今日の午前外来は、連休の半ばで、学校健診で指摘されたお子さんや、普段仕事で病院を受診しにくい人が多く、60名ちょっといらっしゃいました。
午後は小美玉市医療センターで手術でしたが、眼瞼下垂と翼状片を3件づつ施行しました。
網膜の解像度と、視力の正常値
テレビの画面や、パソコンのモニターの進歩がすごいですよね。
一つ一つのピクセル・ドットが人間の目に負えない。なんていうのが、ipadの画面の特徴で、Retina displayなんて呼ばれています。(retinaは網膜の意)
左の図よりも、右の図の方がキレイに滑らかに見えますよね?左側は15×15のマ
スから出来ていますが、右は19×19のマスで出来ています。
このマス目が細かければ細かいほど解像度が高いと言えるわけです。
人間の網膜は、中心部(黄斑部)に近いほど、視細胞と呼ばれる、光を感じ取る細胞が数多く配置され、解像度が増す構造をしています。
基本的には、視細胞が多く、解像度が高ければ高いほど、視力が上昇します。
逆に、加齢や病気で網膜・視細胞が死んでしまって、数が少なければ、解像度が落ちますので、視力が下がるのです。
自分の持っている解像度を最大限に引き出すには、網膜上にピントが合う必要があり、近くや遠くを見る場合に、適切なメガネをかけた場合の視力を矯正視力といいます。
「白内障手術をして、遠くにピントを合わせたら、裸眼で1.0が見えますか?」
という質問をよく受けるのですが、答えは「やってみないと、分からない。」となってしまいます。
白内障手術によって、目の中の濁りを除去したり、近くや遠くのピントを合わせたり、乱視を軽減することは可能になりましたが、同じように手術を行った2名がいたとして、手術後の近視や遠視の度数が全く同じでも、2名の網膜の解像度が違えば、視力の数値も異なるのです。
網膜や黄斑の病気があれば、視細胞が少なく、解像度が悪く、視力測定の数値で1.0出ませんし、特に病気がなくても、視力の数値には個人差があります。
例えば、日本人の殆どの方は、若い時にはメガネやコンタクトを使用すれば1.0?1.5の視力が出ることが多いようですが、全く問題がなくても、視力が弱い家系などで0.8とか0.9までしか見えない人も時々いますし、逆に2.0見える人や、100人に1人くらいは3.0とか見えちゃう人もいます。
テレビとかで、よくやっていますが、アフリカ人などで6.0とか見えちゃう人もいますよね。
視力、網膜の解像度は、人種や個人差があり、これが正常。ということはないようです。
ただし、多くの方が1.0が見えることが多いですし、自動車の運転免許証に必要な0.7が見えないという人は非常に稀です。ですので、本当は間違っているのですが、確立の上では大丈夫だろう(普通は大丈夫だろう)という観点から、大きな病気がない場合の白内障手術の説明では、「手術後は、裸眼で運転できる可能性が非常に高いですよ。」と説明をしてしまう事が多くなります。
(一般の方に分かりやすく。と思って記載しています。本来は網膜の視細胞の数だけで決まる問題ではなく、各細胞間の信号の連携や、脳の映像処理能力なども視力に大きく影響します。また、白黒の識別だけでなく、人間には三原色(赤・緑・青)に関して、それぞれ解像度を持った視細胞が並び、これらも複雑に絡み合った構造をとっています。関係ないですが、鳥類などは紫外線などを認識する細胞もあり、4原色を認識できると言われています。)
3月にipadを買ってみたのですが、
⇒http://blog.sannoudaiganka.jp/?eid=141015
僕の目では確かに、一つ一つのピクセルを識別することはできませんでした。これぞRetina display!
そこで、手術用の顕微鏡で拡大してみたのですが、
拡大すれば、ちゃんとピクセルが認識できるようです。僕は眼鏡をかけて2.0程度の視力、解像度を識別する能力があるのですが、視力が6.0とかのアフリカ人とかは、単純な計算では僕の3倍細かいものを識別する能力があるので、もしかしたらipadのピクセルも認識できるのかもしれません。
ついでに。
顕微鏡の照明をオンにすると、こんなふうになってしまい、よく見えなくなってしまいました。外からの光は散乱?乱反射させることで、明るい場所でも反射を起こさずに画面を見やすくするためでしょうか。アップルの特許かな?ちょっと僕には解明不能な分野です・・・。