当院は、白内障手術(特に乱視矯正)や、網膜硝子体手術を一番のメインとしてやってきたのですが、最近、難症例の緑内障の患者様の手術の紹介が急激なペースで増えてきています。
遠方の患者様からの問い合わせもかなり多くなってきており(特にエクスプレスに関して)、白内障に続いて緑内障手術の動画もYOU TUBEにアップしてみることにします。
緑内障手術動画 (白内障同時手術)
エクスプレスシャント トラベクレクトミー
手術動画?(視聴クリック)
手術動画?(視聴クリック)
?は先週、ご開業医の先生より紹介頂いた患者様です。
点眼薬を4成分、内服薬最大量、点滴まで行っても眼圧が40mmHgを超える極度の重症例の手術です。白内障もあり同時に手術をしました。
(専門的にはおそらく、secondary glaucomaの症例)
ビデオの途中の9分?11分頃に、何もせずに動かない時間は、マイトマイシンという癒着防止薬をしみこませている状態です。
通常、緑内障手術のみであれば15分程度、白内障も一緒だと20分程度の手術ですが、再手術例などで以前の傷口が癒着している場合などは時間が延びることがあります。
?は今週の手術で、やはり点眼薬を4種類使っても眼圧が30を超える症例で紹介して頂きました。サンピロという点眼薬を使っていた患者様は、手術中に瞳孔が開かずに(小瞳孔)、白内障手術が難しくなる傾向があります。
当院のトラべクレクトミーの術後成績は非常に良好で、術後に緑内障の点眼薬の再開が必要になる患者様は殆どおらず、手術の効果だけで、正常範囲内の眼圧を保てている患者様ばかりです。
当院の成績が良好な理由として、手術手技のレベル以外に個人的には以下の2つを考えています。
?ニードリング
癒着が進む症例では、躊躇なくニードリングを行っています。薬剤に頼らず物理的に癒着を剥離し、再度、房水の流れ道を作成します。(術後早期の処置は保険請求・コストなどはとっていません。)
?適切なレーザー切糸
眼圧の推移や傷の癒着をみながら、可能な限り最適な時期に、傷を縫った糸を切る処置(レーザースーチャライシス)を行います。この時期が遅すぎると眼圧が高くなり、早すぎると術後に極端な低眼圧になってしまいます。
最近、遠方の患者様より、電話などで手術に関する質問を受けることが多くなっていますが、緑内障手術に関する当院の基本的な考えを記載します。
・術後の管理を安心してお任せできる先生からの紹介がない場合、遠方の患者様の手術はお断りしています。
緑内障の手術は、白内障と異なり、手術のみで完結するわけではありません。入念な長期間の術後管理によって、濾過胞を育てていく手術です。術後もきちんと対応させて頂けることが手術を引き受ける大前提です。
・できる限り入院での手術をお勧めします。
眼圧の推移を朝晩評価できたり、レーザー切糸や眼球マッサージなどの術後処置を最適な時間に行うことができるからです。
ビデオ?の症例です。
眼圧が非常に高く、角膜(黒目)が白濁しています。
手術前の白目(結膜・強膜)の状態です。
手術翌日、眼圧8
術後3日、眼圧16→レーザー切糸
術後10日、眼圧6と安定。もう大丈夫。
レーザー切糸を行った、術後3日目は日曜日です。
日帰り手術では、夜間や日曜の処置はなかなか困難です。
ビデオ?の症例です。
術後数時間の写真です。
この方は、もう片方の目が失明しており、長時間の眼帯は可哀想です。
術後4時間程度ですぐに眼帯を外すことができました。
これも入院だからできることです。
術後経過も良好で、現在術後3日で眼圧8mmHgで週明けに退院予定です。
緑内障のビデオ参考になりました。
すみませんが質問をさせてください。
1;1分30秒くらいで使用している薬剤は何ですか?MMCでしょうか?
2;9分20秒くらいで角膜輪部に使用した薬剤は何ですか?
ご連絡ありがとうございます。
眼科医の先生でよろしいでしょうか?
?のビデオですよね?お答えできる範囲で。
1.希釈ボスミンです。術後に結膜下出血が多いと、LSがしにくいと思います。できるだけしっかり止血するようにしています。
(僕は術後に白目が赤くなるのがすごく不快で、硝子体手術のテノン嚢麻酔でさえ、凝固して止血したりしています。術後に全くSCHがないと気持ちがいいです。)
2.すみません。本当はMMCの暴露前に行うのですが、一つ暴露してからに・・・。粘弾性物質です。角膜にMMCがつくのがなんとなく嫌で。制御糸は6-0シルクですが、何もしないと糸にMMCがしみこむような?
(ちなみに、持針器が痛むのが嫌で、6-0はぺアンで持っています。最初の糸かけが不器用に見えますよね・・・と、少し言い訳を。)
何か、ご質問があれば遠慮なくご連絡ください。
ご回答ありがとうございます。
たしかに糸きりの時に出血が邪魔だと感じることがあります。
出血のコントロールに気をつけたいと思います。
テノンが厚い場合は除去しますか?
最後の結膜縫合は端々で数針しか縫っていないようですが
術後漏れませんか?
こんにちは。
テノンは若いNVGの患者様等などで、切除することがありますが、比率は低い方と思います。術中の印象でLSができなそうな場合に行っています。あまり除去するとブレブがischemicになりますよね。眼圧は下がりますが。
結膜縫合は、症例によって様々です。やはり結膜の薄い患者様では連続縫合でしっかり縫っています。ただ、連続縫合を含めて、あまり縫った糸が多いと、術後に糸が気になって仕方がないので、端々で十分と思えば端々にしています。
(薄いischemicなブレブに糸があると、嫌な気分になりませんか?)
僕は、患者さんには安心してもらう意味を込めて、「手術は予定通りに穴をあけて、傷を縫って。決まりきったことをする本当に簡単な手術。大事なのは術後の処置!」と全員にICするのですが、緑内障手術をするときには、実際には症例ごとに縫い方とか、様々なアレンジをしますよね。そのあたりは、もう経験というか、センスというか。そういうのが得意なサージャンと、そうでない人がいるのでしょうね。