緑内障24 最新手術 バルベルトチューブシャント?

今日のお昼は以下の手術を行いました。
・白内障手術 8件
・眼窩脂肪ヘルニア(脂肪脱)切除  2件
みなさん無事に終わりました。
今日はいつも助手に来ていただく先生がお休みで、大先輩の先生に助手に来て頂きました。緊張しましたが「上手」と褒めて頂き、とても嬉しかったです。今後も「人に見て頂いて恥ずかしくない手術」ができるよう、もっともっと精進します。

緑内障24 最新手術 バルベルトチューブシャント?

緑内障の再手術が必要になった場合、ブレブという房水の貯留池を作るための結膜などに癒着や萎縮が起こっているため、同じ場所での手術ではキレイなブレブが作りにくく、難しい。といったことを、先日のブログで記載しました。
なので、2回目の手術などでは、場所を少しずらして手術をします。例えば1回目の手術が黒目(角膜)の右上の方であれば、2回目の手術は黒目の左上の方にブレブを作ったりします。しかし、何度も手術を繰り返して、癒着をしてしまう人では、黒目の周りが癒着だらけになってしまって、ブレブの作り場所に困ってしまいます。

黒目・角膜のすぐ近くの結膜に癒着や萎縮があると、上のイメージ図ような場所にブレブを作成することができなくなってしまうのです。

そんな時に、水の貯留池・ブレブを黒目・角膜の周りではなく、もっと目の奥の方に作ることがあります。そんな時に使用するのが、バルベルトチューブシャントになります。人工のチューブを目に縫いつけて、離れた場所に水を流す術式です。

イメージではこんな感じ。黒目から後ろ側に離れた場所にブレブ・水の貯留池を作ります。

では、実際の手術の例で。
2ヶ月くらい前の手術ですが、患者様はサルコイドーシスというぶどう膜炎が原因で緑内障となり、10年くらい前から眼科で治療をしています。これまで大学病院での手術歴もあり、両眼で7回程度の手術を繰り返し受けていますが、眼圧が上昇してしまいます。

まず、仰向けに寝て、消毒と麻酔の注射をします。
次に、結膜を一度剥がして、バルベルトチューブを入れるポケットを作ります。


縫いつけるバルベルトチューブはとても大きいので、かなり大きなキズを作る必要があります。


これがバルベルトチューブですが、左側のチューブの先端を前房とよばれる角膜の後ろ側に挿入します。チューブの中を矢印のように水が流れて、目の奥の方に縫いつけた、右側のプレートから水が奥の方に広がる構造です。



結膜を剥がしてできたポケットにバルベルトを挿入します。大きいですよね?実はバルベルトにも3種類の形があるのですが、これよりももっと大きなものもあるのですよね。
右の写真はポケットにいれて、動かないように白目・強膜に縫いつけているところです。水色矢印のさきが水が漏れ出すプレート部。黄緑の矢印の先が水が流れるチューブになります(中に血液があり赤く見えます)。
このチューブがむき出しだと、チューブがズレたり、感染したりしやすいので・・・、


白目・強膜の一部にナイフで切り込みを入れて、めくりあげ、チューブを包み込みように縫いつけて固定します。チューブの先端は、黒目・角膜と白目・強膜の間くらいから、眼球の内部に差し込まれます。
イメージではこんな感じに。

最後にはじめに剥がした結膜を、元通りに縫いつけて手術終了です。

最終的には、チューブの中を水が流れて、通常の緑内障手術・トラベクレクトミーよりも、水の貯留池・ブレブが眼球後方にできます。水が目の外に流れる分、内圧が低下し、眼圧が下がる仕組みです。

局所麻酔で40分程度の手術ですが、バルベルトには3つのタイプがあり、手術方式も若干の違いがあります。どちらかというと、眼科の中では大きな範囲を切ったり縫ったりする手術ですので、手術自体は多少の痛みがあります。痛みに弱い方は、セデーション(少し眠くなる処置)がいいかもしれません。

今日も最後までお読み頂き、ありがとうございました。

“緑内障24 最新手術 バルベルトチューブシャント?” への4件の返信

  1. はじめまして。よろしくお願いします。

    大阪在住の39歳です。
    2年前から左目の緑内障で治療を受けていますが、なかなか眼圧が下がらずに月末に大学病院で手術を受ける予定となりました。

    ネットで情報収集をしていて、とても勉強になるブログで大変感謝しています。

    数日前に手術の説明をうけましたが、その時はよくわからないことだらけでしたが、チューブを使った手術をするというような内容だったと思います。

    栗原先生のブログはとても分かりやすくて、ためになっているのですが、先生のブログにある、エクスプレスシャントとバルベルトシャントはどちらがいいものなのでしょうか?

    私はどちらを受けた方がいいとかアドバイスがもらえたらと。この間の眼圧は35だったと思います。

    本当は担当の先生にも詳しく聞きたいのですが、忙しそうな雰囲気で、あまり質問を聞いてくれません。

    このような質問をお願いしてすみません。

    お忙しいのに申し訳ありませんが、よろしくお願いします。

  2. こんばんは。
    コメント・ご質問・ご感想ありがとうございます。
    分かりやすいブログを頑張ろうと思います。

    さて、実際には診察をしてみないと何とも分からないのですが、初めての緑内障手術でしょうか?複数回の手術歴があるとかでなければ、おそらくエクスプレスシャントだと思います。
    バルベルトは何度も手術歴があり、他に方法がないような場合に使用するというのが、現在の日本での標準的な考え方のようです。
    そのあたりを、今日のブログで書いてみたいと思うので、ご参照いただければと思います。
    また、質問があるようであれば、お返事いただければと思いますが、やはり正確な答えとしては、主治医の先生にご質問頂くのがベストだとは思います。

  3. 現在複数回の手術をしましたが眼圧は高いです一か月前にエクスプレスシャントを入れたのですがまたブレブの癒着で眼圧40位になっています。10月にバルベルトチューブシャントを縫合しますがその後眼圧が高くなった場合の眼圧の維持はどのような方法をとるのでしょうか。宜しかったら教えて頂きたいのですが

  4. ご連絡ありがとうございます。大変な病態のようですね。
    血管新生緑内障でしょうか?癒着の防止として、アバスチンなどは併用していますか?

    当院ではバルベルトまでやって、眼圧が正常化していないかたは、現在のところおりませんので、なんとも言えませんが、
    もし、術野のスペースが取れるのであれば、別の場所からバルベルトを検討するかと思います。
    それでも眼圧が40とかになるのであれば、毛様体を冷凍凝固で破壊するなどして、房水の産生量を減らすという方法もあります。(定量的な方法ではなく、房水の産生が少なくなりすぎると、眼球癆といって目が小さくなってしまう事もあり得る手術ですが。)

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