白内障手術:小瞳孔の例

今日は今年の手術初めの日です。
・眼瞼下垂手術 1件
・白内障手術 12件
・網膜硝子体手術(茎離断)2件
 (黄斑円孔 1例・中心静脈閉塞後の増殖網膜症 1例)
みなさん無事に終わりました。
初日ですが、今日もいろいろな症例があり、手術医としてはやりがいがあり、楽しい1日でした[:グッド:]


70代の女性です。5年前から全く見えていないようで、手術を勧められていたとのことですが、決心がつかなかったようで。カサブタだらけでしたが、30分ちょっとで、かなりキレイにとれたので、うつ伏せにならずにすみました。


80代の男性。成熟白内障で光が分かるだけです。コンステレーションのおかげで、10分もかからずに終了です。
(眼科の先生に器械どう?と質問されるのですが、硝子体もいいですが、おもったより白内障がいいです。インフィニティーの安全性に、流量が多く、アキュラスのスピード感が加わったという感じです。)

さて、今日の手術から一つ。
白内障手術:小瞳孔(しょうどうこう)
白内障手術は、多くの場合、数分でかなり安全に終わるようになりました。ただし、上記の人のようにあまりに進行してしまうと、手術は少し大変になります。
今日はそういう症例の一つで、小瞳孔の症例についてです。

瞳孔とは、茶目(虹彩)で形成される、内側の黒目の部分になります。瞳孔は明るい場所では、小さくなって、目の中に入る光を少なくして、眩しさを軽減します。逆に暗い場所では、大きくなって、より多くの光を取り入れようとします。
瞳孔の大きさは自分の意思で変動させるのではなく、自律神経といって、脳ミソが勝手に担当してくれています。糖尿病などで自律神経の働きが悪くなると、瞳孔の働きも悪くなったり、加齢でも自律神経や、瞳孔の筋肉自体が衰えて、動きが悪くなったりします。(一般的に子供の瞳孔は大きめ、高齢者の瞳孔は小さめです。)

手術では上の成熟白内障の例のように、目薬で瞳孔を広げて(散瞳)、濁った水晶体をよく観察できるようにしてから、濁りを取り除いて行くのですが、何かしらの原因で瞳孔が広がりにくい場合には追加の処置が必要になったり、手術の安全性が低下したりします。

今日の70代男性の患者様です。(白内障のみでなく、この後に引き続いて黄斑円孔という手術を行っています。)

緑の矢印が角膜(茶目)の長さに相当しますが、日本人の角膜はだいたい横幅が11mm程度の長さです。瞳孔の大きさ(ピンク)は3mmくらいしかありません。これだと、器械を入れにくかったり、水晶体がよく見えないので、手術の安全性が低下してしまいます。

そこで、

ちょっと乱暴ですが、ハサミでチョキチョキと、茶目(虹彩)に切り込みを入れて、瞳孔を広げてしまうのです。


これで、ちょうと茶目の1/3くらい、4mm程度まで瞳孔が広がりました。


広げた瞳孔から、水晶体の濁りを取り出しています。コンステレーションはこのような症例でも、目の中の安定がよく、切開を含めても白内障の部分は10分もかかりませんでした(黄斑円孔を含めると30分ちょっと)。

瞳孔をあまり大きく切ってしまうと、手術後にまぶしさを感じることがあります。僕は4mmあればまず切ったりしないで、そのままで手術をしますが、3mm以下の場合には安全のために切開をするようにしています。

小瞳孔の原因としては、
?加齢(個人差があります)
?糖尿病
?PE症候群(目の中にフケ状の物が溜まる疾患:組織が弱い)
?ぶどう膜炎の既往がある人
?前立腺肥大の薬を飲んでいる人
?緑内障でサンピロという薬を使っていた人

などがあります。
(今日の人は?でした。最近はサンピロを使う先生は少ないのですが、何年も前から使っていたようで。)

小瞳孔であるだけならば、普通は少し時間がかかるだけで、問題なく終わりますが、他にも手術を難しくする要因があると、リスクが積み重なり、白内障手術と言えど、難しくなる場合もあります。
手術を難しくする因子として小瞳孔以外に、例えば、
奥目の方(器械を目の中に入れにくい)、成熟白内障、緑内障(狭隅角)、チン氏帯脆弱(目の組織が弱い)、角膜混濁(黒目が濁って眼内が見にくい)、顔や体がふるえる、硝子体出血、認知症などがあります。

どれか一つならまず問題ありませんが、
奥目で、小瞳孔で、緑内障があって、末期の成熟白内障で、しかも、顔がゆらゆら動いてしまう。なんていう人の手術は大変です。

上記のようなリスクに1つ、または2つくらい該当する人には、将来3つ目が合併してから手術を考えるよりは、少し早めに手術をするほうが安全です。そのような場合にはこちらから、「早めの方がいいかも知れません。」とお勧めするので、ご検討下さい。

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