今日は以下の手術を行いました。
・翼状片手術(遊離弁移植) 1件
・白内障手術 10件
・眼内レンズ交換 2件(他院様術後エラー)
・網膜硝子体手術(茎離断) 5件
(増殖糖尿病網膜症2件・糖尿病性硝子体出血1件・黄斑前膜1件・黄斑円孔1件)
難しい症例が多かったですが、無事に終わりました。
そろそろ、手術納めの医院も出てくる時期ですが、当院ではまだまだ先の話です・・・。
今日は時間ができたので、久しぶりに手術の話題で。
ECCE・水晶体嚢外摘出術
白内障手術の特殊な術式の一つをご紹介します。
以前に、通常の白内障手術・水晶体超音波乳化吸引術(PEA)について記載したことがあります。機械の進歩とともに、最近の白内障手術のほとんどは、キズ口は2mm程度。時間は5分程度。で終わってしまうことがほとんどです。
ただし、全員が全員、同じような手術で同じような結果を得られるわけではありません。目の組織が弱い人や、濁りが強く・硬くなり過ぎてしまった人などでは、通常の手術(水晶体超音波乳化吸引術・PEA)ができないケースもあるのです。
水晶体超音波乳化吸引術(PEA)は、小さなキズ口から、細い掃除機を目の中に入れて、目の中で水晶体の濁りを細かく砕きながら、吸い出す。という術式ですが、
ECCE(水晶体嚢外摘出術)は、濁りを目の中で砕かずに、少し大きなキズ口を作って、濁りをそのままの形で、プルンッ。と摘出する術式になります。
超音波の器械が発達する前には、ECCEは白内障手術の標準術式でしたが、現在も発展途上国などではECCEの方が数多く行われているようです。
現在の日本では、あまり行われることがなくなっていますが、以下のようなケースで、通常の手術(PEA)ができない場合に選択されます。
・水晶体の濁りが硬すぎて、目の中で安全に砕けない。
・チン氏帯が弱くて、通常の手術に耐えられない。
⇒無理をすると、水晶体脱臼・眼内レンズ脱臼などにつながる
・角膜内皮細胞が少ない。
⇒超音波で無理をすると、水泡性角膜症につながる
・白内障手術(PEA)の途中で、上手くいかなかったとき。
ただし、最近は手術機械が発達したため、濁りが硬すぎて砕けない。というケースは皆無になってきています。(当院のコンステレーションは凄いですよ!)
先週手術の患者様ですが、濁りが真っ白を通り越して、真っ黒。ものすごく硬いのですが、コンステレーションのオジル機能で、なんなく破砕できました。
ECCE・水晶体嚢外摘出術
先週手術した90代の患者様。視力は0.02程度、濁りは硬くはありませんが、角膜内皮細胞が少なく、チン氏帯が弱いために水晶体がグラグラしている症例です。
超音波を使って、目の中で濁りを無理に砕くより、ECCEでそうっと濁りを取り出す方法を選択しました。
白目・強膜の上を覆っている結膜を切開して、緑矢印のように針を入れ、眼球の後方・奥に麻酔薬をいれます。
露出して、少し強膜から血がでるので、電気の熱を使って止血します。
PEAでは切開の幅が2mm程度のキズ口で済みますが、ECCEでは濁りをまるまる取り出せる程度のキズ口が必要です。今回は3種類のナイフを使って、8.5mmの切開を行いました(緑矢印の幅)。
濁りを包んでいる袋に丸い穴を開けます。
濁った水晶体(白内障)をぐるぐると目の中で回転させながら、袋の前方、瞳孔(虹彩・茶目)の上まで持ち上げます(脱臼)。右上の写真では、茶目の上まで濁りがでてきたために、茶目が見えなくなっているのが分かりますか??
濁りの下に、専用のスプーン状のヘラを入れて、引っ張り出すと、
「プルンっ。」と濁りが取り出せます。青矢印の先が摘出された水晶体(白内障です。)
のこった細かい濁りを、負担の少ない掃除機で吸い出して、
人工のレンズ(眼内レンズ・IOL)を入れて、
キズ口を一針縫ったらお終いです。
(この手術が得意な先生では、キズを縫わなくても大丈夫なことも多いようです。僕はこの術式はあまり行いませんし、一針くらい縫った方が、キズを閉じるという意味では丈夫で安全かなと。)
通常のPEAで行う方が、時間も早いし、キズも小さいし、乱視のコントロールも良好です。ECCEは、今の日本では、難症例に限ってものすごく稀に行う術式です。
(たまにしか行わない、少し難しい手術って、眼科医としては、ワクワクして楽しいのですが。)
初めて、ご連絡させていただきます。私はSLE患者のため、60歳にしてステロイド性の白内障になりました。そのため、5月28日に2月の左目に続き、右目の白内障手術を実施しました。何と手術時間が1時間を越えました。なぜかと言いますと、超音波で水晶体を砕いている途中で、執刀医の「アッ 破れちゃった。」の言葉で始まる奇妙な手術風景です。麻酔が効いていないと思われるくらいの激痛が続き、水晶体が取り除かれたまま、一旦、開眼鏡が外され照明光も消えました。眩しくなくなったので照明機器が水晶体無しの状態でぼんやりみえました。また、超音波裁断の時に右耳にキーという以前の左目の手術の時とは異なる音が聞こええていたことも覚えています。手術室の中はばたばたし始め、医師が「早く計算やり直してくれ。」「16か18の在庫があるかどうか下に行って調べてくれ。」と指示を出しているのが聞こえました。私が執刀医に「水晶体の袋を取ってしまったんですか?」と聴くと「そうです。メガネで補正しないといけない状態になるかもしれません。」という回答でした。眼内レンズの度数を計算しているのか、在庫を探しているのか分かりませんがその状態で20?30分放って置かれました。その後眼内レンズを入れたのですが麻酔が切れれてきており激痛そのものでした。そして針を刺すようなチクリとした痛みが数回あったので、「えらく痛いんですが、角膜でも縫ったんですか?」と聴いたら、「そうです。このあと目がゴロゴロして痛いと思います。」との回答でした。縫い終わったと思われる後もどこかを針で突っついているようでまたまた激痛です。1時間以上経過してやっと手術は終わったのですが、次の日被っていたガーゼを外すと、今回手術した右目は縦に二重の像に見え遠くも近くも殆どまともに文字が読めない状態になっていました。術前より視力が落ちていたのです。更に、右目と左目の色の濃さが違い且つ右目が暗いくなっていました。私はモノスコープを希望し、右目のターゲットをマイナス1.5と指定しましたので遠くが見えにくいのは当然ですが近くも乱視状態で見えないと言うのは腑に落ちません。その日のうちに分かったのですが、左目はABBOT社の三点支持型ZBC00の+14DのIOL、一方、右目はAMO社ZA9003の+16Dでした。そこで、私は「何故同じメーカにしなかったのか。メーカが違うと色相に差が出るのではないか?」更に「水晶体嚢を除去したのなら眼内レンズの度数も変えるべきではなかったのか?」と質問したら「なるべく近いものを選択したつもりだ。そもそも、眼内レンズに期待する方が間違いだ。眼内レンズなんてそんなものだ。」との回答で、何故、水晶体嚢が破れたのか、なぜこれほどまでに視力が落ちて酷い乱視になったのかの説明は有りませんでした。
以上、長くなりましたが、同一人物の両目に大きな病状の差はあるものなのでしょうか?また、眼内レンズの交換は可能なものでしょうか。
ご質問申し上げると共に、臨床例としてご参照いただければ幸いです。
佐藤様
ご連絡ありがとうございます。
白内障手術の経過が思わしくないようで、不安だとは思いますが、まずは、しっかりと経過をみていくことが重要です。
5月28日の手術では、まだ術後早期です。手術の内容にもよりますが角膜のシワ、浮腫なども強いものと思います。角膜の状態は、一般的に数週間かけて改善されます。また、創の縫合がきつく、乱視が強い状態なのではないでしょうか?数週後に抜糸をすることで、かなり改善する可能性が高いと思います。
手術中のライトによる障害や、角膜の浮腫によっても、色合いが変わってみえますが、これらも現状よりは改善するものと考えてよいかと思います。
眼内レンズの色合いは、左右でかなり異なるものを選んでも、両眼で見ている場合には、ほとんど気にならなくなってしまうことが一般的です。経過を見守って下さい。
眼内レンズの交換は可能ですが、やはり手術ですから、いろいろなリスクがあります。レンズの固定の状態にもよりますが、レンズ交換以外に、レーシックやPRKなどの屈折矯正手術によってより精密な改善を得られる場合もあります。(自由診療ですが) どちらにしても、今すぐに考えることではなく、数ヶ月様子をみてからで構いません。
おそらく破嚢とよばれる合併症ですが、レンズの前方と後方のつながりが生まれてしまうために、後方・眼底に問題となる合併症が起こったり、他にも緑内障などの合併症に発展する可能性が少なからずありえます。少しの間は、念入りな術後検診が必要と思いますので、担当の先生の指示によく従うようにしてください。
当院にも破嚢後の症例が時々紹介になります。多くの場合は、眼内レンズが入れらていない状態での紹介で、再度手術室に入って、レンズを挿入する再手術を必要とします。合併症が起こったのは残念ですが、今後、視力が問題なく回復していくのであれば、担当の先生は、その場で最良と思われる手術をしてくれたことになります。
もちろん合併症は起こらない方がいいですが、同じ合併症が起こった人に比べて、よい経過なのかもしれません。(御不快にさせてしまう文面であればすみません)
主人の事で御相談させていただきます
お忙しいとは思いますが、よろしくお願いいたします
2018.2月14日に右目、21日に左目の白内障の手術をいたしました
最初の右目の手術は、水晶体が固く、少しだけ取れないままでした
1週間後の左目の手術は、順調に終わり経過も良く、視力もハッキリしたようです
が、右目が術後もズーとカスミがかかったような状態ということで、
3月5日に外来受診にレーザー治療をしました
が、結果はあまり変わらずで、9日に再度レーザーを
が、同じような状態のままでした
そして、13日に3回目のレーザーをしました
治療中に医師が『袋?がはじけて広がった』と言われたそうです
そして、その日の夜から右目の視力が出ず、側にある物も見えないと言いました
15日の診察では、医師に『想定内の事でもう少し様子をみるよう』にと言われました
今の右目に関しては、白内障の手術の前の状態よりも遥かに見えなくなっています
もう少し様子をみていて、大丈夫なんでしょうか?
とても不安です
本来、ブログ上で回答をしていますが、他にも未回答案件もありまして、今回のみ直接メールをします。
皮質残存による眼圧上昇、網膜剥離、眼内レンズ落下など、いろいろ考えられますが、
現在見えないのであれば、場合によっては後遺症や重大な視力障害も考えられます。
土曜の外来もやっている医院であれば、明日受診して主治医に説明を求めるべきです。
受診可能であれば月曜に当院受診下さい。
申し訳ありまんが、僕は明日は午前外来後、すぐに出張手術があり、明日の緊急手術はこれ以上はお引き受けできません。