今日は県外から、外来や手術見学の先生に来て頂きました。
午後は以下の手術を行いました。
・眼瞼下垂症 2件(CO2レーザー:ミュラー筋タッキング)
・白内障手術 9件
・網膜硝子体手術(茎離断)3件
(黄斑前膜1件、動脈瘤1件、BRVO後の増殖網膜症1件)
あまり難しい手術はなく、5時前に終わって、夜は見学に来てくれた先生と食事ができました。
時間も出来たので、久しぶりですが病気のブログを進めます。
視神経炎? 視神経とは
普段の診療でみる眼科の病気というと、ほとんどが眼球の内部、もしくは眼球の表面上の問題です。
(中が濁っているとか、網膜が破れているとか、出血している。または、眼球の表面が乾いている、ゴミが入った、充血して目ヤニが出る。などなど)
表面上の問題は、スリットランプで拡大して診察すれば、簡単に把握できますし、眼球の内部の問題も、瞳孔を開いて、レンズでのぞきこめば殆どの病気はすぐに診断がついてしまいます。
ところが、「目が見えなくなった。」と、患者さんが来院された場合に、どんなに目の表面や、目の内部をのぞきこんでも、全く異常がない場合も稀にはあるのです。
「物が見える」という事象は、実は眼球だけで成り立っているわけではありません。眼球は光を感じ取る、ただのアンテナの役割で、実際に物を見て認識しているのは脳なのです。
「目が見えない=目の中に異常がある」と考える人が多いかと思いますが、実は、眼球に全く異常がなくても、脳が機能しなければ物は見えないのです。例えば、後頭部の脳梗塞で、視覚野が完全にダメになってしまうと、目の中はキレイで問題のない状態でも、失明してしまうのです。
(目玉だけを取り出して、物を見ることができるのは、ゲゲゲの鬼太郎のお父さんだけですね。)
これは、眼球から伸びた神経が、脳の後方の視覚野(しかくや)と呼ばれる部位までつながっているイメージ図です。(黄色矢印の先が視覚野です)
視神経(ししんけい)
視神経は、眼球内で光を感じ取った網膜(カメラのフィルム)が、束になって脳へ伸びていく、橋渡しの部分です。上のイメージ図の赤矢印の部位が視神経です。両眼の視神経は、頭の中の視交叉(しこうさ)と呼ばれる部分で混ざり合って、その後再度分離して、後頭部の視覚野に伸びていきます。
・視交叉よりも後方、後頭部の脳側に異常があると、両眼から伸びる神経が含まれているため、基本的には両眼の目の見え方に同じような障害をきたします。
・視交叉よりも前方、眼球との間、つまり視神経に異常があると、異常がある方のみの見え方に障害をきたします。
視神経や視交差、脳などの病気は、頭の内部の問題であり、通常の外来診療で、スリットランプやレンズを使っても、のぞきこむことはできません。
視神経の病気を疑った場合には、視力や視野などの検査に異常がないか?左右差がないか?対光反射に左右差がないか?などをよく観察し、MRIなどの検査を行っていく必要があります。
赤でくくった部位が視神経です。この中に、なんと約100万本の神経線維が存在しているんですって。
外科的な手術に比べると、複雑で難しい分野なのですが、僕は個人的に、眼球内に異常が見当たらない場合に、視神経に異常があるのか?それとも脳?脳のどのあたりが悪いのか?などを、いろいろ考えながら、診療を勧めるのが結構好きなのです。
続きはまた後日。最後までお読み頂き、ありがとうございました。