今日は以下の手術を行いました。
・白内障手術 7件
・緑内障手術(流出路再建)2件
・眼内レンズ整復 1件(他院にて20年前に手術後)
最後の人が難しかった・・・。外来も少し遅れてしまいました。
ぶどう膜炎?
治療 その1 ステロイド
ぶどう膜炎は、体に存在する免疫反応によって、ぶどう膜(虹彩、毛様体、脈絡膜)に炎症が起こる病気だと書きました。
ぶどう膜炎の治療は、「熱があるから解熱剤を飲もう。」というのと似ていて、「ぶどう膜に炎症があるから、炎症を抑えよう。」というものになります。多くのぶどう膜炎の治療には、ステロイド薬という炎症を抑える薬を使います。
ステロイド薬
ステロイドは、腎臓の上にある副腎という場所で作られる、もともと体にあるホルモンです。体にかかるストレスや負担、炎症などを抑える働きがあります。非常に強く、炎症を抑える効果があり、ぶどう膜炎だけではなく、解熱、鎮痛、喘息、膠原病、アトピー、湿疹などなど、とにかく全身の病気に使用され、大活躍です。
もともと自分の体のなかで作られるステロイドですが、ぶどう膜炎や膠原病などで、通常の状態よりも、病的に白血球の働きが強くなってしまったり、炎症が強くなった場合には、自分で産生する量では炎症を止める事ができません。そのような炎症がコントロールできない場合に、薬としてステロイド剤を使用することで、炎症を止めよう。というものです。
強力に炎症を止めてくれるため、様々な病気に使用されますが、その分、副作用もたくさんあります。
ステロイド剤の主な副作用
?感染(バイ菌)に弱くなります。
もともと免疫や炎症は、外敵か体を守るための反応です。病気を抑えるためとはいえ、ステロイドで炎症や免疫力を抑えれば、バイ菌にかかりやすくなります。点滴や大量に内服した場合には、肺炎などに気をつけなくてはいけません。
?緑内障・白内障
眼科的には房水の出口に作用するなどして、眼圧が上がり、緑内障を引き起こしてしまう場合があります。緑内障を起こしやすい家系や体質がありますが、ステロイド薬の使用中は、定期的に眼圧を測る必要があります。長い期間使用した場合には白内障の進行につながることもあります。
?体への副作用
点眼薬のみでは起こりませんが、内服や点滴でステロイドを使用した場合には、糖尿病、胃潰瘍、骨粗しょう症、高血圧、高脂血症、体重増加、筋力低下、精神症状など、様々な副作用が起こりえます。
ぶどう膜炎でのステロイド剤
眼科で主に使用するステロイド剤の使用方法には、主に4つあります。
?点眼薬、?注射薬、?内服薬、?大量点滴(ステロイドパルス)
?点眼薬
主に、図の緑矢印の部分(虹彩炎)、目の前の方の部分の炎症を抑えるために使用します。ぶどう膜炎の多くは、虹彩炎を伴っているため、ほとんどの患者様が使用します。フルメトロンという目薬や、より強力なリンデロンという目薬が有名です(ジェネリック医薬品では名前が変わります)。副作用は、上記のとおり、バイ菌への感染に弱くなるリスクがあり、多くの場合で抗生物質の点眼薬を併用します。角膜にキズがつく場合や、また、全ての治療に起こりえますが、緑内障を引き起こすことがあり、使用中は定期検査が必要です。
?注射
注射剤は点眼薬に比べ強力で、デカドロンという注射剤を白目の部分(結膜)に注射をしたり、ケナコルトという注射剤を眼球の後方(テノン嚢下)に注射をしたりします。特に、ケナコルトはかなり強力に、長期(数ヶ月)に炎症を抑える効果があり、近年、治療に使用されることが多くなってきました。当院でも、今まで飲み薬が必要だった症例でも注射薬だけで炎症を抑える事が出来る症例が増えており、たくさんの患者様の治療に役立っています。
点眼薬は虹彩炎(目の前の方の炎症)を抑える事が出来ますが、眼球後方には成分が届かないため、上の図の青矢印(毛様体)、赤矢印(脈絡膜)の炎症まで抑える必要がある場合には、注射薬などが必要になります。
副作用は、やはり感染や、緑内障のリスクになります。
特に注射が上手くできずに、眼球の奥の方ではなく、前の方に薬が漏れてしまうと、急激な眼圧上昇を起こすことがあり、注意が必要です。
(当院では年に数百件の注射を施行していますが、これまで軽度の眼圧上昇にて点眼薬を1剤使う程度の症例はありますが、内服薬や手術等が必要になる眼圧上昇を起こした症例は1例もありません。)
?内服薬
内服薬は血流に乗って全身の臓器にいきわたるため、注射のように眼球全体への効果が期待できます。ただしその分、糖尿病、胃潰瘍、骨粗しょう症、高血圧、高脂血症、体重増加、筋力低下、精神症状など、全身への副作用も起こりえます。プレドニンという少し苦い薬が有名で、眼科では朝に1錠?重症例では8錠程度を内服します。数ヶ月以上の長期間内服する場合には、骨粗しょう症の予防薬や、定期的な血液検査が必須になります。(たまに何ヶ月とか何年も内服しているのに、骨粗しょう症の予防をしていない症例に出会ったりして、ビックリする事があります。)
また、眼科のためとはいえ、ステロイド剤を飲んでしまうと、ぶどう膜炎の原因となる疾患の炎症も抑えられてしまう事が多く、内服薬を開始する場合には、血液検査や全身の検査を済ませて、出来る限り原因疾患の究明を済ませるべきです。(手術後など、あきらかにぶどう膜炎の原因が分かっている場合には、その限りではありません)
?大量点滴(ステロイドパルス療法)
その名の通り、ステロイド剤を大量に点滴で体に注入します。例えば、上記の内服薬プレドニンが1錠5mgだとすると、点滴では1000mg、200錠に匹敵する量を一気に流し込みます。多くの場合、3日間連続で点滴をします。強力に炎症を抑える場合に行う治療法で、眼科では原田病、癌関連ぶどう膜炎、ぶどう膜炎ではないですが視神経炎や甲状腺眼症などで行われます。
血圧変動や心臓などへの負担、感染症、高齢者では神経症状などの副作用が発現するリスクがあり、一般的には入院での治療が望まれます。
今日も最後までお読み頂きありがとうございます。
ちょっと風邪っぽいので、もう寝ます。
明日までに治さないと。お休みなさい。
はじめまして。
主人が視神経炎と診断されたため拝見させていただきました。
主治医からはプレドニンが処方されました。
ステロイド点滴を受けるかは来週お返事する事になっています。
血液検査とMRIは異常なし。
パソコンと向き合う仕事のため主人はとても不自由のようです。
昨日までは眼球を動かさなくても目の奥が痛いと鎮痛剤が離せませんでしたが、今日からは少し軽減している様子です。
ステロイド点滴を受けたほうが良いのか悩んでいます。
ですが、身体への負担がとても心配です。
お忙しいところ申し訳ありませんがご返答頂けたら助かります。
よろしくお願いいたします。
遅くなってすみません。
視神経乳頭炎などではプレドニンの内服が用いられますが、特発性視神経炎で治療を行う場合は、まずはステロイドパルス慮法を行うのが標準です。
ただし、長期的・将来的な副作用も含めて、急激に進行する症例が治療の対象と考えられます。
当院では中心視力の低下している症例では早急な治療を相談しますが、視力良好例では様子を見ることが多いです。
このページよりは、僕の視神経炎のブログの方を参照ください。
ご相談させて頂きたく存じます。
80代の祖母は膠原病の持病があり、1ヶ月ほど前、ぶどう膜炎を発症し右眼の手術を受けました。
医大の担当医から術後は見えやすくなると説明されていたそうですが、ここ最近だんだんと悪化しており、白くぼやけた感じで、月も大きく見えるそうです。
次回は8月末に受診し左眼の手術をするかなど今後の治療について相談するとのことですが、それで間に合うのでしょうか?
膠原病のため医大領域となり他院に相談することができないそうなので、質問させて頂きました。
ご多忙の中大変恐縮ですが、ご教示頂けると幸いです。
遅くなってすみません。
どんなケースであれ、術後に異常を感じる場合は、早急に受診すべきです。
これをご覧になったら、ぜひ当日受診してください。
また、「膠原病があるから大学病院の眼科。」というのは、かなり珍しい考え方かと・・・。
いろいろと意見を聞きたく、ご相談させて頂きます。私は一般外科の医師で、眼科は専門外で、友人の眼科に任せていました。最初に右目の境界の明瞭な盛り上がった深紅の充血が起こり(今、思えば強膜炎と思われる。)
フルメトロン点眼で軽快し、2年通院していましたが、右眼が急に白っぽい視野状態になり、ほとんど見えなくなりましたが、「わからない。様子を見てくれ。」といわれ、他院受信し大学病院を受診しましたが、そこでも「眼底写真で眼底が映っているから、ブドウ膜炎でない。」と言われ、この大学とは関連の無い大学出身の開業医に罹り、ブドウ膜炎の診断で6年ほど通っています。最近になって、両眼で曇ったような白くなった視野となり、様子を見ていますが、既に視野狭窄も5割ほど起きていて、人にだけ頼らなくて自分でも判断しようと考えてプレドニンの内服をしようと考えています。2錠(プレドニン10mg)から服用しようと考えています。
先生のご意見をお願い致します。
すみませんが、診察なしで意見を言えることではありません。
確率的には、ぶどう膜炎後の白内障や続発性の緑内障(炎症性・ステロイド性)による症状である可能性の方が高いと思うので、
ステロイド剤は逆効果であり、もし眼圧が高いのであれば絶対に飲んではいけません。
先生の視野が本当に半分もかけているのであれば、失明リスクの高い重大な病態です。
距離や仕事、時間などを言い訳にせず、できる限り早期に正確な診断を受けるべきです。