年末が近づき、今日は午前の小美玉、午後のクリニックともに患者さんが少なめで、ゆったり過ごしました!
一昨日の糖尿病の手術の方も経過良好で退院です。
今日はその手術について書いてみます。
増殖糖尿病網膜症手術
土浦の眼科様から紹介で、80代の無治療の糖尿病網膜症、視力は既に0.01です。
写真中央、白いカサブタが網膜にべったりとくっついています。写真の左のほうがボンヤリ赤いのは、硝子体出血と呼ばれる出血です。
イラストで描くとこんな感じ。
赤い出血があり、緑は眼球後方の網膜を表しています。薄茶色がカサブタ(増殖膜)。カサブタのヒキツレで網膜(緑)にシワがよって内側に剥がれてきています。
手術は局所麻酔で行います。
仰向けに寝て、消毒をしてから、目を開ける器械を付けます。
黒目の左上の白目のあたりから針を入れて、眼球の後方に麻酔薬を注射します。
80代で少し白内障があるので、まずは白内障を取り除き、眼内レンズを入れてしまいます。
レンズがキレイに。
次に、眼球の内部にまで器械を入れるためのキズを黒目の周りに3か所作ります。
キズ口から掃除機のような器械を入れて、目の中の出血を取り除きます。
出血がなくなりました。
今回はカサブタが多いので、もうひとつキズ口を作り、目の中を明るく照らす照明を取りつけます。右側の写真では、左手でピンセット、右手でハサミを持って、白いカサブタを切り離しているのですが、分かりますか?
カサブタが取れました。
でも、今までのヒキツレのため、網膜はまだまだシワシワで、このままではレーザー治療ができません。
ここで、以前に書いたパーフルオロンの出番です。
http://blog.sannoudaiganka.jp/?cid=4995
2011.09.04 Sunday
とても重い液体で、網膜を押しつけてシワの延ばす効果があります。
シワが伸び、網膜がピッタリとくっついた状態で、レーザー治療を行います。レーザーで焼くと、網膜は白くヤケド状になります。
網膜の隅っこの方は、構造上、黒目(角膜)から覗きこむことができません。こんなときは、図のように眼球を押して凹ませることで、隅っこの網膜も処置をする事が出来るようになります。
写真の右下のほうが内側にぽっこりと膨らんでいるのが分かりますか?ここが押し込んだ、隅っこの網膜です。重症例では隅の方まできちんとレーザーをすることで、新生血管緑内障と呼ばれる術後合併症を予防することができます。ただし、この眼球を凹ませる処置は少し痛みがあります。先生によっては内視鏡という装置を使って行う事もあります。
パーフルオロンは目の中にずっとは入れておけない物質なので、吸い出してしまいます。パーフルオロンや水を吸い出して、空気を入れます。
うつ伏せがしっかり出来る人は、空気か特殊なガスを入れて、手術後に1週間くらい、うつ伏せをして、空気の浮力でシワの延ばし続けます。今回の患者様は、80代と高齢で、片足をなくしている方なので、長期間のうつ伏せは難しそうです。
そこで、やはり以前に書いたシリコンオイルを注入します。
http://blog.sannoudaiganka.jp/?cid=4995
2011.04.12 Tuesday
(これまで、シリコンオイルを入れる場合にはキズ口を広げるので出血したり、油が硬いので結構な握力を使って疲れたり、最後にキズを縫ったりしていたのですが、コンステレーションを使えば25Gの小さいキズ口のまま、簡単に30秒くらいでオイルが入ってしまいます!コンステレーションすごい!)
うーん。キレイな網膜になりました[:拍手:]
網膜のほぼ全域のレーザーを行い、オイルを入れて。
結構大きな手術ですが、白目の出血も少なくキレイに出来ました。
オイルの位置が固定するまで、こんな感じで、丸1日位はうつ伏せをしてほしいのですが、今回は残念ながら、あまり病気を理解して頂けない患者様で、まったく協力して頂けませんでした・・・[:悲しい:]一回も下を向かず・・・。
今回は運よく、うつ伏せなしでも、問題は起こりませんでしたが、空気のままだったら厳しかった。我ながらいい判断だったなと。
本日の写真です。視力は0.1程度まで上がっていますが、まだ回復途中です。
手術はコンステレーションのおかげで、1時間もかからないのですが、ブログにするのに1時間以上かかってしまいました・・・。結構大変です。
一般の方に分かりやすく!と思うのですが、難しいですよね??どう書いて行けばいいのか、来年も試行錯誤が必要そうです。
硝子体手術を経験した者です。私は糖尿病性ではなく、裂孔原生でしたが、とてもわかりやすい手術紹介内容でした。やはり硝子体手術の予後は術者の技術と使用機器に依存するのでしょうか。
眼科医学の進歩は目覚ましく、数年で成績が変わってしまうものも多々あります。
器械も技術も年々向上している時代ですので、これで完璧ということがありません。僕も時代遅れにならないように、今も研鑽の日々です。