一昨日、血管新生緑内障という病気に関して、少し変なブログを書いてしまいましたが、本日、当院にもあたらに2名の血管新生緑内障の患者様がいらっしゃり、手術を行う予定となりました。いつかは書こうと思っていた病気なので、今回を期に筆を進めてみたいと思います。
血管新生緑内障(けっかんしんせいりょくないしょう)
病態 その1
まず緑内障という病気に関してですが、お時間のある人は、左のカテゴリーで「緑内障」というものを読んで頂ければと思います。お時間のない人は大まかに以下を。
・眼圧http://blog.sannoudaiganka.jp/?eid=133813
・病態http://blog.sannoudaiganka.jp/?eid=134101
・分類http://blog.sannoudaiganka.jp/?eid=134202
緑内障とは、眼圧に関連して視神経が障害され、視野(見える範囲)が狭くなる病気です。
目の内部を循環して、眼球の膨らみを保つ「房水:ぼうすい」という水が、目の中に溢れてしまうと、眼球を内側から膨らませる力(眼圧)が大きくなり、眼球の内側からの圧力で、視神経が押しつぶされてしまうといった病態です。
?房水の産生量が増える
?房水の排出量が減る
以上のどちらか、または両方が起こると、眼圧が上昇するのですが、
血管新生緑内障は「?房水の排出量が減る」ことで眼圧が上昇します。
まず正常な隅角(ぐうかく)と呼ばれる房水の出口の構造です。
左図の矢印の先が隅角で、ここから房水が排出されます。
右は隅角の写真ですが、下側の茶色が虹彩、上側は角膜に相当します。
次は血管新生緑内障での隅角です。
隅角に新生血管が発生し、出口としての構造を防いでしまうと、房水の排出ができなくなり、眼圧が上昇します。右の写真は本日の患者様ですが、青矢印の先の赤いものが新生血管です。矢印以外にも、その右の方にある、赤く見えるのは全て新生血管です。緑の範囲の隅角が全体的に赤く充血しています。
新生血管(しんせいけっかん)とは、
網膜などの目の中の血流が障害され、虚血状態(血が足りない状態)になった場合、網膜はより多くの血流を得ようとして、目の中に新しい血管を生やそうとするホルモン(血管内皮細胞増殖因子:VEGF)を産生します。このVEGFというホルモンの働きによって、新しい血管、つまり新生血管が発生します。新生血管の発生によって血流が改善するのであればいいのですが、残念ながらそう上手くは行きません。眼底にできた新生血管のほとんどは、できそこないの血管で、ちょっとしたことで大出血を起こしてしまいます。また、新生血管が生える場所も問題で、本来は血管のない隅角に生えてしまったりすると、房水の排出が障害され、血管新生緑内障になってしまうのです。
つまり、血管新生緑内障は目の虚血(血が足りない)ことに、続発する病気であり、続発性緑内障と呼ばれるグループに属します。
血管新生緑内障を引き起こす病気としては、主に以下の二つがあります。
?糖尿病網膜症http://blog.sannoudaiganka.jp/?eid=131321
?網膜中心静脈閉塞症http://blog.sannoudaiganka.jp/?cid=4924
他にぶどう膜炎や、網膜中心動脈閉塞症などでも起こることがあります。
今日の患者様は、2名とも糖尿病網膜症が原因です。
1名は30代の糖尿病、喫煙者の男性で、当院で1年前に両眼の網膜症に対して硝子体手術をしています。なんと両眼(眼圧右60と左40)の発症で、右眼は明日そうそうに、準緊急で手術です。
もう一名は70代の男性で、他院様でですが、やはり両眼ともに数回の手術歴があります。目薬や飲み薬で少しは待てる症例なので、月が明けてから手術をしたいと。
糖尿病って基本的に治らない病気なので、眼科の治療で一度は落ち着いても、さらに血管が詰まれば、追加の治療が必要になってしまいます・・・。どんなに治療を頑張っても、全ての血管が詰まって生きていける目はありません。目の手術が必要になる糖尿病って、かなり重症です。手術後の患者様は、それ以上、血管が詰まることがないように、難しいのだとは思いますが、より血糖値に気つけなければなりません。そして、煙草は血管を収縮させます。絶対にやめましょう。
血管新生緑内障は、様々な緑内障のなかで最も予後が悪い(失明率が高い)緑内障として有名です。絶対に救いたい。明日から全力で治療を行います。経過とあわせて、病気の解説をしていこうと思います。
では、おやすみなさい。
今日もお読み頂きありがとうございました。