今日の午後は以下の手術を行いました。
・翼状片手術 1件
・白内障手術 10件
・緑内障手術 2件
・網膜硝子体手術(茎離断)3件 (黄斑前膜2件、増殖糖尿病網膜症1件)
・緑内障濾過胞再建(ニードリング)1件(術後管理扱い、請求なし)
皆さん無事に終わりました。
夜は、1年ぶりに同級生と食事をしました。研修医時代にルームシェア(同じアパートに同居)した、友人です。今は、千葉で眼科の開業をしていますが、僕が普段やっていない、コンタクトレンズの処方などの話を聞けて勉強になりました。彼はチバビジョンのコンタクトがお気に入りのようです!
本日の昼休みにおこなった処置から話題を一つ。
血管新生緑内障
術後管理3:ニードリング
緑内障手術(トラベクレクトミー)では、眼球に穴をあけて、眼内の房水を、眼球の外に流す手術を行います。
図の緑矢印が、眼外に漏れ出た房水の貯留池(ブレブ)になります。
ブレブに溜まった房水は、徐々に吸収されていくのですが、一般的に、このブレブ(貯留池)が大きければ大きいほど、房水が外に逃げるスペースができるため、眼圧が低くなります。逆に、ブレブ(貯留池)が小さいほど房水は眼球の外には流れずに、眼内に溜まってしまうので眼圧が上昇します。
今日、術後処置でニードリングを行った患者様の例で、説明をしてみます。
重度の糖尿病で、失明のリスクが高いと紹介された患者様で、緑内障の点眼薬を多数使用しても、眼圧は30mmHgと高眼圧でした。増殖糖尿病網膜症という病態も伴っており、まずは3週間前に硝子体手術を行い、10日後くらいに緑内障手術(トラベクレクトミー)を行っています。
本日の写真ですが、黒目の上方の、出血でちょっと赤い、白目の部位がブレブになります。少しプックリと膨らんでいるのが分かるでしょうか?緑内障の点眼薬は使用しなくても、眼圧は22mmHg程度まで改善していますが、眼圧の正常値は10?20mmHgなので、まだ少し高めのようです。
次に、本日の診察で、マッサージ(眼球を強く押して、眼球内の房水をブレブに異動させる、技術を要する処置)を行った写真です。上の写真に比べてブレブが大きくなり、眼圧は15mmHg程度まで改善しています。マッサージによって、水の通り道(ブレブ)が広がり、眼圧が下がるようです。
マッサージの作業を日々繰り返すだけで、眼圧が低くめに落ち着いてしまう事もありますが、今回の患者様は、血管新生緑内障で、出血や癒着が早いため、朝も夜も何度もマッサージを繰り返していますが、結局翌日には眼圧が23程度と、20を超えてしまうので、ニードリングという処置を予定しました。
点眼薬を使用すれば、一過性には眼圧が下がるかもしれませんが、点眼薬で眼内で産生する房水が減ったりすると、最終的には、ブレブを膨らませるだけの房水がなくなり、癒着が進んでブレブがなくなってしまいます。(トラベクレクトミーの手術後に、緑内障の点眼薬を使用することは、手術の効果を諦めた時です。)
ニードリング
ニードリングは、針やメスを使用して、癒着の進んだブレブの内部を切り開き、水の貯留部を大きく保つことで、眼圧を下げることができる手術です。
このような先の平たいメスをブレブの中に挿入し、癒着した部位を切り開き、剥離していきます。このメスは、ブレブナイフといって、緑内障のキズ口の癒着を剥がすための専用のナイフです。
水が眼球内から出てくる出口(強膜フラップ)から少し離れた部分で、目の中に器械を入れます。
眼内につながる、水の通り道まで、ブレブナイフでよく切開、癒着を剥離します。
4月5日に追記です。
治療翌日の写真です。
ブレブがより大きく膨らみ、房水が眼外のブレブのなかに流れていることが分かります。
トラベクレクトミーの術後管理を調べていて先生のブログにたどり着きました。色々知る事ができありがとうございます。
点眼薬がブレブの形成を妨げるという事なら、術後2ヶ月も経たない内に房水の流出を促進するSLTを行うとブレブを作る妨げになると思うのですが、それは別なのでしょうか。
遅くなってすみません。
一般的にレクトミーを行った後は、もとの隅角からの房水の排出はあまり期待できません。
もし、ブレブの機能が生きているのであれば、SLTを行うことは通常は考えられませんので、残念ですが、手術後早期ですが、既にブレブが機能しなくなっており、手術の効果が期待できない状態に陥っていて、仕方なくSLTを施行してみるという可能性が高いと思います。(あまり下がらないと思いますが・・・。)
3日後の最照射で一旦は下がりましたが、はい、到底全く必要な眼圧には達しませんでした。
ブログを拝見して色々知って・・・
知人も先生のようなお医者様に会えてたら良かったのにと思います。
参考になりました。ありがとうございました。