緑内障23 最新手術 バルベルトチューブシャント?

今日は直前に手術キャンセルがあり、少しヒマかと思っていたら、
網膜剥離や角膜潰瘍、黄斑円孔などなど、緊急や準緊急の対応が必要な初診がゾロゾロ。疲れた・・・。
午後の手術は、
・白内障手術 11件
・翼状片手術(遊離弁移植) 1件
・網膜硝子体手術(茎離断)2件
 (裂孔原生網膜全剥離・黄斑前膜)
無事に終わってよかったです。

網膜剥離はお盆のころから中心部も見えていないようで、全部剥がれていました・・・。

今日は、緑内障の手術について。
緑内障23 最新手術
バルベルトチューブシャント?
緑内障手術の中で、最も広く行われているのは、トラベクレクトミーという術式で、眼球に穴を開けて、中のお水(房水)を外に流すことで内圧を下げよう。というものです。

一般的な術式は以下を参照下さい。
トラベクレクトミー?血管新生緑内障
トラベクレクトミー?
エクスプレスシャントを使用したトラベクレクトミーはこちら。


一般的なトラベクレクトミーのイメージ図ですが、赤の矢印が房水を目の外に流すための抜け道。青は目の外の水の貯留部(ブレブ)です。

この水の貯留池:ブレブは、結膜という粘膜でできた袋です。(イメージ図では黄色の部分)

一か月前にエクスプレスシャントでブレブを作成した血管新生緑内障の、50代の男性が、ちょうど本日いらっしゃいました。黄色矢印がブレブになり、内部に房水が溜まっています。水が入っている分、結膜がプックリと膨らんでいるのですが分かりますか?細い光を当ててみると、緑矢印の下側半分(角膜・黒目)と、上側半分(結膜のブレブ)でくびれがあり、上半分が膨らんでいるのが分かります。手術前は点眼薬・内服薬を沢山使用して眼圧27mmHgと高値でしたが、本日は8mmHgと良好な経過です。
この方は当院で初めて手術をした患者様で、キレイなブレブができている症例です。


これは他院様で2回の手術後に、当院に転院された患者様ですが、当院で1年ちょっと前に再手術を行いました。左が手術後の写真で、しばらくは眼圧も10程度で良好でしたが、右は最近の写真です。ブレブを作っていた結膜が白く萎縮したり、キズが癒着を起こして、ブレブが小さくなり、水の溜まる体積が少なくなったため眼圧が上昇してきています(現在:点眼薬なしで20を超えてきた)。この患者様は明後日、ニードリングという処置を行う予定です。
明後日のニードリングで、上手く眼圧が下がるといいのですが、もしもそれでも眼圧の低下を得られない場合には、再度、緑内障手術をやり直して、ブレブを作成するしかありません。しかし、白く萎縮してしまった結膜や、強く癒着を起こしてしまった結膜では、キレイなブレブが作る可能性は非常に低くなります。

通常は再手術では、前回のキズ口を避けて、新しい場所にブレブを作成することを試みるのですが、上記の患者様のように、何度も緑内障手術を行った患者様で、キズ口が何か所もある場合、新しいキズ口を作ることがとても難しくなります。(キレイな粘膜が残っている場所がない。)
こんな時に行う手術が、バルベルトチューブシャントになります。
次回は、実際の術式などについて書いてみますね。

モラル

今日の午後は他院様で硝子体手術に呼んで頂きましたが、他に、週末に当院で手術をした患者様も、出血や高眼圧の問題で再手術を行いました。
重度の糖尿病網膜症では、合併症のリスクも高く、再手術が必要にになることも少なくありませんが、やはり最短で治って頂くのがベストですから、申し訳ないなと。今日も手術自体は問題なく終わっていますが、それでも再出血をしたりする時はするのですよね・・・。
明日の診察は期待と不安でいっぱいですが、何があっても出来ることをきちんと行って、誠心誠意対応したいなと思います。

昨日もちょっと偉そうなことを書いたばかりなのですが、どうしても納得がいかないことがありまして。
モラル
モラルって、道徳。倫理。人生・社会に対する精神的態度の意味だそうです。
領土問題の話題が盛んで、以前より愛国心について考える機会が増えていますが、日本人は正義感が強くて、モラル意識が高い。それが日本人の誇り。そう言われて育ってきました。

昨年末にも書いたのですが、
休日夜間の診療に関して
目のことで困った人がいれば。と、僕は自分の出来る限りの精一杯で、休日でも夜間でも対応をしているつもりです。(もちろん、旅行に行く時もありますし、僕以上に休みのない医師もいるかと思いますが。)
緊急手術や処置の必要があれば夜中にだって行うつもりです。
ただし、当院は院外処方がメインだったり、スタッフも少ないので通常の診療に比べて、満足な検査が行えないリスクもあり、診療を引き受ける前にお願いしていることがあります。

?救急外来では、基本的に応急処置のみ
?精密検査や、薬の処方、お会計は翌日の朝に

受診問い合わせの電話に、前もって上記をお伝えして、それでもよければ。と、受診を引き受けています。

ところが、数日前は、
「今からすぐ行きます。15分でつきます。」とのことで、夜に病院で待つこと1時間。受診がないので、電話をしてみたのですが、出てもらえませんでした。

一昨日は、
診察をして「翌朝に処方をするので来院してください。」と伝えると、「明日も来なくちゃいけないの?」と不満そう。はじめに伝えたのに・・・。1人で対応したので、「保険証の確認や診察料も翌日に。」と話しておいたのですが、そのまま来院されませんでした。
お金がほしいわけではありませんが、診察料も払いに来ないとは、失礼な言い方ですが、人としてどうなのだろうと。(今日まで、どうにもお忙しい理由があって、後日来院予定であれば申し訳ありませんが。)

僕はまだ大丈夫ですが、こういうのが続けば、「もう救急外来をみるのはやめようかな。」と考える時期が来るかもしれません。
医師不足が問題となっていますが、将来、やる気のある若い先生たちが増えても、患者様のモラルがあまりに低ければ、結局は医師を続ける人がいなくなって、さらに医師不足になって・・・。
人として、最低限のモラルを持ちたいものです。

偉そうなブログですみません。
しばらく、眼科の病気のことから離れてしまいましたが、次回からまた頑張ってみます。

お薬大好き・・・。

今日のお昼は以下の手術を行いました。
・白内障手術 6件
・網膜硝子体手術(茎離断)2件
 (硝子体混濁+黄斑前膜、再発性網膜剥離:退院様術後)
無事に終わりました。
むしろ、土曜日に手術の増殖糖尿病網膜症の患者様の眼圧が高く(悪性緑内障疑い)、再手術かどうか、悩ましい・・・。

お薬大好き日本人
外来をやっていると、とにかく目薬を欲しがる人が多くてビックリします。
例えば、
結膜下出血は、薬は効かず、自然治癒します。
白内障の点眼薬に、明確な進行予防があるというエビデンスはありません
それでも、「せっかく眼科に来たから。」とか、「効かなくても、みんなが付けてるから。」とか、とにかく目薬が欲しいよう。

困ってしまうのは、
眼鏡を作りにきて「何も症状はないけど、何か薬をくれ。」
という患者様もいます。いったい何を出せばいいのでしょう・・・。

引っ越しなどで転院してきた人が、結膜炎・ドライアイ・アレルギー、様々な点眼薬を4つも5つも使っていて、「どの症状が一番困っていますか?」と聞くと、「特に症状はないけど、いつの間にか増えていった。」なんていう人もいます。

白内障の手術後の炎症なんて、1?2ヶ月も経ったら消失するものますが、5年前に手術をした人が、当院にたまたまいらした時に、「なんで目薬をつかっているのですか?ゴロゴロするのですか?」と聞くと、「何だかわからないけど、もらえるものはもらっておいた。」というのもよくあります。自分の薬が何で出ているのかも不明のようです。「手術後だから。」なんていう人もいますが、手術後に5年も経って炎症があるのなら、それは手術失敗です・・・。
(もちろん、慢性結膜炎などで症状があれば薬は必要です。)

「ゴロゴロする、痛い、痒い、メヤニが出る。」
なにか症状があって、その症状を和らげるために薬を使うのは問題ありません。

問題は、必要のない薬を欲しがるのはやめましょう。という事です。

世の中に、
全く副作用のない薬はありません。
付けるほどよく見える・健康になる薬もありません。

薬は得られる効果(メリット)と、副作用のリスクや経費(デメリット)を天秤にかけて、メリットが大きければ使うべきものです。

例えば、殆どの点眼薬には防腐剤と呼ばれる添加物が入っています。防腐剤が入っていることで、開封後1ヶ月とか、中身が腐らないようになっています。この防腐剤はアレルギーを引き起こしたり、角膜にキズが付きやすくなるなどの副作用が知られています。長く使うほど、リスクが高まることも。
食べ物の食品添加物を気にする人は多いのに、目薬の添加物は気にならないのでしょうか?

日本の医学の歴史が好ましい方向には進まなかったせいでしょうか?
自己負担が少なくて済む、国民皆保険のせいでしょうか?
医療=薬という誤った考えが広がり、とにかく、薬をもらう事が医療を受けること。と勘違いをされている方が多いようです。
「薬は安いから。」という人がいますが、1割負担で薬をもらったら、残りの9割はみんなの税金が使われるのです。1割負担の人が薬局で2千円払ったら、それは2万円の薬です。2万円払う事に納得がいくほど、本当に必要な薬ですか?
そういうお薬の積み重ねが、日本の財政が悪くして、消費税を上げるのかもしれません。

のどにウィスルがつく場合を、一般的に風邪と呼びますが、
実は、インフルエンザ以外の、多くのウィルス感染症では薬は効きません。風邪の殆どは自然に治るのです。
抗生物質は細菌という種類のバイキンに効果があるのですが、例えば小児科で熱のあるお子さんに抗生物質を処方しないと、「あの医者は薬も出してくれない。」というクレームが起こったりします。
優秀な小児科の先生は、ウィルス感染による風邪には抗生物質が効かないことを踏まえて、薬によって副作用が起こるリスクや、抗生物質の多用によって起こる耐性菌(抗生物質が効きにくい菌)の発生を心配して、わざと薬を処方しないのです。

日本では、薬を沢山処方してくれる医者が良い医者として、人気が出るのです。
薬がなくても治る場合や、薬の効果が期待できない場合には処方をしない。必要最低限の投薬で治療する。という医学知識のほうが優秀だと、僕は思うのですが・・・。

欧米の患者様に、効果がハッキリしない薬を処方したら、「効果がないものを処方するなんて詐欺か?」と、怒られることが多いようですが、
日本人は、効果がはっきりしなくても、「気休めでもいいから薬が欲しい。」という人が沢山います。
その割に、実際に副作用が起こった場合には、薬害だとかいろいろ騒ぐ人が多いのも特徴ですが・・・。

自分の使っている薬は、何に効果があって、どんな副作用がありうるのか。
多少は知っておくべきではないでしょうか?

僕は、基本的に必要のない薬は出しません。と、強気でいたいのですが、
「薬も出さない、ケチな医者」と怒られるのも微妙なので、
「効果がないと分かっていても、とにかく何か欲しい。」という場合には、「自己責任でね。」と付けくわえて、結局処方をしてしまいます。
我ながら意思が弱いなぁ・・・。

もう一度。
その薬、本当に必要ですか?

(注:医師が診療の上、必要だとして処方している薬は、症状がなくても勝手に中断してはいけません。必要のない薬を、ただ無意味に欲しがるのはやめましょう。というお話です。)

小美玉市 ふるさとふれあいまつり  第7回

今日の午後はお休みでしたが、少し急いだ方が患者様が多く、手術に。
・白内障手術 6件(円錐角膜+成熟白内障など)
・網膜硝子体手術 3件(茎離断2件・増殖1件)
 (増殖糖尿病網膜症2件、網膜中心静脈分枝閉塞症による硝子体出血1件)
難しい症例が多かったですが、無事に終わってよかったです。

夜は、昨年も参加した
小美玉市 ふるさとふれあい祭り
に参加しました。今年で第7回だそうです。
クリニックのある石岡市に次いで、患者様が多く、小美玉市医療センターでも週に1?2回ほど勤務しているので、個人的には小美玉市は地元。といった気分です。

僕の中では、お祭りって、街中の道路を歩行者天国みたいに封鎖して行うイメージでなのですが、小美玉ふれあい祭りは、希望ヶ丘公園という広ーい運動公園で行われます。

この広い公園を、どうやって管理しているのだろう??と、参考にしたいほど芝生がキレイ。数百名での盆踊りがあり、子供と一緒に参加。中央のステージではソーラン節のコンテストがあり、みんな汗びっしょりで踊っていますが、気持ちよさそう。

出店?露店?が50件くらいかな?もっとかな?
少し公的なお祭りだからか、露店で生ビール250?350円だったり、子供のわたあめも100円のものがあったり、フランクフルトもみんな100円。とにかく安い!!焼き鳥や、牛すじ煮、ケバブ、牛串焼き。肉ばかり食べて。飲んで。メタボ。

そして、最後は30分は花火です。

芝生にしいたシートに寝転んで見たのですが、花火がものすごく近くて興奮しました。

患者様10名くらいに声をかけて頂きましたが、ビールで酔っていて、ちょっとだらしない感じだったでしょうか?心象が心配です・・・。

去年よりも人出が多いような印象でしたが、小美玉のふれあいまつりは、町おこしとしては成功のように感じました。公園でやるお祭りもいいなと。でも、今後、もっともっと参加者が増えたら希望ヶ丘公園では入らないよな?なんて、勝手な心配をしたりして。

お手紙

手術実績をのせたり、どのような手術をしているのかを書くことで、当院を受診する患者様が、安心して治療を受けられるといいな。というのと、僕が知っている眼科の知識を分かりやすく記載して、目の事で困っている人に少しでも役に立ってほしい。
と思って、ブログを書きだして、もうすぐ1年半になります。

実は自分のメインの仕事、つまり実際の医療も結構忙しくなっており、ほとんど休みも取れなくなっていたり、混雑した外来で、説明不足になっていることもあるかもしれない。と思うと、ブログを書くよりも目の前の患者様に集中した方がいいのか?
でも、ブログを書いている多くは夜中で、診療時間には診療に集中しているのだからいいのか?
なんていう葛藤に最近悩まされることがあります。

北海道から沖縄まで、Q&Aでは幅広い地域からご質問を頂き、自分なりに出来る範囲で回答をしていますが、実際に診察をしているわけではないので、担当医の先生方にはかないません。無責任な答えを書いていないかと、悩んでしまう事もあります。

そんな中、今日はちょっとモチベーションが上がるお手紙を頂きました。
面識のない、かなり遠い大学病院に入院中の40代男性の患者様からです。
両眼の増殖糖尿病網膜症、血管新生緑内障で、なんと1年ちょっとで、外科的手術などを両眼で16回くらい。アバスチンの注射を数え切れないくらい行っているとのことです。
糖尿病や緑内障のブログが役に立ったという事で、感謝のお手紙でした。かなり見えにくいのではないか?と思いますが、虫眼鏡でブログを読んで頂き、病状や経過、人生観など6枚に渡るお手紙を記載頂きました。大変な労力たっだのではないかと思うと、上記の僕の悩みは吹っ飛んでしまいました。

22日に郵便に投稿して頂いたY様(S様?)、ブログでの返信でも構わないとありましたので、遠慮なく記載させて頂きました。
ご自身の存在価値についての記載がありましたが、今回のお手紙は僕にとっては、医療のやる気が跳ね上がる出来事で、とても嬉しく思いました。
何もしないでいるより、少しでも何かをなさってください。僕の稚拙な文章・ブログが恥ずかしくなるほど、お手紙からは聡明な方という印象を受けました。Y様ご自身の経験や人生、考え方をお話し頂くだけで、周りの人に影響を、元気を与えることができるのではないかと思います。(偉そうですみません。)

僕はかなり諦めが悪い方ですが、今年は1名だけ、Y様よりさらに若い両眼の糖尿病・血管新生緑内障で、退院様の術後からですが、引き受けた後どうにも上手くいかずに片眼は諦めさせて頂いた方がいます。
大学病院で16回もの手術・処置を行う医師は、僕の周りでは聞いたことがありません。とても熱心な診療を受けているのかと思います。

緑のカーテンも頑張ります。
ご希望のあった、角膜内皮のブログも時間をみて記載しますね!!

エビデンス?:evidence based medicine

今日は手術がいっぱいでした。
・白内障手術 15件
・眼内レンズ2次移植 1件(急性緑内障発作後)
・網膜硝子体手術 4件(茎離断3件・増殖1件)
 (増殖糖尿病網膜症1件、中心静脈閉塞症1件、黄斑円孔1件、黄斑前膜1件)
無事に終わりました!が、時間は結構かかってしまいました。
みなさん残業お疲れ様です。

エビデンスレベル
エビデンス ベースト メディスン「科学的根拠に基づく医療」の元になる、科学的根拠を得るには、出来る限り、正確な実験・研究が必要です。エビデンスは実験によって得られる証拠ですが、そのエビデンスが信じていいものなのか?ちょっと怪しいものなのか?を示すのがエビデンスレベルで、信頼のできる実験の結果得られたエビデンスはエビデンスレベルが高い。と評価されます。

「ブルーベリーによって視力は改善するのか?」
という疑問が正しいのか?を調べるためにはどうしたらいいでしょう?
最もきちんとしたエビデンス(根拠)を得ようとすると、以下のような研究が必要です。

?まず、視力に悩んでいる人を1000人とか、できる限り大人数で集めます。
?1000人を500人づつの2つのグループに分けます。この時に、2つのグループの構成が年齢や性別、元の視力の数値などがある程度同じになるようにそろえる必要があります。
?1つ目のグループには、ブルベリーの成分のサプリメントを飲んでもらいます。2つ目のグループにはブルーベリーの成分の入っていない、ただのラムネなどの偽物の薬(プラセボ)を飲んでもらいます。
?ある程度の観察期間のあとで、視力検査を行い、2つのグループの間で視力の改善度に変化があったかを検討します。

このような実験・研究の結果で、本当に効果があると証明できれば、ブルーベリーはエビデンスレベルの高い治療として、医学の世界で視力の特効薬として保険適応になります。

????について、気をつけるべきことを加えると、
?調べる人が3名とか、少人数で行った研究は正確性が欠けます。たまたま効いたり、効かなかったりしただけかもしれません。研究に参加する人数は多ければ多いほど正確性が増します。多くの場合200名以上での実験は非常に信頼性が高いとされます。
??薬を飲む人、飲まない人(プラセボ)の2つのグループに分ける場合には、コンピュターなどで、ランダム(無作為)に振り分ける必要があります。「私は薬を飲みたい!」なんていう人は、健康に関して積極的であり、「出来れば飲みたくない。」と考える人と比べて、視力測定などに差が出る可能性があるからです。また、以前にプラセボ効果について記載しましたが、人間は、「なにか薬を飲んでいる」というだけで、気分的に治療の効果を実感してしまう場合があるため、患者さんは自分の飲んでいる薬が「本物なのか?」「偽物・プラセボなのか?」を知らされません。厳密には、薬を処方する医師、視力測定をする人、全員がだれが本物の薬を飲んでいるのか?全く分からない状態で研究を進める必要があります。

以上のような実験・研究をランダム化試験といいますが、ランダム化試験によって得られた測定結果を統計学的に処理して、最終的にはブルーベリーが有効かどうかが分かるのです。

そして何より、実験・研究に参加する人間は、研究内容に利害関係があってはいけません
ブルーベリーのサプリメントを作る会社の人間が参加をしたら、良い結果しか出ませんよね?基本的には研究に参加する人は、平等で偏見のない第三者である必要があります。

ブルーベリーサプリメントの広告には、
「すごく効いた!という体験談」がよくのっていますが、体験談を書いた人がサプリメント会社の知り合いの方だったら信じられますか?
「ブルベリーで視力改善」という本が出版されたとして、その本は、公平・平等な立場で書かれているでしょうか?自費出版ではただの広告本かもしれません。
「科学的に証明された論文があります。」と記載があったとしても、残念ながら世の中には、お金さえ払えば掲載してくれるような論文もあるのです。

ブルーベリーに試験管内などで抗酸化作用があるのは、本当のようですが、
「ブルーベリーに人間の視力を改善させる効果があるか?」というと、
僕が知らべる限りでは、正確にエビデンスがあるといえる研究や論文は全くないようです。
(サプリメントを信じて飲むのが悪いと言っているわけではありません。最終的には自己判断です。)

エビデンス?:evidence based medicine

今日は以下の手術を行いました。
・白内障手術 9件
・緑内障手術 2件
無事に終わりました!!
難しいと思われる白内障が3件あり、外来に間に合わない可能性が高かったため、昼休みを前倒しして手術をはじめましたが(スタッフの皆さんごめんなさい。)、多少の時間はかかったものの、全例予想以上の結果で終わる事ができ、気分爽快です。(今日はカロリーを気にせずプレミアムモルツ[:ビール:])
手術って、完全に予想通りには行きません。思ったより難しいとき、思ったより簡単な時があります。
「難しい可能性がある」と手術前に伝えると、患者様にとってはストレスを抱えて手術を待つことになるので、あまり好きじゃないのですが、ある程度のリスクは説明しなくてはいけません。今回は、取り越し苦労だったようですが、まぁ良い結果なら皆さん理解してくれるかな?なんて。

エビデンス ベースト メディスン?
evidence based medicine
エビデンスは「根拠・証拠」意味ですが、「科学的根拠に基づく医療」という考え方が西洋医学の基礎的な考え方として定着しています。

「キノコを食べたら眼底出血がなおった。」という人がいた。という話を聞いて、皆さんは眼底出血なった時にキノコを食べよう。と思いますか?
多くの人は、キノコを食べよう。とは思わないと思います。

では、かかりつけのお医者さんが
「キノコを食べたら、治った人がいるので食べてみてください。」
と言われたらどうでしょう?
医者に言われると、「えっ?そうなのか?」と思いつつも、
「では、食べてみよう。」と思う人も少し増えるかもしれません。

さらに、
「キノコを食べるで、治ることが多いと言われています。」
「キノコを食べたら、90%以上で改善するというデータがあります。」
「キノコは世界標準の治療で、90%以上で改善します。」
と、説明が進んだ場合、最後の説明では「よし食べよう。」と考える人が多数を占めるでしょう。

どんな治療にも副作用がありえますが、治療によって見込まれるメリット(利点)の確率と、デメリット(副作用などの欠点)確率とを、きちんと統計学的に評価して、治療を行うことが望ましいと言える、根拠があると言える場合に、「この治療にはエビデンスがある。」と表現します。

西洋医学の従事者として、医者の個人的な思い込のみで、「この間、この治療が効いた人がいるから、今回もこの治療をやってみよう。」と考える医者は近年では稀になっています。
過去の歴史や、データを科学的・統計的に評価して、リスクよりも効果・利益が上回ることが確立上で確かな場合にのみ治療を進めていくことを、エビデンス ベースド メディスンといいます。

少し難しい話かもしれませんが、すごく大事なことなので、
今後、あと2回くらい、エビデンスの話を記載したいと思います。

セミの羽化

今週は緑内障のコントロールで、外科的な処置が週末にかかってしまう入院患者様がおり、土日ながら処置がいっぱいの週末でした。(もともと一週間くらいかけて、安定させるので想定内です。)
昨日の処置が上手くいき、本日は皆さん良好な経過で、明日の所見によって退院が可能です。

セミの鳴き声を耳にすると、「夏だな」と思います。
こちらの心情次第で、「素敵な風物詩」なんて思うときと、「うるさいな」なんて、自分勝手な評価ですが。
仕事から帰ると、子供が「セミの幼虫取ってきたよ!」とのこと[:子供:]
急にセミの生態や羽化の勉強をして、観察に挑んでみました。
基本的に外敵から身を守るために、夕方に土から出てきて、木に登り、夜のうちに羽化するようです。

部屋の観葉植物では、木の幹がツルツルしていて、引っかかりが悪いよう。庭から、大き目の木の枝を持ってきて、壁に立てかけました。

ビデオカメラも回して、準備OK。
明るいうちは警戒して羽化をはじめないようで、照明を落とします。


ある程度枝を登って、足の引っかかりが良い場所?で腰を据えます。


背中が割れて、プルプル震えながら、脱皮を進めます。


でました!

初めは羽がすごく小さいのですが、徐々に緑の体液が流れて?羽が広がっていきます。


ここまで、2時間ちょっと。
このあと色が変わって、羽が硬くなって、朝には元気よく飛んでいくよう。
朝まで見ているのは辛いので、つかまっている枝ごと、夜のうちに庭へ。
朝にはいなくなっていました。
これから一週間、元気に鳴いて、新しい子孫が残っていくといいのですが。

取ってきた本人[:子供:]は「眠い・・・。」と、途中でリタイヤ。
我が子の早目早起きはいいことなのですが、ちょっと物足りない。もう少し根性が欲しい。

明日は、すごく難しい白内障が3件もあります。
水晶体がグラグラしていて、通常の手術ができずに、レンズを細かく縫いつけるなどが必要かも・・・。心配ですが、頑張るしかないので!!
今日は早めに寝よう。

プラセボ効果

今日の午後は以下の手術を行いました。
・白内障手術 10件
・緑内障手術(エクスプレスシャント)1件
・網膜硝子体手術(茎離断)2件 (黄斑前膜)
みなさん無事に終えました。
今日はとてもスムーズで4時ちょっとには終わり、夜はのんびりです。
お盆で外来も空いていますし。こんな感じは送り盆の明日までかな?

今日はちょっと変わった話を。
プラセボ効果
「ブルーベリーを飲んだら視力が回復しますか?」
「ブルーベリーを飲んだら、飛蚊症が治ったけど効果があったのですか?」
外来をしていると、週に1回はこんな質問を受けます。

僕は「うーん。化学的にはあまり証明されていないです。」と答えるのですが、
薬を飲んだ場合に、実際には薬に効果がなくても、自覚的には効果があるように実感してしまう場合があります。
「病は気から。」という言葉の通り、心持ち次第で、症状を軽く感じたり、重く感じたりする
とは誰でも経験があると思います。

「ブルーベリーに視力を改善する効果があるのか?」
という問題を検討する場合には、ブルベリーを飲む前と飲んだ後とで、視力を測定が必要になります。ただし、視力測定をする場合に、よく見ようと頑張って測定するか、やる気のない状態で測定するかで、かなり差がでます。
なんとなくでも「ブルベリーが目にいい。」なんていう話を聞いたことがあると、ブルーベリーのサプリメントを飲んだ後には、「目が良くなった気」がして、視力測定を頑張ってしまう方が多くなるようです。

こういった、気持ちの問題を除去するために、
ブルーベリーのサプリメントを飲む前と、飲んだ後に視力を測定するだけではなく、
ブルベリーの成分の入っていない、ただの紫のラムネのような、偽物の薬(偽薬・プラセボ)を、飲む前と飲んだ後の視力をして、
本物のブルベリーを飲んだグループと、偽物(プラセボ)を飲んだグループの、視力の改善度を比較することが必要になります。
(偽薬:プラセボを飲まされるグループは、偽物だとは知らされずに、本物のブルーベリーだと思って内服することになります。)

プラセボ効果とは、偽薬を処方しても、薬だと信じ込む事によって何らかの改善がみられる事です。
なんだか、詐欺みたいな話ですが、決して悪い意味合いだけではなく、例えば僕が患者さんに薬を処方する場合に(偽物は処方しませんが)、「もしかしたら、この薬でもちょっとは効くかもしれません。」というよりは、「これはとてもいい薬だから、期待して使ってみましょう。」のほうが、効果を高く感じることも多いようです。
言葉使いや、心の問題で、病気との付き合い方も変わりますよね。

硝子体出血③ 予後(術後視力)

今日は午前の外来が40名ちょっと。
今週はお盆なので、外来患者様が少なく、のんびりと過ごせています。午後は、いつもは開業医様などでの出張手術なのですが、お盆でお休みの病院様が多く、なんと久しぶりのお休みです!
と言っても、県北の総合病院様の紹介で、ぶどう膜炎後の血管新生緑内障の患者様の手術をお昼休みに1件行いましたが。

さて、硝子体出血の最後です。
硝子体出血③ 予後(術後視力)
どの手術でも、術後にどのくらい回復するのか?というのを、正確に断定することはなかなか難しいのですが、
たとえば白内障の手術では、「ぴったり0.9です。」とまではいかなくても、「かなりよく見えるようになりそう。」「免許証が取れるくらい。」「少ししか良くならなさそう。」など、術前からある程度の予想をお伝えすることが可能です。
ところが、硝子体出血を起こしてから、初めて病院にいらした患者様の手術では「術後の視力は、手術をやってみないと分からない。」とお伝えすることが多くなります。
というのも、硝子体出血は、眼内(硝子体腔)が出血で濁っている状態の総称なのですが、術後の視力は、硝子体出血の元になった病気の種類や場所によって、大きく異なるからです。

例えば、硝子体出血の原因で一番多いのは、網膜中心静脈分枝閉塞症という病気なのですが、血管が詰まって、病気となった網膜の場所が、下のイラストの赤矢印の部位のように、物を見る中心部(黄斑)から離れている場合には、良好な視力が保たれますが、

青矢印の先のあたり(黄斑近く)に、出血があったり、血流障害に伴う黄斑浮腫という病態を伴っている場合には、手術でせっかく出血をキレイにしても、あまり良好な視力には回復しません。(視野全体としては明るくなりますが。)
動脈瘤の破裂なども、動脈瘤の場所によって結果が異なります。
加齢黄斑変性症は、もともと黄斑部に起こる病気なので、やはり予後が不良です。

硝子体出血の手術は、ビックリ箱のようなものです。
手術でキレイに洗ってみて、悪い病気がなければ、もともとが見えにくくなっていた分、とても喜んで頂けるので、やりがいがあります。
ただし、洗ってみて、手術中に加齢黄斑変性症が原因であったことが判明した場合には、ガッカリしてしまって、結果をどうお伝えしようか落ち込んでしまうのですよね。

今日も最後までお読み頂き、ありがとうございました。