今日のお昼は以下の手術を行いました。
・白内障手術 10件
・網膜硝子体手術(茎離断)1件(糖尿病網膜症による硝子体出血)
手術は無事に終わりました。
今日は外来が混み(110名)、予約外の新患の患者様が沢山いらして、お待ち頂く患者様が多くなってしまいました。申し訳ありませんでした。
最近は外眼部疾患(眼球内のことでない病気)のブログが多くなっていますが、昨日、入院して頂いた患者様も外眼(がいがん)の病気でした。
急性涙嚢炎(きゅうせいるいのうえん)
涙は目の外側(左下の図で赤矢印の先)、涙腺という器官で産生されます。
まばたきによって、涙腺から目の表面で流れてきた涙液(るいえき)は、目の表面を潤したり、目の中に入ったホコリや花粉、バイ菌を洗浄したりしたあとに、
目頭にある涙点(るいてん)(緑矢印)から、涙嚢(るいのう)と呼ばれる袋状の管を通って、最終的には鼻の奥へと流れていきます。(右上の赤丸で囲んだあたりが涙嚢)
主に加齢を原因として、この涙の流れ道(出口)がふさがってしまう病気で、鼻涙管閉塞症(びるいかんへいしょくしょう)と呼ばれるものがあることを以前に記載しました。
涙には目の表面のホコリやバイ菌を洗い流す役割がありますが、鼻涙管閉塞症が起こると、涙の流れがせき止められてしまい、涙嚢のあたりにホコリが溜まったり、バイ菌が繁殖しやすくなるため、メヤニが出やすくなったり、炎症が起こりやすくなったりします。軽度の炎症は絶えず起こっており、慢性涙嚢炎と呼ばれ、繰り返すメヤニなどに対して適宜点眼薬を使用したりするのですが、
稀ですが、バイ菌による感染症が急激に悪化した場合などに、目頭のあたりから、ヒドイ場合には顔の半分近くまで腫れあがってしまう場合があり、これを急性涙嚢炎と呼びます。
目頭を中心にバイ菌感染による炎症が起こり、赤く腫れあがります。痛みが強く、炎症が強い場合には発熱することも。もちろん感染症なのでメヤニもでます。
治療は抗生物質による治療が基本となります。結膜や角膜の病気では目薬や塗り薬だけで治療が可能ですが、涙嚢炎では内服薬や点滴など全身的な投薬が必要になります。
左は内服薬(飲み薬)だけで外来で治ってしまった症例です。
今回の患者様は右の写真ですが、先週に目頭付近の痛みとメヤニ、腫れを訴えて受診となりました。
まず、メヤニを培養検査に回して、どのようなバイ菌がいるのか、どんな薬が良く効いて、どんな薬が効きにくいのか?などを調べるのですが、培養検査はすぐに結果がでるものではなく、数日?1週間程度の時間がかかります。その間、何もしないで待っているわけにはいかないので、一般的に使用される抗生物質の目薬、塗り薬、飲み薬を処方してお帰り頂きました。
薬との相性が良ければ(菌が弱くて薬が良く効けば)、外来で数日程度で治っていく病気ですが、今回は3日後の検査ではあまり改善がなく、金曜日に別の種類の抗生物質を処方して、週明けに再診して頂くことになっていました。
どうにも心配な症例だったので、一応、日曜日の朝に電話をしてみると、残念ながら腫れはひどくなって、痛みもツライようです。
培養の結果もちょうど判明してきて、やはり薬が効きにくい変わったバイ菌が原因のようです。すぐに受診して頂きそのまま緊急入院して頂きました。強力な抗生物質を昨日から朝晩の1日2回点滴していますが、先ほど診察してみると、だいぶ腫れが引いて、痛みは全くなくなったとのことです。よかった[:グッド:]
もう数日、入院での点滴を頑張ってから退院して頂く予定です。
全身的に抗生物質を使用したい時に、飲み薬で治療がうまくいかない時には、点滴での治療が必要になることがあります(飲み薬よりも点滴の方が早く協力に効きます)。薬の種類にもよりますが、入院が必要になる場合もあるので、ご協力を頂きたいと思います。
他の治療としては、
・袋に包まれるように膿がたまってしまう場合には(膿瘍形成)、皮膚を切開したり、針を刺したりして、膿を出した方が、治りが早くなります。
・再発のリスクを消失させたい場合には、急性期の感染症が落ち着いた後に、涙嚢を摘出してしまったり、涙の流れ路を作りなおす手術を行います。
今日もお読み頂きありがとうございました。