今日のお昼は以下の手術を行いました。
・眼瞼下垂症手術 1件(皮膚切除+挙筋タッキング)
・翼状片手術 1件(遊離弁移植)
・白内障手術 7件
無事におわりました。
翼状片手術
翼状片は、白目の方から黒目(角膜)の方へ、腫瘍性の病変がのびてきて、角膜を覆ってしまう病気です。(⇒翼状片)多くは黒目の内側、目頭側にできます。
現在の医学では、治療法は手術しかなく、手術で出来物を切除します。
手術をするかしないかは、出来物の大きさや、増悪傾向(大きくなっているかどうか)で判断します。担当医の先生とよく相談しましょう。
今日の患者様は、70代の女性で、かなり大きな翼状片です。瞳孔(黒目の中心部)に病変がかかってしまいます。(本当はもっともっと早くに手術をしてほしいのですが・・・。)
手術では、まず仰向けに寝て、麻酔の目薬をして消毒を行います。
僕たちは患者様の頭側に座るので、手術の写真は上下左右が反対になります。
(当院は手術中の眩しさを減らすために、照明を最小限で行っています。写真が暗くなってしまいますがご了承ください。)
まず、翼状片の本体に、麻酔の注射をして、プックリと膨らませます。
(麻酔には出血を抑制する作用のある成分が混ざっています。)
次に、もう一か所、黒目の上側(写真では下側)に麻酔をします。ここは、あとで移植をするための、キレイな粘膜をもらう場所です。
翼状片を覆う正常な粘膜(結膜)の一部を切開します。
イメージだとこんな感じ。赤が翼状片の病変、黄色が正常な結膜です。
次に、黒目(角膜)を覆っている病変(翼状片頭部)を、ピンセットで引っ張って剥ぎ取ります。少し残った組織も、ナイフを使って削ぎ落とします。
奥の方へと続く病変(翼状片体部)を、引っ張り出すようにできるだけ切除をします。
病変の多くが除去され、キレイになりました。
ピンク矢印の先は内直筋という眼球を動かす筋肉です。実は、病変(翼状片体部)はもっと奥の方まで続いているのですが、あまり頑張って、出来物をとろうとしすると、誤って内直筋を傷つけてしまう可能性があります。翼状片は全ての組織を取り除くことは不可能で、安全に取れる部分だけ切除をします。
奥の方に残った病気が、また大きくなって黒目の方に伸びてくると、再発となります。年齢や性別、病気の大きさなどから、再発率が高そうな場合には、マイトマイシンと呼ばれる再発予防剤(抗癌薬)をしみこませたスポンジ(水色矢印)を、1分?3分程度、接触させます。
病変を除去した部分は、粘膜がなくなり、白目(強膜)が剥き出しの状態となってしまいます。強膜が剥き出しだと、バイキンによる感染が起こりやすくなったり、強膜を覆うために、翼状片が再発しやすくなったりするので、剥き出しになった白目(強膜)を、キレイな粘膜で覆う必要があります。(結膜弁移植)
結膜弁移植には、
・周りの粘膜を引き寄せて縫い縮める方法(有茎弁移植)や、
・離れた粘膜を持ってきて貼りつけたり、縫いつける方法(遊離弁移植)
があります。
当院では、術後の見た目のキレイさや、再発率の低下を目標として、主に遊離弁での手術を行っています。
黒目の上側の粘膜は、まぶたに覆われているために、何歳になってもキレイな粘膜が残っています。また、上方の結膜は、切除後に粘膜が再生するまでの時間も、まぶたに覆われており、バイキンによる感染が起こりにくいという利点があります。
緑矢印の部分の結膜をハサミで切開しています。
切除した結膜(遊離弁)です。これを写真右側の翼状片切除部(白いところ)に移植します。
剥き出しになっていた病変部に、糊で貼り付けをして、手術終了です。
だいたい局所麻酔で10分?15分程度。
今回の患者様は、少し大き目で15分かかりました。再発例では出血が多く、もっと長くなることもあります。
通常は日帰り手術で行う手術ですが、今回は、反対目の手術(白内障)も同時に行ったため入院となりました。
手術の費用は3割負担で15000円程度、1割だと5000円程度です。
翼状片をお持ちの方へ。
できれば、あんまり大きくなる前に手術をさせてくださいね。
初めまして。
今月から約10年振りに眼科オペ室勤務となりました3児の兼業主婦です。
大変解り易く勉強になりました!
有難うございます❤