今日のお昼は以下の手術を行いました。
・治療的角膜切除術 1件(帯状角膜変性症治療)
・白内障手術 7件
無事に終わりました。
今日は緑内障の治療の話を進めてみます。
緑内障? GSL
隅角癒着解離術(Goniosynechialysis)
緑内障?の分類で記載したのですが、実は一口に緑内障と言っても、いろいろと分類があります。閉塞隅角緑内障はあまり多くない少数派の病態なのですが、眼圧が高めになったりして、重症の例もそれなりに多いのが嫌なところです。
目の中を循環する水(房水)の出口を隅角と呼びますが、右のイラストは開放隅角といって房水の出口が広く保たれるタイプですが、赤矢印の方向へ水が流れ、最中的に黄色のカッコでくくった構造(隅角)から目の外に流れていきます。
左が、閉塞隅角緑内障のイラストですが、茶目(瞳孔・虹彩)が前の方に移動し、角膜とくっついていることで、黄色のカッコでくくった隅角が塞がれてしまっています。これでは、房水の排泄が悪くなって眼圧が上がってしまいます。
隅角が閉塞したり、癒着をしてしまう原因には、遠視などの生まれ持った体質や、加齢による白内障、ぶどう膜炎での癒着などがあります。
今回の症例は、5月1日に「両眼見えない」と初診になった77歳の男性です。
右目は、末期の黄斑変性症・硝子体出血で、視力は光覚弁とほとんど見えません。
そして左目は、眼圧が30mmHgと高く、視力は0.4、残念ながら視野は末期です。
中心部の視野がごくわずか。
初めて診察した瞬間から、「どうにも・・・困った。」という症例です。
これは、目に特殊なレンズをあてて、隅角をのぞく検査(隅角検査)の結果ですが、専門的で分かりにくいと思いますが、癒着がひどく水の出口がハッキリ見えません。(以前にぶどう膜炎の既往があるようです。)
ひとまず一気に3種類の点眼薬を処方し、1週間後に再診となりましたが眼圧は20mmHgといまいち。閉塞隅角では、基本的に出口が塞がれているので、目薬では眼圧が下がりにくい場合があります。末期の緑内障では出来れば10mmHgくらいの眼圧がいいのですよね。
右目も手術が必要なので、どうせ入院するなら。と、5月12日に両眼手術となりました。
目薬の麻酔をして、消毒をして、簡単な注射の麻酔をします。
白内障手術を同時に行うと、水晶体の厚みの分(人工のレンズの方が薄い)、虹彩(茶目)が後ろ側に移動するため、隅角が広くなります。今回も同時手術で。
こんなときでも、LRIをやって乱視を減らします!
ちょっと斜めに傾いたレンズを黒目にのせて、上からのぞくと、隅角が観察できます。緑矢印は、隅角を押し広げたり、切り開いたりする特殊な針です。
目の下側、写真では上側の隅角ですが、針で手前側に広げるように切開します。
切り開いた部分は、多少出血するのですが、矢印の部分に赤い出血があるのが分かりますか?(出血は手術中に出来るだけ止めますが、キレイになるまでに数日間かかることもあります。)
白内障手術もいれて、だいたいここまでで10分くらいの治療です。
(この方は、反対目の硝子体手術の方が大変でした・・・。)
先週の土曜日、6月16日に経過観察でいらして頂きましたが、
左が治療後、右が初診時の隅角の写真です。緑の矢印の長さだけ、隅角の癒着が剥がされ、水の出口の構造がハッキリと見えるようになっています。
眼球の全周、全ての範囲の癒着を剥がすわけではなく、僕は安全にできる下方の癒着を主に剥がすようにしています。
同じ人の写真ですが、赤の部分は癒着を剥がした場所、黄色はとくに何もしていない癒着したままの隅角です。
ちょっと専門的な内容になってしまいましたが、わかりますでしょうか?
気になる眼圧は、目薬を1種類使用して、12mmHgまで下がっていて、とてもいい経過です。(手術の効果だけでも正常な眼圧を保てますが、非常に末期の症例で、出来る限り眼圧を下げるために目薬を追加しています。)
白内障手術の効果で視力は0.4から0.8に改善していますが、視野が狭いので、歩くのは大変そうです・・・。緑内障で失った見え方を取り戻す治療ができるといいのですけどね・・・。