円錐角膜? 病態と原因

この数日は、眼科医の先生方などに食事に誘って頂くことが多く、ちょっとブログをサボってしまいました。有名な緑内障の先生と初めてご一緒させて頂き、とても勉強になりました。日々の診療で生かしていきたいなと思います。いろいろな先生と話す機会があると刺激になります。

さて、目の事を書こうかな。
昨日の外来でみた症例でも。
円錐角膜(えんすいかくまく)
病態と原因

眼球は、黒目(角膜)から光が入って、目の奥のフィルム(網膜)に光が当たると物が見える、カメラのような構造をしています。入ってきた光が、目の中で進行方向を変え(屈折)、ちょうど網膜上で像を結ぶ(ピントを合わせる)ことができれば、物が良く見えるのですが、この、光を曲げる(屈折させる)役割を担っているのが、角膜と水晶体(レンズ)になります。
近くをみたり、遠くをみたり、見る距離によって形を変えて、ピントを合わせる力を持っているのは水晶体ですが、実は、光を曲げる力(屈折力)でみると、角膜は水晶体の約2倍、光を曲げる力が強いのです。
レーシックでは、角膜を削って形を変え、屈折力を弱くすることで近視を治したりします。

角膜は本来、キレイな半球状の構造ですが、円錐角膜は角膜の先がとんがって、円錐状になってしまう疾患です。


通常の角膜(赤矢印)が、キレイに光を屈折するとすると、


円錐角膜の患者様では、角膜の先がとがって歪んでしまうため、角膜の部位によって、不規則に光が侵入し、乱視が重度にひどくなったり、物が何重にも見えてしまうようになります。

疫学
およそ千人に一人とされていますが、報告により様々です。
昔は数万人に1人。なんて言われていましたが、近年は診断機器の開発が進み、今までは「ただの乱視」と言われていたような人が、円錐角膜と診断されることが多くなったようです。眼科医の僕にとっても、「稀にみる珍しい病気」ではなく、「ちょこちょこ出会うよくある病気」という印象です。女性よりは男性に多い疾患で、思春期頃に男の子が発症。というのが一番多いケースです。

原因
実は、明確な原因はまだ分かっていません
円錐角膜が多い家系が知られていますが、原因遺伝子も特定されていませんし、そもそも遺伝ではない孤発例の方がよほど多くあります。
ダウン症候群の方や、アトピーの方に合併することがよくありますが、その原因も不明です。(アトピーでよく目を掻いているから?との推測もありますが、化学的な解明はされていません。)

何らかの原因で、角膜の中央部のやや下方を頂点に、角膜が薄く・弱くなってしまいます。眼球内には房水と言う水が循環して、眼球を内側から膨らませていますが、この薄く・弱くなった部位は、他の角膜に比べて、内側からの圧力に弱いため、その部位が突出していきます


円錐角膜に細いスジ状の光を当てて撮影した写真です。写真の中央部、縦に光る白い線が角膜ですが、キレイな弧ではなく少しいびつになっていたり、角膜の厚みが一定化していないのが分かるでしょうか?

緑内障? 治療:SLTレーザー

今日の午後は以下の手術を行いました。
・翼状片手術 1件
・白内障手術 10件
・斜視手術 1件(甲状腺眼症:眼筋移動)
・緑内障手術 1件(トラベクレクトミー:血管新生緑内障)
・網膜硝子体手術(茎離断)3件
(黄斑前膜1件、糖尿病網膜症1件、裂孔原性網膜剥離1件)
つくば市の眼科様から緊急で網膜剥離の紹介があり、予定より件数が伸びたため、全部終わると18時で、ちょっと遅くなってしまいました。スタッフのみなさんご苦労様でした。手術は無事に終わっています。

緑内障
治療:SLTレーザー

緑内障の治療は眼圧を下げて視神経が押しつぶされることを止めよう。というものです。失った視野や視力が元に戻る方法はまだありません。

眼圧を下げるには、目の中を循環する房水(ぼうすい)の産生量を減らすか、排出量を増やすかになります。治療法に関しては、緑内障?にも書きましたが、点眼薬、レーザー、手術などに分類されます。
http://blog.sannoudaiganka.jp/?cid=4931

今日はSLTレーザーについて記載しようと思います。

まず、房水は目の中の隅角(ぐうかく)という出口から排出されていきます。

図の赤矢印の先が隅角になります。
緑内障の患者様では、この出口の構造に問題があって、房水の排出が悪いことがあります。SLTレーザーは、隅角に特殊なレーザー光線を照射することで、隅角からの房水の排出を増加させ、眼圧を下げる治療法です。

隅角からの房水の排出を邪魔する、色素細胞に影響することで、房水の排出を増加させるのではないか?と推測されていますが、別の説を唱える先生もいらっしゃり、明確な原理は不明です。

治療方法
点眼薬の麻酔で施行可能で、痛みは殆どありません。
・片目の治療で、隅角に約120回レーザーを照射します。治療時間は5?10分
外来治療で、当日から入浴や洗顔も可能です。生活の制限はありません
・炎症を抑える目薬を、治療後1週間程度使用します。
・副作用のチェックや、効果の判定を、1週間後、1ヶ月後に行います。

SLTの良い点
・レーザーが良く効いた人は、点眼薬をつけなくてよくなったり、点眼薬の数を減らすことができます。
効果が約1年間持続します。効果が弱くなってきた時には何回でも再治療が可能です。

ここまで書くと、とってもいい治療!なんて思いますよね??
でも、問題点もあるんです。

SLTの悪い点
費用が高い。(1割負担で片眼9000円弱、3割負担で片眼27000円弱)
・人によって効果に差があります。
 良く効く人では、治療前35の眼圧が10とかにまで下がることがあります。
 逆に、全く効果が出ない人も20%くらいあります
・一過性眼圧上昇:治療後の炎症などから、眼圧が一過性に上昇することがあり、きちんと検診が必要です。(稀ですし、対処法があるので過度な心配はいりません。)

目立って副作用がなく、点眼薬から開放されると思うと、ぜひチャレンジしたい治療法ですが、結構な金額を払って、もしも無効だったらと思うと、実は、僕は第一選択ではお勧めしていません。
(病院経営としては、数分で終わるSLTレーザーは、緑内障の治療法の中では、最も儲かる治療法でしょう。でも、毎日の目薬が可能で、眼圧下降が得られる症例では、今の医療情勢では、点眼薬による治療が第一選択ではないかと思います。点眼薬1剤を1年間購入しても、片眼のSLTレーザーよりも余程安価です。両眼SLTレーザーではかなり差がでます。)

僕がSLTをお勧めする場合は、以下のような場合です。
?点眼薬を使用しているのに、眼圧下降が十分に得られない症例
?仕事が不規則などで、点眼薬を規則正しく使用できない症例
?点眼薬への副作用があり、点眼薬が使用できない症例
?点眼が面倒という主張で、かつ、経済的に恵まれている方
?水晶体嚢性緑内障(PE)、色素緑内障、ステロイド緑内障など、高い効果を望めそうな方

保険診療って、案外面倒です。
もしも、SLTレーザーが今の3分の1位の費用で可能であったら、おそらく3倍以上の患者様の治療に用いられているでしょう。
価値観や経済力は、人それぞれですが、片眼3000円で、目薬をつけなくてよくなるかも。となったら、治療希望者も沢山いそうですよね??

茨城県には10台弱のSLTがあるのかな?と思いますが、
もちろん当院にもあって、毎月数名の患者様の治療をしています。
上記???に当たる方で、治療のご希望があれば、受診してみてください。

サッチング:芝生

今日は重症の救急患者様もなく、のんびりとした春分の日でした。
暑いも寒いも彼岸まで。といいますが、今日も少し暖かくなってきましたね[:花:]
午後には、しばらく放置していた芝生のお手入れをしてみました。

サッチング
まず、「サッチ」についてですが、芝生の枯れた葉などが地表に堆積したものを呼ぶらしいです。サッチが積もると、水はけが悪くなったり、地表への日当たりが悪くなったり、芝生の成長環境が阻害され、病原菌の繁殖リスクも上昇してしまうようです。自分の老廃物?とはいえ、芝生にとって、サッチは良いものではないようですね。
この、サッチを取り除くのがサッチングです。

芝刈りをしたら、熊手などで、その都度しっかりと掻きだして、サッチのもとになる葉を除いて行くのが理想的のようですが、毎回は大変。ついつい溜まってしまいます。
3月のこの時期には、茶色く枯れた芝生も多いので、年に1回くらい、一気に掻きだそうと、かれこれ3年間、毎年やっています。


赤矢印が芝を刈るリール刃、青が交換したサッチを掻きだすサッチング刃です。


左が作業前、真ん中は芝刈り機で1回通ったあとです。中央に縦に見える色が濃い部分がサッチを掻きだしたあとです。右は作業後です。


拡大ですが、左は作業前、真中は作業後です。サッチがなくなり、下の土がしっかり見えています。写真では分かりにくいのですが、少し緑の葉も出てきています。右の写真は芝刈り機に溜まった、枯れ芝やサッチです。


40Lのゴミ袋が5袋いっぱいになりました。
芝生、今年もキレイに育つといいな。

先ほど、ニュース番組の特集で、「治る!緑内障」とのテロップが張られたテレビ番組が放送されていました。気になったので、一応見てみましたが、微妙に間違っていることが多々あり・・・。撮影を受けた眼科先生方の意思と、テレビの放送内容に、きっと差があるのでしょうが、放送前に確認とかはないのでしょうか?
テレビの医師も言っていましたが、緑内障は治る病気ではなく、進行を極力遅くすることが目標です。
主にSLTレーザーと、トラベクトームを使用した手術に関して放送されていました。12月以降、緑内障のブログが止まっていましたが、これらの治療についてもブログを書いて行こうと思います。

瞳孔膜遺残

今日は以下の手術を行いました。
・結膜腫瘍切除 1件
・白内障手術 7件
・網膜硝子体手術 1件(硝子体出血)
問題なく終わりました。

今日の手術症例から1例お話を。
瞳孔膜遺残(どうこうまくいざん)
瞳孔とは、茶目の中心部の黒目の部分で、茶色い虹彩によって形作られる、丸い穴の事を言います。明るい場所では瞳孔が小さくなり、目の中に入る光を減らしたり、暗い場所では瞳孔を大きくして、目の中に多くの光を取り入れようとしたりと、瞳孔には目の中に入る光の量をコントロールする役割があります。
赤ちゃんが母親のお腹の中で、眼球を形成していく過程では、実は瞳孔は丸い穴ではんなく、血管の組織に富んだ膜で覆われ、ふさがっています。この血管に富んだ膜のことを瞳孔膜と呼び、瞳孔膜は水晶体に栄養を与えるなどして、眼球の形成に役立っています
瞳孔膜は通常は出生までに、委縮して消失していくのですが、何らかの間違いで、瞳孔膜が残ってしまう異常を瞳孔膜遺残といいます。

本日の症例の写真です。
光が入る道筋に、光をさえぎるものがあるので、なんとなく見にくいだろうな?というように思いますが、実は瞳孔膜遺残のほとんどは症状がありません。瞳孔膜遺残は、世の中でもっとも多い先天異常(生まれつきの異常)の一つですが、弱視等の問題を起こすことはほとんどなく、稀にみる超重症例や、たまたま光の侵入経路の中心部を邪魔するような膜が残った場合のみに、問題となります。

外来ではちょこちょこ目にする異常ですが、生まれたばかりの小児にみつけた場合では、多くの場合に、生後数ヶ月とか、1?2年くらいうすると、勝手に小さくなってしまいます。
まれですが、実際に瞳孔の中心部を瞳孔膜が覆い、視力を阻害してしまう場合があります。この場合には、瞳孔を開く目薬等を使用して、瞳孔膜遺残が瞳孔の中心部を避けるようにする治療を行うことがあります。

今日の症例ですが、左が何もしない時、右が瞳孔を開いた場合です。瞳孔を開くことによって光が通る道筋に変化が出ることが分かりますか?
また、稀ですが、YAGレーザーという特殊な光線で、瞳孔膜の一部を弾き飛ばして、瞳孔膜を除去してしまうという治療を行う場合もあります。

なんて、治療について書いてみましたが、僕の人生で瞳孔膜遺残の症例は数え切れないほどみていますが、点眼薬で治療したのは1例、YAGレーザも1例のみで、ほとんどが無治療で済んでしまうようです。

超重症例では、手術で切除するのでしょうが、小児期に手術を必要とした症例にはまだ出会ったことがありません。

今日の患者様は、白内障の手術目的に、紹介となった患者様です。
瞳孔膜の手術というよりは、白内障のついでに切除してしまったのですが、

こんな感じで、瞳孔を開いた後に、ハサミで瞳孔膜をちょきちょき切ってしまいます。

その後は、通常通りの白内障手術が可能です。

明日は祝日ですが、手術患者様のみは診察があります。きっと今日の患者様も視力が上がって喜んでくれるはず。期待大です!!

石岡ホルモン

最近、重症のかたの紹介が多かったせいか、今日は日曜日ですが、まだ5名の入院患者様が残っていました。大きな問題はなく、ちょっとした診察だけですみましたが、なかなか忙しい毎日です。でも、明日頑張れば、明後日は祝日ですね!

久しぶりに石岡市の飲食店について。
石岡ホルモン

ホルモンって、好きな人、嫌いな人がいると思いますが、肉食の僕は大好きです。「脂が乗ってるほどよい。」みたいな感じなので、メタボが心配ですが・・・。

この白ホルモンは、そんな僕の好みにぴったりで、脂がのりにのっています[:ときめき:]臭みもなく、とってもおいしいですよ!

このホルモン鍋も大好きです。

クリニックから国道6号にでてすぐ、車で1?2分くらいです。
できて1?2年くらいかな?(間違っていたらすみません。もっと新しいかも。)
店内もキレイで、子供にも優しい、とってもいいお店。お勧めです。

メガネ・眼鏡処方箋

午前中は小美玉で外来でした。外来にきた女性の相談で、愛犬のパグが獣医さんにかかっていて、失明しそうだと言われていると。僕に診察をしてほしそうな雰囲気でしたが、病院に犬を入れることは僕の判断では・・・。気になりますが・・・。やり過ぎな気もするし・・・迷う。
昨日のブロブに書いた網膜剥離で紹介の患者様には、面識もないまま夜のうちに電話で説明をして、小美玉から帰り次第、挨拶も後回しで、お昼休みに手術をする事が出来ました。少しでも早く網膜をくっつけてあげることができて、こちらは良かったかなと。

メガネ・眼鏡処方箋
今日はメガネに関する微妙な話です。一部の眼科の先生には怒られるかもしれませんが・・・。
昨日も書きましたが、特殊な例を除いて、メガネには病気を治したり予防する効果はありません。メガネをかけることで、かけている間の視力や見え方を、一時的に改善する補助具の役割があるだけです。
このメガネを作るときに、必要だと言われているのが、眼科で発行される眼鏡処方箋です。

この問題は、政治や選挙にまで多少影響するのですが、
少なからず、眼科医vs眼鏡店という対立があるようです。

?眼科医側に多い意見
・メガネ・眼鏡の作成に関しては、すべて眼科医が関わるべきで、眼鏡店で勝手に作ることは違法である。
・眼鏡店で作成するメガネは、どちらかと言うと、過矯正と言われるメガネになる比率が高いと言われ、眼精疲労の元となるリスクが高い。
・眼鏡店でメガネを作成する場合に、メガネをかけても視力の改善が乏しい場合に、眼科への受診を勧めることなく、眼鏡のみ作成し、病気の早期発見・早期治療の機会を奪っている場合がある。
・眼鏡店の眼鏡作成能力は、一定化しておらず、上手く作れていない可能性がある。

?眼眼鏡側に多い意見
・既成事実として、現在も処方箋なしで多数の眼鏡作成が行われている。
・法律上、規制があるのは医業としてのみであり、眼鏡の処方くらいは、たいして医業とはいえず、特に資格は不要である。
・痩せるために、エステにきた人に、肥満だからと病院への通院を促す必要があるのか?目が悪い人がきたら、眼鏡店は眼科への受診を勧めないと罪なのか?

注)上記は、そういった意見があるというだけで、全ての眼科医や眼鏡店に当てはまるわけではありません。あくまで、よく耳にする例としてです。

これを踏まえて、僕個人としての意見を書いてみたいと思います。(あくまで個人の意見です。)
・7?8歳までの小児は、視力・視機能の形成に非常に重要な時期であり、間違った(その子にあわない)メガネをかけることで、弱視という病態に陥ることがあります。弱視とは、将来メガネをかけても視力が悪い。運転免許証などが取れなくなる可能性がある事態で、非常に大きな問題です。また、小児は調節といって、目に変に力が入ったりして、上手く検査ができないことがあり、目薬を使った特殊な検査が必要なることが多々あります。なので、10歳未満の子供に関しては、必ず眼科で検査をして、処方箋に基づいて処方するべきだと思います。
・成人に関してですが、先日も記載しましたが、実はメガネがあわないからといって、病気になったり、近視の度数が進むなどという事態に落ちいるということはありません。(仮性近視や一過性の屈折性近視を除く)
もちろん、過書矯正などの合っていないメガネを書ければ、眼痛・頭痛などの眼精疲労は起こりえます。なので、好ましいことではありませんが、成人の場合には眼精疲労が起こってツライから。と、それから眼科へ受診しても手遅れになることはありません。

もちろん、眼鏡を作る全ての場合で、眼科ですみずみ検査して、処方箋を書くことが、目のためには一番いいに決まっています。ただ、国の財政が厳しかったり、眼科医や医師不足が嘆かわれている現代で、これまで眼鏡店で行ってきたすべての眼鏡処方を眼科医のみが行う事になったら、大変な時間とお金の負担がかかることは間違いありません。眼鏡処方の全てに眼科での検査を義務付けるよりは、少子化対策に税金を割くほうが重要ではないかと、僕は思います。
例えば、1年に一回、強制的に、全ての国民の精密人間ドックを行えば、日本人の平均寿命は延びるかも知れません。でも、それには医師の数も不足していますし、かかる費用も莫大になるので、現実的ではないですよね?
どこまでこだわるかは考え方次第ですが、成人に関しては、自分の考えで、自分が必要と思えば眼科にかかって下さい。というのでも問題ないかと思います。
お金や時間をかければ、一般的にはいいものにめぐりあります。ただ、どこまでお金や時間をかけるのかは、個人の自由ですよ。といった具合です。

ここまで書くと、眼鏡店の意見側に近いのかなとも思いますが、眼鏡店側の意見をお持ちの方に、お願いもあります。
眼科での検査なしで、眼鏡店のみでメガネの処方をする場合に、患者様が歪みを訴えたり、メガネをかけても1.0見えないなど、もしかしたら目の病気の可能性がある場合には、必ず眼科への受診をすすめて頂きたいのです。
当院の近隣を含めて、良心的な眼鏡店は、すでにそうしているかと思いますが、残念がら、稀にはあまりに腹立たしいケースに出会う事もあります。
例えば、メガネをかけない裸眼視力が0.1で、眼鏡店でメガネを購入して矯正視力が0.3まで上昇したが、結局見えにくいから眼科を受診。そして病気が見つかったが、既に手遅れ。といったケースです。
メガネをかけても0.3なんて、重症か軽症化は別として、何らかの病気があるに決まっています。病気が予想できるのに、メガネを売ることが優先されて、眼科への受診を勧めないというのは、罪なるのかはどうかとして、倫理上、人としてどうかと思います。

このような眼科医vs眼鏡店という図式は、あまり良いものではありません。
本来、眼科医と眼鏡店は助け合って協力関係でいるのが望ましいかと思います。

まとめ(僕が個人的に思う眼鏡処方に関しての考えです)
?10歳未満の小児のメガネは眼科で検査をするべき。
?成人のメガネ作成は、眼鏡店を選ぶか、眼科での処方箋を選ぶかは、本人の自由。ただし、作成前の検査で矯正1.0の視力が出ないなど、目の病気や、何らかの異常の可能性があれば、眼科での検査を受けるべき。あきらかに異常が疑われるのに、眼科受診を勧めない眼鏡店が、もしも存在した場合には、罰則を与えるなどの法整備を行うべき。

以上が、眼科医、栗原としての個人的な意見です。

一般的には、無資格者よりも、眼科医や眼鏡士のほうが眼鏡の知識は詳しいと思います。そうはいっても役職に限らず、個人の能力は様々です。
ものすごい勉強をして、眼科医よりもメガネに詳しい無資格者だっているかもしれません。なので、眼科で処方したメガネよりも、無資格者の処方したメガネのほうが相性がいい。なんてことも絶対にないとは言えません(少ないと思いたいですが)。
僕も眼科医としては、自分はメガネの事を勉強している方だと思っているのですが、それよりなにより、当院には優秀なORT(視能訓練士)と、優秀な認定眼鏡士が在籍しています。通常のメガネだけでなく、遮光眼鏡、プリズムメガネ、拡大鏡、ローヴィジョンエイドなど、僕よりも詳しいスタッフが頑張っていくれています。僕は彼らを信頼、尊敬しています。眼鏡処方は特殊枠で月曜日や金曜日に行っているので、ご興味があればお電話にはお問い合わせください。

眼鏡店で処方を受けることは全く問題ありませんが、メガネをかけても見にくい。と言う場合には、一度眼科を受診してみることをお勧めします。

メガネは必要ですか?メガネはあっていますか?

今日は午前の外来が72名、午後は以下の手術を行いました。
・翼状片手術 1件
・白内障手術 12件
・網膜硝子体手術(茎離断)3件
(黄斑円孔1件、黄斑牽引症候群1件、糖尿病硝子体出血+血管新生緑内障1件)
みなさん無事に終わりました。

昨日もお昼休みに網膜剥離の手術をしたばかりですが、先ほど連絡があり、明日も網膜剥離の紹介があるようです。

残念ながら中心部(黄斑)まで剥がれてしまっているようです。できるだけ早い手術が望ましいので、明日、外来の混み具合によりますが、お昼休みに手術が出来るといいな。
かかりつけの先生からインターネットで、上の写真を含めて、様々なデータを頂けました。まだ患者様にはお会いしていませんが、来院前から治療や手術方法のプランをたてることができ、とても役立ちます。ネットの発達により、専門医に相談するなど、遠隔地医療も増えてくるでしょうし、医療の形態はどんどん変わっていくのでしょうね。楽しみです。

先日、メガネについてブログを書いてみたのですが、今日はメガネに関してよく受ける質問の説明を。
私はメガネは必要ですか?
私のメガネはあっていますか?

外来をやっていると、一週間に数回は質問されます。
答えはどうかというと「知らない。自分で決めて。」です。
もちろん、このままの言葉では患者様に怒こられてしまうので、一通り説明して、別の言い回しをしますが、
基本的には、メガネが必要かどうかは、本人がよりよく見えたいかどうかによります。
注)7?8才以下の小児の場合は、必要な時期に必要なメガネをかけないと、弱視などになってしまうリスクがあります。本日の記載は成人に関してです。

子供の弱視や、斜視などで使う、特殊な治療用メガネを除いて、
メガネは、ピント(光の焦点)を網膜に合わせるために使用する、物を見やすくするための補助具に過ぎません。
誰でもメガネをかけることで、かけない時よりも物が見やすくなりますが、メガネをかけても、病気を治したり、病気を予防する効果はありません
ですので、成人の方が、メガネをかける必要があるかどうかは、その方が裸眼の見え方に不自由があり、それをメガネで改善したいと思えば、かければいいですよ。という具合です。

たとえば、「ボヤけても、なんとなく見えればいい。」なんて思っている、おおらか・大雑把な性格の人は、裸眼の視力が0.1しかなくても、メガネなんか要らない。と考える場合があります。
逆に、「遠くの信号機の光が少しにじむだけでも許せない。」なんて思っている、繊細・ナイーブ・神経質な人は、裸眼の視力が1.0あっても、それを1.5にするためのメガネを欲しがる場合もあります。
医学的、眼科的な立場からすると、どちらも間違いではありません。その人にとって必要ならメガネをかければいいのです。
裸眼の視力が0.2しかないのに、メガネなしで運転している。なんていう人もいますが、これも、倫理上は好ましくないですが、それによって目が悪くなるということはありません。(個人的には、人を傷つけるリスクがありますし、法律は守るべきだと思いますが)

次に、このメガネはあっていますか?の質問ですが、
これも、極論ですが、その人次第です。
遠くを見るとき、近くを見るとき、できるだけ細かいものまで、しっかりと見えるようなメガネを合わせることを、完全矯正と呼びますが、強いメガネなんて表現のほうが聞いたことがあるでしょうか?
完全矯正・強いメガネをかけることで、その目的の距離のものは、最もはっきりと見えるようになりますが、それ以外の距離ではピントがあいにくくなったり、疲れやすくなったり、眼痛や頭痛の原因になることもあります。(いわゆる眼精疲労)
ただし、疲れたからといって、目が悪くなるわけでも、正式な意味で近視などの度数が進行するわけでも(仮性近視・屈折性近視除く)、目の病気になるわけでもありません。
「少し疲れやすくても、よく見えるほうがいい。」と思う人もいれば、
「私は疲れやすいから、弱いメガネがいい。」と思う人もいます。

これも、どちらが間違い、どちらがあっているというものではなく、好きなほうを選べばいいのです。

メガネが必要か?メガネがあっているか?
それは患者様自身で考えることですが、一般の方が、
ピント・焦点・強いメガネ・弱いメガネ・完全矯正・眼精疲労などなど、
聞きなれない言葉で言われたら、混乱してしまう人もいるかもしれません。
なので、短くまとめると「知らない。自分で決めて。」という答えになりますが、実際には、年齢や視力、屈折異常の度数の他に、仕事の内容、どの距離を優先的に見たいのか、今のメガネで眼精疲労があるのかないのか、問診でいろいろ教えていただいて、メガネを作る希望があれば、そのお手伝い、アドバイスをさせていただくのが僕たちの仕事です。

まとめ
特殊な治療用メガネを除き、通常の場合では、メガネは病気を予防したり、近視の進行を止めたり、病気を治したりする効果はなく、
かけることで、かけている間の視力や見え方を、一時的に改善する補助具の働きをするだけです。メガネをかけないから目が悪くなることはありません。メガネが必要か、どのようなメガネがいいのか?は、基本的にはその人の好みです。

介護老人保健施設 あいあい 熱帯魚

今日は以下の手術を行いました。
・白内障手術 5件
・眼瞼下垂手術 3件(炭酸ガスレーザー:ミュラー筋タッキング)
・緑内障手術 2件(流出路再建)
・網膜硝子体手術(茎離断) 1件(増殖糖尿病網膜症)

みなさん無事に終わりました。
糖尿病の方は他院様の紹介でいらした、30代の患者様です。重症例でしたがキレイにカサブタが除去できました!
月曜は夕方から外来ですが、件数が多いので、スタッフがお昼休みを削って手術をさせてくれました。それでも、さすがに無理があったようで、夕方の外来開始が15分くらい遅れてしまいました。お待たせした患者様には申し訳ありませんでした。
夕方に網膜剥離の紹介がいらっしゃいました。まだ初期の段階なので明日の昼に手術の予定となりました。最近は発見後すぐに連絡・紹介をしてくれる先生が増えたので、手術後の成績がよくなって、視力1.0を保てることが多いようです。ありがたいです。

今日は、グループ施設の紹介です。
介護老人保健施設 あいあい
まだまだ足りないと言われていますが、主に、ご高齢の方が入所するための施設が日本中にはいろいろあります。
施設の特徴によって、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、ショートステイ、療養型病床(これは違うかも)、グループホームなど法で呼び方が決まっているようですね。
常勤の医師や看護士がいるとか、いないとか、医療行為に関してなど、いろいろな取り決めがあるようですが、恥ずかしながら、眼科医の僕はあまり詳しくありません・・・。すみません。

僕が知っているのは、「あいあい」には、約100名の高齢者が入所しており、一緒に食事をしたり、お話やカラオケをしたり、結構楽しそうにやっているな。という雰囲気だけです。体が不自由な方も多いので、介助を受けながら入浴をしたり。
そんなわけで、毎日楽しそうに見える「あいあい」ですが、年中行事・イベントが多いのも、個人的にはいい施設だな。と、好きなところです。
http://www.sannoudai.or.jp/aiai/event01.html
毎月、何らかのイベントがあり、僕もたまに誘われて参加します。
(僕はお酒を飲むだけで、あまり活躍しないせいか、最近、誘われなくなってきたような気もします・・・。赴任当時はもっと呼ばれていたような?)

朝礼の報告で、長く入所していて外出ができていない入居者様と、一泊で温泉に行ってきたという報告なども耳にします。眼科以外のスタッフとは、あまり触れ合う機会がありませんが、あいあいのスタッフから、そういう報告を聞くと、微笑ましいというか、なんだか気持ちがいいです。
あいあいの横に、もうすぐ桜が咲きますが、なにかイベントがあるのかな?楽しみですね。(あいあいのスタッフには無茶振りでしょうか?)

病院と同じく?(自己満足かな?)とてもキレイな施設で、雛祭りや節句など、季節に応じて飾り付けもありますが、最近、熱帯魚の大きな水槽ができました。

とってもキレイで、熱帯魚、エビ、ヤドカリなど、沢山います。

すぐ近くの別の水槽には、年始からいるタツノオトシゴも。だいぶ大きくなりました。

熱帯魚は「あいあい」1階、メインロビーにいます。山王台病院本院と、眼科クリニックの間の施設です。お暇な時間があればぜひ見てみてください。

「あいあい」は入所だけでなく、通所といって、通いで行事などに参加することでの利用者もたくさんいます。僕は、システムが良く分からないのですが、近隣の患者様でご興味があるかたは、是非お問い合わせください。

僕は、介護老人保健施設がなんなのか、特別養護老人ホームがなんなのか?実はよく分かっていませんが、幕内会では、この春から特別養護老人ホーム「ようよう」も開設予定です。
http://www.sannoudai.or.jp/index.html
だいぶ出来上がっており、やはり素敵な建物になりそうです。
こちらも、ご興味があればお問い合わせください。

メガネ

第2・4の土曜日の午前中は、外来をしています。
普段の患者様は、近隣の、どちらかというと中高年?ご高齢の方が多いのですが、土曜日は平日に仕事をしている人や、学生の患者様、都内など遠方からいらっしゃる患者様など、いつもとちょっと違う患者様が多くなります。
初診の方も多く、いつもは1時間に平均12名くらいの方を診察するのですが、重症の方が数名いると、どうしても外来が滞ってしまい・・・。予約制とはいいつつ、お待たせすることが多くなってしまいます。すみません。

今日はメガネのことでも書こうかな。
メガネ・眼鏡(がんきょう)
「僕は目がいいんだ。」「私は目が悪いの。」
多くの方は、「目がいいとか、目が悪い。」とか言う場合に、メガネが必要か、そうでないか。というように思っているようです。眼科医の視点では「メガネをかけても見えない人を目が悪い。」という概念ですので、どんなに分厚いメガネをかけても、視力表で1.0見えるのであれば、視力は正常範囲内ですね。と思ってしまうので、「メガネがないと見えにくい。」と言われると、「メガネかければいいのでは?」と返答したり。
こんなふうに、メガネに対する思いは人それぞれで、メガネを嫌うお母さんに、「お子さんは近視ですね。」と説明したら、絶望で泣き崩れてしまったお母さんにもお会いしたことがあります。
また、緑内障や糖尿病の患者様では「もう末期だから、手術をしても0.1くらいしか保てませんよ。」と繰り返し説明しても、「でも、メガネかければ見えるんでしょ?」となかなか理解してもらえないこともよくあります。
「失明した人がメガネをかけても意味がない。」僕はあたり前のようにおもうのですが、患者様によっては、「メガネかけたら明かりは分かる?」なんて質問を受けることもあります。

メガネは近視や、遠視、乱視などの屈折異常が原因で、ピント(焦点)が合わない場合に、光の進行方向に作用して、ピントを合わせることができるものです。
子供の弱視治療、斜視のプリズムメガネ、紫外線や青色光を防ぐメガネ、眩しさ(羞明:しゅうめい)を和らげるための遮光メガネなど、一部の治療用メガネは別ですが、世の中のほとんどのメガネは、眼底・網膜にピントを合わせて、見やすくする補助をすることが目的です。

以前に書いたのですが、基本的に目が小さい・短い人が遠視で、目が大きい・長い人が近視になります。
http://blog.sannoudaiganka.jp/?eid=126478


遠視のメガネのイメージです。何もしていない上の状態では、網膜よりも遠くにピントが合ってしまうのですが、虫眼鏡のような凸レンズのメガネをかけることで焦点の距離を短くして、網膜にピントを合わせることが可能になります。


近視のメガネのイメージです。通常の上の状態では、遠くから入ってくる光は、網膜よりも近くにピントが合ってしまいます。遠視とは逆の凹レンズのメガネをかけることで焦点の距離を短くして、網膜にピントを合わせることが可能になります。

乱視のメガネはまたあとで。

3T MRI勉強会

一般の人にはちょっと専門的な日記です。目の事はお休みさせて下さい。

今日は外来も混んで、お待たせした患者様も多くなってしまいました。すみません。夜は医師会の糖尿病の講習会に行く予定でしたが、院内のMRIの勉強会が長引いてしまい、参加できず・・・。

先日、記載しましたが、超最新式のMRIが稼働しています。
http://blog.sannoudaiganka.jp/?eid=139113
http://blog.sannoudaiganka.jp/?eid=139191
でも、新しすぎて、特殊な機能を使いこなせていないのが現状・・・。
18時から始まった勉強会ですが、白熱して22時くらいまでかかり、その後、入院患者様の診察をして、ブログの質問にお返事をして。いいわけですが、夕食もまだなので目のブログはサボります。
MRIの撮影法で、T1やT2、フレア、脂肪抑制、diffuionなど、眼科でもおなじみの撮影方法は、眼科医の中では詳しい方だと、勝手に自負していたのですが、今日はわけのわからない、単語がたくさん・・・。

・出血が急性期・亜急性期などの時期に関係なく安定して検出できる、T2star撮影
・T2/T1コントラストで、MRAなどよりも、素早く血液や液体を鮮明にさつえいする、Balanced sequence撮影
・造影剤や、非造影でも磁場をかけた血球の差分撮影によって、血流障害が分かる(脳梗塞でもdiffusionより、よほど早く分かるようです。)perfusion撮影
・spectroscopy撮影は、乳酸、クレアチン、NAA、コリンなどの組成の違いによって起こる磁場の違いから、病変部が、どのような状態になっているのか(眼なのか、壊死なのか、水なのか)を、組成データを検出することができる撮影です。
まだまだいっぱいでてきましたが、個人的に興味があったのだけ書いてみました。
通常の、今までのMRIとは、全く違うことが出来るようになってきているようです。医学の進歩はすごいなぁ。

勉強会の資料は後日配られるそうで、耳で聞いて、頭で覚えられた範疇で、忘れないうちに。と、メモ代わりに記載してみましたが、スペルなど、間違っているかもしれません。

今日はフィリップス社の方に、いろいろ話を聞くことができましたが、眼科の撮影方法に関しては、資料が全くないとのことでした。
T2starで硝子体出血を撮ったらどう映るのか(あまり診断にゆうようではありません。眼窩や頭部には使えますよね。)、spectroscopy撮影で、眼球の組成をみてみたらどうなるのか。世界中で、一回も調べられてない可能性もあるかも?
うーん。早く僕の目を撮影してほしい。たのしみ。