9月16日 予約外の外来は休診になります。

大変申し訳ありませんが、
本日、緊急手術の紹介が多数あったため、
明日、9月16日は
予約外の患者様の診察は休診

とさせて頂きます。
重度の疾患で、緊急性の高いものはお引き受け致しますが、緊急性の低いものは、後日に予約をとって再検査となります。

久しぶりのブログ更新が、こんな内容ですみません。
更新が滞っており、多くの先生方から「体調が悪いのか?」などと、お気遣いのメールを頂きますが至って元気です。元気は元気なのですが、毎日、目の前の臨床・患者さんで手いっぱいという状態です。
ちなみに、宮井先生とあわせてですが、
昨日は、重度の網膜下血腫で緊急手術、その他20件
今日は、18件(ひたちの眼科さんでの網膜剥離の緊急手術含む)
明日は、白内障20件、眼内レンズ縫着2件、脂肪脱1件、緑内障2件、眼瞼下垂2件、硝子体手術7件・・・・計34件?の予定です。
当院は今年から毎週金曜日も手術日となり、そして土曜日も各所で出張手術です。

眼科医としては本当に充実しており、元気いっぱい頑張っています!!

第38回 日本眼科手術学会

1月30日(金)から2月1日(日)まで、京都で学会が行われました。
30日の夕方に眼球破裂の緊急手術があり、日曜日も緊急手術だったので、
31日の始発で京都入り。お昼に自分の発表。夜は他大学の先輩たちと京都料理を堪能して、ほろ酔い?泥酔?で終電帰宅という、ハードスケジュールでした・・・。

第38回 日本眼科手術学会

眼科では比較的大きな学会で、その名の通り手術に関する発表が多い学会です。
僕は、当院で開発した眼科手術に使用する麻酔針について講演しました。

眼瞼下垂や、逆さまつ毛の手術では、まぶたに注射針をさして麻酔をする必要がありますが、顔の麻酔って結構痛いものです。通常、注射の針というと先が尖っているものですが、当院では先端をわざと丸くしたものを開発し、皮膚の下に滑り込ませることで、痛みや、内出血の発生を軽減することができています。

左が通常の27G針、右が開発した麻酔針で麻酔薬は側面の穴から出てきます。
以前にUPした眼瞼下垂の動画でも、開発途中の麻酔針が出ており、ご興味のあるかたは参考にどうぞ。
眼瞼下垂手術(鈍針麻酔)

手術は患者さんにとって不安なものですが、なかでも痛みに関する恐怖心は大きなストレスです。麻酔の痛みを軽減する方法には、他にも
・針の太さ
・麻酔の前に冷やす
・予備麻酔(麻酔薬の塗布、極細の針で少量麻酔)
・麻酔薬の温度
・麻酔薬の注入速度
などがあります。少しでも痛みを少なくしてあげたい。そして何より楽しい雰囲気で手術を提供したいと日々試行錯誤をしている毎日です。

これに満足せずに、どの手術においても、もっと痛みを少なくできないか。
もっと安心して手術を受けて頂くことができないか。研鑽していきます!

ブログ再開します!

いろいろありまして、長らく休載していたブログですが、
多少下書きしておいたものもあり、見直しながら順次掲載していこうと思います。

昨年末から、父がクモ膜下出血で倒れたり、年明けには娘が大学病院で手術を受けたり、その他さまざまな出来事が沢山ありました。診療に関わって頂いた多くの関係者様、ヘトヘトな僕を支えてくれたクリニックのスタッフ、そして家族。
本当にありがとうございました。ブログのファンという方から頂いたお手紙もうれしかったです。
父も完全とは言えませんが十分な社会復帰ができました。春の季節を迎え、心穏やかに診療に励みたいと思います。

今日からORT(視能訓練士)さんなど、新しいスタッフも2名増えました。
20代の若々しい戦力です。一緒に頑張りましょう!!



ブログ休載中も、スタッフが手術室前に飾りつけを続けてくれました。ありがとう。


娘も無事に完治して、ひな祭りができました。

H27年 あけましておめでとうございます。

新年、明けましておめでとうございます[:鏡もち:]
プライベートですが、実の父が現在もICU(集中治療室)で頑張っています。
たびたび群馬県に帰省しており、一部の救急受診の問い合わせに対応できない件が数件ありました。大変申し訳ありませんでした。

明日からは通常の診療が開始されます。
昨年は馬車馬のように働くことを目標にしました。
今年の干支はひつじ年ですが、ひつじ年は「家族の安泰」や「穏やかで人情に厚い」「平和」などと表現されるようです。
忙しくなると外来での口調が強くなったり、イライラしてしまうこともある僕です。目のことに困って受診して頂く患者さんに、疾患に対する治療のみでなく、心の安寧を与えられるような、ひつじのように柔らかい医師でありたいと思います。
父のことで、病気で心から困っている患者さん、ご家族の方の気持ちが今まで以上に理解できています。
「患者さんに安らぎを与えられる医師、誠実な医師」を今年の目標にしたいと思います。今年もどうぞよろしくお願い致します。

そして、いつも僕を支えてくれるスタッフの皆さん。本当にありがとうございます。今年もよろしくお願い致しますね。


毎年,お正月飾りを頂くH様。お気遣いありがとうございます。

旅行や遠出は難しかったのですが、自宅でできるお正月らしいことには挑戦できました。

ひつじの書初め


副笑い


凧揚げ[:凧:]

H26年の治療実績

各方面からお気遣いの連絡頂きました。ありがとうございます。
いろいろご心配をおかけしましたが、ひとまず父の病態を見守っています。

本日29日の手術11件をもって、当院の予定手術は終了となりました。
(通常外来は明日まで、一部の患者様は明後日の大晦日まで診察があります。)

H26年の治療実績を集計しました。
宮井副院長と二人体制になり、手術件数が2000件以上と急激に増えた1年でした。手術総数としては茨城県内では大学病院より多く、水戸市の小沢眼科様に次いで、県内では2番目になるかと思います。
疾患別では、緑内障手術の紹介、糖尿病網膜症や網膜剥離などの硝子体手術の紹介、そして宮井先生の白内障手術が増えました。特に緑内障は1年で2倍以上に増加し、ほとんどの症例で良好な経過が得ることができました。

他院様での出張手術も急激に増え年間で約1000件を執刀しました。これは来年、さらに急増する見込みです。
臨床以外でも、学会発表や講演会・勉強会講師などの発表を、宮井副院長と合わせて9回行いました。(昨年は4回)
また、本年度より石岡市内4校の学校医を担当させて頂くなど、地域医療・公衆衛生としての眼科でも役立てたのではないかと思います。
とても充実した、満足のいく1年でした。
(1回で治らなかった網膜剥離や、硝子体術後の高眼圧症、術後性水疱性角膜症のための紹介など、数名の患者様では100点満点の経過が得られたわけではなく、全ての患者様の経過に満足がいっているわけではありませんが、今後もよりよい成績で治療ができるように研鑽します。)

治療実績(H26年1月?H26年12月)

観血的手術合計 2134件
内訳
・白内障手術 1404件(眼内レンズ交換含む)
・網膜硝子体手術 312件(糖尿病・網膜剥離・眼底出血・黄斑円孔     ・黄斑前膜など)
・緑内障手術 98件
・眼瞼(まぶた)の手術 99件(眼瞼下垂・さかさまつげ・霰粒腫)
・結膜の手術 110件(翼状片・結膜弛緩症)
・涙器の手術 34件(NSチューブ・涙嚢の手術)
・その他の手術 77件(斜視、角膜、レンズ整復、瞳孔形成、眼窩など)

レーザー手術合計 332眼
内訳
・網膜光凝固 156眼(糖尿病・眼底出血などに対するレーザー)
・緑内障レーザー 20眼(SLTレーザー・虹彩切除LI)
・YAGレーザー 156(後発白内障に対するレーザー)

*手術数は基本的に保険診療で請求された件数です。両眼同時手術などは2件と計算しています。 白内障の手術時に、逆さまつ毛や眼瞼下垂の手術を追加で行うことがありますが、それらはカウントしておりません。

抗VEGF薬 硝子体注射 784件加齢黄斑変性症や黄斑浮腫などに対する注射です。ルセンティス・アイリーア・アバスチン)

ステロイド薬 テノン嚢注射 386件(糖尿病や網膜静脈閉塞症などでの黄斑浮腫、ぶどう膜炎などに対する注射です。トリアムシノロン・マキュエイド)

明日27日は栗原休診になります。

大変申し訳ありませんが、父親の急病により、
明日12月27日(土曜)の栗原の外来は休診にさせて頂きます。

外来自体は宮井副院長と大学病院の先生、2名の代診で行っています。
本日手術をされた患者様、もともと外来予約の患者様、予定通り受診下さいませ。
本来、予約の患者様に前もってご連絡できればよいのですが、急な出来事で時間的に難しい次第です。すみませんがご了承下さい。

もともと土曜日は、都内など遠方からセカンドオピニオンの患者様が多くいらっしゃいます。もし、このブログをみて頂けた方がいらしましたら、初診でセカンドオピニオンの患者様はできれば別の診療日に変更頂けますと幸いです。

29日(月曜)の外来、手術は予定通り行います。
手術の患者様は予定通り3日前からの点眼薬を開始下さい。

H26年11月の手術実績:茨城県 山王台病院 眼科

今月から、白内障の手術を受ける場合に、
・患者さんは手術前後でなにが辛いと思うのか?
・痛みがどの程度あるのか?
・当院で特徴的な両眼手術はどう影響するのか?
などなど、手術を受ける患者様全員にアンケートをさせて頂くことにしました。
今後、より満足度の高い治療を目指す参考にさせて頂いたり、学会発表などにも利用させて頂く予定です。お手数をおかけしますが、よりよい医療の発展のためにご協力を頂ければと思います。

11月は月曜日の祭日が2日あったり、2回の学会出張があったりと、手術件数が久々に減少したようです。
また、金曜日も一部手術日をさせて頂くこととなり、そちらの枠を優先しているため、手術の順番待ちが4ヶ月まで減少しました。(金曜日の手術枠もすでに3月まで埋まっては来ていますが・・・。)
つい最近まで半年待ちだったのと比べると、患者様のイライラ解消に少しは近づいたでしょうか・・・?

H26年11月の手術実績
手術合計 138件
内訳

・白内障手術 98件

・網膜硝子体手術 22件(糖尿病・網膜剥離・眼底出血・黄斑円孔など)
・緑内障手術 5件
・結膜の手術 6件(翼状片・結膜弛緩症など)
・眼瞼(まぶた)の手術 2件(霰粒腫・眼瞼下垂など)
・涙器の手術 4件(涙嚢摘出、NSチューブなど)
・その他の手術 2件(角膜形成・瞳孔形成など)

レーザー手術合計 27眼
内訳
・網膜光凝固 16眼(糖尿病・眼底出血などに対するレーザー)
・YAGレーザー 11眼(後発白内障に対するレーザー)
*手術数は基本的に保険診療で請求された件数です。両眼同時手術などは2件と計算しています。

抗VEGF薬 硝子体注射 55件(加齢黄斑変性症などに対する注射です。ルセンティス・アイリーア・アバスチンの合計)

ステロイド薬 テノン嚢注射 27件(糖尿病や網膜静脈閉塞症などでの黄斑浮腫などに対する注射です。マキュエイド・ケナコルト)

白内障などの緊急性のない手術の待ち時間は約4ヶ月待ち、来年の4月からの予約となります。

子供たちは、クリスマスプレゼントに何がほしいか考えているようです。
だんだんと自分が欲しいものが分からず、「別にいらないや」ってなってしまうのは僕だけでしょうか??新しい手術器械は欲しいものが沢山ありますが・・・。

白内障手術 硝子体手術 眼科手術専門 山王台病院 附属 眼科内科クリニック
(茨城県 石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市 笠間市 行方市 鉾田市 茨城町)

第53回 日本網膜硝子体学会総会

硝子体学会も無事に終わり、帰路についています。今日は新幹線「のぞみ」からブログを書いてみます。電車オタクではありませんが、新幹線「はやぶさ」にも乗ってみたいな。(不在にて数件の緊急診療をお断りしてしまいましたが、申し訳ありませんでした。)

53回 日本網膜硝子体学会総会
今回は「YAGレーザーによる術前処置を施した硝子体手術時の前嚢収縮の切除効率と安全性」という演題で発表をさせて頂きました。(⇒昨日のブログ参照
昨日、前嚢収縮によって、視力の低下、眼内レンズの性能の低下などを生じることを記載しましたが、実は前嚢収縮は患者さん側の症状・問題だけでなく、医師側にも問題を起こすことがあります。それは、患者さんの眼底(目の奥)が見えにくくなることです。
眼底検査をするときには、瞳孔を大きく広げる目薬を使用します。瞳孔が小さいと視界が狭く目の中を覗き込む時に邪魔だからです。同じように、前嚢収縮でもレンズの前面を覆ったリング状の混濁が邪魔をして、眼底が見えにくくなってしまいます。
特に糖尿病の方の白内障手術では前嚢収縮が起こりやすいのですが、糖尿病の方は白内障手術が終わっても一生涯、眼底検査での糖尿病網膜症(眼底出血)の評価を続ける必要があります。この時に、前嚢収縮があると眼底の隅っこが見えなくなってしまったり、診察が困難になってしまうので、YAGレーザーによる切開をしておくことが重要なのです。
しかし、実際には治療されずに前嚢収縮が進行し、将来的に糖尿病網膜症が悪化して硝子体手術(目の奥の手術)を受ける場合に、僕たちが手術中に目の中を覗くのに邪魔になってしまうことがあります。
本来、白内障術後に前嚢収縮が起こり始めた場合に、予防的にYAGレーザーで切開をしておけば、このような処置も不要なのですけどね・・・。なぜだか日本では治療をしない先生だらけなのです・・・。

硝子体手術をする場合に、眼底が見えにくいことは手術の安全性・成績に不利なるので、多くの講演や教科書では手術中に剪刃(ハサミ)を使って、混濁・収縮した前嚢を切除してから手術をすることが勧められていましたが、やってみるとレンズがずれてしまうリスクがあったりと、ハサミで処置をするのは結構難しい処置です。
ハサミで切開は難しい
ところが、手術前にYAGレーザーで切開を入れておくと、ものすごーく簡単に除去できちゃうことがわかりました。レンズの動揺もなく、チン氏帯にとても優しく手術できます。

前嚢収縮が広がると、手術中の眼底が見えやすくなります。

左が治療前、右が治療後
ワイドビューイングシステムでは、ある程度の前嚢収縮は関係なく手術できますが、術後診療含めて、視認性が改善するのは良いことですよね。
専門的ですが、混濁部を攝子で引っ張って除去しますが、治療後によく観察すると、多くの場合で前嚢組織は残ったままで、混濁した組織(筋線維芽細胞様化した水晶体上皮細胞)のみが除去できているようです。このためにチン氏帯への負担が少なくなるようです。
本当にものすごーく簡単に除去できるので、眼内レンズ眼に硝子体手術をする時には是非やってみてほしいのですが、写真では伝わりにくいので、動画をYOU TUBEにUPしておきます。
⇒手術動画はクリックしてください。

治療のサンプル写真です。
左:治療前、中央:YAGレーザー後、右:手術後
症例1

症例2

やっぱりキレイな方が診察も気持ちいいです。

学会では、相変わらず抗VEGF薬(ルセンティス・アイリーア・アバスチン)の治療成績の発表が多く、この数年同じ発表ばかり。「いい加減あきあきです・・・。」という部分もありましたが、個人的には、スペインからいらしたJeroni Nadal先生の講演はとても面白かったです。特殊な腫瘍性病変に対して、網膜に針糸を通して栄養血管を縫合して閉塞させてしまう。というものでした。網膜を縫うなんて、思いもよらないアイデアです。こういうアイデアから始まって次世代の治療へとつながっていくのでしょうね。

前嚢収縮(ぜんのうしゅうしゅく)

11月28日から30日に、大阪で学会が開かれています。2週前に神戸の学会で発表したばかりですが、本日再び関西へ。
僕は、「YAGレーザーによる術前処置を施した硝子体手術時の前嚢収縮の切除効率と安全性」という演題での発表となります。

硝子体学会なのですが、前嚢収縮という病態自体は、白内障手術に関連するものです。今日は、まず前嚢収縮についての記載をしてみたいと思います。
前嚢収縮(ぜんのうしゅうしゅく)
近年の白内障手術では、濁った水晶体・レンズを丸々交換するのではなく、濁りを包んでいる透明な袋(水晶体嚢)の前面に丸い穴をあけ(CCC)、内部の濁りのみを取り出して、残った袋に人工のレンズを入れる。ということが行われています。(⇒白内障手術の詳細は以前のブログを参照
手術中は、濁りをできる限り残さずにキレイに掃除するのですが、残念ながら細胞レベルではある程度の濁りは残ってしまいます。多くの方では、濁りの細胞が少しくらい残っても問題なく経過するのですが、一部の患者様で濁りの細胞が分裂・増殖し、形を変えてレンズの周囲で広がってしまうことがあります。
レンズの後面に濁りが広がった場合は、後発白内障と呼ばれます。後発白内障は視力低下に直結するため、YAGレーザーというレーザー光線によって濁りを除去する簡単な治療が行われます。(⇒後発白内障は以前のブログを参照
逆に、レンズの前面、水晶体を包んでいた袋(水晶体嚢)に開けた穴(CCC)の周囲で、濁りの細胞が増殖し、穴が閉じてきてしまうような病態を、前嚢収縮と呼びます。

赤矢印の先、白いリング状の濁りが前嚢収縮です。濁っている部分は光がとおらないため、視界が狭くなります。

前嚢収縮によって起こる症状
・コントラスト感度の低下
  (白と黒は判別しやすくても、白と灰色は判別しにくいなど)
・グレア
  (夜間のライトのまぶしさなど)
・眼内レンズの偏心・変位・傾斜
  (袋のヒキツレによって、中のレンズがずれる)
・視野の狭窄、視力低下
  (収縮・混濁が中心近くに及んだ場合に発生)
・眼内レンズ落下
  (中等度?重度の場合に起こりえます)
とくに、近年使用頻度が増えている、非球面レンズ、乱視用トーリックレンズ、多焦点レンズなどの高性能レンズは偏心・変位・傾斜によって、本来の性能を発揮できなかったり、逆に通常のレンズよりも見えにくくなってしまうことがあり、術後の診察で前嚢収縮を見た場合には、きちんと治療をする必要があるのですが、なぜだか日本の先生は、中心視力が低下するほど重度の前嚢収縮になるまで治療をせずに放置をする場合が多いようです。(治療によって、ある程度の偏心は戻りますが、重度のものや乱視の軸が大きくずれてしまった場合は完全には戻せません。)

前嚢収縮を起こしやすいケース
・年齢が若い
  (残った濁りの細胞の細胞分裂能力が高い)
・術後炎症が強い
  (手術が長引いたり、手術後の点眼薬をサボったりする方)
・糖尿病の方
・網膜色素変性症の方
・PE/落屑症候群
  (瞳孔周囲に白いフケ様物質のたまる体質の持ち主)
・他の手術との同時手術
  (硝子体手術や緑内障手術)
通常、強い前嚢収縮は数週間?半年程度で生じ、軽度のものでは、その後も長期間をかけてゆっくりとは進行するものもあります。
当院では標準的には白内障手術後、翌日、1週後、さらに2週後、さらに1ヶ月後、さらに2ヶ月後、さらに4ヶ月後というスケジュールで診察をしています。その後は1年か2年に1回の定期検診をお勧めしています。
稀に、「白内障手術後の検査なんて、1ヶ月もみれば十分」とおっしゃる先生がいますが、そういう先生は球面の単焦点レンズしか使用しないのでしょうか?トーリックレンズをいれて、もし収縮が起こって強く偏心してしまったらどうするのだろう?非球面レンズが逆に視力を低下させてしまったらどうするのだろう?と多々不思議に思います。

治療法
後発白内障と同じく、YAGレーザーというレーザー光線を照射して、その衝撃で前嚢収縮を切開します。切開を入れると張力によって小さくなったCCCが広がり、その後の収縮を抑制してくれます。

上記でで紹介した同じ症例の治療後です。YAGレーザーの切開により、混濁した白いリングが広がり、光が通過する範囲が広がっています。(後発白内障も同時に治療)
教科書的には糖尿病の方など、上述したようなリスクの高い症例では、軽度の前嚢収縮であっても予防的に前嚢の切開をしておくべきとされています。
目薬の麻酔薬を使用して、痛みもない2分程度の治療です。治療直後から洗顔洗髪含めて制限はありませんが、2週間ほど目薬を付ける必要があります。
この治療、保険点数がついていないようで??、当院ではリスクの高い症例などでは無料でYAGレーザーを施行しています。
(後発白内障と同時に治療する場合もあり、その場合は1割負担で1000円強、3割で3000円強の費用がかかります。)

第68回 日本臨床眼科学会

今晩は土浦市、牛久市の眼科の先生と勉強会・食事会をしました。3人とも同世代でいろいろ刺激になりました。

さて、先週11月13日?16日は神戸で大きな眼科の学会がありました。僕も宮井副院長も発表があり、期間中の外来を制限させて頂くなど、患者様にはご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
第68回 日本臨床眼科学会


宮井先生は「糖尿病患者の網膜光凝固で誘発される黄斑浮腫の予防についての検討」という演題での発表となりました。
糖尿病網膜症に対して、失明を防ぐための最もベースとなる治療法は、網膜光凝固術(レーザー治療)です。(⇒病気の詳細は以前のブログを参照
失明を防ぐために行う必須の治療ですが、残念ながら治療のせいで逆に中心視力が治療前よりも下がってしまうケースもあり得るのです。当院ではケナコルトというステロイド剤と、アバスチンという抗VEGF薬の注射を予防的に併用する治療を積極的に行っていますが、治療した52例の全員が誰一人、視力低下が起こらず、黄斑浮腫の悪化を認めなかったことを発表しました。
日本でも、最近はアバスチン以外の抗VEGF薬が2種類、正規に販売されましたが、当院では数年前から未認可の状態でも先進的な治療を行ってきた結果の成績です。
昨日、抗VEGF薬の製薬メーカーの方から連絡があり、年明けに勉強会の講師を依頼して頂けました。こちらも頑張ります。


僕は「強制的に視野の欠損を認識させた緑内障患者における通院継続率の検討」
という演題で発表しました。
(⇒緑内障に関するブログはこちらを参照
緑内障は末期になるまで自覚症状が乏しいことで有名な病気です。痛くもかゆくもなく、自分自身では見えていないことに気が付きません。このため人間ドックなどをもとに早期発見・早期治療ができても、途中で通院や点眼を辞めてしまうことが多いことで問題になります(治療中断)。ある発表では治療開始後の1年間で40%の人が治療から脱落してしまったというものもあります。
本人は見えていると思っても、マリオット盲点と呼ばれる誰にでもある「見えない場所」や、緑内障の病気で「見えない場所」を自覚させることで通院の継続率が改善したことを報告しました。
僕はかなりしつこい性格なので??、予約日に受診していない人には数ヶ月後に電話をしたりします。2011年に当院で緑内障と診断された患者様はなんと3年間の経過で97%の患者様に通院を継続して頂いております。当院の成績は良好であったことも発表しましたが、学会発表ができたのは、当院の患者さんが非常に優秀だからです。本当にありがとうございました。

盲点や暗点などを自覚してもらうために、以前に自作した道具「栗棒」を使ったのですが、発表後に問い合わせがあり、なんと2本を販売することになりました。
(⇒マリオット盲点・栗棒については以前のブログを

そして今日は、都内の眼科の先生というか、日本を代表する緑内障の名医の先生からポスターを見たとお電話を頂き、緑内障の啓蒙についてお力を貸して頂けることになりました。今回の発表で参考文献にさせて頂いた重鎮の先生から、直接お電話を頂けるなんて思ってもいなかったので、本当にうれしかったです。

今後も大きな学会での発表がいくつも予定されていますが、情報発信に向けて頑張っていきます。