このような違いによって、点眼後の刺激感(しみる)や、防腐剤に対するアレルギーなどにも違いが起こることがあります。
また、緑内障では眼圧を1とか2とか、非常に微妙なラインでコントロールすることもあり、15%という効果の値の差でも、医師の考える治療法に影響することがあります。

ジェネリック医薬品を選択されること自体には問題はありませんが、一度、医師にお伝え頂けると良いと考えます。

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 鉾田市)

点眼薬(目薬)について

今日は8名の患者様の手術を行いました。
・白内障手術 8件
・眼瞼下垂症手術 2件
・眼内レンズ交換 1件

レンズ交換は、数年前に他院様で縫いつけたレンズが脱臼して(ズレて)しまい、古いレンズを切断し摘出してから、新しいレンズを縫いつける手術で30分以上と少し時間がかかりました。

今日は点眼薬(目薬)の使用法について記載します。

点眼薬

点眼薬は、みなさんご存じのとおり、目の中に入れるお薬です。
基本的に液体で、容器から薬を押し出して、目の中に入れます。
(最近は目の中に留まる時間を長くするために、ゲル状の薬などもありますが)

?点眼の仕方
一般的には、片手で点眼容器を持ち、反対の手で、下まぶたを引っ張ります(アッカンベー)。そこに、液体を1滴垂らします。
ただし、手術直後などの特殊な時期を除いて、目の中に入りさえすればやり方は何でも大丈夫です。親指と人さし指でまぶたを大きく開いて行う方や、点眼容器に取り付けてまぶたを開く器械(薬局や100円ショップなどにあります)を使う方など様々です。

?点眼の量
1回1滴で十分です。それ以上使用しても、まぶたの外に溢れてしまうだけです。まぶたに点眼薬がついたままにしておくと、皮膚がただれるなどの副作用が起こることがあります。沢山つけるほど良く効くという事は全くありません。

?点眼後
もっとも良い効果を出したい場合は、点眼後に目がしらを指で数分押えて、目をつぶっています。こうすることで、薬液が目の中に留まる時間が長くなります。ただし、そのような事をしなくても、それほど効果が落ちるわけではありませんので、あまり気にしなくても良いかと思います。(緑内障など、そのようにした方がよいと言われている方は守って下さい。)

?複数の点眼薬を使用する場合
目の表面で薬液が混ざると、組み合わせによっては結晶という塊が出来てしまったり、また、後から付けた薬で、前の薬が流されてしまうために、効果が出にくくなってしまう事があります。
複数の点眼薬を使用する場合は、点眼後に5分から10分程度の間をあけて、次の点眼薬を使用するようにしましょう。間をあけることで、先につけた点眼薬が完全に吸収されてから、次の点眼薬を投与することができます。
最後につける薬の方が、最終的に目の中に残るため、点眼の順番は大事なものほど後にするとよいでしょう。
その他、液状の薬⇒懸濁液⇒ゲル製剤などの順番でつける方が良いとされていますが、ある程度の時間をあけていれば、順番はそれほど気にしなくて大丈夫です。(緑内障などで、精密な指示を受けている場合は、守るようにしましょう)

?点眼薬の保存方法
一番大事なのは、ほとんどの点眼薬は、開封後1カ月で処分することです。食べ物には保存料と呼ばれる添加物が入ることで、賞味期限を調節しています。ほとんどの点眼薬にも防腐剤という添加物が入っており、ある程度の期間は腐らないように(菌が繁殖しないように)なっていますが、1ヶ月以上は保障されていません(すべてが1ヶ月ではなく、一部、防腐剤がはいっておらず1回使い切りなどの点眼薬もあります)。また、点眼薬は温度や、酸化(開封後に酸素と触れあう)、光線などによって、効力がなくなっていきます。開封後、長期間過ぎたものは、効力がないうえに、もしも内部で菌が繁殖していた場合には感染症の原因となってしまうことさえあります。賞味期限切れの牛乳は飲みたくないですよね?目薬だって同じです。古くなった点眼薬は使用しない。気をつけましょう。
また、薬の種類によっては冷蔵庫で保管するものや、遮光の袋に入れて光を当てないようにする必要があります。そのように言われた薬は、保管方法を守るようにしましょう。

?自分の薬は自分だけのもの
家族内に結膜炎の方がおり、同じメヤニだから、同じ薬を使ってしまおう!という方がいらっしゃいます。点眼容器についた菌をうつし合ったりする原因となるので絶対にやめましょう。また、点眼薬との相性が悪く、万が一副作用が起こった場合に、保障などが受けられなくなる可能性もあります。

?調子が悪かったら、医師に相談を!
点眼薬に限った事ではありませんが、相性の問題などで薬に対してアレルギーがある場合や、残念ながら薬の副作用が出てしまう場合もあります。また、例えば感染性の結膜炎で、細菌を倒すために抗生剤の薬を出しても、菌の種類によっては薬が効きにくいなどで、なかなか治らないこともあります。
薬をつけてるのに治らない、悪化する。このような場合は必ず医師に教えて下さい。薬を勝手にやめたり、通院しなくなってしまうのはもったいないです。医師は治らなかった場合に、次に行う治療を必ず考えていますので。
また、「薬をつけるとしみる」などの理由で、勝手に点眼薬を中断してしまう方がいらっしゃいますが、特に緑内障などでは、少しくらいしみることがあっても、失明を防ぐためには仕方ない。というのがあります。あまりに辛い場合には、点眼薬の種類を変えたり、別の治療を相談することができます。勝手に薬を辞める前に必ず医師に相談してください。

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 鉾田市)