今月は他院の眼科様からの見学が多く、外来の見学に3回、手術の見学に2回来て頂きました。みなさん男性の先生ですが、一応、「見学者あり」といった張り紙をしていますが、診察室に新しい先生がいたり、手術中にぶつぶつと説明をする声が聞こえたり、患者様にとっては良い気持ちではないのかもしれません。すみませんがご了承頂ければと思います。カルテないようなども見学頂いておりますが、もちろん、守秘義務などはきちんと守って頂いています。
さて、今日は病気ではないのに、比較的問い合わせの多い事柄を書いてみます。
充血について(白目の美しさ)?
多くは女性の患者様ですが、外来をやっていると、白目の充血(赤み)をきにされて来院される方がいらっしゃいます。
メヤニや、痛み、かゆみ、視力低下などを伴って、結膜炎やぶどう膜炎と診断される場合は病気として扱うべき充血ですが、実は充血のすべてが悪者で病気というわけではありません。
(結膜炎は、結膜に炎症がある場合の総称です。原因によって、バイ菌による感染性結膜炎では細菌性結膜炎・ウィルス性炎や、花粉症はアレルギー性結膜炎、ドライアイは乾燥性角結膜炎、紫外線による結膜炎や、擦ったあとなど外傷性の結膜炎もあります。)
これは10代。ピチピチのきれいな白目です。
これは、ぶどう膜炎という病気になってしまった患者様の白目です。
赤み、充血が確かに強く、眼科医がみれば病気なのはすぐわかります。
これは最近、「充血がとれない」「白目がきれいでない」と訴えて来院された患者様の写真ですが実は病気らしい病気はありません。
充血とは血が充ちる(ちがみちる)と書きます。血管の中を流れる血液(酸素を運ぶ赤血球)の流れが増えて、血管が太くなり、見た目として赤みが増すわけです。
「充血」というと悪者のように聞こえますが、「血のめぐりがよい」というと、むしろ、高印象ですよね?
問題は血流の増加・血管の拡張がなぜ起こっているかによります。
例えば、肉体労働の方の腕には太い血管が目立ちます。筋肉をたくさん使ったら、血流を良くして、栄養分や酸素をたくさん運び、老廃物を持ち帰る必要があります。目をたくさん使った場合に、充血するのは疲労を取るためには必要な正常な現象です。お風呂に入ったり、お酒を飲んだりして、顔が赤くなったり、目が充血するもの、血液の流れが良くなっていると考えられます。
寝不足とか、仕事で忙しかったあとは、目だって栄養が酸素が血液がほしいです。疲労回復のためには、血流が増えて充血、赤みが増すのは良いことなので
す。
⇒充血は必ずしも悪いものではありません。
では、悪い充血とはなんでしょう?充血自体が悪いのではないですが、例えば、結膜炎などでバイ菌が感染した場合には、血液の中の白血球という細胞がバイ菌をやっつけるために頑張ります。そのため血流を増やして(充血させて)、白血球を沢山送り込もうとするのです。この場合の充血は、一応悪い充血と考えてよいですが、充血自体は自分の体をまもるために起こる正常な反応ともいえます。
つまり、充血=悪者、とは一概には言えないのです。
また、腕の血管も目立つ人、目立たない人がいますが、目の血管もやはり個人差があって、もともと血管が多く、赤みが目立つ人もいるのです。
基本的な考え方としては、痛み、かゆみ、メヤニ、視力低下などの他の症状がなく、ただ見た目として白目が赤いだけという場合は、ほとんどの場合が病気ではないようです。
(眼精疲労を病気というなら病気ですが、それなら運動をしたあとの筋肉痛も病気ということですよね・・・。)
逆に赤みを伴う時に、痛み、かゆみ、メヤニ、視力低下を伴う時は、少なからず病気の可能性がありますので、心配なら眼科を受診するべきでしょう。
ただ、他の症状がない充血でも、花粉やホコリなどに対するアレルギー性のもの、または軽いドライアイ、他には紫外線などが影響し、その免疫反応として充血が起こっている場合には点眼薬で軽快できることもあります。症状がなくても、赤みが気になって解決を望む場合には一度眼科で相談するとよいかと思います。僕は病気とは考えていませんが、眼精疲労による充血も、老眼鏡などのメガネの調整を相談することで、長期的に充血を改善することができるかもしれません。
ここからが問題なのですが、充血を主訴に来院される患者様の中に、「市販の点眼薬を1日10回以上つけている」とおっしゃる方がいらっしゃいます。
実は、市販でも充血をとる(取り繕う)目薬があり、塩酸ナファゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸フェニレフリンなどが含まれます。これらは血管収縮剤と呼ばれる成分で、血管を締め付けて、血液の流れを一過性に制限するものです。パッとみでは、一過性に赤みが抑えられます。
疲れて、目が必要な栄養分・血液を欲しがっている場合に、血管を収縮させれば、目は新しい血管を生やすようになります。すると、長い目でみればより血管が増えて、通常の状態でも赤みが強くなります(リバウンド)。目薬メーカー本当はリバウンドのことを知っているのに、売り上げのことや、「パッと見は、すぐに白くなる」という即効性の患者さんの満足度のためには、悪と分かっても血管収縮薬を入れちゃうのでしょうね・・・。
個人的には血管収縮薬は、初デートや、結婚式、重要な頑張りどころなど、どうしてもという場合以外では使うべきではないと思っています。
血管収縮薬の常用はお勧めしません!
ちなみに、外来で「赤くなった。充血した。」という方が来院された場合、
最も多いのは結膜下出血という内出血で、充血ではありません。
これが結膜下出血ですが、これも病的な意義は乏しく、大きさによりますが数日?3週間程度放っておけば自然に消えるという状態です。
結膜下出血については以前のブログを参照←クリック
充血との違いは、
・血管の走行と関係なく、ベタッと赤い。
・強い赤みの割にメヤニなどの症状がない。
・内側は赤く、外側は正常など、赤い場所が局所的