今日のお昼は白内障手術8件。無事に終わりました。
今日は某メーカーさんが来てくれて、まだ未発売ですが、新型のレンズを挿入する器械を少し使ってみたのですが、なかなかいい具合でした。
先週の木曜・金曜の網膜剥離の患者様も経過良好で、明日退院です。
今日は網膜剥離の手術の方法を書いてみます。
裂孔原性網膜剥離? 硝子体手術
先週の木曜日の手術です。ブログ:2011.10.20 Thursday
*網膜剥離は、年齢や、剥がれている程度、白内障の有無、穴の大きさや、網膜の剥がれている範囲など、個々の症例によって、手術方法が異なります。ある一つの例としてです。
今回は、66歳女性、白内障あり、後部硝子体剥離に伴う大きな裂孔、剥がれて数日、黄斑剥離あり といった症例です。
まず、網膜剥離の原因ですが、硝子体という目の中のゼリーが縮んで、網膜を引っ張ることで発症します。
手術では、まずは仰向けに寝て、白目の周り?眼球の後方に針を入れて局所麻酔をします。(近年は網膜剥離の硝子体手術では全身麻酔は不要です。)
この方は66歳で白内障もあるので、最初に白内障手術をやってしまいます。
眼内レンズを入れている写真です。
その次に、目の中に器械を入れて観察してみると、
写真の左下の方が、網膜の剥がれている部分です。
硝子体を器械で取り除く手術なのですが、硝子体は本来、透明なゼリーなので、あまり良く見えません。
なので、こんなふうに白い薬(マキュエイド)を目の中に入れて、硝子体を見やすくする処置をします(可視化)。
物をみる中心部(黄斑)まで剥がれている症例では、なるべく早く黄斑の剥離を治すことが重要です。そこで役立つのが、パーフルオロンという重い液体です。
パーフルオロンを目の中に入れていくと、網膜を押しつけて、剥離がくっついて行きます。
図ではこんな感じ。
紫がパーフルオロンですが、重い液体なので、重力によって網膜を押しつけてくれます。
その後はとにかく丁寧に、硝子体を取り除いて行きます。
これは、網膜が断裂している部分の写真ですが、赤矢印の先に右上から左下に向かって、三日月状に網膜が断裂しています。破れた網膜の隙間から、オレンジ色の脈絡膜という組織がのぞいて見えます。
硝子体カッターと呼ばれる、掃除機のような器械で、硝子体のお掃除です。
網膜をひっぱていた硝子体を取り除くと、網膜はヒラヒラと軟らかくなります。
ここで、風船を膨らませるように、目の中に空気を入れたり(白○)、網膜の後ろ側にたまったお水を吸い出すことで(黄色矢印)、網膜を外側にひとまずですが、くっつけます。
白丸が空気です。内側から膨らみ、網膜を外側に押しつけます。
これは、網膜の後ろ側の水(下液)を吸い出しているところです。
網膜が外側にくっついたら、網膜の断裂部の周囲にレーザー光線を照射して、網膜にヤケドを作ります。赤の×印がヤケドです。
レーザーは緑色の光です。
レーザーで焼いて、ヤケド状になった網膜は、しばらく白くなります。
写真の中央部くらいに見える白い点々が、ヤケドです。
他の部分の網膜にも、穴があったり、将来穴があきそうな部分があれば、レーザーで焼き付けておきます。
この患者様はもともと黄斑前膜という病気を合併しており、ついでに前膜を取り除いてしまいます。網膜が少しシワシワになっているのが分かりますか?(BBG使用:病気の詳細は以前のブログを。2011.09.07 Wednesday)
手術終了時ですが、目の中は空気でいっぱいです。通常の白内障の終了時と違って、目の中が空気で光ってキラキラ光って見えます。
25Gという最もキズ口の小さい最新の器械でだと、これだけいろいろやっても、手術は40分弱。白目も以前のように赤くならずに、とてもキレイです。
(*2014年より27ゲージというより小さい傷での手術に変わりました。多くは30分程度で治療可能です。)
うつぶせ
実は、この手術は、終わった瞬間に治るわけではありません。
手術後に数日間はうつ伏せになって頂く必要があります。
ゼリ?(硝子体)を取り除いた目の中には、空気とお水があるのですが、うつ伏せになると、お水の中で空気に浮力が働いて、網膜を押しつける力が発生します。この状態を数日間続けることで、網膜が外側にくっついた状態を維持します。
レーザーで網膜を焼き付けると、ヤケドが治っていく過程で、網膜がガッチリと癒着をしていきます。最終的に、一週間くらいで空気は吸収されてなくなってしまうのですが、空気がなくなって浮力がなくなっても、ヤケドがしっかりとくっついていれば、手術が成功と言えるのです。
網膜剥離の硝子体手術は、手術のみで治るのではなく、手術後のうつ伏せがとても大事です。みなさん、手術自体よりも、うつ伏せの方が辛いという方が多いのですが、頑張って頂いております。
(当院はで、今年は震災時に1名のみ再発の症例がありましたが、他は全例初回手術で復位:くっついています。初回復位率は約95%で県内でも非常に良好な成績です。再発例もオイル置換後に、オイルを抜き、現在は復位しています。みなさんのうつ伏せのおかげです。ありがとうございます。)